ファッション写真しゃしん

ファッション写真しゃしん（ファッションしゃしん）とは、ファッションを映うつし込こんだ写真しゃしん作品さくひん。流行りゅうこうなど対象たいしょうとなる服ふくまたは服飾ふくしょく品ひんを身みにつけたファッションモデルを撮影さつえいし広告こうこく、ファッション雑誌ざっしなどの媒体ばいたいに用もちいたりする写真しゃしんのこと。なお、「モード写真しゃしん」という用語ようごもあるが、それはここでの「ファッション写真しゃしん」、着飾きかざった上流じょうりゅう階級かいきゅうの婦人ふじんを肖像しょうぞう画が的てきに撮影さつえいした写真しゃしん（ジャック＝アンリ・ラルティーグ（Jacques-Henri Lartigue; 1894-1986）ら）を含ふくむ、範囲はんいの広ひろい用語ようごである。

女性じょせいモデルのファッション写真しゃしん

歴史れきし

トニ・フリッセルによる作品さくひん。1949

• 戦前せんぜん

最古さいこの写真しゃしんは、1826年ねんにニセフォール・ニエプスによって撮影さつえいされたものだった。ファッション写真しゃしんは、20世紀せいきに入はいってから成立せいりつしたといわれる。

20世紀せいき前半ぜんはんにファッション写真しゃしんを掲載けいさいした雑誌ざっしとして知しられるものは2つある。一ひとつはヴォーグ（VOGUE)で、もう一ひとつはハーパーズ バザー（Harper's BAZAAR, 1867年ねんHarper & Brothers 社しゃより創刊そうかん）である。この2誌しには多おおくのファッション写真しゃしんが掲載けいさいされ、多おおくの優すぐれた写真しゃしん家かが育そだっていった。

初期しょきにおいては、アドルフ・ド・メイヤー（Adolf de Meyer; 1868-1946、ヴォーグの最初さいしょの専属せんぞく写真しゃしん家か）とエドワード・スタイケン（Edward Steichen; 1879-1973、ヴォーグ）が、スタジオにおいてピクトリアリスム的てきなソフトフォーカスなどの手法しゅほうで、いわば耽美たんび的てき・幻想げんそう的てきかつ優雅ゆうがなファッション写真しゃしんを撮影さつえいしている。

これを受うけて、セシル・ビートン（Cecil Beaton; 1904-1980、イギリス版ばんヴォーグ）とホルスト・P・ホルスト（Horst P. Horst; 1906-1999、フランス版ばんヴォーグ）は、ピクトリアリスムを捨すて、シャープな視線しせんで、モデルの撮影さつえいを続つづけ、競きそい合あうようにして、スタジオにおけるファッション写真しゃしんの質しつを、著いちじるしく高たかめた。この結果けっか、1920年代ねんだい後半こうはんから1930年代ねんだいにかけて、スタジオにおけるファッション写真しゃしんでは、最高さいこうのモデルを最高さいこうの撮影さつえい条件じょうけんのもとで撮影さつえいするというスタイルが確立かくりつされた。

また1920年代ねんだい後半こうはんには、ジョージ・ホイニンゲン＝ヒューン（George Hoyningen-Huene; 1900-1968、ヴォーグのちハーパーズ バザー）が、屋外おくがいに出でて撮影さつえいしたり、複数ふくすうのモデルを1枚まいの作品さくひんに用もちいるといった、今いままででは考かんがえにくい、手法しゅほうを用もちい始はじめた。

1930年代ねんだいに入はいると、ジャーナリズム出身しゅっしん(報道ほうどう写真しゃしん出身しゅっしん)のマーティン・ムンカッチ（Martin Munkacsi; 1896-1963、ハーパーズ バザー）が登場とうじょうし、ホイニンゲン＝ヒューンの手法しゅほうに加くわえて、モデルの動うごきや自然しぜんな表情ひょうじょうをとりいれた。なお、このような動うごきは、同どう時期じきにノーマン・パーキンソン（Norman Parkinson; 1913-、ハーパーズ バザー）も採用さいようしている。また、この時期じきにはシュルレアリスムの影響えいきょうを受うけたファッション写真しゃしんも登場とうじょうした。例たとえばマン・レイ（Man Ray ; 1890-1976）、アーウィン・ブルーメンフェルド（Erwin Blumenfeld; 1897-1969）、アンドレ・ダースト （André Durst; 1907-1949）らによる作品さくひんが、ファッション雑誌ざっしに掲載けいさいされている。1930年代ねんだい後半こうはんから1940年代ねんだいにかけては、ファッション写真しゃしんに演出えんしゅつ性せいが増まし、ストーリー性せいも生うまれている。アートディレクター主導しゅどうといっていい作品さくひんも増ふえてくる。女性じょせい作家さっかが大おおきく活躍かつやくし始はじめるのも、この時期じきである。

この時期じきを代表だいひょうする主おもな写真しゃしん家かには、以下いかの人物じんぶつがいた。

• クリフォード・コフィン（Clifford Coffin; born 1916、ヴォーグ）
• ジョージ・プラット・ラインス（George Platt Lynes;1907-1955、ハーパーズ バザーおよびヴォーグ）
• ルイーズ・ダール＝ウォルフ（Louise Dahl-Wolfe; 1895-1989、女性じょせい／ハーパーズ バザー）
• リリアン・バスマン（Lillian Bassman; b. 1917、女性じょせい／ハーパーズ バザー）
• フランシス・マクローリン＝ギル（Frances McLaughlin-Gill; b. 1919、女性じょせい／ヴォーグ）
• ハーマン・ランショフ（Herman Landshoff; b. 1905、ハーパーズ バザーおよびヴォーグ）
• ルイス・フォア（ルイス・ファウア、Louis Faurer; 1916-2001）

• 戦後せんご

1945年ねんから1960年代ねんだいにかけては、群衆ぐんしゅうシーンや動物どうぶつ（ゾウなど）、スナップ写真しゃしん風ふうなどの表現ひょうげんが登場とうじょうしている。

具体ぐたい的てきな主要しゅよう作家さっかは、以下いかのとおりである。

• トニ・フリッセル
• フランク・ホーヴァット（Frank Horvat; b. 1928、途中とちゅうからハーパーズ バザー）
• リチャード・アヴェドン（Richard Avedon; 1923-2004、ハーパーズ バザー）
• アーヴィング・ペン（Irving Penn; b. 1917、ヴォーグ）
• ウィリアム・クライン（William Klein; b. 1928、ヴォーグ）

とくに、アヴェドンとペンのファッション写真しゃしんにおける活躍かつやく、他たへの影響えいきょうは、以前いぜんのなにものにも増まして、重要じゅうようであるとされる。

書籍しょせき

• 世界せかい写真しゃしん全集ぜんしゅう第だい9巻かん／ファッション・フォトグラフィ／集英社しゅうえいしゃ／1983年ねん（新装しんそう版ばん1989年ねん）
• 太陽たいよう1992年ねん7月がつ号ごう・特集とくしゅう100 Fashion Photos／平凡社へいぼんしゃ／1992年ねん
• VANITÉS／19世紀せいき～20世紀せいきモード写真しゃしん展てん【虚栄きょえい】／朝日新聞社あさひしんぶんしゃ／1994年ねん

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