政治せいじの場ばにもっと女性じょせいを　米国べいこくで増ふえる女性じょせい議員ぎいん、民間みんかんサポートが後押あとおし

Behind the News ニュースの深層しんそう更新こうしん日び：2019.12.03 公開こうかい日び：2019.12.03

コロラド州しゅう選出せんしゅつの女性じょせい下院かいん議員ぎいん、ダイアナ・デゲット＝秋山あきやま訓子くにこ撮影さつえい

女性じょせいが政治せいじの場ばに進出しんしゅつするには、仕事しごとと生活せいかつの両立りょうりつなど多おおくの壁かべがある。そこで、多おおくの国くにで政策せいさくや政党せいとうの方針ほうしんとして女性じょせいを増ふやす方策ほうさくがとられている。

たとえば、女性じょせいに一定いってい割合わりあいで候補者こうほしゃや議席ぎせきを割わり当あてる「クオータ制せい」だ。イギリス、韓国かんこく、フランスなどが採用さいようしている。衆議院しゅうぎいんで1割わり、参議院さんぎいんで2割わり程度ていどと女性じょせいが少数しょうすう派はの日本にっぽんでも、2018年ねんに「政治せいじ分野ぶんやにおける男女だんじょ共同きょうどう参画さんかく推進すいしん法ほう」が定さだめられた。ただ、女性じょせいを政治せいじの場ばに増ふやすことが理念りねんとしてうたわれてはいるが、特とくに強制きょうせい力りょくを持もつものではない。

米国べいこくにも女性じょせいの数かずを増ふやすための制度せいどはないが、17年ねんにトランプが大統領だいとうりょうになって、女性じょせいの立候補りっこうほ予定よてい者しゃ数すうも当選とうせん者しゃ数すうも急増きゅうぞうしている。18年ねんの中なか間あいだ選挙せんきょ後ごには、上院じょういん議員ぎいんも下院かいん議員ぎいんも女性じょせいの数かずが史上しじょう最多さいたを更新こうしんした。初はつ当選とうせん組ぐみには、ニューヨーク州しゅう選出せんしゅつで史上しじょう最年少さいねんしょうの下院かいん議員ぎいんとして注目ちゅうもくされる30歳さいのアレクサンドリア・オカシオコルテスなどがいる。

コロラド州しゅう選出せんしゅつの民主党みんしゅとう女性じょせい下院かいん議員ぎいん、ダイアナ・デゲットは当選とうせん12回かいのベテランだ。子供こどもが2人にんいるが、初はじめて下院かいんに立候補りっこうほしたときは、6歳さいと2歳さいだった。「こんなに小ちいさい子供こどもがいるのにどうするの？」と周囲しゅういからさんざん聞きかれたという。「もし私わたしが男性だんせいだったら、そういうことは聞きかれなかったでしょうね」

立候補りっこうほには夫おっとの協力きょうりょくが欠かかせなかったと話はなす。「実際じっさい、立候補りっこうほの背中せなかを押おしてくれたのは夫おっとだった。私わたしが下院かいん議員ぎいんになったら、生活せいかつがどうなるかわかる？と夫おっとに聞きくと、『もちろん』と言いって、彼かれは実行じっこうしてくれた」

政治せいじ家かは夜よるの会合かいごうも多おおいが、7時じまではベビーシッターを頼たのみ、主おもに夫おっとが早はやく帰宅きたくしていたという。仕事しごとと生活せいかつの両立りょうりつだけではない。選挙せんきょや政治せいじには多おおくのお金かねがかかるが、「実感じっかんとして、男性だんせいのほうが資金しきんを集あつめやすいと思おもう」。

日本にっぽんではどうだろう。朝日新聞あさひしんぶんが15年ねんに全ぜん女性じょせい衆院しゅういん議員ぎいんを対象たいしょうに調査ちょうさした時ときは「女性じょせいの立候補りっこうほを阻はばむものは何なにか」という問とい（選択せんたく式しき・複数ふくすう回答かいとう可か）に対たいし、約やく半数はんすうが「育児いくじや介護かいごとの両立りょうりつ」を挙あげ、次ついで「家族かぞく・親族しんぞくの反対はんたい」「金銭きんせん的てきな問題もんだい」「男性だんせい中心ちゅうしんの地域ちいき社会しゃかい」だった。女性じょせいの政治せいじ進出しんしゅつを阻はばむ壁かべは国くにが違ちがっても同おなじようだ。

■権力けんりょくより「やりたいこと」

スザンヌ・ボナミチはオレゴン州しゅう選出せんしゅつの民主党みんしゅとう下院かいん議員ぎいんで現在げんざい5期き目めだ。下院かいんに進出しんしゅつする前まえの州しゅう議会ぎかい議員ぎいん時代じだいには、「女性じょせいというだけで有権者ゆうけんしゃや政治せいじ家かから話はなしを聞きいてもらえないということもあった」という。女性じょせいが政治せいじに関かかわることのメリットを、「もちろん例外れいがいもあるけれど、男性だんせいのほうが政治せいじ家かとしての肩書かたがきや立場たちば、権力けんりょくを求もとめる人ひとが多おおく、女性じょせいのほうが、より『政策せいさくとしてやりたいこと』へのこだわりが強つよいように思おもえる」と話はなす。同時どうじに、「私わたしを女性じょせいだからというだけで選えらんでほしくない。政策せいさくで判断はんだんして投票とうひょうしてほしい」と強調きょうちょうした。

米国べいこくの特徴とくちょうは、政治せいじ家かになりたい人ひとや女性じょせい議員ぎいんを支援しえんする民間みんかんの活動かつどうが非常ひじょうに盛さかんなことだ。その代表だいひょう格かくが1985年ねんに設立せつりつされたNPO「エミリーズリスト」だ。

寄付きふを募つのって、政治せいじ家かに立候補りっこうほしたい女性じょせいに配くばり、選挙せんきょ活動かつどうの仕方しかたなども教おしえる。これまでに女性じょせいの上院じょういん議員ぎいん26人にん、下院かいん議員ぎいん150人にん、知事ちじ16人にん、州しゅう議会ぎかい議員ぎいんなど地域ちいきの政治せいじ家か約やく1100人にんが当選とうせんするのを支援しえんしてきた。

エミリーズリストによれば、トランプ政権せいけんになってから女性じょせいの政治せいじへの関心かんしんは飛躍ひやく的てきに高たかまっているという。たとえば2016年ねんの上下院じょうかいんの選挙せんきょに向むけて立候補りっこうほを考かんがえている女性じょせいからの問といあわせは920件けんだったのが、18年ねんの中なか間あいだ選挙せんきょの際さいは4万まん6000件けんだった。また、立候補りっこうほする女性じょせいを応援おうえんしようという動うごきも強つよく、18年ねんの中なか間あいだ選挙せんきょの際さいは実じつに1億おく1000万まんドル（約やく120億おく円えん）の寄付きふが集あつまった。

エミリーズリストが今年ことし10月がつ、オハイオ州しゅうクリーブランドで開ひらいた政治せいじ家かになりたい女性じょせい向むけのトレーニングセッションをのぞいてみた。昨年さくねんの中なか間あいだ選挙せんきょで落選らくせんして次回じかいも立候補りっこうほを決きめている人ひとから、漠然ばくぜんと将来しょうらい的てきに政治せいじに関かかわりたいと考かんがえている人ひとまで、20人にん弱じゃくが参加さんかしていた。

まず基礎きそ的てきな知識ちしき、たとえば立候補りっこうほを考かんがえている地域ちいきの徹底的てっていてきな調査ちょうさやコストの見積みつもりが必要ひつようなことなどの講義こうぎがあった。続つづいて、どうやって「自分じぶん」という人間にんげんを有権者ゆうけんしゃに売うり込こむかの実践じっせんトレーニング。政治せいじに飛とび込こみたいと思おもった個人こじん的てきな動機どうきを地域ちいきや国くに、世界せかいの状況じょうきょうと関連かんれんさせ、3分ふん以内いないにまとめる練習れんしゅうをする。

■ティーンがリーダーシップを

大人おとなばかりではない。女子じょし中高生ちゅうこうせいを対象たいしょうに、声こえをあげることや、リーダーシップを教おしえるプログラムも多おおくある。前出ぜんしゅつのデゲットもボナミチも口くちをそろえて「ティーンの女性じょせいがリーダーシップを身みにつけ、自信じしんをつけることが必要ひつようで、ひいては女性じょせいが政治せいじに関心かんしんを持もち、進出しんしゅつすることになる」と強調きょうちょうしていたが、それに沿そうものだ。

たとえば、オレゴン州しゅうのポートランド州立しゅうりつ大学だいがくでは、14年ねんから女子高じょしこう生せい向むけのリーダーシッププログラムを行おこなっている。毎年まいとし100人にんが参加さんかし、イベントの企画きかく、実現じつげんなどを通つうじてスキルやマインドを養やしなう。プログラム後ごには、「男子だんしの中なかでも気後きおくれしないで、勇気ゆうきを持もって発言はつげんしたり、行動こうどうしたりすることができるようになった」「クラスや生徒せいと会かいの役員やくいんになった」といった声こえも多おおく寄よせられているという。