企業きぎょうが生うみ出だす「社会しゃかい的てき価値かち」はいくら？韓国かんこくの測定そくていの試こころみ　提供ていきょう資金しきんや補助ほじょ金額きんがくも連動れんどう

イム・チャンミさん（50）は、韓国かんこく北部ほくぶの京畿けいき道どう華はな城じょう（ファソン）市しに住すむ。結婚けっこんでキャリアが途切とぎれた女性じょせいたちのための就業しゅうぎょう支援しえんプログラムで一緒いっしょだった4人にんの仲間なかまと2009年ねん、得意とくいな料理りょうりの腕うでを生いかして「幸福こうふくな食卓しょくたく」を創業そうぎょう。地産ちさん地ち消けしをモットーに、安心あんしん安全あんぜんな食事しょくじ作づくりと総菜そうざいの販売はんばいを手掛てがけてきた。

食材しょくざいは地元じもとの農家のうかから中間ちゅうかん業者ぎょうしゃを入いれずに仕入しいれている。農家のうかにとっては高たかく売うれ、自分じぶんたちにとっては割安わりやすで買かえる。今いまではおいしいと評判ひょうばんになり、地域ちいきの学校がっこうで弁当べんとうを販売はんばいし、子こども向むけの料理りょうり教室きょうしつも手てがけている。

イムさんたちは2021年ねん、大手おおて財閥ざいばつSKグループの非ひ営利えいり財団ざいだん「社会しゃかい的てき価値かち研究けんきゅう院いん」が2013年ねんに始はじめた「社会しゃかい的てき価値かち測定そくていプロジェクト」に参加さんかした。

同どうプロジェクトは、利益りえきと社会しゃかい課題かだい解決かいけつの両立りょうりつをめざす「社会しゃかい的てき企業きぎょう」が社会しゃかいにもたらした成果せいかをお金かねに換算かんさんしようというものだ。公募こうぼ制せいで、換算かんさん額がくに応おうじて助成じょせいをする。

韓国かんこくには「社会しゃかい的てき企業きぎょう育成いくせい法ほう」があり、国くにとして社会しゃかい的てき企業きぎょうを支援しえんする。一定いっていの条件じょうけんを満みたせば社会しゃかい的てき企業きぎょうに認証にんしょうされ、補助ほじょ金きんや税制ぜいせい優遇ゆうぐうが受うけられる。認証にんしょうを受うけた企業きぎょうは2023年ねんには3500社しゃを超こえた。ただ、同どうプロジェクトは社会しゃかい的てき企業きぎょうをより広ひろい意味いみでとらえており、国くにの認証にんしょうを受うけていなくても参加さんかできる。

イムさんはプロジェクトに参加さんかした理由りゆうを「自分じぶんたちが社会しゃかいにつくりだしている価値かちを客観きゃっかん的てきに表あらわしてもらいたかった」と説明せつめいする。実際じっさい、2021年ねんにつくりだした社会しゃかい的てき価値かちは1億おく6000万まんウォン（約やく1740万まん円えん）と測定そくていされ、「具体ぐたい的てきに示しめしてもらって、自信じしんにつながった」と話はなす。

同どう研究けんきゅう院いんのナ・ソクグォン院長いんちょうは「SKは大だい企業きぎょうグループだが、ビジネスを持続じぞく可能かのうにするにはお金かねもうけだけではなく、社会しゃかい課題かだい解決かいけつをすることも重要じゅうよう」と語かたる。「企業きぎょう経営けいえいの観点かんてんから、社会しゃかい課題かだいをどう解決かいけつしたのかをデータで管理かんりできないか」と考かんがえ、成果せいかを貨幣かへい価値かちに換算かんさんする試こころみが始はじまった。いずれは財務諸表ざいむしょひょうに載のせるようなデータになることをめざしたいという。

換算かんさんには、製品せいひんやサービスの価値かちに加くわえ、雇用こよう方法ほうほうや環境かんきょうへの負荷ふかといった、「社会しゃかいのためになること」の要素ようそを採とり入いれる。

例たとえば、イムさんたちの「幸福こうふくな食卓しょくたく」が、地元じもとで農薬のうやくを使つかわずに生産せいさんされた大根だいこんを、スーパーマーケットよりも1本ほんあたり100ウォン高たかく、1000本ほんを仕入しいれたとする。農家のうかにとっては計けい10万まんウォン高たかく売うれたことになり、この10万まんウォンが「社会しゃかい的てき価値かち」と換算かんさんされる。

同どう測定そくていプロジェクトには2024年ねんまでに368の社会しゃかい的てき企業きぎょうが参加さんか。なかには株式かぶしき公開こうかいをめざして成長せいちょうを続つづける企業きぎょうもある。

その一ひとつのソンナム市しの「スーパービン」は、ゴミ分別ふんべつのためのロボット開発かいはつと、ロボットを使つかったリサイクルを行おこなう。さらにロボットや再生さいせいプラスチックの販売はんばい、リサイクル工場こうじょうの運営うんえいなども行おこなう。スーパービンの場合ばあい、リサイクルせずにゴミ処理しょりしたときにかかる費用ひようや、再生さいせいプラスチックの販売はんばい額がくなどが社会しゃかい的てき価値かちと測定そくていされる。2022年ねんには18億おくウォン（約やく2億おく円えん）の社会しゃかい的てき価値かちを生うみ出だしたとされ、7億おく7000万まんウォン（約やく8700万まん円えん）の助成じょせいを得えた。

同どう研究けんきゅう院いんは、自治体じちたいが社会しゃかい的てき企業きぎょうに補助ほじょ金きんを出だす場合ばあい、社会しゃかい的てき価値かちを測定そくていし、その価値かちを換算かんさんした額がくを補助ほじょ金きんにするよう政策せいさく提言ていげんをしている。すでに済州さいしゅう（チェジュ）特別とくべつ自治じち道どうでは6月がつ、社会しゃかい的てき価値かちに見合みあった補助ほじょ金きんを出だす条例じょうれいを制定せいていした。

ここで想起そうきされるのが税金ぜいきんの使つかい方かただ。同どう研究けんきゅう院いんは政策せいさくを統計とうけいや結果けっかのデータに基もとづき立案りつあん、実行じっこうする「EBPM」（evidence-based policy making、証拠しょうこに基もとづく政策せいさく立案りつあん）を提唱ていしょうしている。民間みんかん企業きぎょうの活動かつどうについて社会しゃかい課題かだい解決かいけつの成果せいかが問とわれるならば、政府せいふや自治体じちたいも当然とうぜんそうなるというわけだ。

院長いんちょうのナさんは「最初さいしょはより多おおくの企業きぎょうが社会しゃかい課題かだいを解決かいけつするようになるのが目的もくてきだったが、一番いちばん多おおく課題かだい解決かいけつに取とり組くんでいるのは 政府せいふや自治体じちたいだ。なので、政策せいさくも生うみ出だした価値かちを測定そくていするべきだと考かんがえた」。

同どう研究けんきゅう院いんは、日本にっぽんでNPOの資金しきん集あつめの支援しえんなどをしている日本にっぽんファンドレイジング協会きょうかいとともに、日本にっぽんでも昨年さくねんから社会しゃかい的てき企業きぎょうやNPOへの成果せいかに連動れんどうした資金しきん提供ていきょうを始はじめた。

現在げんざい、いじめの匿名とくめい相談そうだんやチャットサービス、シングルマザーの居住きょじゅう・生活せいかつ支援しえんなど四よっつの事業じぎょうが資金しきん提供ていきょうを受うけている。年額ねんがく最大さいだい1000万まん円えんで、うち300万まん円えんは基礎きそ的てきな資金しきんとして一律いちりつに受うけられるが、残のこりの700万まん円えんは成果せいかに連動れんどうする。

日本にっぽんは今年ことしの「骨太ほねぶとの方針ほうしん」でもEBPMの強化きょうかをうたっているが、各種かくしゅの補助ほじょ金きんや使つかわれない公共こうきょう施設しせつなど、成果せいかが問とわれていないと思おもえる政策せいさくも多数たすうある。

もちろん、成果せいかを貨幣かへい価値かちで測定そくていできない政策せいさくもたくさんある。だが社会しゃかい的てき価値かちの貨幣かへい換算かんさんから見みえてくるのは、本当ほんとうに住民じゅうみんや国民こくみんのためになっているのか、という政策せいさく形成けいせいのあり方かたや税金ぜいきんの使つかい道みちだ。