発売はつばい直後ちょくごに購入こうにゅうして乗のり続つづけてきた整備せいび士しの愛車あいしゃホンダ・ビート

お気きに入いりの愛車あいしゃを長ながく所有しょゆうし続つづけることは、カーマニアにとって憧あこがれのカーライフのひとつ。それが18歳さいで免許めんきょを取得しゅとくしてすぐに手てに入いれた愛車あいしゃとなれば尚なお更さらだ。
1991年ねん式しきのホンダ・ビート(PP1)を所有しょゆうする本多ほんださんは、高校こうこうを卒業そつぎょうしてまもなく手てに入いれた念願ねんがんの愛車あいしゃを、33年間ねんかん大切たいせつに乗のり続つづけているという。
「小学校しょうがっこう6年生ねんせいの時とき、学校がっこうの図書館としょかんにあった『世界せかいの松下まつした・ソニー・本田ほんだ』という本ほんを読よんで、本田ほんだ宗そう一郎いちろうさんの伝記でんきに感銘かんめいを受うけました!｣と、それ以来いらいホンダ車しゃが好すきになった本多ほんださん。中学ちゅうがく、高校こうこう時代じだいもその意思いしは変かわらず、運転うんてん免許めんきょを取得しゅとくしたらS800に乗のりたいと思おもっていたそうだ。

「特とくに古ふるいホンダ車しゃが好すきでS800が欲ほしいと思おもっていましたが、高校こうこう時代じだいはバブル絶頂ぜっちょう期き。S800なんてとても買かえるような金額きんがくではなく諦あきらめました。その代かわり、ボロボロでしたがホンダ・Z360を手てに入いれることができたんです」
お父様とうさまが自動車じどうしゃ鈑金塗装とそう業ぎょうを営いとなんでおり、高校生こうこうせいの頃ころから時間じかんを見みつけては手伝てつだいをしていたという本多ほんださん。そのZ360もお父様とうさまの知しり合あいの整備せいび工場こうじょうに放置ほうちしてあったものを親子おやこで引ひき取とりに行いき、見みよう見みまねでレストアしていたという。

そうして高校こうこう在籍ざいせき中ちゅうに普通ふつう免許めんきょを取得しゅとくし、父親ちちおやの自動車じどうしゃ鈑金塗装とそう店てんにて本格ほんかく的てきに働はたらくようになった本多ほんださんに、その後ごのクルマ人生じんせいを決定けっていづける転機てんきが訪おとずれた。
ホンダが小型こがたの2シーターオープンカーを発売はつばいすると発表はっぴょうしたのだ。そのクルマを見みるやいなや、カッコよくて可愛かわいい斬新ざんしんなフォルムに一発いっぱつでノックアウト。『絶対ぜったい買かう！』と心しんに誓ちかい、即効そっこうで地元じもとのホンダディーラーへ予約よやくをしにいったという。そのクルマこそがホンダ・ビートであった。

それからというもの、寝ねても覚さめても考かんがえることはビートの事ことばかり。発売はつばい前まえに刊行かんこうされたビートのプロモーション雑誌ざっしやビデオ、そしてカタログは穴あながあくまで観みまくり『ビートってどれだけ楽たのしいクルマなんだろう?』と、毎日まいにち妄想もうそうが止とまらなかったという。
そして1991年ねん6月がつ、長崎ながさき県けん島原しまばら市し地区ちくで第だい1号ごうだったというビートが納車のうしゃ。「初はじめて自分じぶんで買かった愛車あいしゃで、しかも新車しんしゃ。ただ、まだ10代で貯金ちょきんもないので、親おやに借金しゃっきんして買かいました」と、ビートの代金だいきんは毎月まいつきの給料きゅうりょうから天引てんびきという形かたちで返済へんさいしつつ、待まちに待まった愛車あいしゃライフがスタートした。

そんなビートライフを満喫まんきつしつつ、オートバイも楽たのしんでいた本多ほんださんが、初はじめて買かったスズキの“GSX250S刀かたな”に乗のり、奥おくさま(当時とうじは彼女かのじょ)とタンデムで熊本くまもと・阿蘇あその展望てんぼう台だいに行いった時ときのこと。
「展望てんぼう台だいの駐車ちゅうしゃ場じょうに停とままっていたら、ビートの集団しゅうだんが入はいってきたんです。驚おどろくと同時どうじに嬉うれしくて『自分じぶんもビートに乗のっているんです』と話はなしかけたところ、ビートのオーナーズクラブの方々かたがたでした」

そのクラブというのが、ホンダビート・オーナーズクラブ『CLUB-PP1』。九州きゅうしゅうと山口やまぐちのビートオーナーが集あつまり、2024年ねんで結成けっせい33年ねんになる古参こさんのクラブだ。メンバーと意気投合いきとうごうした本多ほんださんは、翌月よくげつにはPP1のツーリングに参加さんかするようになり、気きがつけば30年ねん以上いじょうの付つき合あいに。クラブで製作せいさくしたステッカーやTてぃーシャツ、発足ほっそく20周年しゅうねん記念きねんのオリジナルトミカなど、PP1のグッズは今いまでも大切たいせつに保管ほかんしている。
「九州きゅうしゅう、山口やまぐちをクラブのツーリングで、色々いろいろな場所ばしょに連つれて行いってもらいました。そのおかげで観光かんこう名所めいしょや食事しょくじ処しょにも詳くわしくなったので、今いまではバイク仲間なかまをそこに案内あんないしたりしています」

クラブではツーリングとミーティングをそれぞれ月がつ1回かい開催かいさいしていて、一時いちじは息子むすこさんのサッカーをサポートするために10年ねんほどお休やすみを挟はさんだものの、その期間きかんを除のぞいてはほぼ毎月まいつき参加さんかしているという本多ほんださん。撮影さつえい会かい当日とうじつに着用ちゃくようしていたジャケットも、クラブのワッペンがついたオリジナルアイテムだった。
「今いまでも毎月まいつきツーリングが行おこなわれているので、メンバーの生存せいぞん確認かくにんも含ふくめて可能かのうな限かぎり参加さんかしています(笑)かっこわらい。こんなに長ながく仲間なかまと繋つながっているのも、ビートのおかげでしょうね」

そんな本多ほんださんの熱あついビート愛あいは、仕事しごとや家族かぞくにも影響えいきょうを与あたえているようで「40歳さいの時ときに自動車じどうしゃ整備せいび士し2級きゅうの免許めんきょを取とり、自動車じどうしゃ鈑金工場こうじょうから自動車じどうしゃ整備せいびの認証にんしょう工場こうじょうとして設備せつびを拡大かくだいしました。実じつは弟おとうともクルマ＆バイク好すきで、カーニバルイエローのビートに乗のっています。自分じぶんと顔かおもソックリですが、ビートの仕様しようもソックリです(笑)かっこわらい」とのこと。

｢実じつはこのクルマ、塗装とそう面めんは当時とうじのままのなんですよ。手入ていれは普通ふつうに洗車せんしゃした後のち、樹脂じゅし系けいの固形こけいワックスを掛かけているのみですけどね」と、本多ほんださん。とても33年ねん前まえのクルマとは思おもえないボディの艶つやは、写真しゃしんからも一目瞭然いちもくりょうぜん。幌ほろは13年ねん前まえに交換こうかんしたものだが、ガレージ保管ほかんということもあって、現在げんざいでもリヤスクリーン共々ともどもきれいな状態じょうたいをキープしている。

唯一ゆいいつ、本多ほんださんを悩なやませたのが、1990年ねんより始はじまった雲仙うんぜん普賢岳ふげんだけの噴火ふんかによる火山灰かざんばいだ。島原しまばら地方ちほうでは、溶岩ようがんドームの成長せいちょう停止ていしが確認かくにんされる1995年ねんまで、日常にちじょう的てきに降灰こうかいに見舞みまわれていた。洗車せんしゃしてもまたすぐ灰はいを被こうむるため、トランク内ないのリヤショックアブソーバー装着そうちゃく部分ぶぶんなど、所々ところどころに当時とうじの火山灰かざんばいによる痕跡こんせきが残のこっている。これを除去じょきょするために、様々さまざまな手段しゅだんを講こうじてみたが、残念ざんねんながら消けすことはできなかったという。

火山灰かざんばいの痕跡こんせき箇所かしょ以外いがいは、極上ごくじょうのボディ同様どうように、内装ないそうの状態じょうたいも33年ねんという月日つきひの流ながれを感かんじないコンディションが維持いじされていた。ダッシュボードやドアパネルは、キズや割われなどもなく、ビートの破損はそん箇所かしょナンバーワンを誇ほこる“シートベルトのステー”も健在けんざい。そしてシートは25年ねん前まえに本ほん革かわへと張はり替かえられ、ボディカラーと合あわせた赤あかいステッチがアクセントとなっている。
AV関係かんけいはセンターコンソールにカロッツェリアのナビゲーションシステムをセット。ダッシュボードに設置せっちするスカイサウンドスピーカーは、5～6年ねん前まえに中身なかみのシステムを刷新さっしんした。

ビートをカスタマイズする上じょうで本多ほんださんのモットーは、ボディに穴あなを開あけない、純正じゅんせい状態じょうたいに戻もどせないカスタムはしない。それでいて、他たとはひと味あじ違ちがうオリジナリティを出だすことだという。
例たとえば前後ぜんごバンパーだが、純正じゅんせいをベースにエアダクトのフィンをスムージングし、ブラックに塗装とそうしたアルミネットを装着そうちゃく。フロントにはリップスポイラーを加くわえ、オンリーワンなフロントマスクを演出えんしゅつしている。
S800をモチーフとした『Honda』や『S660』のロゴステッカーやエンブレムも「S660が登場とうじょうする以前いぜんから、ビートの別名べつめいを『S660』って呼よんでいたんですよ」と、話はなしを聞きけば聞きくほど、本多ほんださんのこだわりが溢あふれ出だす。

たとえば、ビートのルームライトは足あしもとにしか備そなわっておらず超ちょう暗くらいのが難点なんてんで、夜間やかんに車内しゃないで物ものを落おとしたりすると大変たいへんだったため、左右さゆうサンバイザーの中央ちゅうおうにLEDのルームライトを設置せっちすることで使つかい勝手がってが向上こうじょうしたという。ドアと膝ひざの干渉かんしょうを軽減けいげんするために、運転うんてん席せき側がわのドアパネルに純正じゅんせいシートと同おなじ素材そざいで製作せいさくしたニーパッドを貼はり付つけるなど、長ながく乗のり続つづけてきたオーナーならではの小こワザも満載まんさいというわけだ。

「是非ぜひとも見みてもらいたいのが、無限むげんのCF-48ホイールです! 入手にゅうしゅした時ときはボロボロだったのでレストアしたんです。簡単かんたんに言いうと、まずはポリッシュリムを守まもるべく、1本ほん2時じ間あいだくらいかけてマスキング。そしてサンドブラストを施ほどこしてディスク面めんをクリーンな状態じょうたいに。そこからリムの裏側うらがわに残のこっていた塗料とりょうを元もとに当時とうじのカラーを再現さいげんしました。そしてようやくペイントに漕こぎつけたといった流ながれですね｣と、塗装とそうが本業ほんぎょうの本多ほんださんでも『もうやりたくないですね』と言いうほど、大変たいへんな作業さぎょうだったそうだ。
また、ビートではよくあるフロントピラーのフィルム割われも、表面ひょうめんのフィルムを剥はぎサフェーサーで下地したじ処理しょりを行おこない、ワイパーまわりのカウルトップと同おなじ色しょくに調合ちょうごうしたブラックで塗装とそう。本職ほんしょくの技術ぎじゅつを活いかして新車しんしゃ以上いじょうのきれいなピラーへとリメイクされていた。

これからもビートに乗のり続つづけるため、いかに現状げんじょうを維持いじしていくかが課題かだいという本多ほんださん。
コンディションの確認かくにんも兼かねて週しゅう一いちで近所きんじょを30kmほどドライブ。ビートの各種かくしゅ純正じゅんせい部品ぶひんはクラブのメンバーと共同きょうどうで所有しょゆうし、いざという時ときに備そなえているという。
現在げんざいの走行そうこう距離きょりは約やく8万まん7000km。日頃ひごろからマメに手入ていれされており、エンジンオーバーホールの必要ひつよう性せいはまだ感かんじていないそうだ。

｢『狭せまい』『遅おそい』『うるさい』『エアコンが微妙びみょうに効きかない』『乗のり心地ごこち悪わるい』『走行そうこう中ちゅうはオーディオ聴きこえない』『雨漏あまもりする』『ライトが暗くらい』と、ダメ出しゅっししたらキリがないウチのビートですが、なぜか運転うんてんして疲つかれないし楽たのしいんです。長年ながねん乗のっているから、自分じぶんの身体しんたいがビートに馴染なじんでいるのだと思おもいます(笑)かっこわらい」
人生じんせいの半分はんぶん以上いじょうを共ともに歩あゆんできたビート。これからもかけがえのない相棒あいぼうとして、本多ほんださんのカーライフを充実じゅうじつさせてくれることだろう。

（文ぶん: 櫛くし橋はし哲子てつこ / 撮影さつえい: 西野にしのキヨシ）

※許可きょかを得えて取材しゅざいを行おこなっています
取材しゅざい場所ばしょ：稲佐山いなさやま公園こうえん（長崎ながさき県けん長崎ながさき市し大浜おおはま町まち）
［GAZOO編集へんしゅう部ぶ］