【エルピス 第だい４話わ 感想かんそう】「かないっこなかった、最初さいしょから」その言葉ことばが意味いみすることは

松本まつもと良夫よしお死刑しけい囚しゅう（片岡かたおか正二郎しょうじろう）冤罪えんざい特集とくしゅうを独断どくだんで放映ほうえいした浅川あさがわ恵めぐみ那な（長澤ながさわまさみ）はそう決意けついし、その瞳ひとみは放送ほうそう中ちゅうも真まっ直すぐを捉とらえ続つづけていた。

このことは、MCの海老田えびた天丼てんどん／海老えび天たかし（梶原かじはら善よし）を除のぞき、制作せいさくを共ともにした岸本きしもと拓朗たくろう（眞栄しんえい田郷たごう敦あつし）も、反対はんたいしていたディレクターの名越なごや公平こうへい（近藤こんどう公園こうえん）、そして村井むらい（岡部おかべたかし）をはじめ、誰だれも知しらなかった。

だが、その村井むらいにジャーナリズム魂たましいが舞まい戻もどったのか、何故なぜか続行ぞっこうのサインを出だし、オンエアも番組ばんぐみも無事ぶじ終了しゅうりょう。

その後ご、浅川あさがわは名越なごしからお決きまりのパワハラ気味ぎみな叱責しっせきを受うけ、岸本きしもとにもお決きまりの目め力りょくで責せめられる。

その一方いっぽうで、視聴しちょう率りつ万まん年ねん最下位さいかい『フライデーボンボン』史上しじょう最大さいだいの関心かんしんが寄よせられるなど、世間せけんの特集とくしゅうへの反響はんきょうは想像そうぞう以上いじょうに大おおきかった。

浅川あさがわと岸本きしもとのもとに、被害ひがい者しゃ遺族いぞくとして取材しゅざいした井川いかわ晴美はるみの姉あね・純じゅん夏なつから電話でんわがかかってくる。

純じゅん夏なつは特集とくしゅうを見みた晴美はるみの友人ゆうじんが両親りょうしんに反応はんのうを寄よせたと聞きき、浅川あさがわに感謝かんしゃを伝つたえたかったのだという。

浅川あさがわは直すぐに涙なみだが溢あふれた。この特集とくしゅうを放送ほうそうする意義いぎがあり、そして自分じぶんの正義せいぎが報むくわれた瞬間しゅんかんだった。

SNSの反応はんのうを見みても、事件じけんをこのまま終おわらせまいとするネットユーザーが大半たいはんを占しめ、６.５％という高水準こうすいじゅんの視聴しちょう率りつも浅川あさがわの背中せなかを押おした。

放送ほうそう不適切ふてきせつと判断はんだんしたはずの局長きょくちょうもなぜか大だい喜よろこびだった。浅川あさがわは、名越なごしの嘘うそだったと言いうが、局長きょくちょうが手てのひらを返かえしただけのようにも思おもえる。

どちらにせよ、浅川あさがわの言いう通とおり「おじさんたちのメンツとプライドは地雷じらい」なのだ。自分じぶんのポジションを奪うばわれないために必死ひっしにしがみつき、小ちいさな塵ちりのようなプライドを大おおきく見みせびらかして壁かべの頂上ちょうじょうで良よい顔かおしながら笑わらってるのだ。

そんな状況じょうきょうの中なかだからまだ危あやういことは、浅川あさがわ自身じしんもわかっていた。

ただ一部いちぶが動うごき出だすきっかけをつくっただけである。素直すなおに喜よろこぶ岸本きしもとを制せいしながら一層いっそう意気込いきごむ思おもいだった。

そして、笹岡ささおかまゆみ（池津いけつ祥子さちこ）から行方ゆくえ不明ふめい女子じょし中学生ちゅうがくせいの殺害さつがい事件じけんの被害ひがい者しゃと晴美はるみの死体したいの特徴とくちょうが酷似こくじしていることを教おしえられる。

しかも自分じぶん達たちの間違まちがいを隠蔽いんぺいするためなのか、警察けいさつは捜査そうさを終了しゅうりょうさせるとの噂うわさもあるという。

この情報じょうほう提供ていきょうを受うけ、浅川あさがわたちが次つぎに調しらべたのは、矛盾むじゅんしている目撃もくげき証言しょうげんだった。

目撃もくげき者しゃの西澤にしざわ（世よ志こころざし男おとこ）は、「身長しんちょう１６０cm、４０～５０代だいの作業さぎょう服ふくを着きた男おとこが山道さんどうから駆かけ降おりてきて、自転車じてんしゃで立たち去さった」と証言しょうげんしていた。

しかし、捜査そうさの初期しょき段階だんかいでは「ロン毛げの若者わかものだった」という別べつの証言しょうげんがあったはずだ。西澤にしざわの証言しょうげんが嘘うそならば、再審さいしん請求せいきゅうも通とおるはず。

しかし『開ひらかずの扉とびら』と呼よばれる日本にっぽんの司法しほうではそれが叶かなうケースの方ほうが少すくないのである。

検察けんさつ側がわの同意どういがいるDNA鑑定かんてい。隠かくしたいことがあれば思おもい通どおりにできてしまうのだ。

可能かのう性せいはゼロではないものの、こんなのゼロに等ひとしいも同然どうぜんなのである。

それでも浅川あさがわ達いたるはまずはこの目撃もくげき情報じょうほうや矛盾むじゅん点てんについて第だい二に回かいの特集とくしゅうを組くんだ。

ネットメディアを中心ちゅうしんに世間せけんの話題わだいとして広ひろめることに成功せいこうし、名越なごしも局長きょくちょうも後戻あともどりはできなくなっていた。

視聴しちょう者しゃを騒然そうぜんとさせた、長澤ながさわまさみのベッドシーン

そんな矢先やさき、浅川あさがわは弁護士べんごしの木村きむら（六角ろっかく精きよし児じ）から、に、再審さいしん請求せいきゅうが棄却ききゃくされたことを告つげられる。

視聴しちょう率りつは取とれて世よの中なかの関心かんしんは強つよいのにこのタイミングでの棄却ききゃく。番組ばんぐみと関係かんけいがあるのかも、何なにもわからなかった。

しかしこれだけは推測すいそくできた。検察けんさつや裁判所さいばんしょ、そのメンツがプライドが捻ねじり潰つぶされたようなものなのだ。今いますぐ手てを打うちたいものなのだろう。

「敵てきはどこにいるかわからない」という村井むらいの言葉ことばが今いま返かえってくる。人ひとのためにある司法しほうが時ときとして敵てきとして立たちはだかる。

岸本きしもとは捜索そうさくを続つづける意思いしを主張しゅちょうするが、浅川あさがわはもう半分はんぶん諦あきらめるしかないと思おもっていた。

国くに中ちゅうが再審さいしんしろと言いえば動うごくかもしれないって思おもっていたが、ネットの反応はんのうなんて世よの中なかの一部いちぶの声こえにすぎない。

時じが立たてば話題わだいは移うつり変かわり、すぐ鎮火ちんかしてしまう。

浅川あさがわの「勝かってこないよ君きみ」は岸本きしもとを含ふくめた若者わかもののような全すべてが人任ひとまかせの人間にんげんを指さしているのだ。国家こっか権力けんりょくの力ちからを、思おもい知しる。

そして浅川あさがわは政治せいじにも精通せいつうしている斎藤さいとう（鈴木すずき亮平りょうへい）が話はなしたかった内容ないようがこれに関かかわることなのか気きになり始はじめる。

斎藤さいとうを家いえに招まねき、早速さっそく再審さいしん請求せいきゅうが棄却ききゃくされたことや何なにを話はなそうとしていたのかを聞きくが、「知しらない方ほうがいいこともある」と言いい、浅川あさがわの頬ほおに手てを添そえるだけだった。

そんな斎藤さいとうの誘惑ゆうわくを、浅川あさがわは拒こばむことはできない。

断だん捨離で全すべてを捨すて去さったはずの部屋へやにはダブルベットが置おかれている。

浅川あさがわにとっては、この世界せかいに絶望ぜつぼうした時ときに「大丈夫だいじょうぶだよ」と言いわれ、何なにかを考かんがえるより、ただ抱いだかれ、斎藤さいとうの温ぬくもりを感かんじる方ほうが自分じぶんを守まもっているように思おもえるのだ。斎藤さいとうもそれを理解りかいっていた。

二人ふたりの関係かんけいは、ただ愛あいで繋つながっているものではない。

浅川あさがわの言葉ことばはきっと斎藤さいとうに、そして権力けんりょくにも。

開あけ広ひろげすぎた『パンドラの箱はこ』

そして岸本きしもとの元もとに視聴しちょう者しゃから晴はれ美よしと手紙てがみの文通ぶんつうしていたというネタが寄よせられるが、斎藤さいとうからガセネタと告つげられ、まんまと騙だまされたことを知しり、村井むらいとやけ酒ざけをしていた。

そこで村井むらいに改あらためて忠告ちゅうこくを受うけるも、「負まけちゃダメ」と特集とくしゅうを続つづける意思いしを見みせる。

いや、『続つづけなくては』ならないのだ。

自分じぶんが持もち込こんだことへの責任せきにんを感かんじているわけではない。ただ彼かれは、全すべてにおいて勝かち組ぐみであり、エリートである自分じぶんを誇ほこりに思おもい続つづけるしかないのだ。

でも本当ほんとうは、もうわかっていた。

勝かち組ぐみという幻想げんそうの中なかに居い続つづけるために、友達ともだちを見殺みごろしにしてまで、偽いつわりの笑顔えがおを演えんじてきただけということを。それは、『負まけている』と同然どうぜんだったということを。

そう村井むらいに打うち明あけ岸本きしもとは、ある場所ばしょへと連つれて行いかれた。そこは明王みょうおう中学ちゅうがくの校舎こうしゃが見みえる屋上おくじょうだった。村井むらいは当時とうじ、生徒せいとの自殺じさつを取材しゅざいしていたのだ。

逃にげ出だそうとする岸本きしもとに、「自分じぶんが何なにに負まけてきたのか向むき合あえ。それができねえ限かぎり、お前まえは一生いっしょう負まけ続つづけて終おわるぞ」と忠告ちゅうこくする。

岸本きしもとの目めにはまだ、『あの手て』がこびりついていた。

岸本きしもとは声こえを枯からして泣なく。負まけ続つづけた『岸本きしもと拓朗たくろう』を、他人たにんからも、勝かち組ぐみの自分じぶんにも見抜みぬかれてしまった。

勝かち組ぐみである自分じぶんが崩くずれ始はじめた。一発いっぱつ指ゆびで弾ひけば簡単かんたんに砕くだけ散ちる、そんな脆もろい器うつわだった。

いつもそこにあった、奴やつの強烈きょうれつな目め力りょくは今いまはもうない。食たべ物ものも喉のどを通とおらなかった。

浅川あさがわはそんな岸本きしもとの様子ようすに「脳天のうてんから真まっ二ぷたつに切きられたような気きがした」という。

そう言いいながら鏡かがみを見みる浅川あさがわ。落おちぶれたもう一ひとつの自分じぶんを客観きゃっかん視ししたような気きになったという暗示あんじだろうか。

『岸本きしもと拓朗たくろう』。つまりこれは私わたし、『浅川あさがわ恵めぐみ那な』なんだと。

そしてラスト、再審さいしん請求せいきゅうが棄却ききゃくされたと聞きいた、チェリーこと大山おおやまさくら（三浦みうら透子とうこ）らしき女性じょせいがベランダから転落てんらくする。

パンドラの箱はこを開あけ広ひろげてしまったことなよる、余波よははどこまで続つづくのか。次週じしゅうも注目ちゅうもくだ。

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[文ぶん・構成こうせい／grape編集へんしゅう部ぶ]