ノット

ノット (knot 記号きごう: kn, kt)は、速はやさの単位たんいであり、1ノットは1時間じかんに1海うみ里さと (1852 m) 進すすむ速はやさである。

ノット (knot)
記号きごう	kt（計量けいりょう法ほう）,kn（SI国際こくさい文書ぶんしょ第だい8版はん(2006年ねん)（廃はい版ばん）における単位たんい記号きごう）
系けい	非ひSI単位たんい
量りょう	速はやさ
SI	約やく0.514444 m/s
定義ていぎ	(1852/3600)m/s = 1時じ間あいだに1海里かいり進すすむ速はやさ

概要がいよう

日本にっぽんの計量けいりょう法ほう第だい5条じょう第だい2項こうにおいて、用途ようとを限定げんていする計量けいりょう単位たんいを「特殊とくしゅの計量けいりょう単位たんい」として認みとめている。ノットはこの「特殊とくしゅの計量けいりょう単位たんい」の一ひとつであり、「航海こうかい又または航空こうくうに係かかる速はやさの計量けいりょう」に限定げんていして使用しようが認みとめられている。

計量けいりょう法ほうにおけるノットの定義ていぎは、「1時じ間あいだに1852メートルの速はやさ」すなわち、1時間じかんに1海うみ里さと進すすむ速はやさということである。(1852/3600) m/s であり、換算かんさんすると、約やく0.514444 m/s ということになる。ただし、イギリスでの公式こうしきの定義ていぎでは、（正確せいかくに）0.51477 m/s である。これは、1海里かいりを1853.184 m（6080 国際こくさいフィート）とし、これを3600秒びょうで除じょした値ねを小数しょうすう5桁けたに丸まるめたものである。

ノットは現在げんざいも船舶せんぱくや航空機こうくうきの速度そくどをあらわす単位たんいとしてよく用もちいられている。これは海図かいず上うわや航空こうくう図ず上うえで距離きょりを測はかるには緯度いど1分ぶんに相当そうとうする海うみ里さとを用もちいて計算けいさんするほうが容易よういであり、したがって速度そくどもノットを用もちいる方ほうが便利べんりであるためである。ノットを使用しようする際さいには、SI単位たんい（この場合ばあいはキロメートル毎時まいじ (km/h) など）との対応たいおう関係かんけいを示しめす必要ひつようがある。

国際こくさい単位たんい系けい (SI) における位置付いちづけ

ノットは、現在げんざいの国際こくさい単位たんい系けい (SI) の国際こくさい文書ぶんしょ（第だい9版はん、2019年ねん）においては、「その他たの非ひSI単位たんい」としても認みとめられていない。かつては（2006年ねんから2019年ねんまで）、国際こくさい単位たんい系けい(SI)の文書ぶんしょである国際こくさい文書ぶんしょ第だい8版はん (2006)において「表ひょう8　その他たの非ひSI単位たんい」の一ひとつとして掲かかげられていた。

ノットの記号きごう

ノットの単位たんい記号きごうには、国際こくさい的てきに合意ごういされた記号きごうはないが、kn がよく使つかわれる。ただし、日本にっぽんの計量けいりょう法ほうでは、単位たんい記号きごうは「kt」と定さだめられている。

かつては漢字かんじで"節ぶし"という表記ひょうきが用もちいられたことがある。しかし、この漢字かんじ表記ひょうきは計量けいりょう法ほうでは認みとめられていない。

かつての定義ていぎなど

かつては海うみ里さとの定義ていぎが様々さまざまに異ことなっていたので、ノットの定義ていぎも異ことなっていたが、現在げんざいでは国際こくさい海里かいりを基もとにしたものにほぼ統一とういつされている。

国際こくさい海里かいりは1929年ねんに定さだめられたが、アメリカは1954年ねんまで1海里かいり = 正確せいかくに6080.20 測量そくりょうフィート = 約やく1853.248 666メートル、イギリスは1970年ねんまで1海里かいり = 正確せいかくに6080 国際こくさいフィート = 正確せいかくに1853.184メートルという定義ていぎを使つかっていた（この値ねは現在げんざいでも、イギリスの公式こうしきのノットの定義ていぎの算出さんしゅつに用もちいられている）。

起源きげん

ノットという言葉ことばは英語えいごで「結むすび目め」を意味いみする。

大だい航海こうかい時代じだい、船ふねの緯度いどを知しるには時計とけいと太陽たいようの高度こうどを、経度けいどを知しるためには速度そくどを計測けいそくする必要ひつようがあった。

当初とうしょ、船ふねの船首せんしゅから丸太まるた（log）を投なげ込こみ、船尾せんびまでの時間じかんを砂時計すなどけいで計はかり、進行しんこう速度そくどの記録きろくとしたが船ふねによってマチマチで経験けいけん豊富ほうふな航海こうかい長ちょうが必要ひつようであったし、夜よるや嵐あらしの最中さいちゅうでは計測けいそく不能ふのうと言いう欠点けってんがあった。そこで、ロープの先端せんたんに丸太まるたや板いたをしばり、ロープに一定いっていの間隔かんかくで結むすび目めを作つくり、丸太まるたや板いたを海うみに投なげ込こんでから一定いってい時間じかんの間あいだに結むすび目めがいくつ手しゅの中なかを通過つうかするかをカウントして記録きろくするようになった。結むすび目めは「ノット」(knot)なので、この語かたりが速度そくどの語源ごげんになった。ちなみに、英語えいごでは2以上いじょうは two knots, three knots のように「ノッツ」になるが、日本語にほんごでは常つねに単数たんすう形がたの「ノット」を使つかう。なお、1 NM（海うみ里さと）は緯度いどの 1 分ぶんの距離きょりであるので、どの緯度いどであっても地図ちずとディバイダがあれば計算けいさんできる。

速度そくど計けいの登場とうじょう以前いぜんにおいては「ハンドログ」という器具きぐを用もちいて「28秒びょう砂時計すなどけいの砂すなが落おちきる前まえにロープの等間隔とうかんかくの結むすび目め（knot）をいくつ繰くり出だしたか」で速度そくどを測はかっていた。結むすび目めと結むすび目めとの間あいだは 15.4 mであった。

目立めだった目印めじるしのない海上かいじょうや空中くうちゅうでは、自じ船ふねの位置いちは進行しんこうする方位ほういと速はやさを求もとめ、その速度そくどで航行こうこうした時間じかんを用もちいて把握はあくしていた。1 海里かいりは緯度いど 1 分ふんに相当そうとうする平均へいきん的てきな子午線しごせん弧この長ながさに等ひとしいことから、海図かいず上うえでは非常ひじょうに分わかりやすい単位たんいとなる。このため、海うみ里さとを単位たんいに含ふくむノットは、船舶せんぱくや航空機こうくうきでよく使用しようされることとなった。

航海こうかい・航空こうくう分野ぶんや以外いがいでも、気象きしょう観測かんそくにおける風速ふうそくの単位たんいとして使つかわれることがある。例たとえば、国際こくさい的てきな海上かいじょう気象きしょうデータの収集しゅうしゅう・保管ほかんには、ノットが現在げんざいも使用しようされている。

換算かんさん

速度そくどの単位たんい

	メートル毎秒まいびょう （SI単位たんい）	キロメートル毎時まいじ	ノット	マイル毎時まいじ	フィート毎秒まいびょう
1 m/s	= 1 m/s	= 3.6 km/h	≈ 1.9438 kt	≈ 2.2369 mph	≈ 3.2808 fps
1 km/h	≈ 0.27778 m/s	= 1 km/h	≈ 0.53996 kt	≈ 0.62137 mph	≈ 0.91134 fps
1 kt	≈ 0.51444 m/s	= 1.852 km/h	= 1 海うみ里さと/h	≈ 1.1508 mph	≈ 1.6878 fps
1 mph	= 0.44704 m/s	= 1.609344 km/h	≈ 0.8690 kt	= 1 mi/h	≈ 1.4667 fps
1 fps	= 0.3048 m/s	= 1.09728 km/h	≈ 0.59248 kt	≈ 0.68181 mph	= 1 ft/s

簡便かんべんな換算かんさん

1ノットは、約やく0.514 m/s なので、概数がいすうとして、1ノットの2倍ばいが 1 m/s であるとして、簡便かんべんに換算かんさんすることが多おおい。さらに、1ノットを1.9 km/h、1海里かいりを 1.9kmとして簡便かんべんに換算かんさんされることもある。

例たとえば、

• 10ノット → 約やく5 m/s　
• 10ノット → 約やく19 km/h （10海里かいり → 約やく19 km）

符号ふごう位置いち

記号きごう	Unicode	JIS X 0213	文字もじ参照さんしょう	名称めいしょう
㏏	U+33CF	-	㏏ ㏏	SQUARE KT

脚注きゃくちゅう

関連かんれん項目こうもく

• 速はやさの比較ひかく