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苦戦するウクライナ軍 弾薬消費はロシアの6分の1?欧米の供与で兵器実験場化の懸念も:朝日新聞GLOBE+
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苦戦くせんするウクライナぐん 弾薬だんやく消費しょうひはロシアの6ぶんの1?欧米おうべい供与きょうよ兵器へいき実験じっけんじょう懸念けねん

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弾薬を取り扱うウクライナ兵
弾薬だんやくあつかうウクライナへい=2022ねん7がつ28にち、ウクライナ北東ほくとうハリコフしゅう、ロイター

――ウクライナをめぐ現在げんざい戦況せんきょうをどうみていますか。

ウクライナぐんは、弾薬だんやく圧倒的あっとうてき不足ふそくしています。部隊ぶたい損耗そんこうおおきいようです。ウクライナぐんは「積極せっきょく防衛ぼうえい」をとなえていますが、実際じっさいには防衛ぼうえいてっせざるをない状況じょうきょうです。ロシアぐん人員じんいん装備そうび補充ほじゅうすすめていて、補充ほじゅうのペースはウクライナぐん上回うわまわっています。ロシアぐんはる攻勢こうせいけて着々ちゃくちゃく準備じゅんびをしているというのが現状げんじょうです。

――ロシアぐん攻勢こうせいはどのようなうごきになるでしょうか。

プーチン大統領だいとうりょうぐんたいしてドネツク、ルハンスクのウクライナ東部とうぶ2しゅう完全かんぜん占領せんりょうめいじています。すでにルハンスクしゅうはほぼ掌握しょうあくしていますが、ドネツクしゅうの3ぶんの1程度ていど依然いぜん抵抗ていこうつづけています。

ロシアは東部とうぶ2しゅうくわえて、ザポリージャ、ヘルソンの南部なんぶ2しゅうの「併合へいごう」も宣言せんげんしていますが、南部なんぶ2しゅうはロシアからの補給ほきゅうせんながく、かずすくないため、戦線せんせん維持いじするのが簡単かんたんではありません。ロシアはまず、ドネツクしゅう完全かんぜん制圧せいあつ目指めざすために、この正面しょうめんから攻勢こうせいるでしょう。

――ロシアぐんのドネツクしゅうでの攻撃こうげき経路けいろをどう予測よそくしますか。

おそらく、制圧せいあつしたアウディーイウカとバフムートを基点きてんにしてぐんすすめようとするでしょう。

アウディーイウカのつぎ交通こうつう要衝ようしょう、ポクロフスクをねらい、さらにきたすすんでドネツクしゅうさかい目指めざすとおもいます。バフムートからすすむロシアぐんは、コスチャンチニウカ、さらにクラマトルスク、スリャビャンスクを攻撃こうげきしようとかんがえているとおもいます。

これにたいし、ウクライナぐんいま、アウディーイウカから撤退てったいしましたが、近郊きんこうかわ防御ぼうぎょせんにしてたたかっています。ここからポクロフスクまでひろがる丘陵きゅうりょう地帯ちたいでロシアぐんめる必要ひつようがあります。また、バフムート正面しょうめんでは、ウクライナぐん近郊きんこうのチャシプヤールに要塞ようさいつくり、ロシアぐんがコスチャンチニウカにかうのを阻止そししています。

ロシア側の激しい攻撃を受けるウクライナ東部バフムートのドローン映像
ロシアがわはげしい攻撃こうげきけるウクライナ東部とうぶバフムートのドローン映像えいぞう=2023ねん4がつ、Adam Tactic Group/Handout via REUTERS

――ウクライナぐんがロシアぐん攻撃こうげきめ。攻勢こうせいうつるためにはなに必要ひつようでしょうか。

ドネツク、ルハンスクの東部とうぶ2しゅうはもともとしんロシア勢力せいりょくおおく、またロシア国境こっきょうせっしているためにウクライナぐん反転はんてん攻勢こうせい容易よういではありません。むしろ、ザポリージャ、ルハンスクの南部なんぶ2しゅう攻勢こうせいをかける可能かのうせいがあります。

現在げんざい、ウクライナの戦場せんじょうりょうぐんによる陣地じんちいになっており、だい1世界せかい大戦たいせんのような消耗しょうもうせん様相ようそうせています。ドローン(無人むじん)も大量たいりょう投入とうにゅうされ、兵士へいし犠牲ぎせいえています。

ウクライナぐんがロシアぐん攻撃こうげき阻止そしし、攻勢こうせい転移てんいするためには、弾薬だんやくくわえ、防空ぼうくう兵器へいき必要ひつようです。ロシアぐん最近さいきん戦闘せんとう搭載とうさいした滑空かっくう誘導ゆうどうばくだんをウクライナぐん対空たいくうミサイルの射程しゃていがいから発射はっしゃして攻撃こうげきしています。迎撃げいげきするため、射程しゃてい70キロ以上いじょう対空たいくう兵器へいき必要ひつようになります。

また、攻勢こうせいのためには航空こうくう優勢ゆうせい獲得かくとく必要ひつようです。西側にしがわ諸国しょこく支援しえん表明ひょうめいしているF16戦闘せんとういちにちはや実戦じっせん配備はいび必要ひつようです。いずれにしても最大さいだい支援しえんこくである米国べいこく支援しえん不可欠ふかけつになります。

――シルスキーそう司令しれいかんもウクライナ国営こくえい通信つうしんとのインタビューで、ミサイルなど防空ぼうくう兵器へいき供与きょうようったえていました。

いまかえると、ウクライナぐんが2022ねん10がつ1にちにドネツクしゅう要衝ようしょうリマンをロシアぐんから奪還だっかんしたときがポイントでした。当時とうじは、「スロビキン・ライン」とわれるロシアぐん防御ぼうぎょせんはすべて完成かんせいしていませんでした。あのまま、ウクライナぐん機動きどうせん利点りてんかして攻勢こうせいていれば、ドネツクしゅうもどすことができたのかもしれません。

ゼレンスキー大統領(中央左)に軍事作戦を説明するシルスキー陸軍司令官(中央右)
ゼレンスキー大統領だいとうりょう中央ちゅうおうひだり)に軍事ぐんじ作戦さくせん説明せつめいするシルスキー陸軍りくぐん司令しれいかん中央ちゅうおうみぎ)=2023ねん11月30にち、ウクライナ北東ほくとうハルキウしゅうクピャンスク、ロイター

しかし、西側にしがわ諸国しょこく支援しえんすすまず、ウクライナぐん反転はんてん攻勢こうせいはじめたのは2023ねん6がつでした。西側にしがわ諸国しょこくには「ロシア国内こくない攻撃こうげきしたら、戦火せんかがNATO(北大西洋きたたいせいよう条約じょうやく機構きこう域内いきないおよんだり、ロシアの核兵器かくへいき使用しようまねいたりするかもしれない」というかんがえがあったのでしょう。

ウクライナの戦場せんじょうでは、高性能こうせいのうしん兵器へいき次々つぎつぎ投入とうにゅうされて、「新兵しんぺい実験じっけんじょう」ともしています。兵器へいき高性能こうせいのうにより、精度せいど破壊はかいりょく向上こうじょうし、市民しみん兵士へいし犠牲ぎせい飛躍ひやくてき増加ぞうかします。

わたし現役げんえきだった当時とうじみなみスーダンを視察しさつしました。そこで国連こくれんミッションのぐん関係かんけいしゃが「かつて、この地域ちいきでの民族みんぞく紛争ふんそう使つかわれていた武器ぶきやり弓矢ゆみやくらいだった。欧米おうべい大砲たいほう戦車せんしゃ機関きかんじゅうなどを供与きょうよし、武器ぶき高性能こうせいのうされたことで、被害ひがい格段かくだんおおきくなった」とかたっていました。ウクライナでもいま兵器へいき高性能こうせいのうによって人的じんてき物的ぶってき被害ひがい拡大かくだいするというおな悲劇ひげききているのです。