アンドレ・クリュイタンス

アンドレ・クリュイタンス
André Cluytens
アンドレ・クリュイタンス; André Cluytens
	アンドレ・クリュイタンス（1965年ねん）
基本きほん情報じょうほう
出生しゅっしょう名めい	André Cluytens
生誕せいたん	1905年ねん3月26日にち
出身しゅっしん地ち	ベルギー、アントウェルペン
死没しぼつ	1967年ねん6月3日にち（62歳さい没ぼつ）
ジャンル	クラシック音楽おんがく
職業しょくぎょう	指揮しき者しゃ
担当たんとう楽器がっき	ピアノ

アンドレ・クリュイタンス（André Cluytens, 1905年ねん 3月26日にち - 1967年ねん 6月3日にち）は、ベルギーのアントウェルペン出身しゅっしんで、主しゅとしてフランスで活躍かつやくした指揮しき者しゃ。

ポータルクラシック音楽おんがく

人物じんぶつ・来歴らいれき

アンドレ・クリュイタンスは、1905年ねん3月がつ26日にち、アントウェルペンで代々だいだい音楽家おんがくかの家系かけいに生うまれた。父ちちも音楽家おんがくかで、幼少ようしょう時じより音楽おんがく教育きょういくを受うけて育そだった。9歳さいからアントウェルペン王立おうりつ音楽おんがく院いんでピアノ・和声わせい・対位法たいいほうを学まなび（同窓どうそうに作曲さっきょく家かのジェフ・マースがいた）、同時どうじに王立おうりつ劇場げきじょうの指揮しき者しゃであった父ちちからも教おしえを受うけた。多言たげん語ご国家こっかベルギーは、フランス語ふらんすご、フラマン語ご（オランダ語ごの近きん縁えん言語げんご）、ドイツ語ごを公用こうよう語ごとしているものの、話者わしゃの割合わりあいは前まえ二に者しゃが圧倒的あっとうてきで、ドイツ語ごは王室おうしつの言語げんごでありながら1%程度ていどしか使用しよう人口じんこうがない。しかし、クリュイタンスの父ちちは「フラマン語ごのオペラなどないのだから、そんなものを学まなんでもどうにもならない」と言いって息子むすこにドイツ語ごを教おしえたという。このようにしてフランスのラテン系けい文化ぶんかとドイツのゲルマン系けい文化ぶんかを幼少ようしょう時じより身みにつけ、この教養きょうようは、クリュイタンスがドイツ音楽おんがくとフランス音楽おんがくという、一般いっぱんには相反あいはんすると考かんがえられるジャンルの音楽おんがくを自在じざいに演奏えんそうすることに繋つながっている。ドイツ音楽おんがくも得意とくいとするフランス語ふらんすご圏けん出身しゅっしんの指揮しき者しゃとしては、ピエール・モントゥーと双璧そうへき的てき存在そんざいと評価ひょうかされている（同様どうように独どく仏ふつ音楽おんがくをともに得意とくいとしたミュンシュは家系かけい、出生しゅっしょう当時とうじ国籍こくせきともドイツのアルザス人じんである）。

アントウェルペン王立おうりつ音楽おんがく院いんを卒業そつぎょうし、1922年ねんに王立おうりつ歌劇かげき場じょうの合唱がっしょう指揮しき者しゃとなる。1927年ねんには同どう歌劇かげき場じょう第だい一いち指揮しき者しゃに任命にんめいされ、ビゼーの歌劇かげき『真珠しんじゅ採とり』をヨーゼフ・クリップスの代役だいやくとして指揮しきし、高たかく評価ひょうかされる。1932年ねんからフランスの歌劇かげき場じょうでも活動かつどうを始はじめる。その後ごもキャリアを重かさね、1944年ねんにパリ・オペラ座ざの指揮しき者しゃとなり、1949年ねんにはミュンシュの後任こうにんとしてパリ音楽おんがく院いん管弦楽かんげんがく団だんの首席しゅせき指揮しき者しゃに就任しゅうにんする。以降いこう1967年ねんにクリュイタンスが逝去せいきょするまでこのコンビは黄金おうごん時代じだいを築きずくことになる。それと並行へいこうしてフランス国立こくりつ放送ほうそう管弦楽かんげんがく団だん、ベルギー国立こくりつ管弦楽かんげんがく団だんの指揮しきも兼任けんにんした。

1955年ねんには初はつのベルギー人じん（フランス人じん系けい）指揮しき者しゃとしてバイロイト音楽おんがく祭さいに参加さんかし、歌劇かげき『タンホイザー』を演奏えんそうした。翌よく1956年ねんには急逝きゅうせいしたエーリヒ・クライバーの代役だいやくとしてカール・シューリヒトとともにウィーン・フィルハーモニー管弦楽かんげんがく団だん初はつのアメリカ演奏えんそう旅行りょこうを行おこない、成功せいこうを収おさめた。その後ごもしばしばベルリン・フィルハーモニー管弦楽かんげんがく団だんなどに客演きゃくえんを重かさねた。またチェコ・フィルハーモニー管弦楽かんげんがく団だんのコンサートにもたびたび出演しゅつえんした。

1964年ねん5月に大阪おおさか国際こくさいフェスティバル協会きょうかいの招聘しょうへいによってパリ音楽おんがく院いん管弦楽かんげんがく団だんとともに来日らいにちした。ベートーヴェン・ブラームス・ベルリオーズ・ラヴェルなどを演奏えんそう。「あまりの素晴すばらしさに、日本にっぽんのオケに絶望ぜつぼうすら感かんじさせた」と評ひょうされ、日本にっぽんでのクリュイタンスの評価ひょうかは不動ふどうのものとなったが、これが最初さいしょで最後さいごの来日らいにちとなった。1967年ねん6月がつ3日にち、パリで胃癌いがんにより急死きゅうし。62歳さい没ぼつ。

クリュイタンスは演奏えんそう活動かつどうのほかに、自身じしんが首席しゅせき指揮しき者しゃを務つとめたパリ音楽おんがく院いん管弦楽かんげんがく団だんの運営うんえい元もとであるパリ国立こくりつ高等こうとう音楽おんがく院いんでは教鞭きょうべんも執とった。クリュイタンスに指揮しき法ほうを師事しじした指揮しき者しゃとしては、ジョルジュ・プレートルやカレル・フサ、フローリアン・オラールなどがいる。

クリュイタンスの死去しきょに際さいしてパリ音楽おんがく院いん管弦楽かんげんがく団だんは発展はってん的てき解散かいさんを遂とげ、パリ管弦楽かんげんがく団だんへと改組かいそされた。

レパートリー

フランス系けいの指揮しき者しゃとして当然とうぜんのことながらフランスの作曲さっきょく家かの作品さくひんに熟練じゅくれんし、ラヴェルの管弦楽かんげんがく曲きょく集しゅう、ビゼーの「アルルの女おんな」組曲くみきょく、ベルリオーズの『幻想げんそう交響曲こうきょうきょく』や序曲じょきょく「ローマの謝肉祭しゃにくさい」、フォーレのレクイエムなどは、現在げんざいでも不朽ふきゅうの名な盤ばんとして語かたり継つがれている。

また、教育きょういく環境かんきょうもあって、バイロイト音楽おんがく祭さいへ出演しゅつえんしたことからも分わかるように、ドイツ音楽おんがくにも巧たくみであった。とりわけベートーヴェンの演奏えんそうが知しられており、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽かんげんがく団だんの初はじめてのベートーヴェン交響曲こうきょうきょく全集ぜんしゅうの録音ろくおんは、当時とうじの常任じょうにん指揮しき者しゃであったカラヤンではなく、クリュイタンスが行おこなっている。