北朝鮮きたちょうせんのデジタル監視かんし技術ぎじゅつは「諸刃もろはの剣けん」？金きむ正ただし恩おん体制たいせいの延命えんめいになるか専門せんもん家かの見方みかたは

今回こんかいの調査ちょうさは、2021年ねんから2023年ねんにかけ、北朝鮮きたちょうせんメディアなどのオープンソースを中心ちゅうしんに行おこなわれた。北朝鮮きたちょうせんに住すむ100人にんの市民しみんにもき取きとり調査ちょうさを行おこなったという。

報告ほうこく書しょによれば、北朝鮮きたちょうせんはカメラや通信つうしん機材きざいなどハードウェアを中国ちゅうごくから輸入ゆにゅう。指紋しもんや掌紋しょうもん、静脈じょうみゃく、顔かおなどの認証にんしょうシステムなどのソフトウェアは、金きむ日成いるそん総合大学そうごうだいがくを中心ちゅうしんに国内こくないで開発かいはつしているという。

平壌ぴょんやんで開催かいさいされた2016年ねんIT成功せいこう展示てんじ会かいでは、顔かお認証にんしょうシステムを実演じつえんした。顔かお認識にんしきの精度せいどは99.8%だという。17歳さいになるとすべての北朝鮮きたちょうせん国民こくみんに支給しきゅうされる国民こくみん登録とうろく証しょうも紙かみから電子でんしカードへの切きり替かえが進すすんでいる。発行はっこう時じには住民じゅうみんの顔写真かおじゃしんと指紋しもん、血液けつえきを採取さいしゅするため、顔かお認証にんしょうや指紋しもん認証にんしょうなどに利用りようされる可能かのう性せいがある。

また、北朝鮮きたちょうせんでは最近さいきん、監視かんしカメラの設置せっちが進すすんでいる。政府せいふの建物たてもの、職場しょくば、中国ちゅうごくとの国境こっきょう沿ぞいの施設しせつ、学校がっこう、街頭がいとう、店舗てんぽなどに設置せっちされるカメラが増ふえている。大だい規模きぼな集会しゅうかいが開ひらかれる際さい、カメラが監視かんししているケースがあるという。

交差点こうさてんなどに設置せっちされる街頭がいとうカメラは10年ねんほど前まえから登場とうじょうした。2014年ねんに平壌ぴょんやん・金きむ日成いるそん広場ひろばの近ちかくで登場とうじょうし、2018年ねんに平城ひらじろ、2019年ねんに清きよし津つなどでそれぞれ設置せっちが確認かくにんされた。

北朝鮮きたちょうせんの科学かがく雑誌ざっしには、車両しゃりょうのナンバープレートの認識にんしきに関かんする論文ろんぶんがいくつか掲載けいさいされている。車両しゃりょうのナンバーを自動的じどうてきに登録とうろくするシステムを構築こうちくしている可能かのう性せいがあるという。北朝鮮きたちょうせんには自家用車じかようしゃを持もつという習慣しゅうかんはほとんどない。走はしっているのは公用こうよう車しゃか、ごく限かぎられた富裕ふゆう層そうが所有しょゆうしている車くるまだけだ。ウィリアムズ氏しはナンバー識別しきべつシステムについて「必要ひつようになれば、富裕ふゆう層そうの動うごきを監視かんしして取とり締しまる手段しゅだんとしても使つかえるだろう」と語かたる。

ただ、不都合ふつごうな点てんもある。ウィリアムズ氏しは「カメラは贈収賄ぞうしゅうわいの防止ぼうしに役立やくだつ」と語かたる。北朝鮮きたちょうせんでは様々さまざまな場所ばしょで賄賂わいろが社会しゃかいの潤滑油じゅんかつゆになっている。国境こっきょう地帯ちたいでの密輸みつゆを見逃みのがす対価たいかとして、病院びょういんで優先ゆうせん的てきに治療ちりょうしてもらう代かわりのお礼れいとして、政治せいじ集会しゅうかいや勤労きんろう動員どういんを逃のがれるための手段しゅだんとして、賄賂わいろは様々さまざまな場所ばしょで使つかわれている。特とくに、市場いちばなどでの副業ふくぎょうに手てを染そめられない公務員こうむいんや軍人ぐんじんたちにとって、賄賂わいろは生活せいかつするために欠かかせない手段しゅだんだ。

ウィリアムズ氏しは「金きむ正ただし恩おん総そう書記しょきは、取とり締しまり機関きかんへの食料しょくりょうや給与きゅうよの供給きょうきゅうを強化きょうかする必要ひつようがある。そうしなければ、取とり締しまり機関きかんの関係かんけい者しゃは賄賂わいろを受うけ取とるため、違法いほう行為こういを無視むしする方法ほうほうを見みつけ出だそうとするだろう」と語かたる。

「デジタル監視かんしが強化きょうかされれば、法律ほうりつ違反いはんや違法いほう行為こういが減へるかもしれない。でも、監視かんしが行いき過すぎた場合ばあい、富裕ふゆう層そうなどが金きむ正ただし恩おん氏しに反抗はんこうするかもしれない。間違まちがいなく、金きむ正ただし恩おん氏しは非常ひじょうに慎重しんちょうにバランスを取とらなければならないだろう」

北朝鮮きたちょうせんほど、「人ひとを使つかった監視かんし体制たいせい」の構築こうちくに成功せいこうした国くにはない。20～30世帯せたいごとで構成こうせいする人民じんみん班はんでは、班長はんちょうが常つねに各かく世帯せたいの動静どうせいを近ちかくの分ぶん駐ちゅう所しょ（派出所はしゅつじょ）などに届とどけ出でる。知しらない人間にんげんが現あらわれたらすぐに通報つうほうする。

国家こっか保衛やすえ省しょう（秘密ひみつ警察けいさつ）は別べつに担当たんとうする職場しょくばや地域ちいきごとに複数ふくすうの密告みっこく者しゃを持もっている。密告みっこく者しゃは職場しょくばや学校がっこうで変へんな動うごきがないか、報告ほうこくする義務ぎむを負おっている。複数ふくすうの密告みっこく者しゃの報告ほうこくが一致いっちすると、保衛やすえ省しょうの担当たんとう者しゃは取とり締しまりに動うごき出だす。

監視かんしカメラがない時代じだいでも、北朝鮮きたちょうせんで罪つみを犯おかすと、すぐに摘発てきはつされる事例じれいがほとんどだとされた。治安ちあん機関きかんが、地域ちいきの人間にんげん関係かんけいや特異とくいな行動こうどうについて常つねに報告ほうこくを受うけているからだ。

ウィリアムズ氏しも「コンピューターにうわさ話はなしの入力にゅうりょくをするのは難むずかしい。北朝鮮きたちょうせんではしばらく、人ひとによる監視かんし体制たいせいがデジタル監視かんしとともに生いき残のこるだろう」と語かたる。

北朝鮮きたちょうせんがデジタル監視かんし体制たいせいを完成かんせいさせるためには、まだいくつかの課題かだいが残のこされている。電力でんりょく難なんが解消かいしょうされていないため、カメラを設置せっちしても24時じ間あいだ稼働かどうできないケースがほとんどだろう。また、ウィリアムズ氏しによれば、全国ぜんこく的てきなデジタル監視かんし網もうを機能きのうさせるためには、大量たいりょうの情報じょうほうを処理しょりできる大だい容量ようりょうのコンピューターも必要ひつようになる。

ウィリアムズ氏しは「デジタル監視かんしが北朝鮮きたちょうせんの体制たいせいの安定あんていにつながるかどうか、いましばらく状況じょうきょうを見守みまもるしかない」と語かたった。