【持続じぞく可能かのうな恋こいですか？　第だい３話わ　感想かんそう】『本当ほんとうの愛情あいじょう』とは何なにかを考かんがえさせられる『じぞ恋こい』

大切たいせつな時間じかんは奪うばわれたくないものだ。

「自分じぶんの時間じかんは自分じぶんに使つかいたい…」と、一人ひとりで生いきる選択せんたくをする人ひとがいる中なかで、誰だれかと一緒いっしょに住すむことを選えらぶ人ひともいる。

限かぎられた時間じかんを、誰だれの、何なにのために使つかいたいのか考かんがえたことはあるだろうか。

杏あんず花はな（上野うえの樹里いつき）と林はやし太郎たろう（松重まつしげ豊ゆたか）による父ちちと娘むすめの婚こん活かつ奮闘ふんとう記き。第だい３話わでは、杏あんず花はなと晴はれ太ふとし（田中たなか圭けい）、颯（磯村いそむら勇いさむ斗と）の三角さんかく関係かんけいも動うごき出だす。

颯の気遣きづかいが気きになる杏あんず花はな

晴はれ太ふとしがとある女性じょせい・高見沢たかみざわ安奈あんな（瀧たき内ない公美くみ）と親したしげに話はなしながら晴はれ太ふとしの自宅じたくを訪おとずれているところを偶然ぐうぜん目撃もくげきしてしまった杏あんず花はなは朝あさの支度したくもいつも通とおりにはいかない。

その女性じょせいは晴はれ太ふとしの元もと妻つまなのだが、杏あんず花はなには冷静れいせいに考かんがえてみる余裕よゆうはなかった。

そんな杏あんず花はなを心配しんぱいに思おもう林太郎りんたろうだったが、街まち中ちゅうで颯に偶然ぐうぜん出会であう。

杏あんず花はなの好すきな人ひとが颯だと勘違かんちがいした林はやし太郎たろうは、颯の家いえが漏水ろうすいで大変たいへんだと聞きき、颯を自宅じたくに住すまわせることをひらめくのだった。

はじめは反対はんたいだった杏あんず花はなも、ズボラ故ゆえに手ての届とどかなかったキッチンや冷蔵庫れいぞうこの整理せいりもしてくれるし、朝あさ起おきたら美味おいしい料理りょうりがある生活せいかつも悪わるくないと思おもい始はじめる。

寝ねても起おきても快適かいてきな生活せいかつはむしろご褒美ほうびでしかない。

しかし杏あんず花はなは颯のその気遣きづかいが気きになっていた。

焦こげも食たべるし、勧すすめられたからと嫌きらいな梅干うめぼしも食たべる。寝坊ねぼうしても嫌いやな顔かおしない。総そうじて仏ふつのような颯の優やさしさや笑顔えがおが、杏あんず花はなにはかえって辛からく見みえていたのだ。

颯の貴重きちょうな時間じかんを奪うばいながら、自分じぶん達たちだけが得えしている、そう思おもったのだろう。

そういって、気きをつかう必要ひつようはないことも、いい奴やつだってことも真まっ直すぐ伝つたえてくれる杏あんず花はなを、颯は強つよく抱だきしめる。

つい「惚ほれてまうやろ…！」と言いいたくなるほど、杏あんず花はなの芯しんの優やさしさが見みえた場面ばめんだった。

両りょう片想かたおもい状態じょうたいなのに、先さきに進すすめない杏あんず花はなと晴はれ太ふとし

一方いっぽうの晴はれ太ふとしは、林はやし太郎たろうから杏あんず花はなに想おもい人じんがいることを聞きかされ、杏あんず花はなは晴はれ太ふとしに彼女かのじょがいると誤解ごかいしたままき出きだせずにいた。

ほぼ両りょう片想かたおもい状態じょうたいなのに、暫しばらく恋愛れんあいから遠とおざかっていた二人ふたりには聞きく勇気ゆうきが出でない。

その間あいだにあるのは颯の存在そんざいだ。

颯が杏あんず花はなの家いえに同居どうきょしていると知しった晴はれ太ふとしは負まけじと、息子むすこの虹にじ朗ろう（鈴木すずき楽らく）と共ともに颯の引ひっ越こしを手伝てつだうことに。

杏あんず花はなの知しらぬところで恋こいのバトルが勃発ぼっぱつしていた。

杏あんず花はなと二に人にんきりになった晴はれ太ふとしは、元もと妻つまや自分じぶんについて話はなす。

「口くちだけ優やさしい夫おっとはいらない」と愛想あいそ尽つかされて出でていかれ、シングルファーザーとなった晴はれ太ふとし。

それからというもの、虹にじ朗ろうの幸しあわせを最さい優先ゆうせんにしてきたのだ。

シングルの婚こん活かつは難むずかしいとされる理由りゆうもここにある。

大切たいせつな子こどもが、婚こん活かつの場ばでは『お荷物にもつ扱あつかい』される現実げんじつ。自分じぶんの人生じんせいの時間じかんも体力たいりょくも、子こどもに費ついやすだけの生活せいかつ。

それでも自分じぶんの幸しあわせを考かんがえたときにその狭間はざまで葛藤かっとうし、どんどん時間じかんだけ過すぎていく。

晴はれ太ふとしは虹にじ朗ろうの幸しあわせを考かんがえてやれていない自分じぶんを責せめていた。

そんな晴はれ太ふとしに杏あんず花はなが伝つたえたのは、虹にじ朗ろうを『幸しあわせそうな子こ』だと感かんじたことだった。

お昼ひるを蕎麦そばにしようとしたとき、虹にじ朗ろうは蕎麦そばを嫌きらいと言いった。

普通ふつうならわがままな子こという印象いんしょうが先さきにきてしまうが、杏あんず花はなは嫌きらいなものをちゃんと嫌きらいと言いえたことを見みていたのだ。

嫌きらいと言いうことは、好すきなものを好すきと主張しゅちょうするよりはるか難むずかしいことだ。

確たしかにその人ひとなりの優やさしさで、周まわりを気遣きづかって言いわない選択せんたくだってある。

しかし、嫌きらいなものを嫌きらいと言いえる環境かんきょうがちゃんとあるということが、幸しあわせを表あらわす一ひとつの指標しひょうにもなる。

相手あいてとの信頼しんらい関係かんけいがある環境かんきょうでは、自分じぶんの時間じかんを相手あいてに奪うばわれることになっても、同時どうじに別べつの大切たいせつな何なにかを相手あいてからもらっている実感じっかんが湧わいてくるものだ。

時間じかんを奪うばうことは、信用しんようも目めに見みえない優やさしさも奪うばう行為こういだ。

しかし、晴はれ太ふとしも確たしかに心しんがふわっとする瞬間しゅんかんを感かんじていた。

晴はれ太ふとしと虹にじ朗ろうは親子おやことの幸しあわせな時間じかんをしっかり過すごせているのである。

林はやし太郎たろうと明里あけさとの恋こいの行方ゆくえは…

一方いっぽうの林はやし太郎たろうは、明里あけさと（井川いかわ遥はるか）から今いまから会あえないかと言いわれ、林はやし太郎たろうはそのぎっくり腰ごしのまま急いそいで明里あけさとのもとへ向むかう。

「会あいたい」という言葉ことばは即効そっこう薬やくだ。

明里あけさとは、お見合みあいで年内ねんない結婚けっこんを視野しやに真剣しんけん交際こうさいに進すすもうと言いわれた男性だんせいから、家いえで飼かっている猫ねこを手放てばなさない限かぎり、結婚けっこんできないと告つげられていた。

初はじめは、林はやし太郎たろうは「そうですか…」しか言いわなかった。

お見合みあいで大事だいじなき上手きじょうずになるための相槌あいづち『さしすせそ』。しかし、林はやし太郎たろうは、自分じぶんの言葉ことばで、明里あけさとに向むき合あおうとしていく。

日本語にほんご学者がくしゃとして、様々さまざまな言葉ことばの変化へんか、時代じだいの変化へんかにも敏感びんかんに触ふれてきた。

林はやし太郎たろうなりに、明里あけさとの大切たいせつな家族かぞくと明里あけさとの一番いちばんの幸しあわせを考かんがえていたのだ。

明里あけさとは誰だれかに、止とめて欲ほしかった。

簡単かんたんに大事だいじな家族かぞくを手放てばなせと言いわれたにもかかわらず、手放てばなすことなんてできないはずなのに、焦あせって、答こたえが出だせなかったのだ。

思おもわず涙なみだする明里あけさとに、そっと、ストールをかける林太郎りんたろう。

寒さむいわけないはずなのに、「寒さむくなってきたので…」と涙なみだする明里あけさとを人目ひとめから隠かくす。

火曜かよう１０時じ枠わくのドラマではおなじみの、『大切たいせつな人ひとの涙なみだを誰だれにも見みせない』イケメンムーブである。

何なにに対たいしても堅物かたぶつな林はやし太郎たろうが自然しぜんに見みせる大人おとなな優やさしさに胸むねがときめいた瞬間しゅんかんだった。

誰だれかと一緒いっしょに住すむということとは

沢田さわだ親子ちかこにますます惚ほれた第だい３話わ。誰だれに対たいしてもまっすぐ向むき合あう素敵すてきな杏あんず花はなと不器用ぶきようながらも頑張がんばる林太郎りんたろうの恋路こいじをこれからも見守みまもっていきたいと思おもう。

そして『突然とつぜん始はじまる同居どうきょ生活せいかつ』などは、ただ恋愛れんあい模様もようを盛もり上あげるものとして王道おうどうな展開てんかいであるが、『じぞ恋こい』にはそれに留とまることないテーマがある。

誰だれかと一緒いっしょに住すむということ。それは同時どうじにお互たがいの時間じかんを奪うばうこと。でも嫌いやなことだけではない。

限かぎられた自分じぶんの時間じかんを費ついやしてもいいと思おもえる相手あいてに芽生めばえるものが、本当ほんとうの愛情あいじょうと呼よぶものなのかもしれない。

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[文ぶん・構成こうせい／grape編集へんしゅう部ぶ]