インドとパキスタンが関係かんけい悪化あっか　-カシミール地方ちほうめぐり対立たいりつ-

インドとパキスタンの関係かんけいが悪化あっかしています。カシミール地方ちほう※1をめぐる対立たいりつが激はげしくなっているのです。

※カシミール地方ちほうとは

カシミール地方ちほうは、インド、パキスタン、中国ちゅうごくの3カ国かこくに囲かこまれた山間さんかんの場所ばしょで、高級こうきゅうなヤギの毛けの「カシミア」の産地さんちとして知しられています。ここは3カ国かこくがそれぞれに支配しはいしている地域ちいきがあり、インドが支配しはいする地域ちいきはジャム・カシミール州しゅうといいます。

 
出所しゅっしょ：朝日新聞あさひしんぶんデジタル

かつて南みなみアジアは、ほぼ全域ぜんいきがイギリスの旧きゅう植民しょくみん地ちでした。英えい領りょうインドは、1947年ねんにインドとパキスタンが、翌年よくねんにスリランカが独立どくりつするまで、ヒンドゥー・ムスリム・仏教ぶっきょうの3宗教しゅうきょうの教徒きょうとたちが混在こんざいしていました。しかし、人口じんこうの大だい移動いどうによって、ヒンドゥーのインド連邦れんぽう、ムスリムのパキスタンに分離ぶんり・独立どくりつしました。スリランカは仏教徒ぶっきょうとの国くにとされました。しかし、実際じっさいに移住いじゅうできても新入しんにゅう移住いじゅう民みんで、亡なくなったもの、取とり残のこされたものもありました。後のちに人為じんい的てきに統合とうごうされた東ひがし・西にしパキスタンは分裂ぶんれつし、東ひがしはバングラデシュとなりました。東ひがしパキスタンが、バングラデシュとして1971年ねんに独立どくりつして以降いこう、西側にしがわがあらためて新しんパキスタン」になりました。
パキスタンは、同おなじ植民しょくみん地ちでしたが、インドと異ことなり、議会ぎかい制せい民主みんしゅ主義しゅぎが根付ねつかず、軍部ぐんぶ独裁どくさいが強つよく、カシミール紛争ふんそう※2もあって、バングラデシュに比くらべてインドとの対立たいりつも激はげしく、イスラム的てき色彩しきさいが強つよく、イギリス統治とうちの影かげが色濃いろこく残のこっています。
 

※カシミール紛争ふんそうとは

1947年ねんのインド・パキスタンの分離ぶんり独立どくりつ以来いらい、両国りょうこく間あいだに続つづいているカシミールの帰属きぞく問題もんだい。1949年ねん1月がつ、国際こくさい連合れんごうの調停ちょうていで休戦きゅうせんとなっている。しかし、1957年ねんのインドによるカシミール併合へいごうに続つづいて、1965年ねん8月がつ、カシミールにパキスタンの武装ぶそうゲリラが侵入しんにゅうしたことから、再ふたたびインド・パキスタン戦争せんそうが起おこった。1966年ねん1月がつソ連それん首相しゅしょうの斡旋あっせんで両国りょうこくの首脳しゅのう会議かいぎが行おこなわれ、紛争ふんそうの平和へいわ的てき解決かいけつを約束やくそくしたが、根本こんぽん的てき解決かいけつには至いたらず、1971年ねん末まつに第だい3次じインド・パシスタン戦争せんそうが起おこった。

冷戦れいせん時代じだい、インドは非ひ同盟どうめい諸国しょこくの中なかでリーダー的てきな存在そんざいでした。経済けいざい的てきな影響えいきょう力りょくがあまり大おおきくない割わりには世界せかいの外交がいこう舞台ぶたいで重要じゅうよう視しされていました。非ひ同盟どうめい主義しゅぎ国こくでしたが、ソ連それんとは軍事ぐんじ協定きょうていを結むすんでいました。ガンジーの影響えいきょうから、世界せかいで最もっとも民主みんしゅ的てきな国くにとして、平和へいわ主義しゅぎ・人道じんどう主義しゅぎ・普遍ふへん主義しゅぎの伝統でんとうを全面ぜんめんに押おし立だてて来きました。対外たいがい的てきに内政ないせい不干渉ふかんしょう、主権しゅけんの尊重そんちょう、軍備ぐんび縮小しゅくしょうを訴うったえ、南側みなみがわ諸国しょこくの象徴しょうちょうと代弁だいべん者しゃになることを望のぞんでいました。そしてこれらは、核兵器かくへいきの保有ほゆうや、地域ちいき内ないにおける権力けんりょく・武力ぶりょく政治せいじの是認ぜにんと矛盾むじゅんしないとインドは考かんがえていました。

東西とうざい冷戦れいせんの解消かいしょうで、インドは外交がいこうの見直みなおしを余儀よぎなくされました。ソ連それん崩壊ほうかいによって軍事ぐんじ面めんでの主おもな連携れんけい先さきを失うしなって以来いらい、パキスタンに対たいして主導しゅどう権けんを握にぎり、中国ちゅうごくに対抗たいこうできるような同盟どうめい国こくを得えようと、米国べいこくに接近せっきんするようになりました。ガンジーの思想しそうは今いまも掲かかげられていますが、インドの国威こくい発揚はつようの姿勢しせいはますます表面ひょうめん化かしてきています。1998年ねんの一連いちれんの核かく実験じっけん以来いらい、以前いぜんは隠かくされていたインドの核兵器かくへいきの威力いりょくが公おおやけになりました。インドは、世界せかい第だい6位いの大国たいこくになること、そして国連こくれん安全あんぜん保障ほしょう理事りじ会かいの常任じょうにん理事りじ国こくになることに躍起やっきになっています。インドに対たいする世界せかいの認識にんしきは不十分ふじゅうぶんで、実際じっさいの姿すがたとはギャップがあると考かんがえているのです。インドにとって一番いちばんの懸念けねんは、中国ちゅうごくがアジアとインド洋いんどようで力ちからを増ましていることです。

2014年ねんの総そう選挙せんきょでインド人民じんみん党とう（BJP）が勝利しょうりしました。有権者ゆうけんしゃはインドの国力こくりょくをうたう演説えんぜつに賛同さんどうし、勢力せいりょくが衰おとろえて腐敗ふはいぶりを非難ひなんされていた国民こくみん会議かいぎ派はを退しりぞけたのです。ナショナリストであると自みずから公言こうげんするナレンドラ・モディが首相しゅしょうの座ざにつきました。

カシミール州しゅうの住民じゅうみんの多おおくはイスラム教徒きょうと。文化ぶんかや風習ふうしゅうが違ちがうため、インドはこの州しゅうについて、憲法けんぽうで特別とくべつに自治じちを認みとめていました。防衛ぼうえいや外交がいこうはインド政府せいふが担にないますが、それ以外いがいは州しゅう独自どくじのルールで治おさめてもよいという特別とくべつな権利けんりを与あたえていたのです。
しかし8月がつ5日にち、カシミール地方ちほうを国くにとしてきちんと支配しはいしたいと考かんがえているモディ首相しゅしょうが憲法けんぽうを変更へんこう、その自治じち権けんを奪うばったのです。住民じゅうみんたちはこれに猛もう反発はんぱつ。この地方ちほうの権利けんりを巡めぐって対立たいりつするイスラム教徒きょうとの国くに・パキスタンも「イスラム教徒きょうとの権利けんりが奪うばわれた」と抗議こうぎし、インドとの貿易ぼうえきをやめるなど、対立たいりつが深ふかまっています。

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