19世紀ごろのオックスフォード大学で、家庭教師(チューター、tutor)を指すスラングに、このコーチ (coach) の語が用いられたことが、英語のコーチ (coach) に指導の意味が派生した契機となっている。スラングとされたのは、当時のイギリスの教育では枝むちが用いられていたためだが、「(人や荷物を)馬車で運ぶ」ことになぞらえて、名詞として指導や指導員を指す正規の意味となっていった。また、「馬車で旅行する」という自動詞から「(家庭教師のもとで)勉強する/訓練する」という意味も生まれた。
コーチの動名詞形であるコーチング (coaching) は、馬の愛好家を中心に、riding horse などの語法に代わる乗馬(四輪車両を牽引しない馬の疾駆)の俗語としても用いられるようになったが[2]、一方でアメリカ英語ではコーチをスポーツの指導の意味でも使うようになり、それが訳されることなく外来語として日本でも使用されるようになった。しかし、世界共通語ではなく、大陸欧州などの非英語圏では、もっぱらトレーナー (trainer) と語源を同じくする語が使用されている。その場合、トレーナーが日本語の監督を意味していることもある。
スポーツ用語としてのコーチという言葉は、日本では20世紀の初頭ごろから使われ始めたとみられる。文献上での初見は、1921年に出版された「新しき用語の泉」で、『野球の用語で、走塁者を指揮し声援すること』として解説されている[3]。ただし、1906年4月16日付の東京日日新聞では『毎日々々コーチャーたるメリー氏は……』とあることから[3]、コーチャーという言葉の方が先に定着したことが窺える。
1930年に出版された婦女界社の「結婚心得帖」には、指導する立場の者が必ずしも信用の置けない例として、『家庭教師や水泳教師、さては庭球のコーチャーなどにも、相当仮面を被ってゐる者があります』とあることから[3]、この頃にはすでに野球以外の外来スポーツにも使用領域が広がっていたものの、コーチ(指導)とコーチャー(指導員)が明確に使い分けられ、いまだコーチャーの用法の方が主流を占めていたとみられる。
試合や大会、コンテストなどで、戦略や戦術を実施するよう指導、指示したり、必要な際には選手交代などを行う。多くのコーチは過去に同じスポーツを選手として経験している場合が多い。
いくつかのプロスポーツでは、英語のヘッドコーチは監督またはゼネラルマネージャーと訳される。この場合のヘッドコーチには選手の採用や契約交渉、トレードや解雇などを決める権限がある場合も多い。
学校スポーツ、部活動などでは特に、コーチは選手に対し、技量やルール、戦術などを教え実行できるように訓練する。
大きなチーム、スポーツ組織では、コーチ部門にも多くのスタッフがいて、コーチをサポートする。ヘッドコーチの下に何人かのコーチがいて、特有の部門を受け持つ場合もある(野球のピッチング・コーチなど)。
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