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デナード則 - Wikipedia

デナードそく(デナードそく)は、ロバート・デナード共著きょうちょした1974ねん論文ろんぶんもとづくスケーリングそくである[1]デナード・スケーリングMOSFETスケーリングともわれる[2]元々もともとMOSFETたいして定式ていしきされたものであり、おおむね、電力でんりょく使用しよう面積めんせき比例ひれいするが電圧でんあつ電流でんりゅうおおきさはながさに反比例はんぴれいするため、トランジスタがちいさくなっても電力でんりょく密度みつど一定いっていたもつということをべている[3][4]

導出どうしゅつ

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デナードはトランジスタの寸法すんぽう技術ぎじゅつ世代せだいごとに30%ちいさく(0.7ばい)なるため、面積めんせきは50%ちいさくなることにづいた。これにより遅延ちえんが30%減少げんしょう(0.7ばい)し、動作どうさ周波数しゅうはすうやく40%増加ぞうか(1.4ばい)する。最終さいしゅうてき電場でんじょう一定いっていにするために電圧でんあつが30%削減さくげんされ、エネルギーが65%削減さくげんされ電力でんりょく周波数しゅうはすうは1.4ばい)が50%削減さくげんされる[note 1]。それゆえすべての技術ぎじゅつ世代せだいでトランジスタ密度みつどは2ばいになり、回路かいろは40%はやくなり、消費しょうひ電力でんりょく(トランジスタすうは2ばい)はわらずとなる[5]

ムーアの法則ほうそく処理しょり能力のうりょくとの関係かんけい

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ムーアの法則ほうそくによると、トランジスタのかずは2ねんごとに2ばいになる。デナードそくわせると、これはワットあたりの処理しょり能力のうりょくおな速度そくど成長せいちょうやく2ねんごとにばいになることを意味いみする。この傾向けいこうクーメイの法則ほうそくばれる。ばいになる速度そくど当初とうしょクーメイにより1.57ねん[6](ムーアの法則ほうそくばいになる期間きかんよりもややはやい)であると提案ていあんされていたが、最近さいきん推定すいていではこの速度そくどおそくなっていることが提案ていあんされている[7]

2006ねんごろのデナードそく崩壊ほうかい

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CMOS回路かいろ動的どうてき(スイッチング)消費しょうひ電力でんりょく周波数しゅうはすう比例ひれいする[8]歴史れきしてきには、デナードそくによりもたらされるトランジスタ電力でんりょく削減さくげんにより、製造せいぞうしゃたちは回路かいろ全体ぜんたい消費しょうひ電力でんりょく大幅おおはばやすことなく、クロック周波数しゅうはすう世代せだいから世代せだいにかけて大幅おおはばげることができた。

2005–2007ねんごろからデナードそく崩壊ほうかいしたようにおもわれる。2016ねん現在げんざい集積しゅうせき回路かいろのトランジスタのかずつづけているが、結果けっかとしてしょうじる処理しょり能力のうりょく改善かいぜんは、いちじるしい周波数しゅうはすう増加ぞうかによるスピードアップよりもゆるやかである[3][9]。この崩壊ほうかいおも理由りゆうは、サイズがちいさいと電流でんりゅうがよりおおきな課題かだいとなり、チップがあつくなるためねつ暴走ぼうそうおそれがしょうじ、エネルギーコストがさらに増加ぞうかすることである[3][9]

デナードそく崩壊ほうかいと、結果けっかとしてクロック周波数しゅうはすう大幅おおはばげることが不可能ふかのうであることから、ほとんどのCPUの製造せいぞう会社かいしゃ性能せいのう改善かいぜんするわりの方法ほうほうとしてマルチコアプロセッサ焦点しょうてんてている。コアすう増加ぞうかおおくの(すべてではない)仕事しごとりょう役立やくだつが、おおくのコアをつことによるアクティブスイッチング素子そし増加ぞうかは、全体ぜんたい消費しょうひ電力でんりょく増加ぞうかにつながり、CPUの電力でんりょく消費しょうひ問題もんだい悪化あっかさせる[10][11]最終さいしゅうてき電力でんりょく制約せいやくそむくことなく特定とくてい時点じてん実際じっさいにアクティブにできるのは集積しゅうせき回路かいろ一部いちぶのみである。のこった(アクティブな)領域りょういきは、ダークシリコン英語えいごばんばれる。

関連かんれん項目こうもく

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  1. ^ Active power = CV2f

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ Dennard, Robert H.; Gaensslen, Fritz; Yu, Hwa-Nien; Rideout, Leo; Bassous, Ernest; LeBlanc, Andre (October 1974). “Design of ion-implanted MOSFET's with very small physical dimensions”. IEEE Journal of Solid-State Circuits SC-9 (5). http://www.ece.ucsb.edu/courses/ECE225/225_W07Banerjee/reference/Dennard.pdf. 
  2. ^ NVIDIAがMOSFETの比例ひれい縮小しゅくしょうそく(デナードそく)を解説かいせつ前編ぜんぺん2024ねん9がつ9にち閲覧えつらん
  3. ^ a b c McMenamin (April 15, 2013). “The end of Dennard scaling”. January 23, 2014閲覧えつらん
  4. ^ Streetman, Ben G.; Banerjee, Sanjay Kumar (2016). Solid state electronic devices. Boston: Pearson. p. 341. ISBN 978-1-292-06055-2. OCLC 908999844 
  5. ^ Borkar, Shekhar; Chien, Andrew A. (May 2011). “The Future of Microprocessors”. Communications of the ACM 54 (5): 67. doi:10.1145/1941487.1941507. http://cacm.acm.org/magazines/2011/5/107702-the-future-of-microprocessors/fulltext 2011ねん11月27にち閲覧えつらん. 
  6. ^ Greene (September 12, 2011). “A New and Improved Moore's Law: Under "Koomey’s law," it’s efficiency, not power, that doubles every year and a half.”. Technology Review. January 23, 2014閲覧えつらん
  7. ^ http://www.koomey.com/post/153838038643
  8. ^ CMOS Power Consumption and CPD Calculation”. Texas Instruments (June 1997). March 9, 2016閲覧えつらん
  9. ^ a b Bohr (January 2007). “A 30 Year Retrospective on Dennard's MOSFET Scaling Paper”. Solid-State Circuits Society. January 23, 2014閲覧えつらん
  10. ^ Esmaeilzedah (2012ねん). “Dark Silicon and the end of multicore scaling”. 2019ねん8がつ閲覧えつらん
  11. ^ Hruska (February 1, 2012). “The death of CPU scaling: From one core to many — and why we’re still stuck”. ExtremeTech. January 23, 2014閲覧えつらん