【『ファーストペンギン!』感想かんそう 最終さいしゅう回かい】それでも最初さいしょに飛とび込こむんだ!・ネタバレあり By - かな 公開こうかい:2022-12-12 更新こうしん:2022-12-12 かなドラマコラムファーストペンギン!堤つつみ真一しんいち奈緒なお Share Post LINE はてな コメント Twitterを中心ちゅうしんに注目ちゅうもくドラマの感想かんそうを独自どくじの視点してんでつづり人気にんきを博はくしている、かな(@kanadorama)さん。 2022年ねん10月がつスタートのテレビドラマ『ファーストペンギン!』(日本にほんテレビ系けい)の見みどころを連載れんさいしていきます。 かなさんがこれまでに書かいたコラムは、こちらから読よめます。 ヒロインの岩崎いわさき和佳わか(奈緒なお)が時折ときおり例たとえられていた、ジャンヌ・ダルクだったら、「最後さいごは焼やかれちゃうでしょ」と思おもっていたら「ファーストペンギンも大体だいたい食たべられちゃいますけどね」と作中さくちゅうで言いわれ、そこは笑わらいどころだと思おもっていた。 まさかの最終さいしゅう回かい。愛あいした浜はまを去さっていく和佳わかに、それが冗談じょうだんではなかったんだと呆然ぼうぜんとする。 『ファーストペンギン!』(日本にほんテレビ系けい 水曜すいよう22時じ)の最終さいしゅう話ばなしは、そのほろ苦にがさで、見届みとどけた私わたしたちの心しんに強つよく残のこる結末けつまつになった。でも不思議ふしぎと悲愴ひそう感かんはない。少すこし苦にがくても、きちんと光ひからさすラストだ。 画像がぞうを見みる(全ぜん7枚まい) 食くい詰つめたシングルマザーがやってきたのは、うらぶれた漁村ぎょそんだった。そこで彼女かのじょは、浜はまの未来みらいを憂うれう漁師りょうしの片岡かたおか洋ひろし(堤つつみ真一しんいち)たちと協力きょうりょくして、従来じゅうらいの漁協ぎょきょうの販路はんろを通とおさない直販ちょくはん事業じぎょうを立たち上あげる。 しかし幾多いくたの妨害ぼうがいの果はてに、漁協ぎょきょうと地元じもとの元もと政治せいじ家かから資金繰しきんぐりを切きられ追おい詰つめられた和佳わかは、元もと官僚かんりょうの経営けいえいコンサル・波佐はざ間あいだ(小西こにし遼りょう生せい)の紹介しょうかいを通つうじてとある民間みんかん会社かいしゃから支援しえんを受うける。 しかしその会社かいしゃは外国がいこく企業きぎょうで、経済けいざいを通つうじて浜はまの実質じっしつ的てきな侵略しんりゃく行為こういを目論もくろんでいることが判明はんめいする。 最終さいしゅう回かい、浜はまの面々めんめんはすんでのところで外国がいこく企業きぎょうを追おい返かえしたものの、それは執拗しつように和佳わかとさんし船団せんだん丸まるを追おい詰つめてきた地元じもとの保守ほしゅ政治せいじ家か・辰たつ海かい(泉谷いずみやしげる)の力ちからあってのことだった。 本意ほんいではなくとも、あわやのところで浜はまを売うり渡わたす寸前すんぜんだった和佳わかは、責任せきにんを厳きびしく問とわれることになってしまう。 直販ちょくはん事業じぎょうをやめるように迫せまられた和佳わかは、自分じぶんが浜はまを去さることと引ひき換かえに直販ちょくはん事業じぎょうを続つづけられる約束やくそくを取とり付つけ、浜はまの未来みらいを漁師りょうしたちに託たくして浜はまを後のちにする。 そして10年ねん後ご、成長せいちょうした和佳わかの息子むすこの進すすむ(城しろ桧ひのき吏)が、片岡かたおかを訪たずねて懐なつかしい汐しおヶ崎さきにやってくるのだった。 人口じんこうが減少げんしょうし続つづけて縮ちぢんでいくこの国くにで、生産せいさん者しゃと消費しょうひ者しゃともに利益りえきある新あたらしい流通りゅうつうを構築こうちくしたい主人公しゅじんこうたちも、衰退すいたいを待まつ体制たいせいを潰つぶす為ために外国がいこくと結託けったくして何なにが悪わるいかと問とう元もと官僚かんりょうも、古ふるくあるものには理由りゆうがあるのだと大衆たいしゅうには見みえづらい大局たいきょく観かんと体制たいせいの意義いぎを厳きびしく問とう老練ろうれんの政治せいじ家かも、それぞれの理由りゆうがあって非常ひじょうに見みごたえある最終さいしゅう話ばなしだった。 今いまあるこの社会しゃかいは、自然しぜんの生態せいたい系けいと同おなじように、様々さまざまな事柄ことがらが絡からみ合あって回まわっている。 結果けっかとして悪わるい一ひとつの事象じしょうに対たいして、安易あんいにこれだけを壊こわして取とり除のぞけば良よいという『悪者わるもの』など本来ほんらいいないのだろうと思おもう。 それも理解りかいした上うえで、やはり守旧しゅきゅうの側がわから新あたらしい価値かち観かんへの対話たいわの余地よちがもっとあるべきだと痛感つうかんした。 資金しきんが尽つきれば会社かいしゃは死しぬ。リーダーは、部下ぶかや組織そしきに関かかわる人々ひとびとを大切たいせつに思おもえばこそ会社かいしゃが死しなないために、どんな藁わらかも見みないで掴つかむ。 そこまでに追おい込こんだのは、「話はなしてもどうせ分わかるまい」と相手あいてを侮あなどって対話たいわを持もたずに突つき落おとした側がわだろう。 その前まえに、五ご十じゅう年ねん、百ひゃく年ねん先さきの未来みらいを見据みすえた対話たいわは考かんがえられなかったものか。 政治せいじ家かの辰たつ海かいは和佳わかのリーダーとしての資質ししつを認みとめつつも、浜はまで仕事しごとを続つづけることは許ゆるさず、和佳わかは辰たつ海かい相手あいてに自分じぶんが去さった後のちのさんし船団せんだん丸まるの仕事しごとの安寧あんねいを願ねがって膝ひざを折おり土下座どげざする。 分わかりやすい勧善懲悪かんぜんちょうあくの物語ものがたりなら、最終さいしゅう話ばなしに膝ひざを折おるのは敵対てきたいする側がわだったろう。あるいは、敵てきのボスが去さったなら、主人公しゅじんこうは立派りっぱに凱旋がいせんするだろう。 けれども、『ファーストペンギン!』は、そのどちらもしなかった。 和佳わかは直販ちょくはん事業じぎょうの引ひき継つぎを果はたした後のちは、浜はまの繁栄はんえいを願ねがい去さっていく。 浜はまに残のこった漁師りょうし達たちや和佳わかが関かかわった人々ひとびとは、さざ波なみが広ひろがるように幸福こうふくになり生いきていくが、和佳わかはそこにいない。 その後ごも和佳わかは元気げんきで暮くらしている様子ようすで、浜はまのことを深ふかく気きにかけているけれども、約束やくそく相手あいての辰たつ海かいの死後しごも筋すじを通とおして浜はまには戻もどらず、汐しおヶ崎さきの幸しあわせの輪わの中なかにはいないのだった。 「なぜだ、こんなの納得なっとくできない」と、見みていて心しんの片隅かたすみが痛いたくなる。 だが、もしこれが少すこしでも納得なっとくいかないと思おもうなら、「ここで現実げんじつを振ふり返かえり、縮ちぢみゆくこの国くにの農林のうりん水産すいさん業ぎょうを、国くに全体ぜんたいの未来みらいを考かんがえてみて下ください」という作つくり手しゅの願ねがいかもしれないと思おもった。 「長ながいものに巻まかれなかった人ひとの勇気ゆうきに報むくいられない、今いまでいいのですか」と。 その勇気ゆうきあるペンギンは最初さいしょに飛とび込こんで、泳およぎきることはできなかった。 傍目はためには敗者はいしゃかもしれないけれど、最初さいしょから最後さいごまで圧倒的あっとうてきに格好かっこうよかった。 巻まき舌じたの啖呵たんかも、何一なにひとつ諦あきらめない図太ずぶとさも、人ひとの愚おろかさを包つつむ暖あたたかさも、自分じぶんのプライドは二にの次つぎで部下ぶかの為ために土下座どげざする姿すがたも、生涯しょうがい筋すじを通とおす潔いさぎよさも、何なにもかも爽快そうかいで格好かっこう良よかった。 その発端ほったんは、愛あいする息子むすこがこれまで食たべられなかった魚さかなを美味おいしく食たべたという喜よろこびで、その幸福こうふくを更さらに多おおくの人ひとに届とどけることのできる事業じぎょうは決けっして間違まちがってはいないという強靱きょうじんな信念しんねんだった。 誰だれかの日々ひびの暮くらしの小ちいさな幸福こうふくは、いずれ地域ちいき社会しゃかいの繁栄はんえいと幸福こうふくに、更さらにこの国くにの未来みらいにまで繋つながっている。それを喜怒哀楽きどあいらくとともに誠実せいじつに見みせてくれる素敵すてきなドラマでした。 作つくり手しゅの皆様みなさま、演えんじて下くださった皆様みなさまに深ふかく感謝かんしゃします。ありがとうございました。 この記事きじの画像がぞう(全ぜん7枚まい) ドラマコラムの一覧いちらんはこちら [文ぶん・構成こうせい/grape編集へんしゅう部ぶ] かな Twitterを中心ちゅうしんに注目ちゅうもくドラマの感想かんそうを独自どくじの視点してんでつづり人気にんきを博はくしている。 ⇒ かなさんのコラムはこちら 森口もりぐち博子ひろこ、タクシーに乗のって行いき先さきを告つげたら運転うんてん手しゅが…?タクシー運転うんてん手しゅの対応たいおうに反響はんきょうが上あがりました。タクシーに乗車じょうしゃして、目的もくてき地ちを告つげると…? GACKT「キミは誰だれかから嫌きらわれてない」 続つづく言葉ことばに「腑ふに落おちた」「心しんが軽かるくなった」の声こえGACKTさんが、心しんのバランスを崩くずしそうな人ひとへ送おくった言葉ことばは?ネット上じょうで反響はんきょうが上あがっています。 Share Post LINE はてな コメント
Twitterを中心 に注目 ドラマの感想 を独自 の視点 でつづり人気 を博 している、かな(@kanadorama)さん。
2022年 10月 スタートのテレビドラマ『ファーストペンギン!』(日本 テレビ系 )の見 どころを連載 していきます。
かなさんがこれまでに書 いたコラムは、こちらから読 めます。
ヒロインの岩崎 和佳 (奈緒 )が時折 例 えられていた、ジャンヌ・ダルクだったら、「最後 は焼 かれちゃうでしょ」と思 っていたら「ファーストペンギンも大体 食 べられちゃいますけどね」と作中 で言 われ、そこは笑 いどころだと思 っていた。
まさかの最終 回 。愛 した浜 を去 っていく和佳 に、それが冗談 ではなかったんだと呆然 とする。
『ファーストペンギン!』(日本 テレビ系 水曜 22時 )の最終 話 は、そのほろ苦 さで、見届 けた私 たちの心 に強 く残 る結末 になった。でも不思議 と悲愴 感 はない。少 し苦 くても、きちんと光 さすラストだ。
しかし幾多 の妨害 の果 てに、漁協 と地元 の元 政治 家 から資金繰 りを切 られ追 い詰 められた和佳 は、元 官僚 の経営 コンサル・波佐 間 (小西 遼 生 )の紹介 を通 じてとある民間 会社 から支援 を受 ける。
しかしその会社 は外国 企業 で、経済 を通 じて浜 の実質 的 な侵略 行為 を目論 んでいることが判明 する。
そして10年 後 、成長 した和佳 の息子 の進 (城 桧 吏)が、片岡 を訪 ねて懐 かしい汐 ヶ崎 にやってくるのだった。
それも理解 した上 で、やはり守旧 の側 から新 しい価値 観 への対話 の余地 がもっとあるべきだと痛感 した。
そこまでに追 い込 んだのは、「話 してもどうせ分 かるまい」と相手 を侮 って対話 を持 たずに突 き落 とした側 だろう。
その前 に、五 十 年 、百 年 先 の未来 を見据 えた対話 は考 えられなかったものか。
けれども、『ファーストペンギン!』は、そのどちらもしなかった。
その後 も和佳 は元気 で暮 らしている様子 で、浜 のことを深 く気 にかけているけれども、約束 相手 の辰 海 の死後 も筋 を通 して浜 には戻 らず、汐 ヶ崎 の幸 せの輪 の中 にはいないのだった。
「なぜだ、こんなの納得 できない」と、見 ていて心 の片隅 が痛 くなる。
だが、もしこれが少 しでも納得 いかないと思 うなら、「ここで現実 を振 り返 り、縮 みゆくこの国 の農林 水産 業 を、国 全体 の未来 を考 えてみて下 さい」という作 り手 の願 いかもしれないと思 った。
「長 いものに巻 かれなかった人 の勇気 に報 いられない、今 でいいのですか」と。
その勇気 あるペンギンは最初 に飛 び込 んで、泳 ぎきることはできなかった。
その発端 は、愛 する息子 がこれまで食 べられなかった魚 を美味 しく食 べたという喜 びで、その幸福 を更 に多 くの人 に届 けることのできる事業 は決 して間違 ってはいないという強靱 な信念 だった。
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