ところが! 舞台に躍り出たマークは若々しく瑞々しい。 「つるつるの美肌だなあ」とは思っていたが、それより彼の果てしない身体能力とリズム感、体幹のしなやかさが若さの表現につながっていることに感嘆させられた。英語のセリフも歌も、何の違和感もストレスもなく、完璧。浮いていないどころか、むしろ日本人にさえ見えない。初日の舞台では、山本マークが登場するなり「待ってました!」とばかりに客席は大興奮、大歓声! マークの第一声、「We Begin on Christmas Eve!」のセリフは完全にかき消され、開幕直後に山本はショーストッパー(※演劇で、拍手喝采のあまり進行が中断してしまうほどの名演技や、その演技をした俳優を指す) となったのだった。
今回の演出は、ラーソンによるオリジナル演出に基づくもの。作品自体が「原点回帰」をしているようで、その本質がまっすぐに届くようなステージだったと思う。いまは亡きラーソンが作品を通して、語りかけてくるようにも感じる。「生きてきた人生の価値を何で数える?」と、全キャストが心を乗せた「Seasons of Love」。「いま生きているのは今日という日だけ」と繰り返し歌われる「No Day but Today」。
もし英語のき取りに自信がないという人は、ミュージカルナンバーの歌詞和訳を一度読んでから観劇することを強くおすすめしたい。字幕を追っていたら、大切な瞬間を見逃してしまうかもしれないから。というより、パフォーマンスに夢中になっていたら字幕なんか追えないからだ。受け止められたはずの言葉を、受け止め損なったらもったいない! そうそう、この作品を観る度に思うのだが、ロジャーとミミのナンバーで歌われる「I Should Tell You(君に言わなくちゃ)」は、日本語の「愛してるよ」に聞こえるが、それはソラミミ。
初日のカーテンコールでは、オリジナル版で演出を手がけたマイケル・グライフがサプライズで舞台に上がり、舞台上と客席が一体となって「Seasons of Love」を大合唱! ラーソンもこの日米合作版を天国から観て、きっと喜んでいるだろう。時代は変わったが、人生の、生きることの価値は変わっていないと思い知らされ、この瞬間を熱く生きる俳優たちに打ちのめされ、「ウォー!」と叫んで抱きしめたくなる。ラーソンからのメッセージを受け止めることができたなら、このミュージカルを観た「人生のなかの今日という1日」を、愛おしく思えること間違いなしだ。
「RENT JAPAN TOUR 2024」は、9月8日まで東京・東急シアターオーブで上演中。大阪公演は9月11日~15日、SkyシアターMBSで行われる。詳しい情報は公式サイト(https://rent2024.jp)で確認できる。
人気作家・東野圭吾が1992年に発表した同名ベストセラー小説を、「禁じられた遊び」の重岡大毅主演で映画化したサスペンスミステリー。 劇団に所属する7人の役者のもとに、新作舞台の主演の座を争う最終オーディションへの招待状が届く。オーディションは4日間の合宿で行われ、参加者たちは「大雪で閉ざされた山荘」という架空のシチュエーションで起こる連続殺人事件のシナリオを演じることに。しかし出口のない密室で1人また1人と参加者が消えていき、彼らは互いに疑心暗鬼に陥っていく。 オーディション参加者の中で1人だけ別の劇団に所属する久我和幸を重岡が熱演し、中条あやみ、岡山天音、西野七瀬、堀田真由、戸塚純貴、森川葵、間宮祥太朗が同じ劇団に所属する個性豊かな役者たちを演じる。監督は「荒川アンダーザブリッジ THE MOVIE」の飯塚健。