(Translated by https://www.hiragana.jp/)
は行 - Wikipedia

こう(はぎょう)とは、日本語にほんご五十音ごじゅうおんにおけるだい6番目ばんめくだりす。仮名かめい」「」「」「」「」で構成こうせいされる。どの仮名かめいも、子音しいん母音ぼいんからる1音節おんせつまたは1モーラあらわす。

漢語かんご外来がいらいのぞいた和語わごにおいては、語頭ごとう以外いがいかたりちゅう語尾ごび)でハぎょうおとあらわれることはきわめてすくない。これはぎょうてんよび後述こうじゅつ)とばれる歴史れきしてき現象げんしょうにより、かつてのハぎょうおんぎょうおとへと遷移せんいしてしまっているからである。

清音せいおん

編集へんしゅう

「はこうかくおとあたま子音しいん音素おんそ/h/である。音声おんせいがくじょう発音はつおんは「は」、「へ」、「ほ」のあたま子音しいん無声むせい声門せいもん摩擦音まさつおん[h]、「ひ」のあたま子音しいん無声むせいかた口蓋こうがい摩擦音まさつおん[ç]、「ふ」のあたま子音しいん無声むせいりょうくちびる摩擦音まさつおん[ɸ]である。明治めいじ以降いこう借用しゃくようされた外来がいらいにみられる撥音はつおん促音そくおんが、はこうまえ場合ばあい(バッハ、シャンハイとう)には無声むせい軟口蓋なんこうがい摩擦音まさつおん[x]となる場合ばあいもある。

「はこう」の訓令くんれいしきマ字まじおよ日本にっぽんしきマ字まじ表記ひょうきは ha hi hu he ho、ヘボンしきマ字まじ表記ひょうきは ha hi fu he ho である。

助詞じょしの「は」と「へ」は、「くだりおと発音はつおんする。また歴史れきしてき仮名遣かなづかで、文節ぶんせつのはじめ以外いがいは「くだりおと(ワヰウヱヲ)で発音はつおんされる。これは、歴史れきしてき仮名遣かなづかいの表記ひょうきぎょうてんよび以前いぜん体系たいけいしたがっているためである。

濁音だくおん

編集へんしゅう

「はこう」のかく文字もじ濁点だくてんけた濁音だくおん「ばぎょうおとあたま子音しいん音素おんそはすべて有声音ゆうせいおん統一とういつしており/b/である。音声おんせいがくじょう発音はつおんは、文節ぶんせつあたまおよび撥音はつおん (「」)ののちでは「ば」、「べ」、「ぼ」のあたま子音しいんゆう声声こえごえもん摩擦音まさつおん[ɦ]ではなくゆうごえりょうくちびる破裂はれつおん[b]、「ぶ」のあたま子音しいんももちろんゆうごえりょうくちびる摩擦音まさつおん[βべーた]ではなくゆうごえりょうくちびる破裂はれつおん[b]、それ以外いがいではゆうごえりょうくちびる摩擦音まさつおん[βべーた]またはそれにちかおと閉鎖へいさ密着みっちゃくよわゆうごえりょうくちびる破裂はれつおん)であり(この場合ばあい、「ば」、「べ」、「ぼ」ではゆう声声こえごえもん摩擦音まさつおん[ɦ]ふくむ)、「び」のあたま子音しいん文節ぶんせつあたまおよび撥音はつおん (「」)ののちではゆうこえかた口蓋こうがい摩擦音まさつおん[ʝ]ではなくゆうごえりょうくちびるかた口蓋こうがい破裂はれつおん英語えいごばん[bʲ]、それ以外いがいではゆうごえりょうくちびるかた口蓋こうがい摩擦音まさつおん英語えいごばん[βべーたʲ]またはそれにちかおと(この場合ばあいゆうこえかた口蓋こうがい摩擦音まさつおん[ʝ]ふくむ。閉鎖へいさ密着みっちゃくよわゆうごえりょうくちびるかた口蓋こうがい破裂はれつおん)である。したがって、「ば」、「び」、「ぶ」、「べ」、「ぼ」をはこうゆうごえして発音はつおんするなら、単語たんご音節おんせつが2つ以上いじょうで、それらのあたま子音しいんだい2音節おんせつ以降いこうにあるかをさがして、その単語たんご発音はつおんすればい。「ばぎょう」のマ字まじ表記ひょうき日本にっぽんしき、ヘボンしきともに ba bi bu be bo である。

濁音だくおん「ばぎょう」は、外来がいらい[v]ドイツならw場合ばあいおおい)をあらわすのに使つかわれることがある。そのドイツ語どいつごでのq文字もじは、ふつうquとかqwという結合けつごうもちいられ、kwのつづりとおな[kv]あらわすため、「く」+「ばぎょう」をくっつけて「くば」「くび」「くぶ」「くべ」「くぼ」をあらわすこともある。記事きじ参照さんしょう

はん濁音だくおん

編集へんしゅう

「はこう」のかく文字もじに、はん濁点だくてんけたはん濁音だくおん「ぱぎょうおとあたま子音しいん音素おんそ/p/である。音声おんせいがくじょう発音はつおんは「ぱ」、「ぷ」、「ぺ」、「ぽ」のあたま子音しいん無声むせいりょうくちびる破裂はれつおん[p] である。ただいきりょうすくないため英語えいごけん話者わしゃには無声むせいくちびる摩擦音まさつおん[f]のようにこえる場合ばあいがある。「ぴ」のあたま子音しいん無声むせいりょうくちびるかた口蓋こうがい破裂はれつおん[pʲ]である。

「ぱぎょう」のマ字まじ表記ひょうき日本にっぽんしき、ヘボンしきともに pa pi pu pe po である。

拗音ようおん

編集へんしゅう

「はこう」、「ばぎょう」および「ぱぎょう」の「だんおとだい1おととするひらき拗音ようおん、「ひゃゆき」、「びゃぎょう」および「ぴゃぎょう」のあたま子音しいんはそれぞれ[ç][ʝ]および[pʲ]ではなく[ç][bʲ]および[pʲ]であり、その実際じっさい発音はつおんはそれぞれ「ひ」、「び」および「ぴ」のあたま子音しいん同一どういつである。「ひゃゆき」、「びゃぎょう」および「ぴゃぎょう」のマ字まじ表記ひょうきはそれぞれ日本にっぽんしき、ヘボンしきともに hya hyu hyo、bya byu byo、pya pyu pyo である。

外来がいらい表記ひょうき

編集へんしゅう

「ファ」「フィ」「フェ」「フォ」は、「外来がいらい表記ひょうきだい1ひょうしめされる仮名かめいである。おもにくちびる摩擦音まさつおん [f]おとうつしもちいる。日本語にほんごでは「ふ」のあたま子音しいん[ɸ]母音ぼいん」「」「」「」とわせたおと発音はつおんされる。「フュ」は「外来がいらい表記ひょうきだい2ひょうしめされる仮名かめいである。[fju]おとうつしられる。日本語にほんごでは、話者わしゃによって、「ひゃゆき」のあたま子音しいん[ç]や、口蓋こうがいした「ふ」のあたま子音しいん[ɸʲ]ひとしと、「」をわせたおと発音はつおんされる。

音韻おんいん

編集へんしゅう

清音せいおんはん濁音だくおん

編集へんしゅう

ぎょう子音しいんは、とお上古じょうこ時代じだいには [*p] おとであった可能かのうせいたかいとわれている[1]

このおと語頭ごとうちゅうわず頻繁ひんぱん出現しゅつげんするものだったが、その出現しゅつげん位置いち環境かんきょう)によってそれぞれにことなる変化へんかをたどることとなったため、これを分別ふんべつしてかんがえるとわかりやすい。

  1. 語頭ごとうでは
    定説ていせつとして、奈良なら時代じだいには [ɸ] おと(ファフィフフェフォのようなおと)になっていたとされる[2][ɸ]おとはそのながつづいた。 17世紀せいきはじめにポルトガルじんらによって編纂へんさんされた『にち葡辞しょ』をると、「はは」は faua または fafa [3]、「ひと」は fito、「はな」は fana というように、ハぎょうおとうつしに f をもちいていて、[ɸ] おとであったことをしめ確実かくじつ証拠しょうこのひとつとされている。
    その江戸えど時代じだい前期ぜんきにもう一段いちだん唇音しんおん退化たいかしょうじ、「フ」以外いがい唇音しんおんせい完全かんぜんうしない、「ハヒフヘホ」をもっ[ha çi ɸɯ he ho]記述きじゅつされるような、現在げんざいおとがた出来上できあがっていった。
  2. 「ン」や「ッ」ののちでは
    平安へいあん時代じだいになると漢字かんじおん描写びょうしゃする必要ひつようから、撥音はつおん「ン」や促音そくおん「ッ」といったおとあらたに日本語にほんごまれた。これ以降いこう撥音はつおん促音そくおんのちにハぎょうおんるケース(たとえば「憲法けんぽう」「説法せっぽう」など)では、自然しぜんとハぎょうおん[p] おと発音はつおんするようになったとかんがえられる。
    これらの [p] おと当初とうしょ/f/おとであった可能かのうせいたかいが、やがて独立どくりつ音素おんそ /p/、すなわち「はん濁音だくおん」としての地位ちい獲得かくとくしていった。 同時どうじに、とくに「促音そくおん+ハぎょうおん」のかたち和語わごにもひろまり、やがて、「っぱ」「しょっぱい」「ひっぱる」「すっぽり」「~っぽい」など日常にちじょうにはばひろく使つかわれていくこととなった。
    こうした変遷へんせんいちれいげるなら、たとえば「あはれ」(あわれ) /afare/ というかたりは、当初とうしょ[aɸare] のように発音はつおんされたとかんがえられるが、促音そくおん一般いっぱんすると、感極かんきわまったようなときあらわれるおとの“め”が促音そくおん /q/ として固定こていされ、さらにその影響えいきょう[ɸ] から変化へんかした後続こうぞくおん [p]/p/ として独立どくりつして、「あっぱれ」 /aqpare/ というあたらしい語形ごけい定着ていちゃくするにいたっている。
  3. その場所ばしょでは
    語頭ごとう同様どうよう奈良なら時代じだいごろ(または平安へいあん時代じだいはじめまで)に [ɸ] おとてんじたが、平安へいあん時代じだいから鎌倉かまくら時代ときよにかけてぎょうてんよびばれるだい規模きぼ弱化じゃっか現象げんしょうしょうじ、ぎょう合流ごうりゅうするにいたった。 そのはワぎょうきた変化へんかこうむり、「は」 /wa/ および「ふ」/*wu/ > /u/がたたもったものの、「ひ」 /wi/、「へ」 /we/、「ほ」 /wo/ はさらに唇音しんおんうしない、「イ、エ、オ」に合流ごうりゅうしていまいたっている。
    なお、ハぎょうてんよびきて以降いこうも、つづりのうえではながあいだぎょうおんのこされていた。これはいわゆる歴史れきしてき仮名遣かなづかというものであるが、たとえば「ざわり」「おもう」「まえ」「とおし」を「さはり」「おもふ」「まへ」「とほし」などといたのは、とおさかのぼればハぎょうおんもちいていたことの名残なごりであった。 いまでも、助詞じょしの「は」「へ」にだけはハぎょうのこされている。

こうした各種かくしゅ変化へんか結果けっか現在げんざい大和言葉やまとことばにおいては、ハぎょうおん基本きほんてき語頭ごとう上記じょうき 1. のケース)にのみあらわれるものとなっている[4]

濁音だくおん

編集へんしゅう

いっぽうぎょうかんしてはハぎょうよりずっと安定あんていてきで、こうした多様たよう変化へんかることもないまま [b] おと維持いじして今日きょういたっているとみられる。ただ奈良なら時代じだいは、バぎょう子音しいんいくつかが ゆうごえりょうくちびるやぶおと[b͡βべーた]だったと推定すいていするひともいる。

なお、一部いちぶ語彙ごいではバゆきとマぎょうあいだのゆらぎがられる。「さびしい」にたいする「さみしい」、「かぶる」にたいする「こうむる」、「へび」にたいする方言ほうげんの「へみ」、「薔薇ばら」「いばら」と、その古語こごにあたる「うまら」など。

音声おんせいがくてき説明せつめい

編集へんしゅう

「うだんおとのぞいては、「ばぎょう」のあたま子音しいんは、音声おんせい学的がくてきにははん濁音だくおんの「ぱぎょう」のあたま子音しいん無声むせいゆうごえ関係かんけいをとるが、清音せいおんの「はこう」のあたま子音しいんとは関係かんけいがない。一方いっぽうゆうごえりょうくちびる破裂はれつおんまたはゆうこえりょうくちびる摩擦音まさつおん発音はつおんされる濁音だくおん「ば」ははん濁音だくおん「ぱ」または清音せいおん「ふぁ」のあたま子音しいんゆうこえしたもので、音声おんせいがく観点かんてんからは、濁音だくおん「ばぎょう」とはん濁音だくおん「ぱぎょう」あるいは「ふ」をふくきよし拗音ようおん「ふぁゆき」が濁音だくおん有声音ゆうせいおん)と清音せいおん無声音むせいおん)の関係かんけいにある。しかし、たとえば「はん」は連濁れんだくにより「はん」→「ばん」「ぱん」と変化へんかするなどの現象げんしょうは、あくまでも、文法ぶんぽうてきには「ば」と「は」が濁音だくおん清音せいおん関係かんけいにあることをしめしている。この音声おんせいじょう対立たいりつ文法ぶんぽうじょう対立たいりつ矛盾むじゅんは、「はこう」のあたま子音しいん清音せいおん)の古音こおんがおおむね[p][φふぁい][h]のように変化へんかしたことに起因きいんしている。

音声おんせいがくてき分類ぶんるい

編集へんしゅう
発音はつおんひょう
/a/ /i/ /u/ /e/ /o/
/h/ /ha/ ヘィ /hi/ ホゥ /hu/ /he/ /ho/
/ç/ ヒャ /ça/ /çi/ ヒュ /çu/ ヒェ /çe/ ヒョ /ço/
/ɸ/ ファ /ɸa/ フィ /ɸi/ /ɸu/ フェ /ɸe/ フォ /ɸo/
/ɸʲ/ /ɸʲa/ /ɸʲi/ フュ /ɸʲu/ /ɸʲe/ /ɸʲo/
/b/ /ba/ ブィ /bi/ /bu/ /be/ /bo/
/bʲ/ ビャ /bʲa/ /bʲi/ ビュ /bʲu/ ビェ /bʲe/ ビョ /bʲo/
/p/ /pa/ プィ /pi/ /pu/ /pe/ /po/
/pʲ/ ピャ /pʲa/ /pʲi/ ピュ /pʲu/ ピェ /pʲe/ ピョ /pʲo/

無色むしょく無声音むせいおん橙色だいだいいろ有声音ゆうせいおんである。有声音ゆうせいおん子音しいんは、文頭ぶんとう撥音はつおんのち場合ばあい破裂はれつおん、それ以外いがいでは独特どくとく摩擦音まさつおんとなる。

脚注きゃくちゅう

編集へんしゅう
  1. ^ さきとう方言ほうげんなどで「はな」を[pana]などとうのはこのおとのこるものであるとする。
  2. ^ 異説いせつとして、奈良なら時代じだい[p]平安へいあん時代じだいから[ɸ]となったとするせつもある。浅川あさがわ哲也てつや著書ちょしょらなかった!日本語にほんご歴史れきし』(p144, 東京書籍とうきょうしょせき 2011ねん)において、ハの万葉仮名まんようがななみ」や「播」の中古ちゅうこ中国語ちゅうごくご漢字かんじおんが pua であったこととう根拠こんきょとしていている。また安本やすもとよしてんは『季刊きかん邪馬台国やまたいこく連載れんさい「「古事記こじき」の秘密ひみつ(2002~2005ねん)において、当該とうがい漢字かんじおんが pa ではなく pua であったこととう根拠こんきょとし、奈良なら時代じだいには一部いちぶ破裂はれつおんではなくやぶおと、すなわち[p͡ɸ]であったとする。
  3. ^ はは」のかたり当時とうじぎょうてんよび[ɸawa] のように発音はつおんされることが非常ひじょうおおく、faua はそれをおとうつしたもの。 fafa [ɸaɸa]現代げんだいにつながるものだが、ハぎょうてんよびまぬか語頭ごとう以外いがい[ɸ]たもっているのは例外れいがいてきで、「ちち」 titi、「ばば」 baba などの影響えいきょうで「おなおんの2連続れんぞく」という語形ごけいつよ意識いしきされたものであるとされる。
  4. ^ 例外れいがいもある。下記かきはは」のようなれいのほか、「かわはぎ」「ぜんフリ」のような複合語ふくごうご、「ひらひら」「へとへと」などの擬声語ぎせいごなど。

関連かんれん項目こうもく

編集へんしゅう