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AIソフトがサッカーの常識変えた 韓国発ベンチャー開発、ACミランから大学まで:朝日新聞GLOBE+
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AIソフトがサッカーの常識じょうしきえた 韓国かんこくはつベンチャー開発かいはつ、ACミランから大学だいがくまで

World Now 更新こうしん 公開こうかい
Beproの専用カメラを使ったトラッキング分析。AIを使い、選手間の距離も測定できる
Beproの専用せんようカメラを使つかったトラッキング分析ぶんせき。AIを使つかい、選手せんしゅあいだ距離きょり測定そくていできる=Bepro提供ていきょう

野球やきゅうやゴルフなど選手せんしゅうご方向ほうこうがある程度ていど予測よそくできる競技きょうぎちがい、サッカーは、ボールもひとえずうごつづけるため、客観きゃっかんてき分析ぶんせき評価ひょうかむずかしいといわれてきた。

それを可能かのうにしたのは、ある映像えいぞう分析ぶんせきソフトだ。

開発かいはつしたのは、2015ねん韓国かんこく創業そうぎょうした「Bepro」(ビプロ)。

ビプロのソフトでは、シュート、ドリブル、パス、クロスといった19のうごきを映像えいぞうからAIをもちいて識別しきべつする。

ワールドカップカタール大会の試合で三笘薫がボールを受けた位置。左サイドに集まっていることがわかる
ワールドカップカタール大会たいかい試合しあいさん笘薫がボールをけた位置いちひだりサイドにあつまっていることがわかる=Bepro提供ていきょう

ベストイレブン「印象いんしょう」ではなくデータで選出せんしゅつ

これまでひとつひとつかぞえていた作業さぎょうをAIにおぼませ、パスやシュートの本数ほんすうかぎらず、デュエル(1たい1の攻防こうぼう)の勝率しょうりつ平均へいきん位置いち情報じょうほうなど大量たいりょう項目こうもくを1にちらずで解析かいせきできるようになった。

専用せんようカメラで選手せんしゅあいだ距離きょり選手せんしゅのトップスピードも計測けいそくできる。欧州おうしゅうなどのトップクラブでは練習れんしゅうじょうでもDFラインあいだ距離きょり修正しゅうせいなどに使つかっているという。

ビプロの技術ぎじゅつは、これまでのサッカーの大会たいかいの「常識じょうしき」もえた。

ワールドカップ、カタール大会のクロアチア戦で後半、ドリブルする三笘薫
ワールドカップ、カタール大会たいかいのクロアチアせん後半こうはん、ドリブルするさん笘薫=2022ねん12月5にち伊藤いとう進之介しんのすけ撮影さつえい

決勝けっしょうでのヘディングゴールはインパクトがおおきかった」

「ボールタッチにセンスをかんじる」

これまで、サッカーの大会たいかいにおける優秀ゆうしゅう選手せんしゅ(ベストイレブン)はこうした関係かんけいしゃの「主観しゅかん」でまっていた。

それが、今年ことし2~3がつにあった大学だいがくサッカーの大会たいかい変化へんかきた。プロへの登竜門とうりゅうもん「デンソーカップ」。そのベストイレブンの受賞じゅしょう理由りゆうには、AIがはじきだしたデータがならんだ。

「パス成功せいこうすう78.3かいは1

「インターセプト7.5かいで、主要しゅよう守備しゅび指標しひょう大会たいかい上位じょうい

きっかけは、ある大会たいかい優勝ゆうしょうチームから10にん優秀ゆうしゅう選手せんしゅえらばれたこと。

ひとの『印象いんしょう』ではなく、客観きゃっかんてきなデータでしめせないかとかんがえた」と全日本ぜんにほん大学だいがくサッカー連盟れんめい櫻井さくらいとも理事りじはいう。

そのデータをしたのは、ビプロのソフトだ。

ビプロの竹田たけだ英司えいじ日本にっぽん統括とうかつマネジャーは「わかいうちからデータを習慣しゅうかんをつけ、サッカーをふか理解りかいさせたい」と育成いくせい年代ねんだいへの普及ふきゅうにもちからをいれる。

攻守こうしゅえをはやくしろ」

はしりがりない」

育成いくせい現場げんばではこれまで、こんな「まり文句もんく」がっていた。データがあることで、たとえば、

後半こうはん30ふん以降いこう運動うんどうりょうちている」というせいかけがまれる。

データ活用かつよう選手せんしゅ強化きょうか 欧州おうしゅう先行せんこう韓国かんこく日本にっぽんでも

選手せんしゅうごきを追跡ついせきデータとしてかすみは、2014ねんのワールドカップで優勝ゆうしょうしたドイツが採用さいようし、欧州おうしゅうでデータ活用かつよう着々ちゃくちゃくすすむ。韓国かんこくではビプロが協会きょうかい連携れんけいし、15~18さい以下いか強化きょうか参画さんかく。パフォーマンス評価ひょうかやデータ指標しひょうれた。

ドイツのフランクフルト、イタリアのACミラン、横浜よこはまF・マリノスや浦和うらわレッズ……。20カ国かこくやく1000チームがビプロを利用りようする。日本にっぽん大学だいがくでも15こう採用さいようする。

試合しあい選手せんしゅたちのスマホに大量たいりょうのデータが共有きょうゆうされる─。ビプロのソフトを導入どうにゅうした九州産業大きゅうしゅうさんぎょうだい福岡ふくおか)サッカーたずねると、欧州おうしゅうのトップクラブでは普通ふつう光景こうけいひろがっていた。

試合しあいにスマホを今日きょうはパスの成功せいこうりつたかかった、といったはなしをするようになりました」。鷹巣たかのすただしまれ主将しゅしょうった。

データ分析などに取り組む九州産業大サッカー部
データ分析ぶんせきなどに九州産業大きゅうしゅうさんぎょうだいサッカー=2023ねん5がつ福岡ふくおかひがし照屋てるやけん撮影さつえい

きゅうさんたい昨季さくき、4大会たいかいぶりに全日本ぜんにほん大学だいがく選手権せんしゅけん出場しゅつじょうした九州きゅうしゅう中堅ちゅうけんこう浜吉はまきち正則せいそく監督かんとく欧州おうしゅう指導しどうしゃライセンスもつ。

本田ほんだけいたすく実質じっしつオーナーをつとめたオーストリアのSVホルンで監督かんとくつとめ、欧州おうしゅう現場げんばかんじた持論じろんは「選手せんしゅ客観きゃっかんてき指標しひょう理解りかいすることでびる」。ビプロだけでなく、GPSを使つかって走行そうこう距離きょり測定そくていするなどデータをもちいた戦術せんじゅつ分析ぶんせきちからそそいできた。

一方いっぽうで、データの数値すうち向上こうじょうだけをもとめても試合しあいにはてない、という。

たとえば、「はし本数ほんすうやそう」とっても「なにのためにはしるのか、自分じぶんたちがこういうプレーをしたいからはしるという原則げんそく理解りかいしていなければ、意味いみがない」と浜吉はまきち監督かんとく

九州産業大の選手たちのスマホには、試合のデータが共有されている
九州産業大きゅうしゅうさんぎょうだい選手せんしゅたちのスマホには、試合しあいのデータが共有きょうゆうされている=2023ねん5がつ福岡ふくおかひがし照屋てるやけん撮影さつえい

「パスの本数ほんすうおおく」とこえをかけても、相手あいてゴールからとおいDFラインあいだのパスがおおければ、てんむすびつかない。「アグレッシブなサッカーをしたいから、DFラインあいだではなく、ななめのパスをやそう、と目的もくてきしめして数字すうじせることで説得せっとくりょくる」

欧州おうしゅうのトップクラブでは、理想りそうのプレーをAIに学習がくしゅうさせるシステムの開発かいはつすすむ。AIがはじきしたモデルを目指めざし、戦術せんじゅつ個人こじんのパフォーマンスをげていく。そんな循環じゅんかんまれるかもしれない。