てこ (梃子 てこ 、梃 てこ ,英語 えいご : Leverage )とは、弱 よわ い力 ちから で重 おも たいものを動 うご かしたり、微小 びしょう な運動 うんどう を大 だい 規模 きぼ な運動 うんどう に変換 へんかん する道具 どうぐ のこと。単純 たんじゅん 機械 きかい の一 ひと つであり、あらゆる機械 きかい の基礎 きそ となっている。
てこ を使 つか えば、100 kg の物体 ぶったい を 5 kg の物体 ぶったい で持 も ち上 あ げることができる。
支点 してん ・力点 りきてん ・作用 さよう 点 てん の関係 かんけい
編集 へんしゅう
てこには支点 してん ・力点 りきてん ・作用 さよう 点 てん があり、支点 してん を中心 ちゅうしん に回転 かいてん しうる天秤 てんびん や輪 わ 軸 じく がある時 とき 、力点 りきてん は力 ちから を加 くわ える点 てん 、作用 さよう 点 てん は力 ちから が働 はたら く点 てん であり、普通 ふつう は作用 さよう 点 てん にはおもりなどの負荷 ふか がある。支点 してん は動 うご かないよう固定 こてい しているため、力点 りきてん を動 うご かすと作用 さよう 点 てん が動 うご く仕組 しく みである。
てこを使 つか う上 うえ で重要 じゅうよう なのは、支点 してん ・力点 りきてん ・作用 さよう 点 てん の位置 いち 関係 かんけい 、特 とく にその間隔 かんかく である。てこで大 おお きな力 ちから を得 え ようと思 おも えば、なるべく支点 してん から離 はな れたところに力点 りきてん を置 お く、あるいは支点 してん のなるべく近 ちか くに作用 さよう 点 てん を置 お けばよい。小 ちい さい力 ちから を得 え ようと思 おも えばその逆 ぎゃく を行 おこな えばよい。実験 じっけん をすると支点 してん から力点 りきてん までの距離 きょり が支点 してん から作用 さよう 点 てん までの距離 きょり の2倍 ばい であれば、得 え られる力 ちから は加 くわ えた力 ちから の2倍 ばい になることがわかる。この関係 かんけい を式 しき で表 あらわ すと、下記 かき のようになる。
d
1
F
1
=
d
2
F
2
{\displaystyle d_{1}F_{1}=d_{2}F_{2}}
d
1
{\displaystyle d_{1}}
: 支点 してん と力点 りきてん の間 あいだ の距離 きょり
F
1
{\displaystyle F_{1}}
: 力点 りきてん に加 くわ える力 ちから
d
2
{\displaystyle d_{2}}
: 支点 してん と作用 さよう 点 てん の間 あいだ の距離 きょり
F
2
{\displaystyle F_{2}}
: 作用 さよう 点 てん で得 え られる力 ちから
ただし、上 うえ の式 しき は単純 たんじゅん 化 か のため力点 りきてん 、支点 してん にかかる力 ちから が平行 へいこう だとした時 とき の式 しき であり、本来 ほんらい は
d
1
,
d
2
{\displaystyle d_{1},d_{2}}
はモーメントアーム (支点 してん から力 ちから のベクトルに下 お ろした垂線 すいせん の長 なが さ)である点 てん に注意 ちゅうい を要 よう する。
このモーメントアーム×力 ちから を力 ちから のモーメント と呼 よ び、力 ちから のモーメントの釣 つ り合 あ いがてこの原理 げんり の本質 ほんしつ である。
小学校 しょうがっこう では支点 してん ・力点 りきてん ・作用 さよう 点 てん の3点 てん セットで教 おそ わるが、大学 だいがく の力学 りきがく では力点 りきてん は物理 ぶつり 用語 ようご としては普通 ふつう 登場 とうじょう しない[ 1] 。
力学 りきがく では「力 ちから 」はテンソル として扱 あつか われる。大抵 たいてい の場合 ばあい 、単純 たんじゅん 化 か のため「1階 かい のテンソル」(ベクトル [要 よう 曖昧 あいまい さ回避 かいひ ] )として扱 あつか われ、大 おお きさ・向 む き・始点 してん を持 も つ(中学校 ちゅうがっこう 以上 いじょう ではこちらの概念 がいねん で学 まな ぶ)。これを力 ちから の三 さん 要素 ようそ と呼 よ び、特 とく にベクトルの始点 してん を作用 さよう 点 てん (または着 き 力点 りきてん )と呼 よ ぶ。このため力学 りきがく で'てこ'を扱 あつか う際 さい は、人 ひと がてこに加 くわ える力 ちから と、重 おも りがてこに加 くわ える力 ちから のそれぞれの作用 さよう 点 てん があるだけである。例 たと えば英語 えいご では、力 ちから の作用 さよう 点 てん を point of application と呼 よ ぶが、てこを説明 せつめい する際 さい は「人 ひと が加 くわ える力 ちから 」の作用 さよう 点 てん を point of effort、「重 おも りが加 くわ える力 ちから 」の作用 さよう 点 てん をpoint of load と呼 よ ぶ[ 2] 。この2点 てん を小学校 しょうがっこう では力点 りきてん ・作用 さよう 点 てん と呼 よ んでおり、物理 ぶつり 学 がく を学 まな んだ者 もの は混乱 こんらん しないように注意 ちゅうい が必要 ひつよう である。
なぜ2つの力 ちから のベクトルの始点 してん を異 こと なる名前 なまえ で呼 よ ぶ必要 ひつよう があるかといえば、てこの分類 ぶんるい に必要 ひつよう であるからである。もし力点 りきてん ・作用 さよう 点 てん を区別 くべつ しなければ、「てこの種類 しゅるい 」で述 の べる第 だい 2種 しゅ てこ ・第 だい 3種 しゅ てこ を分類 ぶんるい できない。このような分類 ぶんるい をする理由 りゆう は、てこが「力 ちから を増幅 ぞうふく させ、あるいは力 ちから の向 む きを変更 へんこう させる」最 もっと も基礎 きそ 的 てき な装置 そうち として古代 こだい に開発 かいはつ された道具 どうぐ (単純 たんじゅん 機械 きかい )であり、力 ちから を伝達 でんたつ する装置 そうち であるからである。力 ちから の伝達 でんたつ 装置 そうち の入力 にゅうりょく ・出力 しゅつりょく を区別 くべつ するため、力点 りきてん ・作用 さよう 点 てん という異 こと なる名前 なまえ が必要 ひつよう だったのである。
なお、天秤 てんびん においては力点 りきてん ・作用 さよう 点 てん を区別 くべつ できない。これは、てことは道具 どうぐ の目的 もくてき が異 こと なるからである。ある小学校 しょうがっこう の指導 しどう 案 あん [ 3] では、「てんびん」を学習 がくしゅう させた後 のち 、てんびんの片方 かたがた のおもりをはずして手 て で押 お し、重 おも いおもりを小 ちい さい力 ちから で持 も ち上 あ げられるという「てこの原理 げんり 」を体感 たいかん させることで「てこ」を学習 がくしゅう させる。ここで自分 じぶん の手 て があるほうが力点 りきてん となり、同時 どうじ に天秤 てんびん は重 おも い物 もの を持 も ち上 あ げる道具 どうぐ になっている。
ちなみに支点 してん は力学 りきがく でも重要 じゅうよう であり、英語 えいご では Fulcrum[ 4] という固有 こゆう の単語 たんご がある。
古代 こだい イタリアのシチリア島 とう のシラクサ に生 う まれたアルキメデス は、「てこの原理 げんり 」を発見 はっけん し、物理 ぶつり 学 がく の類 るい いにした。これは、シラクサがポエニ戦争 せんそう に巻 ま き込 こ まれた時 とき 、大 おお きな威力 いりょく を発揮 はっき した。特 とく に投石 とうせき 機 き などである。また、さらにその時 とき 、「我 が に支点 してん と長 なが い棒 ぼう を与 あた えよ。されば地球 ちきゅう をも動 うご かさん。」と言 い ったとされる伝説 でんせつ が残 のこ されている。
てこは支点 してん 、力点 りきてん 、作用 さよう 点 てん の位置 いち 関係 かんけい により、以下 いか の三 さん 種類 しゅるい に分類 ぶんるい される。三 さん 点 てん を一直線 いっちょくせん 上 じょう に並 なら べたとき、真 ま ん中 なか が支点 してん になるものを第 だい 1種 しゅ てこと呼 よ ぶ。同様 どうよう に真 ま ん中 なか が作用 さよう 点 てん であれば第 だい 2種 しゅ 、力点 りきてん であれば第 だい 3種 しゅ と呼 よ ぶ。英語 えいご では、てこの三 さん 種類 しゅるい で真 ま ん中 なか に来 く る点 てん をそれぞれfulcrum(支点 してん ), load(作用 さよう 点 てん ), effort(力点 りきてん )として、fle x と呼 よ ぶ覚 おぼ え方 かた がある[ 5] 。
ここでは、説明 せつめい のため支点 してん 、力点 りきてん 、作用 さよう 点 てん が一直線 いっちょくせん 上 じょう にあるが、実際 じっさい はその必要 ひつよう はない。くぎ抜 ぬ きはそのよい例 れい 。
第 だい 1種 しゅ てこ の図 ず 。手 て の記号 きごう がある所 ところ が力点 りきてん 。支点 してん は三角形 さんかっけい で支 ささ えられている。矢印 やじるし の大 おお きさは力 ちから の大 おお きさを表 あらわ す。
てこで大 おお きな力 ちから を得 え る場合 ばあい は、力点 りきてん と作用 さよう 点 てん の間 あいだ に支点 してん を置 お く。力点 りきてん を右側 みぎがわ とした場合 ばあい は、左 ひだり から「作用 さよう 点 てん 、支点 してん 、力点 りきてん 」の順 じゅん になる(右 みぎ 図 ず 参照 さんしょう )。力点 りきてん で加 くわ えた小 ちい さい下向 したむ き力 りょく は、三角形 さんかっけい で支 ささ えられる支点 してん を媒介 ばいかい して、作用 さよう 点 てん で大 おお きな上向 うわむ きの力 ちから となる。
力点 りきてん と作用 さよう 点 てん を入 い れ替 か えると要 よう する力 ちから は大 おお きくなるが、動 うご きを大 おお きく、あるいは速 はや くすることができる。
代表 だいひょう 的 てき なてこの一種 いっしゅ で、古 ふる くから巨石 きょせき などを動 うご かすのにも使 つか われてきた。この種類 しゅるい のてこを用 もち いて大 おお きなものを小 ちい さい力 ちから で動 うご かす仕組 しく みを使 つか っている道具 どうぐ として、くぎ抜 ぬ き 、洋 よう はさみ 、缶切 かんき り 、ラジオペンチ 等 ひとし がある。
小 ちい さなものを速 はや く大 おお きく動 うご かす仕組 しく みとしてはトレビュシェット がある。おもりが落下 らっか することによって石 いし 弾 だん を高速 こうそく で投擲 とうてき (とうてき)することができるが、おもりは石 いし 弾 だん の数 すう 倍 ばい 〜数 すう 十 じゅう 倍 ばい の重量 じゅうりょう が必要 ひつよう となる。
第 だい 2種 しゅ てこ の図 ず 。
大 おお きい力 ちから を使 つか う場合 ばあい はもうひとつの構図 こうず もある。作用 さよう 点 てん を中心 ちゅうしん に置 お き、力点 りきてん と支点 してん が外側 そとがわ になる場合 ばあい である。力点 りきてん を左側 ひだりがわ に置 お いた場合 ばあい は、左 ひだり から「力点 りきてん 、作用 さよう 点 てん 、支点 してん 」の順 じゅん になる(右 みぎ 図 ず 参照 さんしょう )。力点 りきてん に加 くわ えた小 ちい さい上向 うわむ きの力 ちから は、作用 さよう 点 てん で大 おお きな上向 うわむ きの力 ちから となる。
これも、小 ちい さい力 ちから を大 おお きな力 ちから に変 か えて加 くわ えることができる。この方法 ほうほう を使 つか って大 おお きな力 ちから を加 くわ えて用 もち いる道具 どうぐ には、栓抜 せんぬ き 、くるみ 割 わ り器 き 、蟹 かに 割 わ り器 き 、穴 あな あけパンチ 、空 あ き缶 かん つぶし器 き 等 とう がある。
第 だい 3種 しゅ てこ の図 ず 。
逆 ぎゃく に、てこで大 おお きな運動 うんどう を得 え る場合 ばあい は、支点 してん を力点 りきてん と作用 さよう 点 てん の外側 そとがわ で、かつ力点 りきてん に近 ちか い場所 ばしょ に置 お く。左側 ひだりがわ を作用 さよう 点 てん とした場合 ばあい は、左 ひだり から「作用 さよう 点 てん 、力点 りきてん 、支点 してん 」の順 じゅん になる(右 みぎ 図 ず 参照 さんしょう )。力点 りきてん に加 くわ えた小 ちい さな運動 うんどう は、作用 さよう 点 てん において大 おお きな運動 うんどう となる。その代償 だいしょう として、この種類 しゅるい のてこでは、加 くわ えた力 ちから よりも小 ちい さい力 ちから が伝 つた えられる。この種類 しゅるい のてこを用 もち いた道具 どうぐ には、ピンセット 、トング 、手持 ても ち式 しき のホッチキス 、箸 はし 、和 かず 鋏 やっとこ などがある。
実際 じっさい の道具 どうぐ や機械 きかい には、てこの仕組 しく みを複数 ふくすう 使 つか っているものがある。例 たと えば爪 つま 切 き り は、力点 りきてん 、支点 してん 、作用 さよう 点 てん 、各 かく 2つずつあると考 かんが えることができる[ 6] 。
鉄道 てつどう の連動 れんどう 装置 そうち では、かつて転轍機 てんてつき や信号 しんごう 機 き を人力 じんりき で動 うご かすために、巨大 きょだい なレバーをてことして動 うご かしていた。その名残 なごり で、電気 でんき 的 てき なスイッチの操作 そうさ で済 す むようになった後 のち も「てこ」と呼 よ び習 なら わされている。
てこの原理 げんり は格闘技 かくとうぎ における関節 かんせつ 技 わざ にも使用 しよう されており、少林寺拳法 しょうりんじけんぽう でも重宝 ちょうほう すべき原理 げんり とされている[ 7] 。
てこは工事 こうじ 現場 げんば などで、てこの原理 げんり を使 つか って石 いし や樹木 じゅもく をこじ上 あ げて動 うご かしたり、石材 せきざい の合 ごう 端 はし を合 あ わせたり、樹木 じゅもく の向 む きを変 か えるための専用 せんよう の道具 どうぐ の名称 めいしょう でもある[ 8] 。木製 もくせい の木 き でこや鉄製 てつせい の金 かね てこがある[ 8] 。
追 お いてこ
てこを物体 ぶったい の下 した にこじ入 い れ、てこの先 さき と地面 じめん の接 せっ する点 てん を支点 してん に物体 ぶったい を向 む こう側 がわ に移動 いどう させる方法 ほうほう [ 8]
持 も ちてこ
てこを物体 ぶったい の下 した にこじ入 い れ、てこの先 さき と地面 じめん の接 せっ する点 てん を支点 してん に物体 ぶったい を持 も ち上 あ げる方法 ほうほう [ 8]
はねてこ
てこを物体 ぶったい の下 した にこじ入 い れ、角材 かくざい などの枕 まくら を差 さ し込 こ み、それを支点 してん に物体 ぶったい を持 も ち上 あ げる方法 ほうほう [ 8]
舟 ふね 漕 こ ぎ
てこを使 つか って3人 にん がかりで物体 ぶったい を少 すこ しずつ移動 いどう する方法 ほうほう [ 8] 。両 りょう 脇 わき を”はねてこ”で支 ささ え、舟 ふね の櫂 かい のような動 うご きで押 お しつつ、後 うし ろから”追 お いてこ”で押 お す。
^ 小学校 しょうがっこう では力 ちから を加 くわ える点 てん を力点 りきてん 、てこが力 ちから を重 おも りに与 あた える点 てん を作用 さよう 点 てん としているが、作用 さよう 反作用 はんさよう の法則 ほうそく により力点 りきてん も作用 さよう 点 てん も外力 がいりょく を受 う け、反 はん 力 ちから を出 だ しているという点 てん でなんら変 か わりがない。そのため力学 りきがく では力点 りきてん ・作用 さよう 点 てん をまとめて作用 さよう 点 てん (もしくは着 き 力点 りきてん )と呼 よ ぶ。
^ en:Lever を参照 さんしょう 。
^ “アーカイブされたコピー ”. 2007年 ねん 10月 がつ 27日 にち 時点 じてん のオリジナル よりアーカイブ。2008年 ねん 5月 がつ 10日 とおか 閲覧 えつらん 。
^ en:Fulcrum
^ 参考 さんこう en:Lever のMnemonic
^ てこを使 つか ったさまざまな道具 どうぐ たち 理科 りか ねっとわーく、2017年 ねん 10月 がつ 4日 にち 閲覧 えつらん 。
^ 『少林寺拳法 しょうりんじけんぽう のススメ』16頁 ぺーじ 。
^ a b c d e f “人力 じんりき による運搬 うんぱん 組立 くみた て工法 こうほう の手引 てびき ”. 日本 にっぽん 造園 ぞうえん 組合 くみあい 連合 れんごう 会 かい . 2019年 ねん 10月 がつ 16日 にち 閲覧 えつらん 。