【石子いしこと羽はね男おとこ 第だい6話わ 感想かんそう】『産後さんごパパ育休いくきゅう制度せいど』直前ちょくぜんだからこそ見みごたえを感かんじた第だい６話わ

何事なにごとも初はじめから１００%変かえようとするのは難むずかしい。そして人ひとは変化へんかすることを諦あきらめていくのだ。

６話わでは『幽霊ゆうれいマンション』を舞台ぶたいに現代げんだいの『育休いくきゅう問題もんだい』に迫せまり、現状げんじょうを変かえていく上うえで大切たいせつな視点してんが描えがかれた。

夫婦ふうふに届とどいた怪文書かいぶんしょ

様々さまざまな案件あんけんを経へて石子いしこ（有村ありむら架か純じゅん）とようやくパートナーらしくなってきた羽はね男おとこ（中村なかむら倫りん也）のもとにツイッターDMで依頼いらいが届とどく。

依頼人いらいにんは、中小ちゅうしょう企業きぎょうの共同きょうどう経営けいえい者しゃ・高梨たかなし拓たく真しん（ウエンツ瑛あきら士し）。数ヶ月すうかげつ前まえに分譲ぶんじょう賃貸ちんたいマンションに越こしてきたが、衝撃しょうげきの怪文書かいぶんしょが匿名とくめいの手紙てがみで届とどいたようだった。

不慮ふりょの事故じこ以外いがいの理由りゆうで死しを遂とげている場合ばあいには、不動産ふどうさん屋やは契約けいやく者しゃへ告知こくちしなければならない。

双子ふたごの息子むすこを抱かかえ育児いくじノイローゼ気味ぎみだった拓つぶせ真しんの妻つまの文香あやか（西原にしはら亜希あき）が最近さいきん、幻覚げんかくや幻聴げんちょうを訴うったえ始はじめており、早急そうきゅうな解決かいけつが必要ひつようだった。

さっそく石子いしこと羽はね男おとこは、引ひっ越こし費用ひようの請求せいきゅうと契約けいやく解除かいじょの違約いやく金きん無効むこう化かを不動産ふどうさん屋や社長しゃちょう・六車むぐるま（佐藤さとう仁美ひとみ）に交渉こうしょうしに行いくも、前まえの住人じゅうにんに告知こくちしたとして告知こくち義務ぎむ違反いはんはないと主張しゅちょう。

そして、「幽霊ゆうれいが出でると言いって裁判さいばんを起おこしてみては」とけん制せいされ、二人ふたりは突つっ返かえされてしまう。

だがこの結果けっか次第しだいで、拓つぶせ真しんが立たち上あげた会社かいしゃの顧問こもん弁護士べんごしになり得えるかもしれない羽はね男おとこと、なにより収入しゅうにゅうが大切たいせつな石子いしこ。

『決きまったらデカい』案件あんけんをここで投なげ出だすわけにはいかなかった。二人ふたりは怪文書かいぶんしょを送おくった犯人はんにんへ慰謝いしゃ料りょう請求せいきゅうのために動うごき出だす。

しかし手紙てがみを出だした人物じんぶつについて皆みな心当こころあたりはなく、元もと住民じゅうみんが出でて行いった理由りゆうも不明ふめいだった。何なにも手てがかりをつかめない二人ふたりは、まず拓ひらけ真しんから生活せいかつ事情じじょうを詳くわしく聞きくことに。

ここから今回こんかいの案件あんけんの大おおきなテーマに切きり込こんでいく。

石子いしこは法律ほうりつに携たずさわる身みとして、拓つぶせ真しんが正当せいとうな権利けんりである『育休いくきゅう制度せいど』を利用りようしていないことを不思議ふしぎに思おもっていた。

だが実じつは、社員しゃいんが既すでに産休さんきゅう中ちゅうで、拓つぶせ真しんは自分じぶんも育休いくきゅうを取とることが現実げんじつ的てきに厳いかめしかったと話はなす。

『声こえを上あげること』を軸じくとした今いま作さくで描えがかれる、声こえを上あげたくても上あげられない人ひとのリアルな声こえである。石子いしこの胸むねに拓ひらけ真しんの言葉ことばが重おもくのしかかる。

元々もともとは子供こどもは保育園ほいくえんに預あづけ、妻つまも仕事しごとに復帰ふっきする予定よていだったが、待機たいき児童じどうとなり今いまは『保ほ活かつ中ちゅう』なのだ。

待機たいき児童じどう問題もんだい解消かいしょうのため、多おおくの自治体じちたいにおいて世帯せたい状況じょうきょう指数しすう『保ほ活かつポイント』で入園にゅうえんの可否かひを決きめる制度せいどがある。

親おやの労働ろうどう環境かんきょうや収入しゅうにゅう、兄弟きょうだい姉妹しまいや親族しんぞくの有無うむ、障さわがいや健康けんこう状態じょうたいなどを点数てんすう化かし、各かく家庭かていにおける保育園ほいくえんの必要ひつよう性せいの指標しひょうとしている。

保護ほご者しゃの間あいだで、高たかい点数てんすうを得えるために家庭かていの状況じょうきょうを無理矢理むりやりにでも調節ちょうせつする者ものも現あらわれ、熾烈しれつな競争きょうそうが繰くり広ひろげられているのだ。

高たかいポイントが、家庭かてい環境かんきょうの恵めぐまれなさの証拠しょうことして評価ひょうかされている。

待機たいき児童じどう問題もんだいという不幸ふこうを解消かいしょうするための『保ほ活かつ』が、いつの間まにか不幸ふこうの背せ比くらべの指標しひょうに変かわってきたように思おもえてくる。

拓つぶせ真しんもそんな問題もんだいと仕事しごとで板挟いたばさみ状態じょうたいだった。

心身しんしん共どもに限界げんかいが来きていた妻つまの文香あやかも、料理りょうり中ちゅうにボヤ騒さわぎを起おこし、入院にゅういんする事態じたいとなる。加くわえて、芳香ほうこう剤ざいや柔軟じゅうなん剤ざいの匂においで吐はき気けを催もよおすなど、文香あやかの体調たいちょうは悪化あっかしていった。

怪文書かいぶんしょの犯人はんにんは…

一方いっぽう、手紙てがみの調査ちょうさを進すすめていた石子いしこと羽はね男おとこは、石子いしこを手伝てつだいにきた大庭おおば（赤あか楚すわえ衛まもる二に）の協力きょうりょくのもと、住民じゅうみんの証言しょうげんと、エントランスの防犯ぼうはんカメラの映像えいぞうの犯人はんにんの様子ようすから、同おなじマンションに住すむ女性じょせい・熊くま切きり（向こう里さと祐ゆう香が）が怪文書かいぶんしょの犯人はんにんだということを突つき止とめる。

熊くま切きりが手紙てがみで高梨たかなし夫妻ふさいを退すさ居いさせたかった理由りゆう、それは『保ほ活かつ』のためだった。

熊くま切きりも待機たいき児童じどうを抱かかえ、経済けいざい的てきに厳きびしい状況じょうきょうで保ほ活かつを続つづけている中なか、自分じぶんよりポイントの高たかい高梨たかなし家かが越こしてきたため、苦肉くにくの策さくを打うったのだという。

他人たにんを蹴落けおとしてまで掴つかみ取とった幸しあわせが招まねいたのは、誰だれかの幸しあわせを曇くもらせる結末けつまつだった。

拓つぶせ真しんはその苦くるしさを痛いたいほど理解りかいしていた。そんな中なかでも、妻つまを助たすけてくれた熊くま切きりを思おもい、慰謝いしゃ料りょうを断ことわるのだった。

残のこるは、不動産ふどうさん屋やの過失かしつを裏付うらづける証拠しょうこ。羽はね男おとこ達たちは、住人じゅうにんが持もってきた元もと住人じゅうにんの映像えいぞうをヒントに、その人物じんぶつに接触せっしょくすることに成功せいこうし、ルームロンダリングの証言しょうげんを掴つかむ。

そしてここから石羽いしぱコンビのいつものショータイム。

告知こくち義務ぎむ違反いはんに加くわえ、詐欺さぎ罪ざい、文香あやかの幻覚げんかくや幻聴げんちょうの症状しょうじょうの原因げんいんとなった化学かがく物質ぶっしつ過敏かびん症しょうを引ひき起おこしたリフォームのシックハウス規制きせい違反いはん。

高梨たかなし夫妻ふさいの訴うったえを伝つたえる羽はね男おとこの圧力あつりょくに負まけ、ついに六ろく車しゃは数々かずかずの違反いはんを認みとめ始はじめる。

石子いしこの完璧かんぺきなシナリオを、羽はね男おとこが完璧かんぺきに喋しゃべり倒だおし、これでもかと畳たたみ掛かける。羽はね男おとこの「これ以上いじょうの要求ようきゅうは致いたしません」という言葉ことばに合あわせ、石子いしこの口くちが動うごく場面ばめんに相棒あいぼうとしての信頼しんらい関係かんけいを強つよくを感かんじた。

その後ご、待機たいき児童じどうが少すくないところに引ひっ越こすことができた高梨たかなし家かのもとを石子いしこと羽はね男おとこが訪おとずれていた。

拓つぶせ真しんは育休いくきゅうは取とることができなかったが、小ちいさな努力どりょくを積つみ重かさね、文香あやかの負担ふたんを減へらせるように奮闘ふんとう中ちゅうだという。

そしてそれを聞きき安心あんしんした様子ようすの石子いしこは、「綺麗事きれいごとだけでは生いきていけない」という拓つぶせ真しんの言葉ことばがずっと胸むねを締しめ付つけていたことを語かたり出だす。

２０２２年ねん１０月がつに『産後さんごパパ育休いくきゅう制度せいど』がスタートする。しかし法律ほうりつという受うけ皿ざらが用意よういされるとしても、利用りようしたくても思おもい留とまる人ひとは多おおい。

育休いくきゅう取得しゅとくを諦あきらめさせるためのハラスメントも存在そんざいするし、育休いくきゅうを取とっても周まわりにしわ寄よせがいく現状げんじょうだ。綺麗事きれいごとを言いう暇ひまはないほど、人間にんげん自分じぶんの生活せいかつでいっぱいいっぱいだ。

しかし、こうした法ほう整備せいびが、誰だれもが育児いくじと仕事しごとを両立りょうりつしやすい環境かんきょうに近ちかづく大おおきなステップとなるのは確たしかだ。石子いしこはこう続つづける。

どんな時ときでも、不測ふそくの事態じたいが起おこる。育児いくじ休暇きゅうかだけを差別さべつ化かするのではなく、社員しゃいんの不在ふざいに対応たいおうできる体制たいせいを会社かいしゃとしても、個人こじんとしても整ととのえられるようになれば、残のこされた人ひとも安心あんしんできるだろう。

高梨たかなし夫妻ふさいのように、イヤイヤ期きを迎むかえた我わが子こに成長せいちょうを感かんじ微笑ほほえむ親おやが少すこしでも増ふえるように…。

何なによりスモールステップを積つみ重かさねていくことが大事だいじだということを教おしえてくれた。

『石子いしこと羽はね男おとこ』第だい６話わで大庭おおばの恋こいの行方ゆくえが描えがかれる

そして大庭おおばの恋こいの行方ゆくえも描えがかれた６話わ。

石子いしこに告白こくはくはしたものの、お付つき合あいは保留ほりゅうになっていると大庭おおばから伝つたえられた羽はね男おとこは、嘘うそをついて大庭おおばと石子いしこをわざと二に人にんきりにするなど、厚あつかましく応援おうえんする。

曖昧あいまいな気持きもちを真剣しんけんな大庭おおばに返かえしても良よいのか、そして事務所じむしょとの両立りょうりつで悩なやむ石子いしこに対たいして、「心配しんぱいいらないよ」と優やさしく伝つたえる羽はね男おとこ。

背中せなかを押おされ、大庭おおばへの思おもいを確認かくにんする石子いしこ。誰だれでも変かわることは怖こわい。積つみ上あげてきた大切たいせつなものがあるからこそ、そう簡単かんたんには変へんわれない。その中なかでも石子いしこは自分じぶんなりに大庭おおば告白こくはくを受うける。

初はじめから完璧かんぺきなものなど存在そんざいしない。人ひとや世界せかいは変かわりゆくもの。明日あしたを変かえるのは、いつだって変かわろうとしたその瞬間しゅんかんなのだ。

説教せっきょう臭くさくないまま、日々ひびの大切たいせつな視点してんに導みちびいてくれる作品さくひんだということを、より強つよく実感じっかんする６話わだった。

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[文ぶん・構成こうせい／grape編集へんしゅう部ぶ]