トレード

トレード (英えい: trade)とは、団体だんたいプロスポーツ競技きょうぎにおいて、複数ふくすうのチームがお互たがいの所属しょぞく選手せんしゅの保有ほゆう権けんを交換こうかんすること、あるいは保有ほゆう権けんと金銭きんせんなどを交換こうかんすることをいう。

プロ野球やきゅう

プロ野球やきゅうでは、自由じゆう契約けいやくを経へずに選手せんしゅ契約けいやくを譲渡じょうとすることをトレードと呼よぶ。戦力せんりょく面めんで同等どうとうな価値かちを持もつ選手せんしゅ同士どうしを入いれ替かえる交換こうかんトレードが多おおいが、移籍いせき元もと球団きゅうだんに金銭きんせんを支払しはらって選手せんしゅを迎むかえ入いれる「金銭きんせんトレード」、交換こうかん選手せんしゅに金銭きんせんも加くわえて損得そんとくのバランスを取とるトレードもある。また、3球団きゅうだん間あいだでのトレードは「三角さんかくトレード」と呼よばれる。通常つうじょうは選手せんしゅの意思いしに関係かんけいなく球団きゅうだん間あいだの合意ごういでトレードが決定けっていされるが、本人ほんにんの希望きぼうによる場合ばあいも稀まれにある。

NPBでは何なんの代償だいしょうもなしに選手せんしゅを譲渡じょうとする無償むしょうトレードと呼よばれるものもある。また、MLBのトレードでは奇妙きみょうな代償だいしょうも存在そんざいした。例たとえば、サイ・ヤングが若手わかて時代じだいにトレードされた時ときの移籍いせき金きん「スーツ1着ちゃく」、レフティ・グローブがトレードされた時ときの「獲得かくとくした球団きゅうだんの負担ふたんで放出ほうしゅつした球団きゅうだんの本拠地ほんきょちに外野がいやフェンスを作つくる」、2008年ねんに独立どくりつリーグのジョン・オドムが「バット10本ほん」とトレードされた事例じれい、わずか1ドルでの金銭きんせんトレード（ブラッド・ミルズ、ロブ・ブラントリー）など。

トレードとは即すなわち「球団きゅうだん間あいだでの選手せんしゅ保有ほゆう権けんの交換こうかん、譲渡じょうと」にすぎないため、選手せんしゅとの契約けいやく内容ないよう（契約けいやく期間きかん・年俸ねんぽう・出来高できだかなど）がトレードを契機けいきに変かわることはなく、その契約けいやく履行りこう義務ぎむはそのまま移籍いせき先さき球団きゅうだん（最新さいしんの所属しょぞく球団きゅうだん）が契約けいやく終了しゅうりょう年ねんまで引ひき継つぐ。ただし、球団きゅうだん間あいだの合意ごういによって移籍いせき元もと球団きゅうだんが一定いってい割合わりあいの年俸ねんぽう負担ふたんを行おこなうケースはあり得える。またシーズン途中とちゅうのトレードであれば、当該とうがい年ねんの年俸ねんぽうは原則げんそく日割ひわりで両りょう球団きゅうだんが分担ぶんたんすることになる。

日本にっぽんプロ野球やきゅう（NPB）

NPBでは、日本にっぽんプロフェッショナル野球やきゅう協約きょうやく（以下いか野球やきゅう協約きょうやく）第だい13章しょう「選手せんしゅ契約けいやくの譲渡じょうと」の項目こうもくに定さだめられており、トレードは基本きほん的てきに球団きゅうだん側がわの意向いこうにより行おこなわれる。以下いかの留意りゅうい規定きていがある。

• 各かく球団きゅうだんは、各かく年としの7月がつ31日にちまで（2007年ねん以前いぜんは各かく年としの6月がつ30日にちまで、2020年ねんは新型しんがたコロナウイルスで開幕かいまくが遅おくれた影響えいきょうにより9月がつ30日にちまで、2021年ねんは東京とうきょうオリンピック開催かいさいに伴ともなうシーズン中断ちゅうだんにより8月がつ31日にちまで）であれば選手せんしゅを新規しんきに支配しはい下か選手せんしゅ登録とうろくできる。トレードにより選手せんしゅを獲得かくとくできる期限きげんもこれに従したがう。（ただし、ウェイバー公示こうじされた選手せんしゅであれば左記さき期限きげんを過すぎても獲得かくとく可能かのう）
• 三角さんかくトレードに新人しんじん選手せんしゅを含ふくむことの禁止きんし。
• 当該とうがい選手せんしゅがトレード時じに一軍いちぐん登録とうろくされている場合ばあいは、その選手せんしゅの出場しゅつじょう選手せんしゅ登録とうろくを抹消まっしょうする。通常つうじょう、選手せんしゅが出場しゅつじょう選手せんしゅ登録とうろくを抹消まっしょうされた場合ばあい、10日とおか後ごにならなければその選手せんしゅを再ふたたび出場しゅつじょう選手せんしゅ登録とうろくできないが、トレードを伴ともなう場合ばあいはトレード後ごに移籍いせき先さきの球団きゅうだんで即時そくじ、出場しゅつじょう選手せんしゅ登録とうろくができる。
• 「トレード時じの移転いてん費ひに関かんする覚書おぼえがき」が1988年ねんに労使ろうし間あいだによって締結ていけつされ、以前いぜんは転居てんきょを伴ともなう場合ばあいのみに移転いてん費ひが支払しはらわれていたが、転居てんきょを伴ともなわない移籍いせきに関かんしても支払しはらわれることとなり、移籍いせき手当てあてという扱あつかいとなった。2009年ねんまでは京浜けいひん地域ちいき内ない（千葉ちば県けん、埼玉さいたま県けんを含ふくむ）及および阪神はんしん地域ちいき内ないは50万まん円えん、その他たの地域ちいき間あいだの移籍いせきは100万まん円えんで、妻帯さいたい者しゃでない者ものはその半額はんがくであった。その後ご、2010年ねん12月がつ10日とおかの覚書おぼえがきの全面ぜんめん改定かいていにより移籍いせき手当てあては廃止はいしされ、実際じっさいに転居てんきょ（ホテルなどの宿泊しゅくはく施設しせつの長期ちょうき滞在たいざいも含ふくむ）した者もののみに移転いてん費ひとして一律いちりつ200万まん円えんを支給しきゅうすることとなった。ただし、譲ゆずり受うけ球団きゅうだんの選手せんしゅ寮りょうに入はいる者ものは転居てんきょと扱あつかわないこととなった。

なお公示こうじ上じょうは、上記じょうきの規定きていによらないFA移籍いせきの人的じんてき補償ほしょう移籍いせきや現役げんえきドラフトによる移籍いせき、ウェイバーによる選手せんしゅ獲得かくとくについても、自由じゆう契約けいやくを経へていないためトレードとして発表はっぴょうされる。

メジャーリーグ（MLB）

MLBでは、シーズン中ちゅうに40人にん枠わくの選手せんしゅをトレードできる期限きげん日び時じ（トレード・デッドライン）が、7月がつ28日にち～8月がつ3日にちのいずれかの日時にちじに設定せっていされる。以前いぜんは毎年まいとし7月がつ31日にち（アメリカ東部とうぶ標準時ひょうじゅんじ16:00）が期限きげん日時にちじだったが、2023年ねん以降いこうはMLBコミッショナーが柔軟じゅうなんに日時にちじを変更へんこうできる規定きていとなった。これは（予定よてい試合しあい数すうの多おおい）週末しゅうまつが期限きげん日びになることを避さける目的もくてきがある。

2018年ねんまでは、事前じぜんにウェイバーを通過つうかさせれば8月がつ以降いこうのシーズン中ちゅうでも40人にん枠わくの選手せんしゅをトレードできたが、2019年ねんからはウェイバー公示こうじを経へた8月がつ以降いこうのトレードも禁止きんしとなった。なお、DFAに伴ともない40人にん枠わくを外はずれたウェイバー公示こうじ中ちゅうの選手せんしゅがクレーム（Claim, 他た球団きゅうだんから獲得かくとく申もうし込こみ）を受うけ、選手せんしゅが譲渡じょうとされるケースは8月がつ以降いこうもありうる。また、当該とうがいシーズンに1度ども40人にん枠わくに登録とうろくされていない選手せんしゅについては、8月がつ以降いこうもトレード可能かのう。

このほか、MLBでは一部いちぶドラフト指名しめい権けんのトレードや、一方いっぽうの球団きゅうだんの獲得かくとく選手せんしゅは後日ごじつ改あらためて決きめる『後日ごじつ指名しめい選手せんしゅ (Player To Be Named Later, PTBNL)』といった方式ほうしきのトレードも認みとめられている。

MLBでは、FA権けんはシーズン終了しゅうりょう後ごに自動じどう行使こうしされ、FA権けん再さい取得しゅとくの必要ひつようもない（契約けいやく期間きかん満了まんりょうのたびに自動的じどうてきに自由じゆう契約けいやくとなる）ため、近々ちかぢかにFAとなる選手せんしゅを中心ちゅうしんとした、多おおくのトレードが毎年まいとし成立せいりつしている。またMLBのポストシーズンには原則げんそく、8月がつ31日にち時点じてんで当該とうがいチームに登録とうろくされている選手せんしゅのみ出場しゅつじょうできる。以上いじょうから、ポストシーズンを見据みすえるチームは戦力せんりょくをさらに充実じゅうじつさせるため、下位かいに沈しずむチームから主力しゅりょく級きゅう選手せんしゅの引ひき抜ぬきをトレード・デッドラインぎりぎりまで画策かくさくし、下位かいチームは見返みかえりに若手わかて選手せんしゅや金銭きんせんなどを獲得かくとくしている。このような大物おおもの選手せんしゅの絡からむ駆かけ込こみトレードは『フラッグシップ・ディール』『ブロックバスター』と呼よばれる。また、下位かいチームが主力しゅりょく選手せんしゅを多数たすう放出ほうしゅつすることを『ファイヤーセール』と呼よぶ。

このようなトレードは双方そうほうに一長一短いっちょういったんがある。ポストシーズンを見据みすえるチームにとっては手早てばやく即そく戦力せんりょく選手せんしゅを補強ほきょうできるメリットがある。一方いっぽうで、このようなトレードで移籍いせきする主力しゅりょく選手せんしゅは契約けいやく年俸ねんぽうが高額こうがくであったり、前述ぜんじゅつの通とおり近々ちかぢかにFAとなる選手せんしゅが多おおく、また交換こうかん要員よういんに要求ようきゅうされるのは若手わかて有望ゆうぼう選手せんしゅ（プロスペクト）であることが多おおいため、即そく戦力せんりょく選手せんしゅを短期間たんきかん保有ほゆうするために将来しょうらい性せい豊ゆたかな選手せんしゅを失うしなうというリスクを負おう。下位かいチームは、保有ほゆう権けんを失うしなう前まえにその主力しゅりょく選手せんしゅをトレード要員よういんとして活用かつようし、見返みかえりを得えようと動うごく。選手せんしゅにかかる人件じんけん費ひを減へらした上うえに、将来しょうらいのチーム力りょく向上こうじょうを図はかれるメリットがある。しかし、獲得かくとくした若手わかて選手せんしゅが期待きたい通どおり成長せいちょうするかは未知数みちすうであるため、育そだて上あげた主力しゅりょくを失うしなって低下ていかした戦力せんりょくを回復かいふくさせられず、チームが長期間ちょうきかん低迷ていめいするリスクがある。

トレードは基本きほん的てきに球団きゅうだんの意思いしにより行おこなわれるが、サービスタイム (Major League Service time, MLS) が10年ねん以上いじょうで、且かつ現げん所属しょぞく球団きゅうだん在籍ざいせき5年ねん以上いじょうの選手せんしゅにはトレード拒否きょひ権けんが与あたえられ、権利けんり保有ほゆう選手せんしゅが拒否きょひ権けんを破棄はきしない限かぎりトレードできない。FA選手せんしゅとの契約けいやく時じに条項じょうこうを盛もり込こむことも可能かのうである。また2023年ねん現在げんざい、MLBドラフトでの指名しめいを経へて入団にゅうだんした選手せんしゅは、契約けいやく年ねんのワールドシリーズが終了しゅうりょうするまでトレードできず、PTBNLやその候補こうほ選手せんしゅとすることも禁きんじられている。

プロバスケットボール

bjリーグ、NBAなどのプロバスケットボールでは、選手せんしゅの契約けいやく期間きかん中ちゅうに他た球団きゅうだんに選手せんしゅ契約けいやく（仮かり保有ほゆう権けん）を譲渡じょうとする場合ばあいをトレードと呼よぶ。選手せんしゅ契約けいやくの譲渡じょうと後ご、当該とうがい選手せんしゅと前ぜん所属しょぞく球団きゅうだんとの権利けんり・義務ぎむは、トレード先さきの球団きゅうだんに移転いてんされる。交換こうかん及および金銭きんせんトレードの他ほかに、優先ゆうせん交渉こうしょう権けん、ドラフト指名しめい権けんなどを引ひき換かえに行おこなうトレードもある。

bjリーグ

bjリーグでは、トレード期間きかんを設定せっていし球団きゅうだんの意思いしにより行おこなわれる。期間きかんはドラフト会議かいぎ直前ちょくぜんより指定していされた期限きげん（レギュラーシーズン60％消化しょうか時点じてん）まで。

NBA

NBAではシーズン中ちゅうのトレード期限きげんをレギュラーシーズン第だい16週しゅうの木曜日もくようび（通常つうじょう2月がつ）の東部とうぶ時間じかん午後ごご3時じに設定せっていしている（トレード・デッドライン）。 トレード・デッドライン後ごのトレードは禁止きんしされている。これ以降いこうの選手せんしゅ補強ほきょうは、フリーエージェント選手せんしゅ、バイアウト、ウェイブを経へてFAとなった選手せんしゅ、Dリーグなど、NBA以外いがいの選手せんしゅとの契約けいやくになる。 また、オフシーズンにFAから契約けいやくをした選手せんしゅは3ヶ月かげつ経過けいか後ごか、あるいは12月15日にちまではトレードすることはできない。 オフシーズンに現在げんざい所属しょぞくしている選手せんしゅがFAになり、移籍いせきの可能かのう性せいが大おおきい場合ばあいなどでは、チームはただの選手せんしゅ放出ほうしゅつにならないように、サイン・アンド・トレードと言いう契約けいやく履行りこう形態けいたいを経へて、トレードを行おこなう事ことができ、この場合ばあいでは、トレードにより他たの選手せんしゅ、将来しょうらいのドラフト指名しめい権けん、金銭きんせんを得えることができる。

NFL

NFLの場合ばあい、金銭きんせんトレードは禁止きんしされており、基本きほん的てきに選手せんしゅあるいはドラフト指名しめい権けんとの交換こうかんトレードとなる。一般いっぱんにはドラフト指名しめい権けんとのトレードが多おおく、NFLドラフトの場ばでも行おこなわれている。また、無償むしょうトレードも行おこなわれることがある。

トレード期間きかんは3月がつ上旬じょうじゅんから10月がつ中旬ちゅうじゅんまでとなっている。

プロサッカー

プロサッカーにおいても選手せんしゅの移籍いせきの一いち形態けいたいとしてトレードが行おこなわれる。交換こうかんする選手せんしゅの価値かちに差さがある場合ばあいは、それを埋うめるために金銭きんせんが支払しはらわれる場合ばあいもある。ただし21世紀せいき以降いこうでは、契約けいやく期間きかん中ちゅうの選手せんしゅに対たいして

• 選手せんしゅの契約けいやく先さきクラブに違約いやく金きん（移籍いせき金きん）を支払しはらい、現行げんこう契約けいやくを破棄はきさせたうえで選手せんしゅの保有ほゆう権けんを獲得かくとくし、新あらたな契約けいやくを締結ていけつする（完全かんぜん移籍いせき）
• 選手せんしゅの契約けいやく先さきクラブに貸与たいよ金きんを支払しはらい、元もとクラブが保有ほゆう権けんを維持いじしたまま、期間きかんを取とり決きめて選手せんしゅを獲得かくとくする（レンタル移籍いせき、期限きげん付つき移籍いせき）

以上いじょういずれかの方式ほうしきでの移籍いせきが主流しゅりゅうとなっており、所属しょぞく選手せんしゅ同士どうしの交換こうかんトレードが締結ていけつされるケースはさほど多おおくない。

詳細しょうさいは「移籍いせき金きん#サッカー」を参照さんしょう

プロサッカーでは、同どう一いちリーグだけでなく、異ことなるリーグ・異ことなる国くにのクラブ間あいだでの移籍いせきも頻繁ひんぱんに行おこなわれている。なお、Jリーグでは完全かんぜん移籍いせきのトレードは、ほぼ見みられない。しかし、双方そうほうで期限きげん付つき移籍いせきをし合あうレンタル・トレードはたびたび行おこなわれている。

関連かんれん項目こうもく

• フリーエージェント（FA）
• 無償むしょうトレード
• ノートレード条項じょうこう