ハイボール

ハイボール (Highball) とはカクテルの名称めいしょう。ウイスキーをソーダ水すい（炭酸たんさん水すい）で割わったもの（ウイスキー・ソーダ）が元祖がんそであるが、広義こうぎではスピリッツ、リキュールをソーダやトニックウォーターなどの炭酸たんさん飲料いんりょうや、フレッシュジュースなどアルコールの含ふくまれていない飲料いんりょうで割わったもの全般ぜんぱんを指さす。日本にっぽんでは焼酎しょうちゅうやウォッカなどをベースとしたカクテルを焼酎しょうちゅうハイボール（チューハイ）と呼よんでいる。

歴史れきし

ヨーロッパでは1760年代ねんだいになって人工じんこう的てきに炭酸たんさん水すいを作つくり出だせるようになったことで、白しろワインを炭酸たんさん水すいで割わったカクテルのスプリッツァーなどが大衆たいしゅう化かした。1771年ねんにはトニックウォーターが開発かいはつされてジン・トニックを産うみ出だし、19世紀せいき後半こうはんまでイングランド上流じょうりゅう階級かいきゅうにはブランデー・ソーダが愛飲あいいんされていた。しかしながら、ブランデー・ソーダはハイボールとは呼よばれておらず、古ふるいカクテルブックには、他たのスピリッツやリキュールと炭酸たんさん水すいの組くみ合あわせがハイボールの項目こうもくに収おさめられている。

ウイスキーと炭酸たんさん水割みずわりをハイボール（ウイスキー・ハイボール）と呼よぶようになり、それが他たのスピリッツやリキュールの炭酸たんさん水割みずわりもハイボールと呼よぶようになったのがいつなのかははっきりとしていない。

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくでは大陸たいりく横断おうだん鉄道てつどう敷設ふせつ時じにハイボールが誕生たんじょうしたとする説せつが唱となえられている。ジン・リッキーなどのリッキースタイルの原型げんけい、アメリカンウイスキーで作つくるジョー・リッキーは1883年ねんにワシントンD.C.で誕生たんじょうしたカクテルだが、ウイスキーと炭酸たんさん水すいで作つくられるにもかかわらず、ハイボールとは呼よばれていない。このことから、ハイボールがアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくで誕生たんじょうしていたとするならば、1883年ねん頃ごろの東部とうぶアメリカにはまだ伝つたわっていなかったものと考かんがえられる。

イギリスでは、19世紀せいき半なかば過すぎからフィロキセラの害がいによりワインやブランデーの入手にゅうしゅが困難こんなんになり（19世紀せいきフランスのフィロキセラ禍か）、スコッチ・ウイスキー（ブレンデッドウイスキー）が誕生たんじょうすると共ともに人気にんきとなる。上述じょうじゅつのようにブランデー・ソーダが好このまれていたが、これも次第しだいにウイスキー・ソーダ（スコッチ・ソーダ）に移うつっていったものと考かんがえられる。

誕生たんじょうしたのがいずれかはともかく、アメリカでの1910年ねん前後ぜんこうのアメリカンウイスキーの広告こうこくには、ウイスキー・ソーダでの飲のみ方かたを薦すすめているものがあると共ともにハイボールという言葉ことばも使つかわれており、禁酒きんしゅ法ほうの施行しこう前まえまでにはハイボールの呼よび名なが定着ていちゃくしていたものと考かんがえられる。

日本にっぽんにおけるハイボールの歴史れきし

日本にっぽんでは昭和しょうわ初期しょきにはハイボールを飲のませるバーがあった。

1942年ねん（昭和しょうわ17年ねん）にサントリーが『中央公論ちゅうおうこうろん』（中央公論ちゅうおうこうろん新しん社しゃ）に出稿しゅっこうした広告こうこくでは「炭酸たんさん水すいで割わるとウイスキーの持もっている深ふかい味あじが死しぬ」とし、ストレートか冷水れいすいで薄うすめる飲のみ方かたを勧すすめている。そのサントリーは、第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん後ごにはトリスバーをはじめハイボールブームをけん引いんすることになる。

日本にっぽんのウイスキー市場いちばは1983年ねんをピークに急激きゅうげきに縮小しゅくしょうし、2007年ねんには販売はんばい量りょうベースで6分ぶんの1にまで落おち込こんだ。調査ちょうさの結果けっか、ウイスキーは他たのアルコール飲料いんりょうに比くらべて高こう価格かかくであること、それにウイスキーには中高年ちゅうこうねんがグラスを片手かたてに氷こおりの音おとを響ひびかせながら飲のむという古ふるいイメージがあることから、若者わかものがウイスキーを敬遠けいえんしていたこと、低ていアルコール飲料いんりょうの台頭たいとうによって、若者わかもののビール離ばなれも指摘してきされる時代じだいであり、若者わかものを取とり込こんだ施策しさくが必要ひつようとされた。そこで「再さい発見はっけん」されたのがハイボールという飲のみ方かたであった。2008年ねんにサントリー角かく瓶びんによる「角かくハイボール」復活ふっかつプロジェクトがスタートし、これが当あたったことで、翌よく2009年ねんには17%の市場いちば拡大かくだいとなった。その後ご、トリスウイスキーの「ハイボール」、「角かくハイボール缶かん」などを発売はつばいし、「ハイボール」という飲のみ方かたを日本にっぽん市場いちばに定着ていちゃくさせ、ウイスキー市場いちばの底上そこあげに貢献こうけんすることになった。

語源ごげん

ボール信号しんごう機き

ウイスキーのハイボール（ウイスキー・ソーダ）の例れい

缶かん入いりのハイボール

語源ごげんについては諸説しょせつある。

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくで誕生たんじょう

ライ・ウイスキーまたはバーボン・ウイスキー。

ボール信号しんごう機きに由来ゆらい

• 1869年ねんにアメリカ東海岸ひがしかいがんと西海岸にしかいがんを結むすぶアメリカ大陸あめりかたいりく横断おうだん鉄道てつどうが開通かいつうすると、1890年ねん頃ごろまで鉄道てつどうの敷設ふせつラッシュが起おきる。この時ときに、工事こうじの進捗しんちょく具合ぐあいをボール信号しんごう機きで表あらわし、ボールを高たかく引ひき上あげているのは「工事こうじの進捗しんちょくが遅おくれているので急いそげ」の合図あいずであり、この信号しんごうを「ハイボール」と呼よんだ。作業さぎょう労働ろうどう者しゃの休憩きゅうけい時間じかんは短みじかく、ハイボールの信号しんごうが出でたらすぐに工事こうじへ戻もどるようウイスキーを水みずで割わって飲のみやすくしていたのが、ハイボールと呼よばれるようになり、いつしか水みずではなく炭酸たんさん水すいで割わるようになった。
• 列車れっしゃの運行うんこう状態じょうたいを運転うんてん士しにボール信号しんごう機きで教おしえており、ハイボールは「遅おくれているので速度そくどを上あげよ」の合図あいずであった。そこから、急いそいで簡単かんたんに作つくれる飲のみ物ものをハイボールと呼よぶようになった。

気球ききゅうに由来ゆらい

• 鉄道てつどう敷設ふせつ工事こうじの妨害ぼうがいのためにネイティブ・アメリカンがたびたび襲撃しゅうげきしていたが、その襲撃しゅうげきを知しらせるために気球ききゅう（ハイボール）を上あげていた。工事こうじ完成かんせいの祝賀しゅくがパーティーで、無事ぶじに鉄道てつどうが開通かいつうしたのは気球ききゅうのおかげとして、供きょうされたウイスキーの炭酸たんさん水割みずわりをハイボールと呼よぶようになった。

背せの高たかいグラスに由来ゆらい

• 1890年代ねんだいのアメリカでは丈たけの高たかいグラスをハイボール、丈たけの低ひくいグラスをローボールと呼よぶのが流行はやった。これはグラスを握にぎる手てが野球やきゅうのボールの握にぎりに似にていることからである。丈たけの高たかいグラスで飲のむロングドリンクをいつしかハイボールと呼よぶようになった。

イギリスで誕生たんじょう

スコッチ・ウイスキー。

ゴルフ場じょうでの出来事できごとに由来ゆらい

• あるゴルフクラブで、炭酸たんさん水すいをチェイサーにウイスキーを飲のみながらスタート待まちをしていた紳士しんしがいたが、予定よてい時刻じこくよりも早はやく自分じぶんの名前なまえがコールされた。慌あわてた紳士しんしは、炭酸たんさん水すいをウイスキーの入はいったグラスに注そそぎ、急いそいで口くちに流ながし込こんだところへ、別べつの誰だれかが打うち損そんじたボールがテラスに飛とび込こんできて、紳士しんしが「ハイボール」と叫さけんだことから、ハイボールと呼よばれるようになった。
• 紳士しんしはウイスキー・ソーダを飲のんでいたが、そこへ高たかく舞まい上あがった打うち損そんじのボールが飛とび込こんできた。そこからこの名なが広ひろまった。

関連かんれん項目こうもく

• チューハイ（酎ハイ、焼酎しょうちゅうハイボール）
• 水割みずわり