ルワンダ大統領だいとうりょう選せんでカガメ氏し4選せん、「圧勝あっしょう」の背景はいけいに対立たいりつ候補こうほ迫害はくがいや「やらせ」の指摘してきも

「全力ぜんりょくで、相当そうとうの時間じかんを仕事しごとに費ついやしたにもかかわらず、自分じぶんが大統領だいとうりょう候補こうほリストに載のっていないことに非常ひじょうに失望しつぼうしています。@PaulKagame、なぜ出馬しゅつばさせてくれないのですか？あなたが私わたしをだまして選挙せんきょ運動うんどうの権利けんりを奪うばったのは、これで2度目どめです」 

6月7日にち、現げん政権せいけんを批判ひはんし、国内こくないの人権じんけん状況じょうきょうなどの改善かいぜんを求もとめるグループ「国民こくみん救済きゅうさい運動うんどう」（PSM）を率ひきいる実業じつぎょう家かダイアン・ルウィガラ氏しはXでそう発言はつげんした。

After all the time, work and effort I put in, I am very disappointed to hear that I am not on the list of presidential candidates. @PaulKagame why won't you let me run?
This is the second time you cheat me out of my right to campaign.

Ndababaye.

— Shima Diane Rwigara (@ShimaRwigara) June 7, 2024

1994年ねん7月がつ、ジェノサイド終焉しゅうえん後ごに樹立じゅりつされた新しん政府せいふで、カガメ氏しは副ふく大統領だいとうりょう兼けん防衛ぼうえい大臣だいじんに就任しゅうにんした。少数しょうすう派はツチで反はん政府せいふ勢力せいりょくの「ルワンダ愛国戦線るわんだあいこくせんせん」（RPF）リーダーだった同氏どうしは、多数たすう派はフツ出身しゅっしんながらツチ主導しゅどうの暫定ざんてい政府せいふで大統領だいとうりょうを務つとめたパストゥール・ビジムング氏し以上いじょうに実権じっけんを行使こうししていた。

カガメ氏しは、2000 年ねんにビジムング大統領だいとうりょうを辞任じにんさせた後のちに大統領だいとうりょうに昇格しょうかく。2003年ねん、2010年ねんと2017年ねんに実施じっしされた大統領だいとうりょう選挙せんきょでは、カガメ氏しはそれぞれ95％、93％と98.8％と圧勝あっしょうした。

これらの選挙せんきょを、ベルギー人じんのルワンダ研究けんきゅう者しゃは「茶番ちゃばん劇げき」、そしてルワンダ出身しゅっしんの国際こくさい人権じんけん法学ほうがく者しゃジョセフ・セバレンジ氏しは「やらせ」と呼よんでいる。

1997～2000年ねんにルワンダ政府せいふで、大統領だいとうりょう、副ふく大統領だいとうりょうに次ついで3番目ばんめの地位ちいの議会ぎかい議長ぎちょうを務つとめたセバレンジ氏しは、ルワンダの選挙せんきょがまるでサッカーの試合しあいのようなものだと言いう。なぜなら、「主催しゅさい者しゃは競争きょうそう相手あいてでもあり、他たの競争きょうそう相手あいてを選えらび、人々ひとびとに試合しあいに参加さんかするように命めいじる。誰だれもが事前じぜんに決きめられた勝者しょうしゃを知しっているが、試合しあいが本物ほんものであるかのように振ふる舞まわなければならない」からだ。 

元もとRPF高官こうかんによると、RPFが民主みんしゅ的てきな選挙せんきょ実施じっしに消極しょうきょく的てきなのは、人口じんこうで勝まさるフツの過激かげき派はを権力けんりょくの座ざに就つかせ、少数しょうすう派はツチを再ふたたび危険きけんにさらすのではないかという懸念けねんがあるためだ。 

今回こんかいの選挙せんきょでカガメ氏しに対抗たいこうして出馬しゅつばが許ゆるされた候補者こうほしゃは、前回ぜんかい2017年ねんと同様どうように、民主みんしゅ緑みどりの党とうのフランク・ハビネザ氏しと、無所属むしょぞくのフィリップ・ムパイマナ氏しの2人ふたりのみ。得票とくひょう率りつはそれぞれ1%以下いかにとどまった。 両者りょうしゃは立候補りっこうほを表明ひょうめい後ご、嫌いやがらせや脅迫きょうはくを受うけたという。

カガメ氏しはいかに権力けんりょく基盤きばんを強化きょうかしたか

カガメ氏しとRPFは、巧たくみかつ、さまざまな方法ほうほうで権力けんりょく基盤きばんの強化きょうかを図はかり、権力けんりょくの座ざに居い続つづけることができた。

まずRPFが1994年ねんに政権せいけん奪取だっしゅした際さいに、カガメ氏しは自みずからのために政府せいふ内ないに副ふく大統領だいとうりょう職しょくを設置せっちした。1990年代ねんだい前半ぜんはんの内戦ないせん中ちゅうにルワンダ政府せいふとRPF間あいだに調印ちょういんされたアル―シャ和平わへい協定きょうていには、その両者りょうしゃで構成こうせいされた新しん政府せいふの発足ほっそくが合意ごういされたが、副ふく大統領だいとうりょう職しょくは明記めいきされていなかった。

次つぎに、2003年ねん憲法けんぽうの101条じょうは大統領だいとうりょうの3選せんを禁きんじていた。この憲法けんぽうに従したがえば、カガメ氏しには2017年ねんの大統領だいとうりょう選挙せんきょの出馬しゅつば資格しかくはない。そこで、この制約せいやくを打破だはするために、2015年ねんに憲法けんぽう当該とうがい条文じょうぶんを改正かいせいした。

2017年ねん、カガメ氏しの大統領だいとうりょう任期にんきの延長えんちょうを可能かのうとするように求もとめる国民こくみんの請願せいがんが大量たいりょうに上下じょうげ両院りょういんに送おくられた。その後ご、大統領だいとうりょう任期にんきを1期き5年ねんとし、2選せんまで可能かのうとする（ただし、移行いこう期間きかんとして7年ねんの任期にんきを1期き置おき、カガメ氏しの出馬しゅつばを認みとめる）案あんが圧倒的あっとうてき多数たすうをもって両院りょういんで可決かけつされた。

最終さいしゅう的てきに憲法けんぽう改正かいせい案あんは国民こくみん投票とうひょうに付ふされ、98.3%の賛成さんせいをもって採択さいたくされた。人権じんけん活動かつどう家からは、憲法けんぽう改正かいせいの請願せいがん者しゃの一部いちぶが署名しょめいを強要きょうようされ、憲法けんぽう改正かいせいに反対はんたいする人々ひとびとが迫害はくがいされたと批判ひはんした。 

この憲法けんぽう改正かいせいにより、カガメ氏しは2034年ねんまで合法ごうほう的てきに大統領だいとうりょうの座ざにとどまることが可能かのうとなった。しかし、そのまま終身しゅうしん大統領だいとうりょうとなることもあり得える。

その他た、ルワンダに存在そんざいしていた政党せいとうや活発かっぱつな市民しみん社会しゃかいが1991～1993年ねん、ジェノサイド、RPFの政権せいけん奪取だっしゅ、その後ごの軍事ぐんじ化か、民族みんぞく二に極きょく化かと弾圧だんあつの結果けっか、少すこしずつ消滅しょうめつした。

RPFが1994年ねんに新しん政府せいふを樹立じゅりつしてから、政府せいふ当局とうきょくは野党やとう議員ぎいんやジャーナリスト、その他たの批判ひはん者しゃに対たいして、恣意しい的てき逮捕たいほ、拷問ごうもん、虐待ぎゃくたい、表現ひょうげんや結社けっしゃの自由じゆうの権利けんりを侵害しんがいし始はじめた。 

そのため1995年ねん初はじめから、多おおくの政治せいじ家か、公務員こうむいんや軍ぐん関係かんけい者しゃらが亡命ぼうめいした。そこには前述ぜんじゅつのジョセフ・セバレンジ元もと議会ぎかい議長ぎちょうも含ふくまれる。ルワンダ国内こくないの野党やとうは排除はいじょされたため、亡命ぼうめいした政治せいじ家かがヨーロッパを中心ちゅうしんに政治せいじ運動うんどうを創設そうせつするようになった。

世界せかい各国かっこくの政治せいじ権利けんりや市民しみんの自由じゆうを調査ちょうさしているNGOのフリーダムハウスによると、ルワンダは「不自由ふじゆう（Not Free）」な国くにとしてランクされ、2024年ねん時点じてんで100満点まんてんの内うち23点てんしか得点とくてんしていない。同国どうこくの不自由ふじゆうさとは、下記かきの欠如けつじょを指さす。自由じゆうで公正こうせいな選挙せんきょ、野党やとうが選挙せんきょ運動うんどうを行おこなう機会きかい、自由じゆうなメディア、そして司法しほうの独立どくりつだ。

これまでの各かく大統領だいとうりょう選挙せんきょにおいてカガメ氏しが圧勝あっしょうできた要因よういんとして、ルワンダ政府せいふによる有力ゆうりょく者しゃの封ふうじ込こめ、得票とくひょう率りつの操作そうさなどの選挙せんきょ不正ふせい、そしてRPFを批判ひはんする者ものの暗殺あんさつ（未遂みすい・計画けいかく）が挙あげられる。それらを説明せつめいしたい。

有力ゆうりょくな対抗たいこう馬ばへの立候補りっこうほ妨害ぼうがい

ルワンダの選挙せんきょ法ほうは、「誠実せいじつな人ひと」(person[s] of integrity)のみが候補こうほできると定さだめている。それはすなわち、ジェノサイドやジェノサイド・イデオロギー、差別さべつ、分裂ぶんれつ主義しゅぎ、汚職おしょくの罪つみで有罪ゆうざい判決はんけつを受うけていない人ひとを指さす。 

2008年ねんに制定せいていされたジェノサイド・イデオロギー罪ざいの処罰しょばつに関かんする法律ほうりつは、ジェノサイドを否定ひていしたり、ジェノサイドのイデオロギーを助長じょちょうしたりする行為こういを禁きんずる。しかしこの「イデオロギー」は、「RPFの戦争せんそう犯罪はんざいや人権じんけん侵害しんがいの疑惑ぎわくの言及げんきゅうが含ふくまれている」と指摘してきされている。つまり、RPF批判ひはんの封ふうじ込こめが合法ごうほう化かされていることになる。

そのためフツ、ツチ関係かんけいなく、RPF批判ひはんをする有力ゆうりょくな対抗たいこう馬ばの立候補りっこうほが妨害ぼうがいされている上うえに、RPFを支持しじしてきた主おもな政党せいとうのみが選挙せんきょへの登録とうろくが許ゆるされている。
上記じょうきのルウィガラ氏しや他たの野党やとう党首とうしゅ数すう人にんは、分裂ぶんれつ主義しゅぎやジェノサイド・イデオロギーを助長じょちょうしていると非難ひなんされているため、彼かれらはルワンダ政府せいふにとって当然とうぜん「誠実せいじつな人ひと」ではない。

ルウィガラ氏しの父ちちは、1990年代ねんだい前半ぜんはんの内戦ないせん中ちゅう、RPFに財政ざいせい協力きょうりょくをしていた著名ちょめいな実業じつぎょう家かだった。が、その後ごRPFへの支援しえんを拒否きょひしたために、カガメ大統領だいとうりょうと緊張きんちょう関係かんけいが生しょうじて、2015年ねんに「交通こうつう事故死じこし」したとされる。遺族いぞくは、この死しは政治せいじ的てき動機どうきを有ゆうすると疑うたがっている。 

ルウィガラ氏しは、カガメ大統領だいとうりょう下かの「悪わるいガバナンス」による不正ふせい行為こういや弾圧だんあつを批判ひはんしてきた。2017年ねんの大統領だいとうりょう選挙せんきょに出馬しゅつばを表明ひょうめいしたとたんに、同氏どうしのヌード写真しゃしんがソーシャルメディア上じょうに出回でまわった。その目的もくてきは、同氏どうしの評判ひょうばんをおとしめる誹謗ひぼう中傷ちゅうしょうだと疑うたがわれている。ルウィガラ氏しは写真しゃしんは加工かこうされたフェイクと述のべている。

また無所属むしょぞくの候補者こうほしゃとして立候補りっこうほするには、少すくなくとも600人にんの登録とうろく有権者ゆうけんしゃの署名しょめいと身元みもと確認かくにんの詳細しょうさいを提出ていしゅつする必要ひつようがあるが、同氏どうしの代理人だいりにんが全国ぜんこくを回まわって必要ひつような署名しょめいを集あつめた際さいに、脅迫きょうはくされたり逮捕たいほされたりした。

選挙せんきょ委員いいん会かいによると、2017年ねんの選挙せんきょでルウィガラ氏しの出馬しゅつばが認みとめられなかったのは、署名しょめいの真正しんせい性せいに疑義ぎぎがあったためだが、同氏どうしはその疑惑ぎわくを否定ひていしている。その後ご、ルウィガラ氏しは偽造ぎぞうと反乱はんらん扇動せんどうの罪つみで逮捕たいほ・起訴きそされ、妹いもうとと母ははも反乱はんらん罪ざいで起訴きそされ、1年ねん以上いじょうも母親ははおやらと刑務所けいむしょに収監しゅうかんされたが、2018年ねんに無罪むざい判決はんけつを得えた。人権じんけん団体だんたいによると、どちらの容疑ようぎも政治せいじ的てきな動機どうきによるものとみられる。   

今回こんかいの選挙せんきょにおいて、選挙せんきょ管理かんり委員いいん会かいいわく、ルウィガラ氏しが犯罪はんざい歴れきの陳述ちんじゅつ書しょの代かわりに裁判所さいばんしょの判決はんけつのコピーを提出ていしゅつし、また同氏どうしが提出ていしゅつした支援しえん有権者ゆうけんしゃの身分みぶん証明しょうめい書しょの一部いちぶは、該当がいとう者しゃが存在そんざいしないか、選挙せんきょ人じん名簿めいぼのものと一致いっちしなかった。ルウィガラ氏しは、委員いいん会かいのこれらの指摘してきは政治せいじ的てき動機どうきに基もとづいていると主張しゅちょうしている。 

ルウィガラ氏しの他ほかに、「すべての人ひとに発展はってんと自由じゆう」の野党やとう政治せいじ家かのヴィクトワール・インガビレ氏しも2010年ねんと2024年ねんの選挙せんきょで出馬しゅつばが妨害ぼうがいされた（2017年ねんは投獄とうごく中ちゅうだったために立候補りっこうほできなかった）。

インガビレ氏しは2010年ねんの大統領だいとうりょう選挙せんきょに出馬しゅつばするために、長年ながねん生活せいかつしていたオランダから単身たんしん帰国きこくした。ジェノサイド・イデオロギーを助長じょちょうし、分裂ぶんれつ主義しゅぎを扇動せんどうし、国くにを不安定ふあんてい化かさせる武装ぶそう集団しゅうだんを結成けっせいした罪つみで同年どうねん起訴きそされた。そのため、自身じしんの野党やとう登録とうろくができないまま、8年間ねんかんを刑務所けいむしょで過すごした。

15年ねんの禁錮きんこ刑けい判決はんけつを受うけていたインガビレ氏しは、カガメ大統領だいとうりょうから恩赦おんしゃを受うけて2018年ねんに釈放しゃくほうされた。が、ルワンダの選挙せんきょ法ほうによると、6カ月かげつ以上いじょう投獄とうごくされた人ひとは公職こうしょくに立候補りっこうほすることを禁きんじられている。2024年ねん3月がつ、キガリの裁判所さいばんしょは、同氏どうしの大統領だいとうりょう選挙せんきょ出馬しゅつばの請求せいきゅうを却下きゃっかした。その他た、インガビレ氏しの党員とういん5人にんが2017年ねん以降いこう、不審ふしんな状況じょうきょうで死亡しぼうまたは失踪しっそうした。 

2003年ねんの大統領だいとうりょう選挙せんきょにおいては、ジェノサイド終焉しゅうえん後ごに発足ほっそくされた政府せいふ下かの首相しゅしょうだったフォーステイン・トワギラムング氏し（故人こじん）が、カガメ氏しの最大さいだいのライバルだった。1995年ねん8月がつに内閣ないかく府ふ会議かいぎで激論げきろんの後のちに氏しは首相しゅしょうを辞職じしょくし、ベルギーに亡命ぼうめいした。その後ご、氏しは選挙せんきょ出馬しゅつばのために帰国きこくしたのだが、国家こっか保安ほあん官かんが氏しの運転うんてん手しゅと秘書ひしょに対たいして殺害さつがいを脅迫きょうはくしたために、何なん度どか選挙せんきょ運動うんどうを中断ちゅうだんすることを余儀よぎなくされた。

投票とうひょう用紙ようしすりかえと得票とくひょう率りつの捏造ねつぞうの証言しょうげん

アメリカとコモンウェルスが派遣はけんした選挙せんきょ監視かんし団だんによると、2003年ねんと2010年ねんの選挙せんきょも、それぞれ恐怖きょうふと脅迫きょうはくの中なかで実施じっしされ、集計しゅうけいにおける透明とうめい性せいの欠如けつじょなど、不正ふせいが指摘してきされた。 

選挙せんきょ管理かんり委員いいん会かいはRPFの要員よういんによって構成こうせいされ支配しはいされているため、不正ふせいは容易よういだとされる。不正ふせいの一いち例れいを紹介しょうかいしよう。

カガメ氏しの元もとボディーガード2人にんの証言しょうげんによると、投票とうひょう日びの2日にち前まえに、国軍こくぐんが兵舎へいしゃにて何なん百ひゃく個こもの投票とうひょう箱ばこに投票とうひょう用紙ようしを詰つめ込こんだ。トワギラムング氏しに投票とうひょうした人ひとに対たいして、ある役人やくにんが「時間じかんを無駄むだにするな」と言いって、カガメ氏しに印しるしを付つけた投票とうひょう用紙ようしに取とり換かえられた。

カガメ氏しの元もと側近そっきんの亡命ぼうめい者しゃ4人にんも、選挙せんきょの結果けっかが事前じぜんに決定けっていされていたことを明あきらかにした。

亡命ぼうめい者しゃの一人ひとりが、英えいBBCのドキュメンタリー番組ばんぐみ「Rwanda’s Untold Story」（2014年ねん10月がつ1日にち放映ほうえい）のインタビューで、2003年ねんの選挙せんきょが「やらせ」だったと述のべている。

RPF元もと官房かんぼう長ちょう「何なにが起おきたかというと、我々われわれは単たんに数字すうじを出だし合あったのです。私わたしも関与かんよしていました」

BBC記者きしゃ「つまり、何なんパーセントにしようかと話はなし合あったのですか？」

RPF元もと官房かんぼう長ちょう「そうです。カガメは100％欲ほしかったようですが、他たの人ひとたちはそんなにいらないと言いった。最終さいしゅう的てきにカガメは95％で落おち着つきましたが、彼かれ自身じしんそれだけ得票とくひょうしていないことを知しっています」 BBCドキュメンタリー「Rwanda's Untold Story」

さらに筆者ひっしゃがルワンダ政府せいふの元もと要員よういんにき取きとり調査ちょうさをしたところ、2010年ねんの選挙せんきょの際さいに、ルワンダ政府せいふ関係かんけい者しゃがコンゴ難民なんみんキャンプにて難民なんみん約やく1,000人にんに投票とうひょう用紙ようしに指紋しもんを付つけるよう強要きょうようした。これらの投票とうひょう用紙ようしは、カガメ氏し以外いがいの他ほかの候補者こうほしゃに投とうじられた正当せいとうな票ひょうと入いれ替かえるために、ひそかに選挙せんきょ管理かんり委員いいん会かいの事務所じむしょに運はこばれた。

ルワンダ政治せいじ家かの暗殺あんさつ（計画けいかく）

RPFが率ひきいるルワンダ新しん政府せいふの「悪わるいガバナンス」や人権じんけん侵害しんがいについては、1994年ねん以降いこう、現地げんちの政治せいじ家かが何なん度ども指摘してきしてきた。ガバナンスの改革かいかくに努つとめた政治せいじ家か2人にんを紹介しょうかいしたい。

ルワンダ議会ぎかい議長ぎちょう（1997～2000年ねん）を務つとめたセバレンジ氏しは友人ゆうじんに勧すすめられて野党やとうに入党にゅうとうし、たまたま空席くうせきが出でた下院かいん議員ぎいんに選えらばれ、さらに議長ぎちょうの職しょくに就つくことになる。絶対ぜったい的てきな権力けんりょくを持もつRPFが、操あやつりやすいと見みてセバレンジ氏しの議長ぎちょう就任しゅうにんを支持しじしたといわれる。

ところがセバレンジ氏しはRPFの言いいなりにはならず、法ほうの支配しはいの確立かくりつを目指めざした。カガメ副ふく大統領だいとうりょうに疎うとんじられたセバレンジ氏しは、RPF政権せいけんを転覆てんぷくさせようと、退位たいいしたルワンダ王おうの軍ぐんと手てを組くんでいるという根拠こんきょなきうわさによって辞任じにんに追おい込こまれた上うえに、カガメ氏しによる自身じしんの暗殺あんさつ計画けいかくを耳みみにし、アメリカに亡命ぼうめいした。

その後ご、セバレンジ氏しの解任かいにんに異議いぎを唱となえたジャーナリストらが続つづいて亡命ぼうめいし、続つづいて首相しゅしょうが解任かいにんされ、ビジムング大統領だいとうりょうが辞任じにんに追おい込こまれ、大統領だいとうりょうの相談役そうだんやくは死亡しぼうした。こうしてカガメ氏しは大統領だいとうりょうの地位ちいを手てにした。

1994年ねん7月がつに内務ないむ大臣だいじんに就任しゅうにんしたセス・センダションガ氏し（故人こじん）も、RPF新しん政府せいふによる殺害さつがいや「失踪しっそう」、治安ちあんの悪化あっかを絶たえず非難ひなんし、13カ月かげつの閣僚かくりょう在任ざいにん中ちゅうに400通つう以上いじょうのメモをカガメ副ふく大統領だいとうりょうに送おくった。

特とくにセンダションガ氏しが介入かいにゅうした新しん政府せいふの罪つみの一ひとつが、1995年ねん4月がつ、ルワンダ軍ぐんによる国内こくない避難ひなん民みんキャンプでの虐殺ぎゃくさつだった。その虐殺ぎゃくさつは、国連こくれんPKOとNGO職員しょくいんの目めの前まえで3日間にちかんにわたって続つづいた。国内こくない避難ひなん民みんの遺体いたいを数かぞえたオーストラリア人じんのPKOによると、その数かずは少すくなくとも4000人にんに上のぼった。

センダションガ氏しは大だい惨事さんじを止とめようと虐殺ぎゃくさつ現場げんばに駆かけつけたのだが、ルワンダ軍ぐんに追おい返かえされた。その後ご、氏しは国際こくさい調査ちょうさ委員いいん会かいの設置せっちを要請ようせいしたが、カガメ氏しによって阻止そしされた。1995年ねん8月がつ、センダションガ氏しはカガメ氏しと激論げきろんした後のち、他たの3人にんの大臣だいじんとともに解任かいにんされ、上記じょうきのトワギラムング氏しとともに亡命ぼうめいした。1996年ねんに暗殺あんさつ未遂みすいにあった後のち、1998年ねん、亡命ぼうめい先さきのケニアにて、ルワンダ政府せいふ関係かんけい者しゃとみられる者ものによって暗殺あんさつされた。

センダションガ氏し以外いがいに、2021年ねん時点じてんで少すくなくともルワンダ難民なんみん13人にんがヨーロッパやアフリカでルワンダ政府せいふによって暗殺あんさつされたという疑惑ぎわくが存在そんざいし、その他たに難民なんみんの暗殺あんさつ未遂みすいと誘拐ゆうかいなども発生はっせいしている。 

このようなルワンダでの不正ふせい選挙せんきょ、政府せいふ的てき弾圧だんあつ、人権じんけん侵害しんがいが何なん度ども報道ほうどう・報告ほうこくされているにもかかわらず、国際こくさい社会しゃかいは長年ながねん、それらを黙認もくにんしてきた。

その一ひとつの要因よういんとして、国連こくれんが「ジェノサイド中ちゅう、介入かいにゅうしなかった」「見捨みすてた」という間あいだ違ちがった罪責ざいせき感かんを持もち続つづけていることは既すでに指摘してきした。

それに加くわえて、人権じんけん団体だんたいらによると、ルワンダがアフリカの平和へいわ維持いじ活動かつどうへの最大さいだいの貢献こうけん国こくの一ひとつとして、南みなみスーダンとスーダン（ダルフール）における国連こくれんPKO以外いがいに、中央ちゅうおうアフリカ共和きょうわ国こくとモザンビークにそれぞれ二に国こく間あいだ協定きょうていを結むすんで軍ぐん派遣はけんと関係かんけいしているという。

このようなルワンダの多た国籍こくせき軍ぐんへの貢献こうけんが、人権じんけん状況じょうきょうに対たいする国内外こくないがいの批判ひはんをかわすために利用りようされてきた。上記じょうきのインガビレ氏しも「多た国籍こくせき平和へいわ維持いじ活動かつどうへの軍ぐん派遣はけんというルワンダの献身けんしんぶりは、外交がいこう関係かんけいを強化きょうかしただけでなく、同国どうこくの成功せいこう例れいというナラティブを拡散かくさんしてきた。しかし、この入念にゅうねんに作つくり上あげられた公的こうてきなイメージは、現実げんじつを反映はんえいしていない」と指摘してきしている。つまりルワンダは平和へいわ維持いじ活動かつどうへの参加さんかを政争せいそうの具ぐとして利用りようしてきた。

繰くり返かえされる歴史れきしに懸念けねん

筆者ひっしゃは2017年ねん2月がつ、セバレンジ氏しにワシントンDCで対面たいめんしたことがある。当時とうじ、アメリカではドナルド・トランプ大統領だいとうりょうが就任しゅうにんしたばかりで、「トランプ氏しも問題もんだい人物じんぶつだが、カガメ氏しはそれ以上いじょうにひどい」という話はなしで盛もり上あがった。

そのセバレンジ氏しは最近さいきんのBBCのインタビューで、ルワンダの「悪わるいガバナンス」についてこう指摘してきした。「歴史れきしが示しめすように、国家こっか元首げんしゅが国家こっか機関きかんよりも強つよい国くにでは、権力けんりょくの交代こうたいが暴力ぼうりょく的てきになり、政権せいけん後ごの混乱こんらん期きにつながることがある」 
確たしかに歴史れきしは繰くり返かえされている。

1972～1994年ねんに大統領だいとうりょうだったジュベナル・ハビャリマナ氏し も自身じしんの出身しゅっしん地ちである国内こくない北部ほくぶや側近そっきんを特別とくべつ扱あつかいする独裁どくさい主義しゅぎだったが、経済けいざい改革かいかくが成功せいこうしていたことから「無害むがい（benign）」とされ、拠出きょしゅつ国こくの間あいだでは評判ひょうばんが良よかった。現在げんざいのカガメ大統領だいとうりょうが率ひきいる開発かいはつの成功せいこう例れいも同様どうようの評判ひょうばんを得えている。

民主みんしゅ主義しゅぎの方法ほうほうであるはずの選挙せんきょが悪用あくようされ、国民こくみんを分裂ぶんれつする武器ぶきとなっている。今後こんごのルワンダの行方ゆくえ、そしてコントロールできない同国どうこくに対たいして国際こくさい社会しゃかいが黙殺もくさつしている態度たいどに強つよい懸念けねんを抱だいている。