「頭あたまがいいリーダーほどマイクロマネジメントする」桃野ももの泰徳やすのり氏し、だめな上司じょうし像ぞうを語かたる

桃野もものさんは2021年ねんから、「桃野ももの泰徳やすのりの『話はなしは変かわるが』〜歴史れきしと経験けいけんに学まなぶリーダー論ろん」とのタイトルでコラムを執筆しっぴつ。証券しょうけん会社かいしゃ社員しゃいんや中堅ちゅうけんメーカーCFOなどの経験けいけんをもとに、会社かいしゃや組織そしきにおけるリーダーのあり方かたについて綴つづっている。そんな連載れんさいが新潮社しんちょうしゃ幹部かんぶの目めにとまり、「なぜこんな人じんが上司じょうしなのか」のタイトルで書籍しょせき化かが実現じつげんした。著書ちょしょは連載れんさいの記事きじと、新あらたに書かき下おろした文章ぶんしょうとで構成こうせいされている。

この日ひあったイベントのタイトルは、桃野もものさんの連載れんさいテーマや著書ちょしょの内容ないように合あわせて「ろくでもない上司じょうしとのつき合あい方かた」。桃野もものさんの編集へんしゅうを担当たんとうする関根せきね和弘かずひろ・GLOBE+編集へんしゅう長ちょうがき役きやくを務つとめた。上司じょうしの理想りそう像ぞうやダメな事例じれい、リーダーの心構こころがまえのほか、桃野もものさんの「話はなしは変かわるが」といった独特どくとくな書かき方かたの「誕生たんじょう秘話ひわ」など、話題わだいは多岐たきに渡わたった。2人ふたりの主おもなやり取とりは以下いかの通とおり。（以下いか、敬称けいしょう略りゃく）

「民間みんかん企業きぎょうにはリーダー教育きょういくがない」

関根せきね　GLOBE+ではリーダー論ろん、組織そしき論ろんをテーマに執筆しっぴつ頂いただいていますね。このテーマの原点げんてんはなんでしょうか？

桃野ももの　リーダー論ろん、組織そしき論ろんというのは、私わたしのライフワークとして「一いち丁目ちょうめ一いち番地ばんち」にしていこうと思おもっています。結局けっきょくのところ、私わたしが世よの中なかに問題もんだい提起ていきしたいことは「なぜリーダーはリーダー教育きょういくを受うけていないのにリーダーになるんだ」ということです。

学校がっこう教育きょういくではリーダー教育きょういくがありません。社会しゃかい人じんになって大だい企業きぎょうに入はいっても、管理かんり職しょく研修けんしゅうという名なの1、2週間しゅうかんの合宿がっしゅくのようなことはやるかもしれませんけれど、リーダー教育きょういくというものをお金かねと時間じかんをかけてやる会社かいしゃを、私わたしはほとんど知しりません。でもやがて社員しゃいんが年としを取とると、課長かちょう、部長ぶちょうになり、多おおくの部下ぶかを率ひきいるわけです。

私わたしが大和証券だいわしょうけん1年ねん目めのときのことですが、数字すうじを出だすように指示しじをしてきた部長ぶちょうに、「数字すうじの作つくり方かたを教おしえてください」と聞きいたことがあるんです。次つぎの瞬間しゅんかん、部長ぶちょうに「いいから俺おれが言いった通とおり、やりゃいいんだよ」と言いわれて、分厚ぶあつい顧客こきゃく台帳だいちょうで頭あたまをバンって殴なぐられたことがあります。これが脅おどして言いうことを聞きかせるという昭和しょうわのリーダーシップです。

ただ、部下ぶかをたたいて萎縮いしゅくさせたところで、成果せいかが絶対ぜったいに出でるものではないと気きがついたんですよね。

関根せきね　なるほど。

桃野ももの　そんな時とき、ご縁えんがあって自衛隊じえいたいの方ほうと知しり合あい、多おおくの知人ちじん、友人ゆうじんができたんです。話はなしをする中なかで、ふと「どうしたらあんな大だい組織そしきで部下ぶかを率ひきいて、命いのちをかけて戦たたかわせることができるんだろう」と疑問ぎもんに思おもって、色々いろいろと質問しつもんして深ふか掘ほりをしたら、分わかってきたことがたくさんあったんです。

例たとえば、印象いんしょう的てきなのは、自衛隊じえいたいなどは、幹部かんぶ自衛じえい官かんの初級しょきゅう幹部かんぶ、いわゆる一いち年生ねんせい幹部かんぶになるために「幹部候補生学校かんぶこうほせいがっこう」で、1年間ねんかん徹底的てっていてきにリーダー教育きょういくを受うけることです。

つまり、1年間ねんかん徹底的てっていてきに教育きょういくを受うけていない人ひとに部下ぶかは任まかせられない、任まかせてもらえないわけです。中級ちゅうきゅう、上級じょうきゅう、最高さいこう幹部かんぶになる節目ふしめごとに厳きびしい教育きょういくを受うけて、やっと部下ぶかを任まかされる。こうしたリーダー教育きょういくがあるのは、自衛隊じえいたいだけだと思おもいます。

少すくなくとも、民間みんかん企業きぎょうではリーダー教育きょういくなしに、部下ぶかがつくことになるので、パワハラが起おきたり、組織そしきが壊こわれたりしていく。リーダーがリーダーではないんだ、ということを世よの中なかに問題もんだい提起ていきしていきたいというのが、リーダー論ろん、組織そしき論ろんの原点げんてんになっています。

関根せきね　そうだったんですね。

桃野ももの　そうしてコラムを書かき始はじめたのですが、今いまから3年ねん前まえの2021年ねんの7月がつだったと思おもいますが、その年としの8月がつ15日にちの終戦しゅうせん記念きねん日びに配信はいしんするコラムをぜひ書かいて欲ほしいと依頼いらいをくれたのが、関根せきねさんでした。

朝日新聞あさひしんぶんさんから、私わたしのような無名むめいなライターに連絡れんらくが来きて、正直しょうじき驚おどろきましたね。「関根せきねさん、なんでなんですか？」ということをお聞ききしたら、「桃野もものさんが2021年ねん4月がつに書かかれた鈴木すずき貫太郎かんたろう元もと総理そうりの記事きじを見みて、非常ひじょうに感銘かんめいを受うけました」と言いっていただいたんです。

鈴木すずき貫太郎かんたろうの記事きじがどういうものかと言いいますと、鈴木すずき貫太郎かんたろうは元もと海軍かいぐん大将たいしょうで、日本にっぽんが敗戦はいせんを受うけ入いれた時ときの総理そうり大臣だいじんです。そして今いまにいたるも、就任しゅうにん時じ、史上しじょう最さい高齢こうれいの総理そうり大臣だいじん。言いってみれば、80歳さい手前てまえの引退いんたいしたおじいちゃんだったわけなんです。

なんでその人ひとが終戦しゅうせんを受うけ入いれるという大だい仕事しごとで引ひっ張ぱり出だされたかっていうと、分わかりやすく言いえば、そういう仕事しごとを引ひき受うけるべき政治せいじ家かがみんな逃にげたから。

敗戦はいせんを受うけ入いれるというのは当然とうぜんのことながら、陸海りくかい軍ぐんに命いのちを狙ねらわれますし、国民こくみんからは石いしを投なげられますし、戦後せんごにはアメリカに捕つかまって戦犯せんぱんとして裁さばかれるかもしれない。もしかしたら子々孫々ししそんそんののしられるかもしれない。鈴木すずき貫太郎かんたろうはすでに十分じゅうぶんな名誉めいよがある中なかで、なぜ総理そうり大臣だいじんを引ひき受うけたのかっていうところに、私わたしは大好だいすきなリーダーの一人ひとりである彼かれの生いき様ざまとリーダーシップを別べつのメディアで配信はいしんさせていただいた。

その記事きじを見みて、「ああいう形かたちで記事きじが欲ほしんです」というようなことを言いっていただいたっていうのが、関根せきねさんとの出会であいなんです。

関根せきね　桃野もものさんご自身じしんが上司じょうしだった時ときはいかがでしたか？

桃野ももの　なかなか手厳てきびしい質問しつもんですね。（笑）

結局けっきょくどこまでやれたかというのは、私わたしにはちょっと自信じしんがないです。

こうすればできる上司じょうしになれるという方法ほうほうまでは私わたしとしても答こたえは出だせませんけれども、こういう上司じょうしが組織そしきをつぶすっていうのはよく知しっているつもりなので、そうはなるまいと思おもっていました。

そして、それについてのコラムを、今朝けさ（5月がつ17日にち）配信はいしんさせていただきました。今回こんかい、私わたしとしてもきれいに言語げんご化かできたと思おもっている記事きじなので、ぜひご一読いちどくいただければと思おもっています。

要ようは、日本にっぽんの典型てんけい的てきなリーダーは、「YES」がジョーカー（切きり札ふだ）になっているということです。

例たとえば、部下ぶかが何なにか仕事しごとの提案ていあんをしたら、上司じょうしが「そんな事ことをして、何なにかあったらどうするんだ。責任せきにんとれるのか？」と必かならず言いってくる。

この言葉ことばの裏うらには、仕事しごとのためとか部下ぶかのためということではなく、「そんなことして『俺おれ』に何なにかあったら」「『俺おれが』失敗しっぱいしたらどうするんだ」という、上司じょうし自身じしんの自己じこ保身ほしんが隠かくされているんですね。

私わたしとしては、責任せきにんを取とるのが上司じょうしの役割やくわりだと思おもうんですけど、そんな理屈りくつすら通つうじない。多分たぶん、会社かいしゃ員いんであれば、心当こころあたりがあるのではないでしょうか。

こうして、「NO」を部下ぶかの提案ていあんに突つきつけて、結局けっきょく当あたりの障ざわりのない提案ていあんが出でてくる。リスクが無ないと思おもったら最後さいごにジョーカーで「YES」をきる、というのをやっているんです。こういう上司じょうしでは間違まちがいなく成果せいかが出でないし、部下ぶかをつぶすのは間違まちがいない。

「ろくでもない上司じょうし」とのつき合あい方かた

関根せきね　では、できる上司じょうしとは？

桃野ももの　部下ぶかがやりたいと言いってきたことに、基本きほん的てきには全部ぜんぶYESだけど、リスクのあるところだけに、NOのジョーカーを切きるという上司じょうしですね。

この、YESのジョーカーを切きるのか、NOのジョーカーを切きるのかが、できる上司じょうし、できない上司じょうしの違ちがいかと思おもいます。 

では私わたし自身じしんが出来できたのかは、ちょっと自信じしんのないところではあります。でも、部下ぶかがやりたいことに対たいして、リスクとリターンを考かんがえたかとか確認かくにんして、「じゃあやろうよ」と、YESを出だすことは常つねに心こころがけていました。

関根せきね　今回こんかいの講演こうえん会かいのタイトルを何なににするか考かんがえていた時ときに、「上司じょうし」とネットで検索けんさくしたら、予測よそく検索けんさくに「上司じょうし　ろくでもない」と出でたんですよ。ろくでもない上司じょうしに悩なやんでいる方ほうが多おおいのではと思おもいました。著書ちょしょとも関係かんけいするということで、このようなタイトルにしました。桃野もものさん、“ろくでもない上司じょうし”との、うまい付つき合あい方かたがあれば教おしえてください。

桃野ももの　結論けつろんから言いいますと、そんなものないんですよ。（笑）

でも一ひとつ、ろくでもない上司じょうしとの付つき合あい方かたの考かんがえ方かたをぜひ持もち帰かえってほしいなと思おもっています。

自衛隊じえいたいの幹部かんぶ教育きょういくで「任務にんむ分析ぶんせき」という考かんがえ方かたがあります。任務にんむの中なかで、必かならず成なし遂とげなければいけない「必成ひっせい目標もくひょう」と、可能かのうであれば達成たっせいしなければいけない「望もち成なり目標もくひょう」は何なにかを分析ぶんせきするものです。幹部かんぶであれば誰だれでも必かならず最初さいしょに叩たたき込こまれていて、全すべての任務にんむで行おこないます。

では、必成ひっせい目標もくひょうを私わたしたちの人生じんせいに置おき換かえてみます。答こたえは人ひとそれぞれですが、例たとえば「幸しあわせになる」「家族かぞくを幸しあわせにする」、あるいは「自分じぶんらしく生いきる」こと、これが長期ちょうきの必成ひっせい目標もくひょうですね。間違まちがいなく、「上司じょうしの機嫌きげんを取とる」ことが長期ちょうきの必成ひっせい目標もくひょうであるような生いき方かたをしている人ひとはいないと思おもいます。

ただ、短期たんきの必成ひっせい目標もくひょうとなると、お金かねを稼かせいで飯めしを食くわなきゃいけないわけです。でも当然とうぜんですが、会社かいしゃを辞やめたら長期ちょうきの必成ひっせい目標もくひょうである「幸しあわせになる」という目標もくひょうが達成たっせいできないですよね。だから短期たんきの必成ひっせい目標もくひょうは、一ひとつは「やり過すごす、我慢がまんする」ことですね。長期ちょうきの必成ひっせい目標もくひょうのために、それしかない。

でも、私わたしに「我慢がまんしよう。辞やめるな」と言いわれて、納得なっとくする人じんいないですね。では、中期ちゅうきの必成ひっせい目標もくひょうには何なにを置おくのか。

結局けっきょくのところ、自身じしんの弱よわさ、ストレスは何なにから出でてくるかというと、組織そしきや上司じょうしの理不尽りふじんな意見いけんでも従したがわなければいけないという「依存いぞん」がこれを招まねいているわけです。

私わたしの著書ちょしょでも書かかせていただきましたが、田山たやま花袋かたいの「蒲団ふとん」に出でてくる女性じょせいの話はなしがあります。作家さっかの先生せんせいから理不尽りふじんで嫌いやな目めに遭あわされてしまい、えらいところに入はいってしまったんですが、先生せんせいがいなければ彼女かのじょ自身じしんの生活せいかつが成なりたない、やりたいこともできないと、完全かんぜんに先生せんせいに依存いぞんする環境かんきょうを作つくってしまっているんです。人ひとの心しんを弱よわくしていることの例れいであると思おもいます。

この時代じだいであれば我慢がまんしなければいけなかったかもしれないですが、今いまはそんな時代じだいではないですよね。

であれば、中期ちゅうき必成ひっせい目標もくひょうでやることは「依存いぞんを少すくなくする、あるいは解といていく」こと。

依存いぞんを解とく答こたえというのは、人ひとそれぞれだと思おもいます。例たとえば転職てんしょくをする、あるいはその上司じょうしよりも仕事しごとで成果せいかを出だして発言はつげん力りょくをつけて上司じょうしを追おい落おとすというのも一ひとつの方法ほうほうです。「今いまはそのための準備じゅんびをしてるぞ」って気持きもちになれば、短期たんき目標もくひょうでへらへらして、「課長かちょうすごいっすよね」と言いうことぐらいは多分たぶんできる。

人ひとは結局けっきょくこの中期ちゅうき、長期ちょうきの必成ひっせい目標もくひょうというものがないがゆえに、我慢がまんすることだけが目的もくてきになり、上司じょうしや会社かいしゃに依存いぞんが解とけず、理不尽りふじんを我慢がまんしなきゃいけない環境かんきょうがいつまでも続つづいてしまう。結果けっかとして、ろくでもない上司じょうしとの関係かんけいが変かわらない。地獄じごくのような状況じょうきょうなのだと思おもいます。

ぜひこの自衛隊じえいたいの任務にんむ分析ぶんせきの必成ひっせい目標もくひょうを、短期たんき、中期ちゅうき、長期ちょうきで持もち合あわせて、自分じぶんはどうしていきたいのかっていうところから考かんがえてみてください。

要ようは、自分じぶんを納得なっとくさせる。これがおそらく、ろくでもない上司じょうしとの付つき合あい方かたの考かんがえ方かたなのかなっていうふうに、まとめてみました。

関根せきね　桃野もものさんの文体ぶんたいといえば「話はなしは変かわるが」。やっぱりめちゃくちゃ面白おもしろいですよね。私わたし、編集へんしゅう者しゃなので、桃野もものさんの記事きじの第だい一読いちどく者しゃなんですが、5月17日にちに配信はいしんした記事きじを読よんだ時ときにも「やっぱり他たにないな」と思おもいました。どうして、ああいう文体ぶんたいが誕生たんじょうしたのでしょうか。

桃野ももの　一番いちばん最初さいしょまでさかのぼりますと、私わたしが高校こうこう3年ねんか大学だいがく1年生ねんせい、1980年代ねんだい後半こうはんから1990年代ねんだい前半ぜんはんのころに、「新しんスタートレック」というアメリカのSFドラマがありました。ピカード艦長かんちょうがエンタープライズに乗のって宇宙うちゅうを旅たびするドラマが、私わたし、大好だいすきでした。ピカード艦長かんちょうの勇気ゆうき、リーダーシップ、公平こうへい誠実せいじつな組織そしき運営うんえいとかにものすごく感銘かんめいを受うけて、自分じぶんの理想りそうのリーダー像ぞうの原型げんけいをつくるような影響えいきょうを受うけたドラマの一ひとつです。

それで、DVDを全部ぜんぶ買かって、何なん度どか見直みなおすことがあったんです。もの書かきとしてある程度ていど、仕事しごとが出で始はじめた時ときにもう一度いちど、最初さいしょから観みて、「なんで面白おもしろいのかな」という観点かんてんで観みたくなったんですよね。そしたら一ひとつのパターンとして、必かならず全体ぜんたいが三さん部ぶ構成こうせいで出来できていると気きづいたんです。

一番いちばん最初さいしょは、その日ひの伝つたえたいメッセージ性せいに対たいする印象深いんしょうぶかい伏線ふくせんをパッとおいて「えっ、これどうなるんだろう」っていうところで寸すん止どめして場面ばめん変かえちゃうんです。そして全まったく違ちがう場面ばめんに、場面ばめん転換てんかんして、その世界せかいで動うごいている別べつの事象じしょうの話はなしを始はじめちゃうんですよね。そして第だい三さん部ぶで、最初さいしょの伏線ふくせんを回収かいしゅうしつつ、真まん中なかのメインになる話はなしと一体いったい化かさせて仕上しあげていく。「あれ、これってコラムでも同おなじことやったら面白おもしろいんじゃねえのかな」っていうふうに気きがついて、始はじめました。

自分じぶんでは「これ、すげえ発明はつめいしたんじゃねえのかな」と実じつはその時ときうぬぼれていたんですが、音楽家おんがくかの友人ゆうじんに話はなしたら「音楽おんがくでは常識じょうしき」と言いわれまして。そのあと、音楽おんがくだけじゃないと言いわれて、よくよく考かんがえると、歌舞伎かぶきとか日本にっぽんの伝統でんとう芸能げいのうだって「序破急じょはきゅう」の三さん部ぶ構成こうせい。

さらに色々いろいろ調しらべたら、実じつは世界せかい的てきに「三さん幕まく構成こうせい」という古典こてん的てきにドラマや映画えいがとかの基本きほん的てきな作つくりだと後のちから気きづきました。なんか発明はつめいした気きになっていたのが恥はずかしいなと思おもいつつ。（笑）

結論けつろんとして良よい話はなしでも、平坦へいたんに最初さいしょから最後さいごまで突つっ走ぱしっちゃうと読よむ方ほうも疲つかれるし、書かくほうも結構けっこう疲つかれるんですよね。そうなった時ときに三さん部ぶに分わけて楽たのしんでもらう。こっちは三さん部ぶに分わけて集中しゅうちゅうできる。読者どくしゃ目線めせんで、読者どくしゃの方ほうにどう受うけ入いれてもらいながら読よんでもらえるんだろうっていう結果けっか、ここに行いき着つくよねっていうことで、今いまの三さん幕まく構成こうせいというのが、私わたしの一ひとつのパターンになりました。

関根せきね　桃野もものさんはこう言いうんですが、実じつは文章ぶんしょうの中なかで、三さん幕まく構成こうせいは極きわめてレアです。私わたしも20年ねん以上いじょう物書ものかきしてますが、なかなかないですよ。桃野もものさん、特許とっきょとりましょう！（笑）

桃野ももの　前回ぜんかい出版しゅっぱんした著書ちょしょのオンラインショッピングサイトの評価ひょうか欄らんでは、「評価ひょうか5」を一番いちばん多おおく付つけていただいていますが、たまに「不快ふかいな文体ぶんたいでした」というコメントも一部いちぶあります。でも逆ぎゃくに言いえば、私わたしは賛否さんぴ両論りょうろん大好だいすきで、否定ひていするような意見いけんがないものは面白おもしろくもない、辞書じしょ的てきなコンテンツだと思おもっています。新あたらしい価値かち観かんを生うみ出だせたんだなと、前向まえむきに受うけ止とめています。

関根せきね　最後さいごに、ぜひ本ほんの内容ないようを少すこし教おしえてください。

桃野ももの　やはり出だしたいメッセージ性せいっていうのは一ひとつです。社会しゃかいに対たいして「リーダーとはこうあるべきだ」「組織そしきはリーダーについてもうちょっと俺おれたちで真剣しんけんに考かんがえようぜ」っていうことですね。

年功序列ねんこうじょれつ自体じたいを否定ひていするものではないんですけれど、リーダー教育きょういくを受うけていない人ひとが、いきなり年齢ねんれいを食くっただけでリーダーになるのは違ちがうだろうと思おもうんです。不幸ふこうになるのは部下ぶかなんだ、というメッセージ性せいはたくさん出ださせていただきました。

じゃあ「具体ぐたい的てきにどれだけ聞きいたら理想りそうなの？」と、たまに本ほんを読よんだ方ほうから聞きかれたりするので、本ほんでは書かいていないことですが、具体ぐたい例れいで思おもいついた話はなしがあるので紹介しょうかいします。

自衛隊じえいたいの最高さいこう幹部かんぶまで上のぼられた、ある方ほうのエピソードなんですが、その方ほう、元々もともとは戦車せんしゃの専門せんもん指揮しき官かんで、ある部隊ぶたいの連隊れんたい長ちょうを任まかされるのですが、この部隊ぶたいは、訓練くんれんの一環いっかんで戦車せんしゃ射撃しゃげきや模擬もぎ戦闘せんとうなどを競きそう大会たいかいで連戦れんせん連敗れんぱいと、非常ひじょうに弱よわかったのです。すると彼かれの同期どうきは「あの弱よわいところを任まかされたのか。気きの毒どくだね」みたいなことを言いうんですけれど、その方ほうは「いやいや、もう落おちるところまで落おちているから、あとは上うえに行いくだけ」と楽観らっかん視ししていたんです。なので「どうやってそんな組織そしきを強つよくできたのか」と質問しつもんしたことがあるんです。

この話はなしには前提ぜんていの知識ちしきが必要ひつようなのですが、自衛隊じえいたいの幹部かんぶは大体だいたい2年ねんで1任期にんきを終おえるのが普通ふつうなんです。2年ねんごとにポンポンポンと全国ぜんこくどこに飛とばされるかわからないというお仕事しごとなんですが、ということは、2年ねんでリーダーとして成果せいかを出ださないといけないわけです。

すると、皮肉ひにく的てきない方いかたをすると、頭あたまのいいリーダーほど、マイクロマネジメントをするんですよ。たった2年間ねんかんで成果せいかを出ださなければいけないので、細こまかく部下ぶかに「あれやれ、これやれ」と指示しじを出だして、最後さいごは箸はしの上あげ下さげまで教おしえちゃいます。

そうすれば、一時いちじ的てきには強つよくなるかもしれませんけど、部下ぶかは考かんがえなくなりますよね。では、そんな組織そしきが本当ほんとうに強つよいのかっていうのは、長期ちょうきで見みたら強つよいわけない。

では、先さきほどの連隊れんたい長ちょうは何なにをされたかというと、「勝かつためにお前まえらが何なにをしたいか考かんがえろ」と部下ぶかに投なげかけたんです。これこそ、さっきのYESの切きり札ふだですよ。

彼かれの部下ぶかである中隊ちゅうたい長ちょうや幕僚ばくりょうたちは、自分じぶんたちが強つよくなるために何なにをすればいいのかを考かんがえていく。連隊れんたい長ちょうは、YESをバンバン出だす。部下ぶかは上司じょうしが認みとめてくれる上うえに、「よしやろうぜ。バックストップヒア！」と言いってくれるので面白おもしろくなっていく。バックストップヒアというのは、「俺おれが責任せきにんを取とるから好すきなことを全部ぜんぶやれ」っていう、アメリカの政治せいじ家かの殺ころし文句もんくです^※）。この言葉ことばをまさに体現たいげんして、強つよくなるために取とり組くんだら、1年ねんで「常勝じょうしょう軍団ぐんだん」に変かわっちゃったっていう話はなしです。そんなリーダーシップっていうのが、私わたしの一ひとつの理想りそうであります。

リーダーというものは結局けっきょく、バックストップヒアだと言いえるようになるべきで、上司じょうしはまずそれぐらいの胆力たんりょくを持もとうぜ、というメッセージを本ほんでは出ださせていただきました。