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海図 - Wikipedia

海図かいず(かいず、英語えいご: nautical chart)は、水路すいろ一種いっしゅ航海こうかいのためにつくられた主題しゅだい航海こうかいのために必要ひつよう水路すいろ状況じょうきょう、すなわち水深すいしんそこしつ海岸かいがん地形ちけい海底かいてい危険きけんぶつ航路こうろ標識ひょうしきなどが、正確せいかくやすく表現ひょうげんされている。一定いってい規模きぼ以上いじょう船舶せんぱくには、そなけることが義務ぎむづけられている。

解説かいせつ

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海図かいずは、航海こうかいのためにつくられるので、航海こうかい使つかいやすく配慮はいりょされている。海図かいず精度せいど航海こうかい速度そくど直結ちょっけつする。イングランド-オーストラリアあいだ航海こうかいにおいては19世紀せいき初頭しょとうに4ヶ月かげつかかっていたのが、20世紀せいきあたまには1ヶ月かげつになった。

海図かいず水深すいしん基準きじゅんめんは、りくたかさの基準きじゅんめん東京とうきょうわん平均へいきん海面かいめん、「T.P.」)とことなり、最低さいてい水面すいめん基準きじゅんめん(すなわち0メートル)とされている。最低さいてい水面すいめんとは、各地かくちごとに潮汐ちょうせき観測かんそくおこない、これよりした海面かいめんがらないめんりゃく最低さいていていしおめん最大さいだい干潮かんちょう水面すいめんのことである。そのため、いくらしおいても、海図かいずしるされた水深すいしんよりあさくなることはほとんどない。この基準きじゅん座礁ざしょうふせいでいる。

海図かいずじょう海岸かいがんせん位置いちは、最高さいこう水面すいめん最大さいだい満潮まんちょう水面すいめんりゃく最高さいこう高潮こうちょうめん)を基準きじゅんとし、この海面かいめん陸地りくちせっするせんである。そのため、りくとはことなることもある。うみなどにかかるはしたかも、最高さいこう水面すいめん基準きじゅんとしている。

海図かいずしるされる灯台とうだいしまたかは、その平均へいきん水面すいめんしおきがないと仮定かていしたときの海面かいめん)からのたかさで表示ひょうじする。

等深線とうしんせんという、水深すいしんのほぼひとしい場所ばしょむす細線さいせん記載きさいされている。

投影とうえいほうおもせいかく図法ずほう一種いっしゅであるメルカトル図法ずほうによる。

このほか、海図かいずには灯台とうだいなどの航路こうろ標識ひょうしき位置いち定置網ていちあみなどの漁具ぎょぐ位置いち無線むせんきょく位置いち、沈船の位置いち海流かいりゅう潮流ちょうりゅう一般いっぱんみなとかい海底かいていそこしつなどが図示ずしされている。ただし、海上かいじょう海底かいていなどの状況じょうきょう刻々こくこく変化へんかするので、海図かいずつね水路すいろ通報つうほうなどで最新さいしん情報じょうほう反映はんえいされたもの使用しようする必要ひつようがある。

海図かいず種類しゅるい

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広義こうぎの「海図かいず」は、航海こうかいもちいられる航海こうかいよう海図かいず (Nautical Charts) および、航海こうかい参考さんこうもちいられる水路すいろ特殊とくしゅ (Miscellaneous Charts) をす。狭義きょうぎの「海図かいず」は、前者ぜんしゃ航海こうかいよう海図かいずのみをす。このほか海洋かいよう開発かいはつとうひろ使用しようされるうみ基本きほん (Basic Maps of the Sea) もある。

航海こうかいよう海図かいず

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航海こうかいよう海図かいずには、そうこうよう航海こうかい海岸かいがんみなとはくの5種類しゅるいがある。

  1. そう (General Chart)  航海こうかい計画けいかくもちいられる。(400まんぶんの1よりしょう縮尺しゅくしゃく
  2. こうよう (Sailing Chart) 大洋たいよう航海こうかいもちいられる。(400まん~100まんぶんの1)
  3. 航海こうかい (General Chart of Coast) 陸地りくち付近ふきんしめす。(100まん~30まんぶんの1)
  4. 海岸かいがん (Coast Chart) 沿岸えんがん内海うちうみ航行こうこうしたり、港湾こうわん出入でいりをするときもちいられる。(30まん~5まんぶんの1)
  5. みなとはく (Harbour Plan) 港湾こうわんいかり泊地はくちなどのかぎられた区域くいきおおきく拡大かくだいした精密せいみつ海図かいずはつ入港にゅうこうするときなどに役立やくだつ。(5まんぶんの1よりだい縮尺しゅくしゃく

水路すいろ特殊とくしゅ

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水路すいろ特殊とくしゅは、航海こうかい参考さんこう使用しようされるで、広義こうぎ海図かいずふくまれる。

水路すいろ特殊とくしゅには、「海流かいりゅう」、「潮流ちょうりゅう」、「磁針じしん偏差へんさ」、「大圏たいけん航法こうほう」、「パイロットチャート」、「位置いち記入きにゅうよう」、「天測てんそく位置いち記入きにゅうよう」、「漁具ぎょぐ定置ていち箇所かしょ一覧いちらん」、「測地そくちけい変換へんかん」、「ろかいふねとう灯火ともしび表示ひょうじ海域かいいき一覧いちらん」、「海図かいず図式ずしき」などがある。

うみ基本きほん

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一般いっぱんてきな「海図かいず」が航海こうかいのためにつくられた「うみ主題しゅだい (Thematic Map) 」であるのにたいして、「うみ基本きほん」はうみ多目たもくてき利用りよう海洋かいよう開発かいはつ環境かんきょう保全ほぜん防災ぼうさいとう)にきょうするためにつくられた「うみ一般いっぱん (General Map) 」といえる。

うみ基本きほんには、「大陸棚たいりくだなうみ基本きほん」(縮尺しゅくしゃくべつに20まんぶんの1、50まんぶんの1、100まんぶんの1の3しゅ)と、「沿岸えんがんうみ基本きほん」(縮尺しゅくしゃくべつに1まんぶんの1、5まんぶんの1の2しゅ)がある。

 
ミクロネシア航海こうかいじゅつ使つかわれた「海図かいず」(スティックチャート)
 
日本にっぽん海軍かいぐん水路すいろりょう作成さくせい海図かいず武藏むさしこく横濱よこはまわん」の一部いちぶ1874ねん明治めいじ7ねん刊行かんこう

オセアニア原住民げんじゅうみんえだ使つかった独自どくじの「海図かいず」を利用りようしていたが、現代げんだい海図かいずは、中国ちゅうごくから羅針盤らしんばん導入どうにゅうされた13世紀せいきヨーロッパ発達はったつした。もっとふる海図かいずは、13世紀せいき中頃なかごろ地中海ちちゅうかい一帯いったいもちいられた「ポルトラノ海図かいず」(ポルトラノ)といわれるで、図示ずしされた羅針盤らしんばんコンパスローズ)から多数たすう方位ほういせんかれている。

15世紀せいき以降いこうだい航海こうかい時代じだいには、航路こうろ開拓かいたくとともに水深すいしん徐々じょじょ記入きにゅうされるようになる。1569ねんオランダ地理ちりがくものメルカトルが、経線けいせん緯線いせん格子こうしじょうメルカトル図法ずほう考案こうあんし、以後いご海図かいずにはメルカトル図法ずほうもちいられるようになった。

日本にっぽんでは、安土あづち桃山ももやま時代じだいから鎖国さこくまえ江戸えど時代じだい初期しょき海図かいずもちいられた。幕府ばくふ許可きょか貿易ぼうえきせん朱印船しゅいんせん貿易ぼうえき)では、ボルトラノ海図かいずもちいられ、中国ちゅうごく沿岸えんがん東南とうなんアジア各国かっこく航海こうかいしていた。しかし、鎖国さこくとともに海図かいずもちいられなくなった。

江戸えど時代じだい後半こうはんになると、沿岸えんがん海運かいうん活発かっぱつになり、実用じつようてき簡易かんい海図かいず海瀬かいぜ舟行しゅうこう」がつくられるようになる。また、欧米おうべい各国かっこくふね開国かいこくもとめて日本にっぽん沿岸えんがんあらわれるようになり、なかには航海こうかい安全あんぜんのためとして、勝手かって沿岸えんがん測量そくりょうし、海図かいず作成さくせいはじめるくにた。これらの状況じょうきょうは、海防かいぼうじょうでも、海上かいじょう交通こうつう安全あんぜんからも問題もんだいがあるとて、幕府ばくふ海図かいず作成さくせいはじめようとする。まず、沿岸えんがん測量そくりょうおこない、1821ねん文政ぶんせい4ねん)には伊能いのう忠敬ちゅうけいだい日本にっぽん沿海えんかい輿地よちぜん伊能いのう)を完成かんせいさせた。

開国かいこく1862ねん文久ぶんきゅう2ねん)には、幕府ばくふ日本にっぽん近海きんかい測量そくりょうはじめたものの、本格ほんかくてき海図かいず作成さくせい明治めいじ時代じだいになってからであった。1870ねん明治めいじ3ねん)にはイギリス測量そくりょうせんから指導しどうけ、三重みえけん的矢湾まとやわん尾鷲湾おわせわん塩飽諸島しわくしょとう測量そくりょうおこなわれた。1871ねん明治めいじ4ねん)には日本にっぽん海軍かいぐん水路すいろりょう水路すいろきょく)が創設そうせつされ、北海道ほっかいどうしょ港湾こうわん岩手いわてけん宮古湾みやこわん釜石湾かまいしわん測量そくりょうされた。そして1872ねん明治めいじ5ねん)、日本にっぽん海軍かいぐん水路すいろりょうだい1ごう海図かいずりく中國ちゅうごく釜石かまいしこう」を作成さくせい刊行かんこうした。

測地そくちけい

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以前いぜん日本にっぽん海図かいず日本にっぽん測地そくちけい作成さくせいされていたことがある。最近さいきん海図かいず世界せかい測地そくちけい作成さくせいされている。世界せかい測地そくちけい日本にっぽん測地そくちけい緯度いど経度けいどは400-500m程度ていどずれているので、まんいちふたつのけい混用こんようすると混乱こんらん事故じこのもととなる。

 
日本にっぽん海洋かいよう測地そくちもう本土ほんど基準きじゅんてん

日本にっぽん海図かいず経緯けいいは、下里しもさと水路すいろ観測かんそくしょ本土ほんど基準きじゅんてん基準きじゅんとして作成さくせいする[1][2]

国際こくさい水路すいろ機関きかん

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世界せかい各国かっこく海図かいず作成さくせい機関きかんは、国際こくさい水路すいろ機関きかん (IHO) に加盟かめいし、水路すいろ業務ぎょうむ発展はってん国際こくさい協力きょうりょくおこなっている。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ 海上保安庁かいじょうほあんちょう. “日本にっぽん列島れっとう精密せいみつ位置いち” (html). 海上保安庁かいじょうほあんちょう. 下里しもさと水路すいろ観測かんそくしょ. 海上保安庁かいじょうほあんちょう. 2024ねん4がつ1にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2024ねん5がつ17にち閲覧えつらん
  2. ^ 横田よこた裕輔ゆうすけ佐藤さとうまりこ、福良ふくら博子ひろこ藤田ふじた雅之まさゆき仙石せんごくしん下里しもさと水路すいろ観測かんそくしょにおけるSLR観測かんそく」(PDF)『測地そくち学会がっかいだい63かんだい2ごう日本にっぽん測地そくち学会がっかい東京とうきょう、2018ねん1がつ25にち、111-116ぺーじdoi:10.11366/sokuchi.63.111ISSN 2185-517X2024ねん5がつ17にち閲覧えつらん 

参考さんこう文献ぶんけん

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関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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