おしゃれな人ひとを無む許可きょかで撮影さつえい、SNS投稿とうこう　中国ちゅうごくの「当あたり前まえ」を熊くま江こう琉衣さんが解説かいせつ

こんにちは。モデルやタレントをしている中国ちゅうごく出身しゅっしんの熊くま江こう琉衣（るい）です。「チャイナ娘むすめくまちゃん」の名前なまえでYouTuberとしても活動かつどうしています。

今日きょうは、中国人ちゅうごくじんの「自己じこアピール力りょく」について紹介しょうかいしたいと思おもいます。

私わたしのふるさとは四川しせん省しょうです。中心ちゅうしん都市としの成都せいとには、ある有名ゆうめいなスポットがあります。「春はる熙路」という、オシャレな繁華はんか街がいです。

その中なかでも「太古たこ里さと」という商業しょうぎょう地区ちくには、日本にっぽんでいう銀座ぎんざのようなオシャレなショッピングモールがあって、特とくに流行りゅうこうに敏感びんかんな若わかい男女だんじょの足あしが向むく場所ばしょです。

ここではカメラを携たずさえた人々ひとびとが、路上ろじょうでおしゃれな人ひとや、スタイルがいい良よい男女だんじょを見みつけたら、動画どうがや写真しゃしんを勝手かってに撮影さつえいし、ソーシャルメディアなどに投稿とうこうしています。

これは「街まち拍はく」と呼よばれる行為こういで、日本語にほんごにすると「街中まちじゅうスナップ」といったところでしょうか。

TikTokで #中国ちゅうごく街がい拍はくと検索けんさくすると、約やく150M回かい（1.5億おく回かい)も視聴しちょうされていることがわかります！中国ちゅうごく語ご圏けんの国くにではいかに人気にんきの高たかい「コンテンツ」になっているかということがわかってもらえるのではないでしょうか。

ただ、TikTokは中国ちゅうごく国内こくないでは使用しようできないため、TikTokの中国ちゅうごく版ばん「抖音（ドウイン）」の中なかで、#街まち拍はくというワードで検索けんさくしてみたところ、再生さいせい回数かいすうの多おおいケースでは何なん億おく回かいにも達たっしています。中なかでも、#太古たいこ里さと街がい拍はくは最もっとも多おおい一ひとつです。成都せいとがいかに中国ちゅうごくの街中まちじゅうスナップでも人気にんきがあるスポットなのかがわかります。

こうした動画どうがや写真しゃしんに寄よせられるコメントも、日本にっぽんの皆みなさんからしたら驚おどろきがあるでしょう。「自分じぶんを見みつけた！」「女優じょゆうの○○さんだ！！」「成都せいとの人ひとたちはこんなにオシャレなの?」「2枚まい目めのは誰だれ！？」などなど、ほとんどが好意こうい的てきなコメントだからです。

ここで日本にっぽんと中国ちゅうごくのプライバシーに対たいする感覚かんかくの違ちがいを感かんじざるを得えません。なにせ勝手かってに撮影さつえいして許可きょかなくソーシャルメディアに投稿とうこうするのですから、日本にっぽんであれば「盗ぬすめ撮つまみ」やプライバシー侵害しんがいと見みなされ、炎上えんじょうし、訴うったえられかねないです。

実際じっさい、この太古たいこ里さとに行いったことがある中国人ちゅうごくじんの友人ゆうじんは「バズーカみたいなレンズのカメラで狙ねらわれてちょっと怖こわい」と話はなしていたので、カメラマンの装備そうびも「ガチ」です。中なかには街まちゆく美女びじょを堂々どうどうとスマホで盗ぬすめ撮うつする人にんも多おおいとか。

日本人にっぽんじんからしたら「え？勝手かってに写真しゃしん撮とるの？」「しかもネットに載のせられちゃうの？」と心配しんぱいになるでしょう。

しかし、中国ちゅうごくでは盗ぬすめ撮うつされても怒おこらず、むしろ「写うつされたい」と思おもってる中国人ちゅうごくじんの方ほうが多おおいのです。

多おおくの人ひとは、「盗ぬすめ撮うつされるぐらい私わたしはステキ」とまんざらでもない感かんじです。中なかには露出ろしゅつ度どを高たかめたいソーシャルメディアの「インフルエンサー」たちが、わざわざ撮影さつえいされるよう行いくことも多々たたあります。

「街まち拍はく」は「人々ひとびとに認みとめられたい」「自分じぶんをアピールしたい」という気持きもちが強つよく、プライバシーに関かんしてそこまで敏感びんかんではない中国人ちゅうごくじんだからこそ成なり立たつ「コンテンツ」とも言いえるでしょう。

実際じっさい、中国ちゅうごくでは自分じぶんの顔かおや名前なまえがネット上じょうに掲載けいさいされることに抵抗ていこう感かんがないという人ひとは少すくなくないです。

その反面はんめん、日本にっぽんではプライバシー意識いしきが全体ぜんたい的てきに中国ちゅうごくより強つよいため、ほかの人ひとの写真しゃしんや動画どうがにすら映うつりたがりません。

それは「写うつったら恥はずかしい」「個人こじん情報じょうほうが勝手かってに拡散かくさんされてるみたいでプライバシーの侵害しんがいを感かんじる」という意見いけんがあるというのを、日本にっぽんの友ともだちから聞きいたことがあります。

確たしかに私わたし自身じしん、自分じぶんの顔かおや住所じゅうしょが知しらないうちに、ネットのサイトなどに載のるのはいい気きがしません。

一方いっぽう、日本にっぽんの知人ちじんの中なかには、「ほかの人ひとがせっかく写真しゃしんを撮とってるのに、そこに自分じぶんが写うつってしまうと景色けしきの邪魔じゃまになる」と考かんがえて、写うつり込こまないようにしてるという人ひともいました。

どこまでも相手あいての気持きもちに立たって考かんがえることができるのは、実じつに日本人にっぽんじんらしいと思おもいました。

しかし、中国人ちゅうごくじんは先さきほども紹介しょうかいしたように、自分じぶんの顔かおが写真しゃしんに写うつり込こむことはもちろん、顔かおや名前なまえがネット上じょうに掲載けいさいされることにも抵抗ていこう感かんがないため（ただし、ネガティブな意味合いみあいがなければ、の話はなしです）、日本にっぽんに観光かんこうに来きている中国人ちゅうごくじんは、動画どうがを撮とっている間あいだに他人たにんの顔かおや誰だれかの家いえが写うつり込こんでも、ちっとも気きにしないのです。

プライバシーより便利べんりさと承認しょうにん欲求よっきゅう

それではなぜ、中国人ちゅうごくじんはプライバシーに関かんして「鈍感どんかん」なのでしょうか。大おおきな理由りゆうは二ふたつあると私わたしは考かんがえています。

まず一ひとつ目めは「効率こうりつを重視じゅうしする」からです。

中国ちゅうごくでは日々ひびの生活せいかつを便利べんりにするための各種かくしゅサービスやデジタル上じょうでの手続てつづきのため、個人こじんの情報じょうほうが政府せいふから会社かいしゃにいたるまで利用りようされています。

自分じぶんの情報じょうほうが他者たしゃにわたり、監かん視しされてる状態じょうたいであっても、自分じぶんの状況じょうきょうがより便利べんりになるのであれば、むしろプライバシー情報じょうほうを喜よろこんで「差さし出だす」のです。

例たとえば、買かい物ものの時とき、いつ、どのショップで、いくら買かって、どこに届とどくか、という個人こじん的てきな情報じょうほうを会社かいしゃに「記録きろく」され、「監視かんし」されている訳わけですが、売うり手てのミスや不正ふせい行為こういによって被害ひがいを被こうむることを防ふせげるため、むしろそこに安心あんしん感かんを覚おぼえます。

中国人ちゅうごくじんにとっては、「より便利べんりな状態じょうたいになるかどうか」が情報じょうほうを公開こうかいするかの検討けんとうラインになります。

その反面はんめん、日本人にっぽんじんは便利べんりさよりも「個人こじんの情報じょうほうはもっと保護ほごされるべきだ」という、権利けんりの面めんを重視じゅうしします。ここには、プライバシーは利便りべん性せいや効率こうりつ性せいを犠牲ぎせいにしても守まもるべきものだ、という考かんがえがあるのではないでしょうか。

中国ちゅうごくでは個人こじん情報じょうほうが流出りゅうしゅつしたとしても、迷惑めいわくメールが来きたり、勧誘かんゆう電話でんわが来きたりするぐらいだろう、と考かんがえる人ひとが多おおいのです。

個人こじん情報じょうほうが「本来ほんらいどうあるべきか」ということよりも、「どうやったら、今いまの状況じょうきょうを便利べんりにできるか、効率こうりつを高たかめられるか」ということを意識いしきします。つまり、頭あたまの中なかで常つねにメリットとデメリットを天秤てんびんにかけ、自分じぶんにとって最もっとも有利ゆうりなバランスの取とり方かたをします。それが中国ちゅうごくでは当あたり前まえの考かんがえ方かたになっています。

また、中国ちゅうごくでは至いたる所ところに監視かんしカメラがあり、スマホのアプリも政府せいふが関かかわっていたり、「監視かんし」され慣なれているという点てんもあると思おもいます。政府せいふの関与かんよも中国人ちゅうごくじんの考かんがえ方かたに大おおきな影響えいきょうを与あたえていることは否定ひていできないでしょう。

二ふたつ目めの理由りゆうは、根本こんぽん的てきに中国人ちゅうごくじんは「誰だれかに認みとめられたい」「自己じこアピールをしたい」という欲求よっきゅうを持もってるからだと思おもいます。

日本にっぽんでは、そういう考かんがえはむしろ、「謙虚けんきょさがない」とされて嫌いやがられますが、中国ちゅうごくは逆ぎゃくです。小ちいさい頃ころを思おもい返かえすと、例たとえば中国ちゅうごくの小学校しょうがっこうでは常つねに手てを挙あげる人ひとが評価ひょうかされてきました。テストも点数てんすうが高たかい人ひとほど先生せんせいに褒ほめられ、周まわりから羨望せんぼうの眼差まなざしを向むけられました。そしてクラスの中なかで「組長くみちょう（グループのリーダー)」「班長はんちょう（クラスのリーダー)」 といった役職やくしょくにつくことに、全すべてをかけていた人ひとも多おおいです（私わたしもその一人ひとりでした)。

みんな評価ひょうかをされたいから手てを挙あげる、みんなが挙あげるので、自分じぶんも負まけじと挙あげる――という考かんがえです。

日本にっぽんでは積極せっきょく的てきに手てを挙あげる、という学生がくせいは少すくないでしょう。どちらも「同調どうちょう圧力あつりょく」ではあるけど、やっていることはまったく逆ぎゃくです。

中国ちゅうごくではみんな、そのように自己じこアピールすることに何なんの疑問ぎもんも抱だいていませんでした。そして何なにより、評価ひょうかしてもらえると、進学しんがくする上じょうで優遇ゆうぐうされるケースもあります。そりゃ学歴がくれき重視じゅうしの中国ちゅうごくです。みんな競きそうように自己じこアピールするでしょう。

今いま思おもえば、中国ちゅうごくでは小ちいさい頃ころから「評価ひょうかされるために積極せっきょく的てきに動うごくこと」を教おしえられていたのだと思おもいます。それは大人おとなになってからも、中国人ちゅうごくじんの奥深おくふかいところに根付ねついていて、公園こうえんでは「公開こうかいカラオケ」をするおじいちゃんやおばあちゃんがたくさんいて、広場ひろばには集団しゅうだんでダンスをしたり、ヨガをしたりする女性じょせいたちであふれかえっています。

このように、プライバシー問題もんだいにおいて中国ちゅうごくと日本にっぽんは根本こんぽん的てきに違ちがう部分ぶぶんがありますが、「自己じこアピールが好すき」という中国人ちゅうごくじんの要素ようそが私わたしの中なかに根付ねついてるからこそ、芸能げいのう界かいという活動かつどうの場ばを選えらんだのかもしれません。

なにしろ自己じこアピールをし続つづけることにピッタリな世界せかいだからです。より自分じぶんを知しってもらうことが、自分じぶんを、そして中国ちゅうごくを好すきになってもらうきっかけ作づくりになるからです。

今いまは自己じこアピール好すきに育そだててくれた祖国そこくに感謝かんしゃしつつ、この世界せかいで生いきていけるように今後こんごも自己じこアピール力りょくを磨みがきたいと思おもいます。

この文章ぶんしょうを読よんでくれた皆みなさんが、少すこしでも中国人ちゅうごくじんに興味きょうみを持もってもらえたらうれしいです。