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オルガン - Wikipedia

オルガン

鍵盤けんばん楽器がっきのひとつ

オルガンえい: organ)は、加圧かあつした空気くうき鍵盤けんばん選択せんたくしたパイプにおくることで発音はつおんする鍵盤けんばん楽器がっきであり、パイプオルガンともばれる。パイプオルガンにじゅんじた鍵盤けんばん楽器がっきである、リードオルガン電子でんしオルガンもオルガンのばれる。

オルガン
別称べっしょう風琴ふうきん
かく言語げんごでの名称めいしょう
えい organ
どく Orgel
ふつ orgue
organo
なか かん风琴(簡体字かんたいじ
かん風琴ふうきん繁体字はんたいじ
オルガン
パイプオルガン
分類ぶんるい

かた鍵盤けんばん楽器がっき

概要がいよう

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オルガンは鍵盤けんばん操作そうさされる管楽器かんがっきである。多数たすうのパイプを発音はつおんたいとしてそなえるが、1ほんのパイプにことなるおとだか発生はっせいさせることはなく、かくパイプのおとだか固定こていてきで、すくなくとも鍵盤けんばんのすべてのかぎ対応たいおうするかずのパイプを必要ひつようがある。基準きじゅんおんだか音色ねいろちがうパイプぐん複数ふくすうそなえていることがおおく、その場合ばあいストップばれる機構きこうによって、発音はつおんするパイプぐん選択せんたくできるようにしている。

オルガンは安定あんていして持続じぞくするおとと、多彩たさい音色ねいろち、これがオルガンならではの魅力みりょくとなっている。しかしパイプに機械きかいてき仕組しくみ一定いってい空気くうきながして発音はつおんするために、一般いっぱん管楽器かんがっきくらべて強弱きょうじゃく音色ねいろ変化へんか微細びさいおこなうことはできない。そのため、たとえばストラヴィンスキーは「呼吸こきゅうをしない怪物かいぶつ」とひょうしたことがある[ちゅう 1]。オルガン演奏えんそうにおける強弱きょうじゃく表現ひょうげんは、ストップえや、複数ふくすう鍵盤けんばん使つかけ、スウェル・シャッター使用しようなどのほかに、かくおと持続じぞく時間じかん長短ちょうたんや、発音はつおん終始しゅうし速度そくど制御せいぎょによって心理しんりてきおと強弱きょうじゃくをもたらすこともできる。

日本語にほんごの「オルガン」

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学校がっこうのオルガン(じゅうよんひとみ映画えいがむら

日本にっぽんではたんに「オルガン」とった場合ばあい学校がっこうなどで使用しようされていた、足踏あしぶしきリードオルガンのことを意味いみする場合ばあいもあり、パイプによるオルガンのことは、あえて区別くべつして「パイプオルガン」とぶことがおおい。

一方いっぽう西欧せいおう言語げんごでは、たとえばえい: organ、どく: Orgel、ふつ: orgue、: organo、西にし: órgano とだけった場合ばあいには、一般いっぱんにパイプによるオルガンをす。リードによるオルガンを場合ばあいは、えい: reed organ などと明示めいじてき必要ひつようがある。

なお、明治めいじから昭和しょうわ初期しょきまでの日本語にほんごでは、オルガンの和訳わやく風琴ふうきん(ふうきん)」がひろもちいられた。なお日本語にほんごの「風琴ふうきん」は、広義こうぎではアコーディオンふくむ。

本節ほんぶしのオルガンにかんする詳細しょうさい後述こうじゅつの「リード・オルガンぞく」を参照さんしょうのこと)

 
ドイツのネニッヒのみずオルガンをえがいたモザイク(117ねん - 138ねん

ギリシャの "οργανον"(オルガノン)とは、本来ほんらい道具どうぐ器官きかんのことを意味いみし、演奏えんそうするための組織そしきてき道具どうぐという意味いみで、楽器がっきについてもこの言葉ことば適用てきようされるようになった。のちにこの言葉ことばが、かく言語げんごでのオルガンという単語たんごになっていった。現在げんざいも "organ" の語義ごぎは「機関きかん」「器官きかん」という意味いみである(en:Organ参照さんしょう)。

オルガンの起源きげん非常ひじょうふるく、紀元前きげんぜんすう世紀せいきからオルガンの原形げんけいにあたる楽器がっき存在そんざいみとめられる。これらは、「パンのふえ」や「シリンクス」(en)などのように、複数ふくすうふえたばねてくもので、中国ちゅうごく日本にっぽんなどの「しょう」も同族どうぞく楽器がっきなされる。

みずオルガン

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クテシビオスみずオルガン

紀元前きげんぜん264ねんアレキサンドリアクテシビオスが、水力すいりょくによって空気くうきおくみ、べん開閉かいへいさせることによっておと楽器がっきみずオルガン」(ヒュドラウリス (Hydraulis)(en))を製作せいさくしたことが記録きろくのこっている。みずオルガンは青銅せいどうでできており、大理石だいりせきでできた円筒えんとうじょう基礎きそっていた。大理石だいりせきなかには貯水ちょすいそうとピストンがそなえつけてあり、圧縮あっしゅく空気くうき上部じょうぶのパイプにおくした。外見がいけんパンパイプ機械きかいし、直立ちょくりつさせたものにちかい。これをアレキサンドリアのヘロンローマじん建築けんちくウィトルウィウス改良かいりょうし、地中海ちちゅうかい地方ちほうみずオルガンは普及ふきゅうした[1]

みずオルガン奏者そうしゃたちは演奏えんそうかいうできそいはじめ、デルフォイ演奏えんそうかいではアンティパトロスという奏者そうしゃが、まる2日間にちかんやすむことなく演奏えんそうつづけて栄光えいこうった。結婚式けっこんしき競技きょうぎじょう宣誓せんせい就任しゅうにんしき晩餐ばんさんかい劇場げきじょうなどでもみずオルガンが演奏えんそうされた。みずオルガンの奏者そうしゃ女性じょせいおおかったが、けん闘士とうし試合しあいなどでは男性だんせい演奏えんそうしたことがわかっている。また、ネロみかどみずオルガンをこのんで演奏えんそうした。みずオルガンはマ帝国まていこく勢力せいりょくおとろえるにつれて地中海ちちゅうかい地方ちほうでは衰退すいたいしたが、ビザンティン帝国ていこくでは宮廷きゅうてい儀式ぎしきようもちいられつづけた(ぞくテオファネス年代ねんだいには、皇帝こうていテオフィロス宝石ほうせきがちりばめた黄金おうごんせいオルガン2つと、60のブロンズせいのパイプをもつオルガン1つをつくらせたとの記載きさいがある)。一方いっぽう、アラビアにも伝播でんぱして改良かいりょうかさねられていった。

古代こだいみずオルガンの遺物いぶつ出土しゅつどれい

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ギリシアのピエリアけんディオンむら英語えいごばんには、ヘレニズム時代じだい都市としディオンの古代こだい遺跡いせきのこり、同村どうそんにあるディオン考古学こうこがく博物館はくぶつかん英語えいごばん出土しゅつどした1世紀せいきみずオルガンが展示てんじされている。

 
ディオン考古学こうこがく博物館はくぶつかん英語えいごばん展示てんじされている1世紀せいきみずオルガン

ハンガリーの首都しゅとブダペスト市内しないにある古代こだいローマ都市としアクィンクム遺跡いせきでもみずオルガンが出土しゅつどしており、復元ふくげんひんがアクィンクム博物館はくぶつかん展示てんじされている。

ふいごによるオルガン

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紀元前きげんぜん1世紀せいきはじめ、みずオルガンとは仕組しくみのことなるふいごによるオルガンが出現しゅつげんしていることが確認かくにんされている。ふいごもちいる改良かいりょうは、オルガンにとっておおきな進化しんかとなった。おと途切とぎれさせないためには複数ふくすうのふいごを設置せっちすることでそれをふせいでいた。

中世ちゅうせい

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9世紀せいきに、ヨーロッパでオルガン製作せいさくふたたはじまるようになった。当初とうしょ宗教しゅうきょうとはとく関係かんけいはなかったが、13世紀せいきには教会きょうかい楽器がっきとしても確立かくりつされた。一方いっぽうで、世俗せぞくにも比較的ひかくてき小型こがた楽器がっき普及ふきゅうした[2]

15世紀せいき後半こうはんから16世紀せいきルネサンス時代じだいには、ストップ多様たようわせによって音色ねいろ変化へんか効果こうかてきもちいられるようになった。現在げんざいのほぼすべてのオルガンに採用さいようされている「スライダー・チェスト」が発明はつめいされたのはこの時代じだいで、スライダーをもちいてストップを選択せんたくするという方式ほうしき定着ていちゃくしていった[3]。オルガンが日本にっぽん伝来でんらいしたのはこの時期じきで、1581ねん高山たかやま右近うこん統治とうち高槻たかつき教会きょうかい設置せっちされたパイプオルガンが日本にっぽん最初さいしょとされる[4]

17世紀せいきから18世紀せいき前半ぜんはんバロック時代じだいはオルガン文化ぶんか全盛期ぜんせいきにあたる。とくきたドイツでは、新教しんきょうだいオルガンを建造けんぞうすることをきそはじめるようになり、巨大きょだい加速かそくされた。オルガン建造けんぞうとして現在げんざい伝説でんせつ巨匠きょしょうとされるアルプ・シュニットガー[5]ジルバーマン兄弟きょうだいもこの時代じだい活躍かつやくした。世間せけんにもひろまった時期じきで、新興しんこう階級かいきゅう部屋へやかれることもあった。

シンフォニック/ロマンティック・オルガン

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19世紀せいきから20世紀せいき初頭しょとうには、多様たような8'の音色ねいろによる交響楽こうきょうがくてき設計せっけいのオルガンがつくられ「シンフォニック・オルガン」や「ロマンティック・オルガン」とばれる。作曲さっきょくたちのあいだではオルガン・ソロのための交響曲こうきょうきょくくことが流行りゅうこうしたことからも、この時代じだいのオルガンがどのような傾向けいこうっていたかがうかがえる。建造けんぞうとしてはアリスティド・カヴァイエ=コルとく有名ゆうめいである[6]

ネオバロック・オルガン

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20世紀せいきにドイツにこった「オルガン運動うんどう」によってふる時代じだいのオルガンが見直みなおされるようになり、バロック時代じだいのオルガンを模倣もほうした「ネオバロック・オルガン」が数多かずおおつくされた[7]。しかし、当時とうじ過去かこのオルガンにかんする研究けんきゅう不十分ふじゅうぶんであり、歴史れきしてきオルガンの修復しゅうふくにあたっておおくのあやまちをおかした。

現在げんざいは、ふる時代じだいのオルガン建造けんぞう技術ぎじゅつ尊重そんちょうされ、歴史れきしてき楽器がっき本来ほんらいおとちかづくために、より慎重しんちょう修復しゅうふく複製ふくせいおこなわれるようになっている。

パイプオルガンの種類しゅるい

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おもに教会きょうかいコンサートホール設置せっちされるだいオルガンのほかに、小型こがたがたポジティフ・オルガンw:en:Positive organ)や、搬型のポルタティフ・オルガン(オルガネット)(w:en:Portative organ)などがある。

用途ようと設置せっち場所ばしょとく意図いとしたい場合ばあいには、「教会きょうかいオルガン」「コンサート・オルガン」「ハウス・オルガン」「劇場げきじょうオルガン」「シアター・オルガン」「シネマ・オルガン」などのかた使つかわれることもある。最後さいごの3つは音楽おんがく鑑賞かんしょうおも目的もくてきとしないもので、録音ろくおん再生さいせい装置そうちひろ出回でまわまえ時代じだいに、劇場げきじょう効果こうかおん雰囲気ふんいきづくりに使用しようされた。たとえば映画えいがで、音楽おんがくそうするほか、蒸気じょうき機関きかんしゃ蒸気じょうき汽笛きてきおと動物どうぶつごえばく発音はつおんまで、さまざまなおとをオルガンの多彩たさいなストップを応用おうようして模倣もほうしてす。

オルガンのれい

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パイプはオルガンの発音はつおん主体しゅたいであり、おもにすずなまり合金ごうきん木材もくざいつくられる。一般いっぱん装飾そうしょくねて前面ぜんめん配置はいちされるパイプよりもはるかにおおくのパイプがケース内部ないぶには配置はいちされている。パイプの発音はつおん構造こうぞうおおきくけて2種類しゅるいあり、それぞれフルー(英語えいご: flueかんとリード(英語えいご: reedかんばれる。フルーかんリコーダーおなじく歌口うたぐちにより発音はつおんするもので、リードかんクラリネット同様どうようの1まいリードの構造こうぞう発音はつおんする。またパイプのふとさや、ひらきかん、閉管、半開はんかいかんなどの構造こうぞうちがいにより多様たよう音色ねいろのパイプが存在そんざいする。

鍵盤けんばん対応たいおうしたいちぞろいのパイプれつは、それぞれに名称めいしょうがつけられ、ストップとばれる選択せんたく機構きこうによって使用しよう選択せんたくされる。またパイプれつ自体じたいをストップとぶことも一般いっぱんてきである。パイプれつおとだかフィートりつしめされる。すなわち標準ひょうじゅんおとだかのパイプれつは8'と表現ひょうげんされ、それよりも1オクターヴたかいあるいはひくおとだかのパイプれつはそれぞれ4'、16'となる。これは一般いっぱん鍵盤けんばん最低さいていおんであるCおとのパイプのながさが、おおよそ8フィートになることにもとづいている。

一般いっぱんだい規模きぼなオルガンでは、パイプぐんはそれぞれが独立どくりつしたしょうオルガンともいえるディヴィジョンに組織そしきされる。かくディヴィジョンごとに鍵盤けんばんもうけられ、それによって音色ねいろ音量おんりょう対比たいひ可能かのうとなる[8]

パイプ3しゅ   金属きんぞくかん   木製もくせいかん   リードかん  

ふうばこ

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パイプは1つずつふうばこえい: wind chest、どく: Windlade、ふつ: sommier、: somiere)と接続せつぞくされている。ふうばこ内部ないぶ一定いってい気圧きあつあずかされており、鍵盤けんばんされたときにわきまえ(パレット)がひらき、パイプにふうおくりこむ仕組しくみになっている[9]

ふる時代じだいから現在げんざいまで、もっともおお採用さいようされているふうばこ構造こうぞうはトーン・チャンネル・チェストで、1おとだかずつにかれた、共通きょうつうおんみぞことなるかんしゅのパイプが接続せつぞくする。おとだか共通きょうつうする、ことなるかんしゅどういち発音はつおんするため、かくかんしゅ融合ゆうごうし、音楽おんがくてき旋律せんりつせん明確めいかく演奏えんそうできる構造こうぞうとなっている。

ロマンティック・オルガンのおおくには、ストップ・チャンネル・チェストが採用さいようされた。かんしゅ(ストップ)ごとのみぞかれ、共通きょうつうみぞ同一どういつかんしゅのパイプが接続せつぞくする。同一どういつかんしゅ供給きょうきゅうするふう共通きょうつうみぞとおるため、ロマンティック・オルガン特有とくゆう個々ここ音色ねいろごとにったひびきとなる。

送風そうふう装置そうち

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ふうばこへの空気くうき供給きょうきゅうは、19世紀せいき中頃なかごろまでは人力じんりきによるふいごによっておこなわれた。小型こがたのオルガンでは演奏えんそうしゃ自身じしんがふいごを操作そうさするものもあるが、より大型おおがたのオルガンでは演奏えんそうしゃほかふいご必要ひつようとした。19世紀せいき後半こうはんから人力じんりきえて蒸気じょうき機関きかんなどをもちいることがおこなわれ、20世紀せいきはいるころから電力でんりょくしき送風そうふう装置そうち登場とうじょうして、非常ひじょうおおきな風圧ふうあつ容易よういられるようになった。しかし、20世紀せいきまつからは伝統でんとうてき送風そうふう機構きこう音楽おんがくてき価値かち見直みなおされるようになり、電力でんりょくによる送風そうふうくわえて、手動しゅどうのふいごによる送風そうふう可能かのうなものもつくられている[1]

スウェルは連続れんぞくてき音量おんりょう変化へんかるために、パイプぐんはこ(スウェル・ボックス)におさめ、可動かどうしき鎧戸よろいど(スウェル・シャッター)をもうけたものである。演奏えんそうしゃペダル操作そうさすることによってシャッターが開閉かいへいし、音量おんりょう変化へんかられる。シャッターのかくいたは、かつては水平すいへい設置せっちされていたが、動作どうさにかかる負荷ふかおおきいため、現在げんざいでは垂直すいちょく設置せっちされることがおおい。

演奏えんそう機構きこう

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キー・アクション

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キー・アクションは鍵盤けんばんうごきによってふうばこのパレットを開閉かいへいするための仕組しくみである。

トラッカー・アクション鍵盤けんばんとパレットが機械きかいてき直接ちょくせつ結合けつごうしているものであり、ふるくから存在そんざいするもっとも基本きほんてきなものである。鍵盤けんばんうごきが直接ちょくせつパレットをうごかすため微細びさいなニュアンスの表現ひょうげん可能かのうである。また、風圧ふうあつによってキーをしたときに独特どくとく抵抗ていこうかん感触かんしょくられ、これが演奏えんそうしゃ楽器がっきむすびつきをつよめる。これらの長所ちょうしょから、現代げんだいでもトラッカー・アクションはひろ使用しようされている[10]

バーカー・レバー・アクションは、空気圧くうきあつのモーターをもちいて鍵盤けんばん操作そうさようするちから軽減けいげんしたものである[11]一般いっぱんだいオルガンなどにまれた装置そうちで、中小ちゅうしょう規模きぼのオルガンでは使つかわれない。19世紀せいき初頭しょとうのオルガンはたか風圧ふうあつのために鍵盤けんばん非常ひじょうおもくなり、オルガン奏者そうしゃ過大かだい負担ふたんいていた。バーカー(Charles Spackmann Barker、えい)が1832ねんにバーカー・レバーを発明はつめい、1839ねん、フランスで特許とっきょた。カヴァイエ=コル (Aristide Cavaillé-Coll) はこの発明はつめい自身じしん設計せっけいのオルガンに大々的だいだいてきんだ。バーカー・レバー・アクションはトラッカー・アクションにちかいキーの感触かんしょくつが、パレットを開閉かいへいする速度そくど制御せいぎょはできない。

19世紀せいき後半こうはんにはニューマティック・アクション開発かいはつされた。これは直接的ちょくせつてき結合けつごうをすべて空気くうきかんえたもので、演奏えんそうだいをパイプからはなれた位置いちくこともできる。しかしトラッカー・アクションのっていた感触かんしょくはなく、しばしば反応はんのうにぶい。

エレクトリック・アクション電磁石でんじしゃく利用りようしてパレットを開閉かいへいするものである。鍵盤けんばんふうばこあいだ電線でんせんでつながれるため、演奏えんそうだい配置はいち完全かんぜん自由じゆうである。電気でんき伝達でんたつ速度そくど瞬間しゅんかんてきであるが、アクションの作動さどう速度そくど開閉かいへい機構きこう品質ひんしつにより、かならずしも瞬間しゅんかんてき反応はんのうしめすわけではない。鍵盤けんばんたんなる電気でんきスイッチであるが、トラッカー・アクションにせた感触かんしょくつくられることもある。

ローラー・ボード

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ローラー・ボードは、トラッカー・アクションでキーの上下じょうげうごきをよこ方向ほうこう伝達でんたつするための機構きこうである[12]。キーの上下動じょうげどうでパレットを開閉かいへいするためには、鍵盤けんばんかくキーの直上ちょくじょうかくパイプが配置はいちされるのが理想りそうであるが、おおくのオルガンでは、パイプとキーの位置いち一致いっちしないため必要ひつようとなる。歴史れきしてきには600ねん以上いじょうまえ、ゴシック時代じだいのオルガンにすでに導入どうにゅうされていた。ポジティフなどの小型こがたオルガンでは、鍵盤けんばんとパイプの配置はいちのずれがあまりなく、ローラー・ボードを設置せっちしないオルガンもある。

 
ローラー・ボード
 
ローラー・ボード、部品ぶひんめい

演奏えんそうだい

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演奏えんそうだい

演奏えんそうだい(コンソール、どく: Spielschrank/Spieltisch、ふつえい: console、: consolle)は演奏えんそうしゃ操作そうさする部分ぶぶんで、発音はつおんのトリガーとなる鍵盤けんばんあし鍵盤けんばんおよび音色ねいろ選択せんたくするストップ基本きほんてき要素ようそとなる[13]。また現代げんだいのオルガンでは、メモリにストップのコンビネーションを記憶きおくさせられるものもあり、これを操作そうさするボタンるいそなえつけられている。背後はいご指揮しきしゃコンサートマスター視認しにんすることができるよう、譜面ふめんだい上部じょうぶかがみやモニターテレビがそなえられていることもある。

 
オルガンの鍵盤けんばん音域おんいき

鍵盤けんばん

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しょうオルガンの集合しゅうごうたいであるだいオルガンは、それぞれのしょうオルガンに対応たいおうした鍵盤けんばんがあり、なにだんものしゅ鍵盤けんばんそなえつけられることがおおい。鍵盤けんばんは、したからかぞえてだい1鍵盤けんばんだい2鍵盤けんばんだい3鍵盤けんばんかぞえていく。現代げんだい楽器がっきでは3だんそなえたものがおおく、それ以上いじょうある場合ばあいには、3だん基本きほんてきなセットの上部じょうぶ追加ついかされていく。4 - 5だんだいオルガンとして一般いっぱんてきかける上限じょうげんであり、それ以上いじょうのものは例外れいがいてきである。通常つうじょうは、しゅ鍵盤けんばんが3だん中央ちゅうおう位置いちしており、したからじゅんに、ポジティフ鍵盤けんばんしゅ鍵盤けんばん→スウェル鍵盤けんばん配置はいちされているが、フランスしきではさい下段げだんしゅ鍵盤けんばんとされていることがおおい。

あし鍵盤けんばん

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おおくのオルガンは鍵盤けんばんくわあし鍵盤けんばん(ペダル鍵盤けんばんどく: Pedal、ふつ: pédale、えい: pedal、: pedale)をそなえる。あし鍵盤けんばんのための独立どくりつしたパイプぐんたないプルダウンがたのものもある。あし鍵盤けんばんかぎすう形状けいじょうは、歴史れきしてきには多様たようである。形状けいじょうにはボタンやピストンのようなものもある。

  • 平面へいめん配置はいち
    平行へいこうがた
    かぎ平行へいこうならんでいるもの。ひろ音域おんいきにまたがってうごくようならくがある場合ばあいには、かぎおな間隔かんかくならべられているため、よこ方向ほうこう演奏えんそうしながら移動いどうしやすいという特長とくちょうがある。ただし、てい音域おんいきこう音域おんいきとおく、奏者そうしゃこし安定あんていさせたままでぜん音域おんいきなんなく演奏えんそうするには訓練くんれん必要ひつようとなる。
    扇型おうぎがた放射状ほうしゃじょう
    かぎ放射状ほうしゃじょうならんでおり、くろかぎがわ円弧えんこえがくように設計せっけいされている。ひろ音域おんいきにまたがってうごくようならくがある場合ばあいには、かぎおな間隔かんかくならべられていないため、よこ方向ほうこう演奏えんそうしながら移動いどうしにくいという欠点けってんがある。ただし、てい音域おんいきこう音域おんいきは、よりうしがわかぎほどたばねられる傾向けいこうがあるため、そのような場合ばあいには、奏者そうしゃうしろのほうそうすることによってこし不安定ふあんていさを軽減けいげんすることができるという特長とくちょうがある。しかし、あしうしろをもう片方かたがたあし通過つうかしてそうする場合ばあいや、あしあしとが接近せっきんしてじゅうおとそうする場合ばあいなどには、うしがわかぎ同士どうし間隔かんかくせまいためにきづらくなるという欠点けってんがある。
  • 立体りったい配置はいち
    水平型すいへいがた
    かぎ水平すいへいならんでいるもの。ひろ音域おんいきにまたがってうごくようならくがある場合ばあいには、かぎ同士どうしおなたかさにあるため、よこ方向ほうこう演奏えんそうしながら移動いどうしやすいという特長とくちょうがある。てい音域おんいきこう音域おんいきとおく、奏者そうしゃこし安定あんていさせたままでぜん音域おんいきなんなく演奏えんそうするには訓練くんれん必要ひつようとなる。
    凹面じょう
    中央ちゅうおうかぎくぼんだかたちとなっているもの。ひろ音域おんいきにまたがってうごくようならくがある場合ばあいには、かぎ同士どうしことなったたかさにあるため、よこ方向ほうこう演奏えんそうしながら移動いどうしにくいという欠点けってんがある。そのわり、てい音域おんいきこう音域おんいきはせりがって奏者そうしゃによりちかくなっているため、奏者そうしゃにとって負担ふたんすくないという特長とくちょうがある。
  • その形状けいじょう
    ボタンしきあし鍵盤けんばん
    鍵盤けんばんとはべないようなボタンがならぶ。補助ほじょてき低音ていおんそうするような様式ようしきのオルガンにられる。
    爪先つまさきペダル鍵盤けんばん
    鍵盤けんばんとはべないようなペダルがならぶ。補助ほじょてき低音ていおんそうするような様式ようしきのオルガンにられる。
    はこがたあし鍵盤けんばん(フランスしき
    現在げんざいあし鍵盤けんばんとはちがい、ほそいたじょうあし鍵盤けんばんならんでいる。
    傾斜けいしゃがたあし鍵盤けんばん(イタリアしき
    現在げんざいあし鍵盤けんばんとはちがい、くろかぎがわ上部じょうぶ傾斜けいしゃをつけてせりがる形態けいたい設置せっちされている。しろ鍵盤けんばん多少たしょうきづらく、上体じょうたいうしろにりやすくなるという弱点じゃくてんがある。

現代げんだいられるおおくのあし鍵盤けんばんでは、かぎすう30か32でいている。

スウェル・ペダル

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ベネシアンブラインドのような開閉かいへいまど(スウェル・シャッター)を開閉かいへいすることによって、強弱きょうじゃく大小だいしょう)をコントロールするためのペダル。

ふるくはあし鍵盤けんばんおくわずかにもうけられたスペースに、現代げんだいではそのおおくがあし鍵盤けんばん上部じょうぶもうけられている。当初とうしょ右足みぎあし操作そうさされるように設計せっけいされたため、現在げんざいでも中央ちゅうおうより右側みぎがわ設置せっちされているが、実際じっさいてきにはあし鍵盤けんばん演奏えんそうちゅういているほうあしによって操作そうさされるため、どちらのあし操作そうさするともかぎらない。左足ひだりあし操作そうさするさいには多少たしょう苦労くろうともなうこととなる。

スウェル・シャッターの効果こうかは、楽器がっきによってまちまちであり、完全かんぜんじてもあまりおんちいさくならないものもあるため、奏者そうしゃ楽器がっき特性とくせいっておかねばならない。とくに、おおくの場合ばあいには、ひらはじめにその効果こうか非常ひじょうおおきく、半分はんぶん以上いじょうひらいてからは、あまりその変化へんかかんじられない。そのため、半分はんぶんまでのひら具合ぐあいることが、スウェル・ペダルをあつかううえで重要じゅうようてんとなる[14]

アメリカ・イギリスしきのものは、おくむとスウェル・シャッターがひらいておとおおきくなるが、ヨーロッパ諸国しょこくではそのぎゃくのものもおおられるため、奏者そうしゃ最初さいしょ確認かくにんしておく必要ひつようがある。また、スウェル・シャッターをじたままにしておくと、スウェル・ボックスない空気くうき停滞ていたいしてさび発生はっせいなどで楽器がっきいためるため、演奏えんそうはスウェル・ペダルは全開ぜんかいにしておくことがのぞましい。

クレッシェンド・ペダル

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スウェル・シャッターによらない強弱きょうじゃく方法ほうほうであり、このペダルを操作そうさすると、徐々じょじょにストップすうしていくことができ、最終さいしゅうてきにはトゥッティいた[15]おおくの場合ばあいには、スウェル・ペダルと併設へいせつされている。ストップがえることにより段階だんかいがついてしまい、スウェル・ペダルほどなめらかな強弱きょうじゃくがつかないが、これによる強弱きょうじゃくはば非常ひじょうおおきい。クレッシェンド・ペダルでもちいるストップの追加ついか順序じゅんじょわせは設計せっけいめられてしまい、これが表現ひょうげんじょう制限せいげんとなっていたが、現代げんだいでは、記憶きおく装置そうち併用へいようして奏者そうしゃがストップのわせや追加ついか順序じゅんじょ作成さくせいすることができるものもある。

コンビネーション(おとせん操作そうさ記憶きおく装置そうち

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あしピストン
あしピストン(どく: Piston/Fußpiston、ふつ: champignon/piston、えい: toe piston、: pistone)はあしかるす(む)ことによってon/offを動作どうささせるピストンである。現代げんだいでは一般いっぱんてきには、あらかじめ奏者そうしゃ記憶きおく装置そうちによって記憶きおくしたストップの自由じゆうなコンビネーションを、演奏えんそうちゅうでそのえができない場合ばあいに、あしピストンによってえるために使用しようする。おおかけるものでは2種類しゅるいあり、番号ばんごうられたピストンによって記憶きおくさせたコンビネーションの番号ばんごうをそのまますものと、記憶きおくさせたコンビネーションを先送さきおくりか後戻あともどりしさせるものが一般いっぱんてきとなっている。同様どうよう機能きのうつボタンが、鍵盤けんばん直下ちょっかなどにもあることがおおい。両足りょうあしふさがっているときには、同様どうよう操作そうさおこなうこととなり、あしふさがっているときには、助手じょしゅがその操作そうさあしおこなうことも多々たたある。このことから、コンソール設計せっけいにおいては、あしピストンを奏者そうしゃ本人ほんにんあつかいやすいだけでなく、助手じょしゅ操作そうさしてもとど範囲はんいで、なおかつ奏者そうしゃ邪魔じゃまにならないような位置いち設置せっちすることがもとめられる。

現代げんだいにおける規格きかく

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ピアノが19世紀せいきまつごろにおおよそ現在げんざいかたちとなり、20世紀せいき相当そうとう程度ていど標準ひょうじゅんすすんだのにたいし、オルガンの規格きかく非常ひじょうおくれていた。現在げんざいでは、おおくのあたらしいオルガンが国際こくさいてき規格きかくのっとって設計せっけいされており、奏者そうしゃはより演奏えんそうしやすくなった。しかし、ちいさな建造けんぞうやメーカーは、それに沿わないオルガンを製造せいぞうつづけており、ふるいオルガンも数多かずおお現存げんそんするため、オルガニストはどのようなオルガンにでも適応てきおうする能力のうりょくもとめられる。

一般いっぱんてきられるものは、以下いかのBDO規格きかく(ドイツというよりも実質じっしつてきにはヨーロッパ規格きかく)かAGO規格きかくかによっている。

ドイツ・オルガン建造けんぞう職人しょくにん連合れんごう規格きかく (BDO; Bund Deutscher Orgelbaumeister) 規格きかく
平行へいこうがた支持しじしている。
アメリカ・オルガニスト協会きょうかい規格きかく (AGO; American Guild of Organist) 規格きかく
扇型おうぎがた支持しじしている。
イギリス王立おうりつオルガニスト協会きょうかい規格きかく (RCO; Royal College of Organists) 規格きかく

調律ちょうりつ

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チューニング・コーン

フルーかん調律ちょうりつは、閉管の場合ばあいは、ぶた上下じょうげによって調整ちょうせいする。金属きんぞくせいひらきかん場合ばあいは、あらかじめながめにつく開口かいこう帯状おびじょういてることでパイプの実効じっこうちょう調整ちょうせいしたり、あるいはみじかめにつく上部じょうぶつついてスライドさせることで調律ちょうりつする。そのような仕組しくみがない場合ばあいは、チューニング・コーンをもちいてパイプの開口かいこう変形へんけいさせることで調律ちょうりつする。開口かいこうひろげることでピッチをげ、せばめることでピッチをげる。木製もくせいひらきかん場合ばあいは、ながめにつくったうえでみをれ、そこにスライドしき調整ちょうせいもうけたり、みじかめにつく開口かいこう金属きんぞくせいぶたをとりつけて開口かいこうりょう調節ちょうせつすることで調律ちょうりつする。リードかん調律ちょうりつはリードの振動しんどうちょう調節ちょうせつすることでおこなう。

オルガンは原理げんりてきには管楽器かんがっきであり、気温きおんによる音速おんそく変化へんかによってピッチの変動へんどうしょうじる。しかしオルガンの調律ちょうりつ容易よういにはおこなえないため、空調くうちょう設備せつびととのわない教会きょうかいのオルガンとの合奏がっそうでは問題もんだいしょうじることがある。気温きおん変化へんかでオルガンのピッチがすうヘルツ上下じょうげすることは十分じゅうぶんにありることだからである。気温きおんによるピッチの変化へんかおなじストップであればおな比率ひりつあらわれるため、独奏どくそう範囲はんいでは和声わせい影響えいきょうするわけではない。それでもリードかんとフルーかんではるため、フルーかんわせるためにリードかん一斉いっせい調律ちょうりつする仕組しくみをつものもある。

そののオルガン

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リード・オルガンぞく

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リードオルガン(Dominion Organ、カナダ
 
明治めいじ時代じだいのリードオルガン

フリー・リードもちいた楽器がっき総称そうしょうハーモニウムアコーディオンコンサーティーナ鍵盤けんばんハーモニカハーモニカなどがある。フリー・リード楽器がっきおおくは19世紀せいき以降いこう発明はつめいされたあたらしい楽器がっきであるが、しょう歴史れきしふるフリー・リードによる管楽器かんがっき

フリー・リード自由じゆうリード、自由じゆう簧)とは、各国かっこくでは、英語えいご:free reed(フリー・リード)、独語どくご:durchschlagende Zunge(ドゥアヒシュラーゲンデ・ツンゲ)、einschlagende Zunge(アインシュラーゲンデ・ツンゲ)、freischwingende(フライシュヴィンゲンデ)、仏語ふつご:anche libre(アンシュ・リーブル)、:ancia libra(アンチャ・リブラ)などとしょうし、これは弾力だんりょくせいたか金属きんぞくへん(まれにたけせい)がふう振動しんどうさせられる発音はつおんたいす。たいらないたあなけておき、そのあなわきにフリー・リードのはし固定こていしてならべる。あな反対はんたいがわから空気くうきおくむかすかによっておとされる(en:Free_reed_aerophone)。一般いっぱんてきにはリードを固定こていしているひびきばんをリードに共鳴きょうめい振動しんどうさせて音量おんりょう確保かくほしている(ヴァイオリンのどうおな効果こうか)。スウェル、フルオルガン(グラン・ジュー)、エクスプレッションなど各種かくしゅ増幅ぞうふく装置そうちがある。まれにクオリファイング・チューブ(特許とっきょあり)とばれる共鳴きょうめいかんそなえるタイプがある。パイプによる発音はつおんたいつくるよりもずっと簡単かんたんで、丈夫じょうぶおとくる心配しんぱいはなく、工場こうじょうによる大量たいりょう生産せいさん簡単かんたんで、コストを非常ひじょうおさえることができ、鍵盤けんばん楽器がっきとしては小型こがた場所ばしょらないことから、大衆たいしゅうけの安価あんか楽器がっきとしてひろ一般いっぱん浸透しんとうした。ただし本格ほんかくてきなリードれつつハーモニウムるい場合ばあい、もし現在げんざいおなじものをつくるとしたら、価格かかくめんではパイプオルガンに匹敵ひってきするほどになる。

リードの材質ざいしつあつさ、ながさ、比重ひじゅう弾力だんりょくせいなどによっておと高低こうていまる。音色ねいろは、リードのながさとはば比率ひりつや、リードの材質ざいしつ比重ひじゅう弾力だんりょくなどによってもまる。リードの微妙びみょうかた形状けいじょうによっても音色ねいろえている。パイプオルガンと同様どうようにピッチのことなるストップをわせて音色ねいろ変化へんかさせる方法ほうほうおこなわれる。まいのリードの調律ちょうりつすこしずらしてセレステ効果こうかすストップもある。

送風そうふうようペダルはそなわっており交互こうごむことで連続れんぞくしたおとすことが出来できる。そのため、息継いきつぎに相当そうとうする無音むおんふせぐことが出来できる。後述こうじゅつのアコーディオンのようにペダルで音量おんりょう調整ちょうせいやアタックの調整ちょうせい可能かのうであるが、通常つうじょうは「ニー・スウェル」とばれる鍵盤けんばん真下ましたけられた操作そうさ機構きこうよこ方向ほうこううごかしておこなう。 送風そうふう電動でんどうされたリードオルガンには送風そうふうようペダルはなく、電子でんしオルガンのような音量おんりょう調整ちょうせいようペダルがそなわるが、操作性そうさせいわる互換ごかんのためにニー・スウェルが場合ばあいもある。

リード・オルガンとハーモニウム

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英語えいご: reed organ, harmonium、独語どくご: Harmonium、仏語ふつご: harmonium、: armonium)足踏あしぶしきのふいごが風力ふうりょくげんとなり、鍵盤けんばんすことによって発音はつおんさせるべきフリー・リードを選択せんたくしてふう開放かいほうさせ演奏えんそうするこのがたのオルガンは、おおきくけて2しゅある。吸気きゅうきしきふいごによるものと、吐気はきけしきふいごによるもので、きたアメリカでは吸気きゅうきしきを「リード・オルガン」、吐気はきけしきを「ハーモニウム」とんで区別くべつしてきた。ヨーロッパ諸国しょこくではどちらも区別くべつなく、一律いちりつに「ハーモニウム」とぶ。

"Aeoline"(エオリーネ)という楽器がっきがベルンハルト・エッシェンバッハ (Bernhard Eschenbach, 1767-1852) とその従兄弟いとこのヨハン・カズパー・シュリンバッハ (Johann Caspar Schlimbach, 1777-1861) によって1810ねん発明はつめいされた。また、"Physharmonika"(フィズハルモーニカ)という楽器がっきがアントン・ハックル (Anton Haeckl) によって1821ねんにウィーンで特許とっきょ取得しゅとくされた。

また、アメリカではグッドリッチ (Ebenezer Goodrich) が最初さいしょの "Harmonium"(ハーモニウム)を1810ねんごろにつくった。おなじころ、フランスのガブリエル・ジョゼフ・グルニエ (Gabriel Joseph Grenié, 1756-1837) が "Orgue expressif"(オルグ・エクスプレッシフ)をつくった。のちに世界せかいてきなパイプ・オルガン建造けんぞうとして伝説でんせつてき偉人いじんとなったカヴァイエ=コル (Aristide Cavaillé-Coll, 1811-1899) は、室内楽しつないがくけの素晴すばらしく完成かんせいされた芸術げいじゅつてき楽器がっきし、これを "Poïkilorgue"("poikilos":「多彩たさいな」「芸術げいじゅつてきな」+ "orgue":「オルガン」)とんだ。フランクもこのためのすうおおくの作品さくひん作曲さっきょくし、サン=サーンスリスト作曲さっきょくしている。

フランスのアレクサンドル・フランソワ・ドゥバン (Alexandre François Debain, 1809-1877) により "Harmonium"(アルモニオム)という名称めいしょうで1842ねん特許とっきょ取得しゅとくされたのが、その最初さいしょ定義ていぎとなっており、それは吐気はきけしきによっていた。

バッシュマン (J.D.Buschmann) が1836ねんに、より簡単かんたん吸気きゅうきしき考案こうあんした。しかし、ヨーロッパではそれはまだ可能かのうでなかった。吸気きゅうきしき開発かいはつは、1860年代ねんだいからアメリカですすめられた。その結果けっか、それが可能かのうになったのはJames Cahartの発明はつめいによるものとされている。のちにアメリカのメーソン&ハムリンしゃが1861ねんにパリの万博ばんぱく吸気きゅうきしきのものを出展しゅってんしたとされている。万国博ばんこくはくには各社かくしゃ毎回まいかい出品しゅっぴんし、そのさい受賞じゅしょうメダリオンを鍵盤けんばんうえのストップボードにほこらしげにプリントする習慣しゅうかんられた。この習慣しゅうかん日本にっぽんのヤマハも内国ないこく勧業かんぎょう博覧はくらんかいにて踏襲とうしゅうしていた。

リードオルガンは19世紀せいき後半こうはんには人気にんきたか楽器がっきであり、米国べいこくでも家庭的かていてき娯楽ごらくとして一般いっぱんてきだった。ピアノよりずっと安価あんかで、調律ちょうりつ安定あんていしており、軽量けいりょうかつ頑丈がんじょう運搬うんぱんしやすく、馬車ばしゃ蒸気じょうき機関きかんしゃ牽引けんいん列車れっしゃなどによる輸送ゆそうえた。米国べいこくではリードオルガンはパイプ・オルガンのわりとして会衆かいしゅううた伴奏ばんそうひろ使用しようされた。この楽器がっき基本きほんてき特徴とくちょうは、微妙びみょう強弱きょうじゃく表現ひょうげんができ、小型こがたであるてんにあった。その結果けっか、パイプオルガンとはちがい、当時とうじ勃興ぼっこうしていた多少たしょう裕福ゆうふく市民しみんのサロンやパーラー(応接おうせつしつ)、アメリカ、カナダ、アフリカ、中国ちゅうごく、インド、日本にっぽんなどの開拓かいたく伝道でんどう辺境へんきょうしょう教会きょうかいにもオルガンをそなえるというニーズにこたえた。

1900年代ねんだい前半ぜんはんのピアノ生産せいさん技術ぎじゅつ進歩しんぽによって、ピアノはより手頃てごろになった結果けっか、リード・オルガンの人気にんき急激きゅうげき低迷ていめいした。リード・オルガンがピアノにってわられたほか理由りゆうは、神聖しんせいなパイプ・オルガンの代用だいようだったことと、世俗せぞくてき家庭かていようオルガンのあいだうご曖昧あいまいなその立場たちばにあり、またリード・オルガンのための独創どくそうてき作品さくひん不足ふそくしていたということがげられる。なお、実際じっさいにはおおくの作品さくひんがあったが、20世紀せいきちゅうごろからピアノ作品さくひん駆逐くちくされて演奏えんそうされなくなった。

日本にっぽんでは「リード・オルガン」「足踏あしぶみオルガン」とぶのが一般いっぱんてきで、以前いぜん単純たんじゅんに「オルガン」というと、このたね楽器がっき第一義だいいちぎてきしていた。その歴史れきしてき背景はいけいとして、明治めいじから昭和しょうわにかけて、宣教師せんきょうし外国がいこくせいリードオルガンをみ、宣教せんきょう活動かつどう使用しようしたことと、明治めいじから昭和しょうわにかけて国産こくさんリードオルガンが100まんだい上回うわまわ台数だいすう製造せいぞうされ、唱歌しょうか教育きょういくなか直接的ちょくせつてき音楽おんがく普及ふきゅう貢献こうけんしたことがある。蓄音機ちくおんきやラジオが家庭かてい普及ふきゅうする以前いぜん、すでにおおやけ教育きょういくなかでリードオルガン導入どうにゅうすすみ、全国ぜんこく尋常じんじょう小学校しょうがっこう児童じどうへの唱歌しょうか教育きょういく成功せいこうしていた。明治めいじ普及ふきゅうしたのは安価あんかな39かぎ、49かぎ小型こがたで、大正たいしょう時代じだいにはストップつきもめずらしくなくなった。高級こうきゅうがたのリードオルガンは16フィートストップや4フィート、2フィート、セレステやフルオルガン、スウェルもそなえ、おもに師範しはん学校がっこう音楽おんがく学校がっこうなどに納入のうにゅうされた。少数しょうすうではあるがペダル鍵盤けんばんつきも音楽おんがく学校がっこうなどに納入のうにゅうされていた。

おもなメーカーは明治めいじ長尾ながお芳蔵よしぞう長尾ちょうびオルガン、西川にしかわ虎吉とらきち西川にしかわオルガン(のちに日本にっぽん楽器がっき横浜よこはま工場こうじょう)、やまとらくすのきのヤマハオルガン(日本にっぽん楽器がっき製造せいぞう浜松はままつ工場こうじょう)、池内いけうちさんろう池内いけうちオルガン(のちに東洋とうよう楽器がっき製造せいぞう[16]龍野たつの)、石原いしはら久之ひさゆきゆう石原いしはらオルガン、松本まつもと新吉しんきち松本まつもとオルガン(東京とうきょう月島つきしま工場こうじょうなど)、昭和しょうわになって河合かわい小市こいちのカワイオルガン、名古屋なごや山下やましたオルガンなどがあった。太平洋戦争たいへいようせんそうのあとにも多数たすう楽器がっき会社かいしゃがリードオルガン製造せいぞうがけた。楽器がっき会社かいしゃ製造せいぞうして、相手あいてさきブランドで家電かでんメーカー、デパートやミシン会社かいしゃまでもがリードオルガンを販売はんばいしていた。リードオルガンの製造せいぞう販売はんばい日本にっぽん楽器がっき製造せいぞうぎょう基礎きそきずいた。

また、この楽器がっきのためにおおくの楽譜がくふ出版しゅっぱん販売はんばいされた。代表だいひょうてき島崎しまざきあか太郎たろうへん「オルガン教則きょうそくほん」は昭和しょうわ11ねんに146はんかさねている。国民こくみん歌謡かよう椰子やし」を作曲さっきょくした大中おおなか寅二とらじはリードオルガンよう芸術げいじゅつてききょく数多かずおお作曲さっきょくしている。ほかに中田なかたあきらおか英三郎えいざぶろう草川くさかわ宣雄のりおしの俊雄としお奥田おくだこうてん秋元あきもと道雄みちおらがリードオルガンよう練習れんしゅうきょくしゅうなどを発表はっぴょう、リードオルガンの教育きょういく普及ふきゅう貢献こうけんした。

アコーディオン

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アコーディオンは、オルガンの仕組しくみをさまざまにんでおり、高級こうきゅうなものは、ストップの切替きりかえわせにより音色ねいろ多様たよう変化へんかさせることができる。アコーディオンの音色ねいろは、パイプ・オルガンでのうなおとストップによるひびきによっている。

手回てまわしオルガン

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Drehorgel, Germany, 手回てまわしオルガン
 
ストリートオルガン
古河ふるかわ歴史れきし博物館はくぶつかん所蔵しょぞう
 
ひだりから風琴ふうきん(オルガン)、かみ腔琴日本にっぽんふう改良かいりょうした手回てまわしオルガン)、手風琴てふうきんアコーディオン)。十字屋じゅうじや楽器がっきてんかん手風琴てふうきんどくまなび』の表紙ひょうし

手回てまわしオルガン(英語えいご: barrel-organ独語どくご: street organDrehorgel、仏語ふつご: orgue de barbarie、: organo di Barberia, organetto)は、ピンの円筒えんとう接続せつぞくされたハンドルをまわし、円筒えんとう隣接りんせつした鍵盤けんばんをピンでさえる仕組しくみの自動じどうオルガン。「ストリートオルガン」の別名べつめいのとおり、大道芸だいどうげいなどで使つかわれるのにてきするよう、くびかたからベルトでるせるくらいおおきさのはこおさまっているが、発音はつおん機構きこうとしてはパイプオルガンである。近年きんねんではジェルジ・リゲティ自動じどうされたこの楽器がっきのために作品さくひん編曲へんきょくしている。

明治めいじ時代じだい日本にっぽんでは、和室わしつでも演奏えんそうしやすいように改良かいりょうしたかみ腔琴開発かいはつされた。

電子でんしオルガン

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脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 詩篇しへん交響曲こうきょうきょく』の曲目きょくもく解説かいせつにおいて、オルガンでなく管楽器かんがっき使つかった理由りゆうとしてべられたもの。の『カンティクム・サクルム』ではオルガンを使用しようしている。Igor Stravinsky; Robert Craft (1982) [1961]. Dialogues. University of California Press. p. 46. ISBN 0520046501 

出典しゅってん

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  1. ^ a b るほど 楽器がっき解体かいたい全書ぜんしょ パイプオルガン誕生たんじょうストーリー ヤマハ株式会社かぶしきがいしゃ
  2. ^ オースティン・ナイランド 1988ねん、112-117ぺーじ
  3. ^ オースティン・ナイランド 1988ねん、117-119ぺーじ
  4. ^ 北國きたぐに新聞しんぶん朝刊ちょうかん 加賀かがひゃくまんせき異聞いぶん高山たかやま右近うこん(4)2002/02/05づけ(2020ねん5がつ7にち閲覧えつらん
  5. ^ オースティン・ナイランド 1988ねん、119-134ぺーじ
  6. ^ オースティン・ナイランド 1988ねん、146-150ぺーじ
  7. ^ オースティン・ナイランド 1988ねん、150-152ぺーじ
  8. ^ オースティン・ナイランド 1988ねん、36-51ぺーじ
  9. ^ るほど 楽器がっき解体かいたい全書ぜんしょ スライダーとふうばこ ヤマハ株式会社かぶしきがいしゃ
  10. ^ オースティン・ナイランド 1988ねん、26-27ぺーじ
  11. ^ 参考さんこう
  12. ^ オースティン・ナイランド 1988ねん、21ぺーじ
  13. ^ オースティン・ナイランド 1988ねん、94ぺーじ
  14. ^ オースティン・ナイランド 1988ねん、106-108ぺーじ
  15. ^ オースティン・ナイランド 1988ねん、108ぺーじ
  16. ^ 日本にっぽん全国ぜんこくしょ会社かいしゃ役員やくいんろく. 明治めいじ41ねん国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかん近代きんだいデジタルライブラリー)

参考さんこう文献ぶんけん

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  • Williams, P., Owen, B., Bicknell, S. "organ". The New Grove Dictionary of Music and Musicians. 2nd ed. London: Macmillan, 2001.
  • オースティン・ナイランド『パイプオルガンをほん丹羽にわ正明まさあき/小穴おあな晶子あきこどもやく音楽之友社おんがくのともしゃだい1さつ、1988ねん2がつ20日はつか。245ぺーじISBN 4-276-12452-2
  • つじひろし 『オルガンはうたう―歴史れきしてき建造けんぞうほうもとめて』 日本にっぽんキリスト教団きょうだん出版しゅっぱんきょく、2007ねん
  • 中国ちゅうごくにおけるパイプオルガンの歴史れきし-中世ちゅうせい近世きんせい (PDF) 沈媛、聖徳大学せいとくだいがく音楽おんがく文化ぶんか研究けんきゅうだいごう(2010ねんがつ

関連かんれん項目こうもく

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現代げんだい著名ちょめいなオルガン演奏えんそうしゃ

外部がいぶリンク

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