「は行 こう 」の各 かく 文字 もじ に濁点 だくてん を付 つ けた濁音 だくおん 「ば行 ぎょう 」音 おと の頭 あたま 子音 しいん の音素 おんそ はすべて有声音 ゆうせいおん に統一 とういつ しており/b/ である。音声 おんせい 学 がく 上 じょう の発音 はつおん は、文節 ぶんせつ の頭 あたま および撥音 はつおん (「ん 」)の後 のち では「ば」、「べ」、「ぼ」の頭 あたま 子音 しいん は有 ゆう 声声 こえごえ 門 もん 摩擦音 まさつおん [ɦ] ではなく有 ゆう 声 ごえ 両 りょう 唇 くちびる 破裂 はれつ 音 おん [b] 、「ぶ」の頭 あたま 子音 しいん ももちろん有 ゆう 声 ごえ 両 りょう 唇 くちびる 摩擦音 まさつおん [β べーた ] ではなく有 ゆう 声 ごえ 両 りょう 唇 くちびる 破裂 はれつ 音 おん [b] 、それ以外 いがい では有 ゆう 声 ごえ 両 りょう 唇 くちびる 摩擦音 まさつおん [β べーた ] またはそれに近 ちか い音 おと (閉鎖 へいさ 密着 みっちゃく 度 ど の弱 よわ い有 ゆう 声 ごえ 両 りょう 唇 くちびる 破裂 はれつ 音 おん )であり(この場合 ばあい 、「ば」、「べ」、「ぼ」では有 ゆう 声声 こえごえ 門 もん 摩擦音 まさつおん [ɦ] も含 ふく む)、「び」の頭 あたま 子音 しいん は文節 ぶんせつ の頭 あたま および撥音 はつおん (「ん 」)の後 のち では有 ゆう 声 こえ 硬 かた 口蓋 こうがい 摩擦音 まさつおん [ʝ] ではなく有 ゆう 声 ごえ 両 りょう 唇 くちびる 硬 かた 口蓋 こうがい 破裂 はれつ 音 おん (英語 えいご 版 ばん ) [bʲ] 、それ以外 いがい では有 ゆう 声 ごえ 両 りょう 唇 くちびる 硬 かた 口蓋 こうがい 摩擦音 まさつおん (英語 えいご 版 ばん ) [β べーた ʲ] またはそれに近 ちか い音 おと (この場合 ばあい 、有 ゆう 声 こえ 硬 かた 口蓋 こうがい 摩擦音 まさつおん [ʝ] も含 ふく む。閉鎖 へいさ 密着 みっちゃく 度 ど の弱 よわ い有 ゆう 声 ごえ 両 りょう 唇 くちびる 硬 かた 口蓋 こうがい 破裂 はれつ 音 おん )である。したがって、「ば」、「び」、「ぶ」、「べ」、「ぼ」をは行 こう を有 ゆう 声 ごえ 化 か して発音 はつおん するなら、単語 たんご の音節 おんせつ が2つ以上 いじょう で、それらの頭 あたま 子音 しいん が第 だい 2音節 おんせつ 以降 いこう にあるかを探 さが して、その単語 たんご を発音 はつおん すれば良 よ い。「ば行 ぎょう 」のロ ろ ーマ字 まじ 表記 ひょうき は日本 にっぽん 式 しき 、ヘボン式 しき ともに ba bi bu be bo である。
濁音 だくおん 「ば行 ぎょう 」は、外来 がいらい 語 ご の[v] (ドイツ語 ご ならw の場合 ばあい が多 おお い)を表 あらわ すのに使 つか われることがある。そのドイツ語 どいつご でのq の文字 もじ は、ふつうqu とかqwという結合 けつごう で用 もち いられ、kwの綴 つづ りと同 おな じ[kv] を表 あらわ すため、「く」+「ば行 ぎょう 」をくっつけて「くば」「くび」「くぶ」「くべ」「くぼ」を表 あらわ すこともある。ヴ の記事 きじ を参照 さんしょう 。
「は行 こう 」、「ば行 ぎょう 」および「ぱ行 ぎょう 」の「い段 だん 」音 おと を第 だい 1音 おと とする開 ひらき 拗音 ようおん 、「ひゃ行 ゆき 」、「びゃ行 ぎょう 」および「ぴゃ行 ぎょう 」の頭 あたま 子音 しいん はそれぞれ[ç] 、[ʝ] および[pʲ] ではなく[ç] 、[bʲ] および[pʲ] であり 、その実際 じっさい の発音 はつおん はそれぞれ「ひ」、「び」および「ぴ」の頭 あたま 子音 しいん と同一 どういつ である。「ひゃ行 ゆき 」、「びゃ行 ぎょう 」および「ぴゃ行 ぎょう 」のロ ろ ーマ字 まじ 表記 ひょうき はそれぞれ日本 にっぽん 式 しき 、ヘボン式 しき ともに hya hyu hyo、bya byu byo、pya pyu pyo である。
「ファ」「フィ」「フェ」「フォ」は、「外来 がいらい 語 ご の表記 ひょうき 」第 だい 1表 ひょう に示 しめ される仮名 かめい である。おもに唇 くちびる 歯 ぱ 摩擦音 まさつおん [f] の音 おと 写 うつし に用 もち いる。日本語 にほんご では「ふ」の頭 あたま 子音 しいん [ɸ] と母音 ぼいん 「あ 」「い 」「え 」「お 」と組 く み合 あ わせた音 おと で発音 はつおん される。「フュ」は「外来 がいらい 語 ご の表記 ひょうき 」第 だい 2表 ひょう に示 しめ される仮名 かめい である。[fju] の音 おと 写 うつし に見 み られる。日本語 にほんご では、話者 わしゃ によって、「ひゃ行 ゆき 」の頭 あたま 子音 しいん [ç] や、口蓋 こうがい 化 か した「ふ」の頭 あたま 子音 しいん [ɸʲ] 等 ひとし と、「う 」を組 く み合 あ わせた音 おと で発音 はつおん される。
ハ行 ぎょう の子音 しいん は、遠 とお い上古 じょうこ の時代 じだい には [*p ] 音 おと であった可能 かのう 性 せい が高 たか いと言 い われている[ 1] 。
この音 おと は語頭 ごとう ・語 ご 中 ちゅう を問 と わず頻繁 ひんぱん に出現 しゅつげん するものだったが、その出現 しゅつげん 位置 いち (環境 かんきょう )によってそれぞれに異 こと なる変化 へんか をたどることとなったため、これを分別 ふんべつ して考 かんが えるとわかりやすい。
語頭 ごとう では
定説 ていせつ として、奈良 なら 時代 じだい には [ɸ ] 音 おと (ファフィフフェフォのような音 おと )になっていたとされる[ 2] 。 [ɸ] 音 おと はその後 ご 長 なが く続 つづ いた。 17世紀 せいき 初 はじ めにポルトガル人 じん らによって編纂 へんさん された『日 にち 葡辞書 しょ 』を見 み ると、「母 はは 」は faua または fafa [ 3] 、「人 ひと 」は fito、「花 はな 」は fana というように、ハ行 ぎょう の音 おと 写 うつし に f を用 もち いていて、[ɸ] 音 おと であったことを示 しめ す確実 かくじつ な証拠 しょうこ のひとつとされている。
その後 ご 、江戸 えど 時代 じだい 前期 ぜんき にもう一段 いちだん の唇音 しんおん 退化 たいか を生 しょう じ、「フ」以外 いがい は唇音 しんおん 性 せい を完全 かんぜん に失 うしな い、「ハヒフヘホ」を以 もっ て [ha çi ɸɯ he ho ] と記述 きじゅつ されるような、現在 げんざい の音 おと 形 がた が出来上 できあ がっていった。
「ン」や「ッ」の後 のち では
平安 へいあん 時代 じだい になると漢字 かんじ 音 おん を描写 びょうしゃ する必要 ひつよう から、撥音 はつおん 「ン」や促音 そくおん 「ッ」といった音 おと が新 あら たに日本語 にほんご に取 と り込 こ まれた。これ以降 いこう 、撥音 はつおん や促音 そくおん の後 のち にハ行 ぎょう 音 おん が来 く るケース(たとえば「憲法 けんぽう 」「説法 せっぽう 」など)では、自然 しぜん とハ行 ぎょう 音 おん を [p] 音 おと で発音 はつおん するようになったと考 かんが えられる。
これらの [p] 音 おと は当初 とうしょ は /f / の異 い 音 おと であった可能 かのう 性 せい が高 たか いが、やがて独立 どくりつ の音素 おんそ /p/ 、すなわち「半 はん 濁音 だくおん 」としての地位 ちい を獲得 かくとく していった。 同時 どうじ に、とくに「促音 そくおん +ハ行 ぎょう 音 おん 」の形 かたち は和語 わご にも広 ひろ まり、やがて、「葉 は っぱ」「しょっぱい」「ひっぱる」「すっぽり」「~っぽい」など後 ご の日常 にちじょう 語 ご にはばひろく使 つか われていくこととなった。
こうした変遷 へんせん の一 いち 例 れい を挙 あ げるなら、たとえば「あはれ」(あわれ) /af are/ という語 かたり は、当初 とうしょ は [aɸare] のように発音 はつおん されたと考 かんが えられるが、促音 そくおん が一般 いっぱん 化 か すると、感極 かんきわ まったような時 とき に現 あらわ れる音 おと の“溜 た め”が促音 そくおん /q / として固定 こてい され、さらにその影響 えいきょう で [ɸ] から変化 へんか した後続 こうぞく 音 おん [p] が /p/ として独立 どくりつ して、「あっぱれ」 /aq pare/ という新 あたら しい語形 ごけい が定着 ていちゃく するに至 いた っている。
その他 た の場所 ばしょ では
語頭 ごとう と同様 どうよう に奈良 なら 時代 じだい 頃 ごろ (または平安 へいあん 時代 じだい 初 はじ めまで)に [ɸ] 音 おと に転 てん じたが、平安 へいあん 時代 じだい から鎌倉 かまくら 時代 ときよ にかけてハ行 ぎょう 転 てん 呼 よび と呼 よ ばれる大 だい 規模 きぼ な弱化 じゃっか 現象 げんしょう を生 しょう じ、ワ行 ぎょう へ合流 ごうりゅう するに至 いた った。 その後 ご はワ行 ぎょう に起 お きた変化 へんか を被 こうむ り、「は」 /wa/ および「ふ」/*wu/ > /u/ は形 がた を保 たも ったものの、「ひ」 /wi/ 、「へ」 /we/ 、「ほ」 /wo/ はさらに唇音 しんおん を失 うしな い、「イ、エ、オ」に合流 ごうりゅう して今 いま に至 いた っている。
なお、ハ行 ぎょう 転 てん 呼 よび が起 お きて以降 いこう も、綴 つづ りの上 うえ では長 なが い間 あいだ ハ行 ぎょう 音 おん が遺 のこ されていた。これはいわゆる歴史 れきし 的 てき 仮名遣 かなづか い というものであるが、たとえば「障 ざわ り」「思 おも う」「前 まえ 」「遠 とお し」を「さはり」「おもふ」「まへ」「とほし」などと書 か いたのは、遠 とお く遡 さかのぼ ればハ行 ぎょう 音 おん を用 もち いていたことの名残 なごり であった。 今 いま でも、助詞 じょし の「は」「へ」にだけはハ行 ぎょう の字 じ が遺 のこ されている。
こうした各種 かくしゅ の変化 へんか の結果 けっか 、現在 げんざい の大和言葉 やまとことば においては、ハ行 ぎょう 音 おん は基本 きほん 的 てき に語頭 ごとう (上記 じょうき 1. のケース)にのみ現 あらわ れるものとなっている[ 4] 。
いっぽうバ行 ぎょう に関 かん してはハ行 ぎょう よりずっと安定 あんてい 的 てき で、こうした多様 たよう な変化 へんか を見 み ることもないまま [b ] 音 おと を維持 いじ して今日 きょう に至 いた っているとみられる。但 ただ し奈良 なら 時代 じだい は、バ行 ぎょう 子音 しいん の幾 いく つかが 有 ゆう 声 ごえ 両 りょう 唇 くちびる 破 やぶ 擦 ず 音 おと [b͡β べーた ] だったと推定 すいてい する人 ひと もいる。
なお、一部 いちぶ の語彙 ごい ではバ行 ゆき とマ行 ぎょう の間 あいだ のゆらぎが見 み られる。「さびしい」に対 たい する「さみしい」、「かぶる」に対 たい する「こうむる」、「蛇 へび 」に対 たい する方言 ほうげん の「へみ」、「薔薇 ばら 」「茨 いばら 」と、その古語 こご にあたる「うまら」など。
「う段 だん 」音 おと を除 のぞ いては、「ば行 ぎょう 」の頭 あたま 子音 しいん は、音声 おんせい 学的 がくてき には半 はん 濁音 だくおん の「ぱ行 ぎょう 」の頭 あたま 子音 しいん と無声 むせい ⇆有 ゆう 声 ごえ の関係 かんけい をとるが、清音 せいおん の「は行 こう 」の頭 あたま 子音 しいん とは関係 かんけい がない。一方 いっぽう 、有 ゆう 声 ごえ 両 りょう 唇 くちびる 破裂 はれつ 音 おん または有 ゆう 声 こえ 両 りょう 唇 くちびる 摩擦音 まさつおん で発音 はつおん される濁音 だくおん 「ば」は半 はん 濁音 だくおん 「ぱ」または清音 せいおん 「ふぁ」の頭 あたま 子音 しいん が有 ゆう 声 こえ 化 か したもので、音声 おんせい 学 がく の観点 かんてん からは、濁音 だくおん 「ば行 ぎょう 」と半 はん 濁音 だくおん 「ぱ行 ぎょう 」あるいは「ふ」を含 ふく む清 きよし 拗音 ようおん 「ふぁ行 ゆき 」が濁音 だくおん (有声音 ゆうせいおん )と清音 せいおん (無声音 むせいおん )の関係 かんけい にある。しかし、例 たと えば「版 はん 」は連濁 れんだく により「はん」→「ばん」「ぱん」と変化 へんか するなどの現象 げんしょう は、あくまでも、文法 ぶんぽう 的 てき には「ば」と「は」が濁音 だくおん と清音 せいおん の関係 かんけい にあることを示 しめ している。この音声 おんせい 上 じょう の対立 たいりつ と文法 ぶんぽう 上 じょう の対立 たいりつ の矛盾 むじゅん は、「は行 こう 」の頭 あたま 子音 しいん (清音 せいおん )の古音 こおん がおおむね[p] →[φ ふぁい ] →[h] のように変化 へんか したことに起因 きいん している。
発音 はつおん 表 ひょう
/a/
/i/
/u/
/e/
/o/
/h/
ハ /ha/
ヘィ /hi/
ホゥ /hu/
ヘ /he/
ホ /ho/
/ç/
ヒャ /ça/
ヒ /çi/
ヒュ /çu/
ヒェ /çe/
ヒョ /ço/
/ɸ/
ファ /ɸa/
フィ /ɸi/
フ /ɸu/
フェ /ɸe/
フォ /ɸo/
/ɸʲ/
/ɸʲa/
/ɸʲi/
フュ /ɸʲu/
/ɸʲe/
/ɸʲo/
/b/
バ /ba/
ブィ /bi/
ブ /bu/
ベ /be/
ボ /bo/
/bʲ/
ビャ /bʲa/
ビ /bʲi/
ビュ /bʲu/
ビェ /bʲe/
ビョ /bʲo/
/p/
パ /pa/
プィ /pi/
プ /pu/
ペ /pe/
ポ /po/
/pʲ/
ピャ /pʲa/
ピ /pʲi/
ピュ /pʲu/
ピェ /pʲe/
ピョ /pʲo/
無色 むしょく が無声音 むせいおん 、橙色 だいだいいろ が有声音 ゆうせいおん である。有声音 ゆうせいおん の子音 しいん は、文頭 ぶんとう ・撥音 はつおん の後 のち の場合 ばあい は破裂 はれつ 音 おん 、それ以外 いがい では独特 どくとく の摩擦音 まさつおん となる。
^ 先 さき 島 とう 方言 ほうげん などで「花 はな 」を[pana] などと言 い うのはこの音 おと が遺 のこ るものであるとする。
^ 異説 いせつ として、奈良 なら 時代 じだい に[p] 、平安 へいあん 時代 じだい から[ɸ] となったとする説 せつ もある。浅川 あさがわ 哲也 てつや は著書 ちょしょ 『知 し らなかった!日本語 にほんご の歴史 れきし 』(p144, 東京書籍 とうきょうしょせき 2011年 ねん )において、ハの万葉仮名 まんようがな 「波 なみ 」や「播」の中古 ちゅうこ 中国語 ちゅうごくご 漢字 かんじ 音 おん が pua であったこと等 とう を根拠 こんきょ として引 ひ いている。また安本 やすもと 美 よし 典 てん は『季刊 きかん 邪馬台国 やまたいこく 』連載 れんさい 「「古事記 こじき 」の秘密 ひみつ (2002~2005年 ねん )において、当該 とうがい 漢字 かんじ 音 おん が pa ではなく pua であったこと等 とう を根拠 こんきょ とし、奈良 なら 時代 じだい には一部 いちぶ が破裂 はれつ 音 おん ではなく破 やぶ 擦 ず 音 おと 、すなわち[p͡ɸ] であったとする。
^ 「母 はは 」の語 かたり は当時 とうじ 、ハ行 ぎょう 転 てん 呼 よび を経 へ て [ɸawa] のように発音 はつおん されることが非常 ひじょう に多 おお く、faua はそれを音 おと 写 うつ したもの。 fafa [ɸaɸa] は現代 げんだい 語 ご につながるものだが、ハ行 ぎょう 転 てん 呼 よび を免 まぬか れ語頭 ごとう 以外 いがい に [ɸ] を保 たも っているのは例外 れいがい 的 てき で、「父 ちち 」 titi、「婆 ばば 」 baba などの影響 えいきょう で「同 おな じ音 おん の2連続 れんぞく 」という語形 ごけい が強 つよ く意識 いしき されたものであるとされる。
^ 例外 れいがい もある。下記 かき 「母 はは 」のような例 れい のほか、「かわはぎ」「前 ぜん フリ」のような複合語 ふくごうご 、「ひらひら」「へとへと」などの擬声語 ぎせいご など。