涙なみだは流ながさない、どんな状況じょうきょうでも　フォトグラファーが間近まぢかで見みたパラアスリート

スポーツジムで、天井てんじょうからつるされた輪わを支ささえに懸垂けんすいをしているのは、チェコ出身しゅっしんのズデニェク・サフラネク（38）だ。2003年ねん、自動車じどうしゃ修理しゅうり工場こうじょうで仕事しごと中ちゅうに、重おもさ1.5トンの自動車じどうしゃ搭載とうさい用ようのプラットフォームが身体しんたいに落下らっかする事故じこにあった。この事故じこで脊髄せきずいを損傷そんしょうし、車椅子くるまいす生活せいかつを余儀よぎなくされることになった。

ほどなくして、サフラネクは医師いしの勧すすめもありスポーツに挑戦ちょうせんすることにした。手てでペダルをこぐハンドサイクル、ボクシング……。様々さまざまなスポーツに興きょうじ、どの競技きょうぎでも驚おどろくほどの才能さいのうを発揮はっきした。特とくにアイスホッケーはパラリンピックに3回かい出場しゅつじょうし、代表だいひょうチームのキャプテンも務つとめた。

チェコの写真しゃしん家かマイケル・ハンク（47）は「献身けんしん的てきに支ささえた家族かぞくにも焦点しょうてんを当あてたかった」という。パートナーと息子むすこ、2人ふたりの娘むすめとの日常にちじょうの光景こうけいをおさめた。一連いちれんの写真しゃしんには、息子むすこをひざの上うえに乗のせ、娘むすめを保育園ほいくえんに送おくる様子ようすも写うつされている。

40歳さいで写真しゃしんを撮とり始はじめたハンクは、長期ちょうきにわたって被写体ひしゃたいを追おうスタイルが評価ひょうかされ、国内外こくないがいで数々かずかずの賞しょうを獲得かくとくしている。「色彩しきさいは、見みる人ひとにとって最もっとも重要じゅうようなテーマである感情かんじょうから注意ちゅういをそらすだけ」と白黒しろくろ写真しゃしんにこだわる。

サフラネクは18年ねん、ケガの傷痕きずあとが開ひらく災難さいなんに見舞みまわれた。傷口きずぐちの内部ないぶから骨ほね片へんが落おちてくるのを見みて、耐たえがたい痛いたみと恐怖きょうふに打うちのめされた。自殺じさつ願望がんぼうが芽生めばえたこともあったという。あるインタビューで窮状きゅうじょうを訴うったえると、手術しゅじゅつを申もうし出でる医者いしゃが現あらわれ、資金しきん援助えんじょの声こえも広ひろがった。ハンクは「彼かれはどんな状況じょうきょうに陥おちいっても決けっして涙なみだを流ながさず、誰だれよりもハードな練習れんしゅうを課かした。強つよい意志いしがあれば、素晴すばらしい活躍かつやくができると伝つたえたかった」と話はなす。

■障害しょうがい者しゃスポーツの歴史れきし

身体しんたい障害しょうがいや知的ちてき障害しょうがいなどの障害しょうがいがある人ひとが行おこなうスポーツで、既存きそんのスポーツを基もとにしたものが多おおい。1948年ねん、ロンドン五輪ごりんに合あわせて第だい2次じ世界せかい大戦たいせんでケガをした兵士へいしのリハビリのためにスポーツ大会たいかいを開ひらいたのが起源きげんとされるパラリンピックは、最高峰さいこうほうの国際こくさい大会たいかいだ。

東京とうきょうで来年らいねん開ひらかれる予定よていのパラリンピックには、160を超こえる国くに・地域ちいきから4400人にんの選手せんしゅが参加さんかする見通みとおしだ。車椅子くるまいすを用もちいた競技きょうぎは、バスケットボールやラグビー、フェンシングなどが行おこなわれることになっている。（本間ほんま沙織さおり）