(Translated by https://www.hiragana.jp/)
アントニー・バークリー - Wikipedia

アントニー・バークリー

イギリスの推理すいり作家さっか(1893-1971)
フランシス・アイルズから転送てんそう

アントニー・バークリー・コックス(Anthony Berkeley Cox, 1893ねん7がつ5にち - 1971ねん3月9にち)は、イギリス推理すいり作家さっか。「アントニー・バークリー」のほか本名ほんみょうであるA・B・コックス先祖せんぞからとったフランシス・アイルズ(Francis Iles)、別邸べっていからとったA・モンマス・プラッツ(A. Monmouth Platts)、「?」といった名義めいぎもちいた。

アントニー・バークリー

革新かくしんてき作風さくふうで、『どくりチョコレート事件じけん』『殺意さつい』『試行錯誤しこうさくご』といった作品さくひんられる。

経歴けいれき

編集へんしゅう

1893ねんハートフォードシャー裕福ゆうふく医者いしゃいえに3にん兄妹きょうだい長男ちょうなんとしてまれた。オクスフォード大学だいがく卒業そつぎょうだいいち世界せかい大戦たいせん陸軍りくぐん大尉たいいとして従軍じゅうぐんした。そのはユーモア雑誌ざっしパンチ』の常連じょうれん寄稿きこうとしてユーモア小説しょうせつなどを発表はっぴょうしていた。1925ねんに「?」名義めいぎ出版しゅっぱんした『レイトン・コートのなぞ』が評判ひょうばんとなり、以降いこう推理すいり小説しょうせつさかんに発表はっぴょうしていくことになる。

地下ちかしつ殺人さつじん』『だい銃声じゅうせい』などロジャー・シェリンガム探偵たんていとしたシリーズや『ピカデリーの殺人さつじん』などアンブローズ・チタウィック探偵たんていとしたシリーズ、アイルズ名義めいぎ発表はっぴょうした犯罪はんざい心理しんり小説しょうせつなどの数々かずかずは、推理すいり小説しょうせつ黄金おうごんひろまれた。小説しょうせつによってきずいた財産ざいさん相続そうぞく財産ざいさん莫大ばくだいなものであったといわれるが、1939ねん以降いこうはほぼ絶筆ぜっぴつ状態じょうたいになり、晩年ばんねん不遇ふぐうであった。

作風さくふう

編集へんしゅう

バークリー名義めいぎ実験じっけんてき複数ふくすう探偵たんていもの『どくりチョコレート事件じけん』や、登場とうじょう人物じんぶつ性格せいかく描写びょうしゃすぐれた『だい銃声じゅうせい』などは、いずれも推理すいり小説しょうせつあたらしい地平ちへいをもたらした里程りていしるべひとつである。またフランシス・アイルズの発表はっぴょうされた『殺意さつい』『レディにささげる殺人さつじん物語ものがたり』などの作品さくひんによって犯罪はんざい心理しんり小説しょうせつ分野ぶんや開拓かいたくした。どんでんがえ偏愛へんあいする作風さくふうについては、評価ひょうかするこえがある一方いっぽう、あまりにも唐突とうとつすぎて充分じゅうぶん根拠こんきょかたられていないとどう時期じき英国えいこく推理すいり作家さっかセイヤーズウィムジィものなかで「ロジャー・シェリンガムしき」として批判ひはんされている。

シャーロック・ホームズながれめい探偵たんていきらい、無礼ぶれいでおしゃべりで社交しゃこうてき探偵たんていロジャー・シェリンガムを登場とうじょうさせた。シェリンガムはけっして天才てんさいてきではなくあやまった推理すいり数多かずおおい。仲間なかまであり好敵手こうてきしゅでもあったスコットランド・ヤードモーズビー警部けいぶ首席しゅせき警部けいぶ)もそれまでの典型てんけいてき警察けいさつぞうはなれ、シェリンガムと対等たいとう捜査そうさ合戦かっせんひろげ、ときには勝利しょうりする。

名前なまえ頭文字かしらもじをとるとABCになる。イニシャルをとったA・B・コックス(Cox)はもちろんだが、『どくりチョコレート事件じけん』、『試行錯誤しこうさくご』の探偵たんていアンブローズ・バターフィールド・チタウィックも同様どうようなのが面白おもしろい。このチタウィックもホームズとはかけはなれたタイプの探偵たんていである。

推理すいり小説しょうせつかい支援しえんしゃであり、1928ねんころにセイヤーズやF・W・クロフツらととも設立せつりつした推理すいり作家さっか親睦しんぼく団体だんたいディテクションクラブではその名誉めいよ首席しゅせき会員かいいんとしてぐうされた。(セイヤーズの死後しご脱会だっかい

日本にっぽんでは近年きんねん主要しゅよう作品さくひん邦訳ほうやく次々つぎつぎあらわれ、さい評価ひょうかすすんでいる。A・B・コックス名義めいぎ新聞しんぶん連載れんさいされ、モンマス・プラッツ名義めいぎ刊行かんこうされて以来いらいほとんどられることのなかったCicely Disappears(1927)まで邦訳ほうやくされた(『シシリーはえた』)。

主要しゅよう作品さくひん

編集へんしゅう

()ない米国べいこくでの題名だいめいないしべつだい。『』ない邦訳ほうやくしょ題名だいめいである。

バークリー名義めいぎ長編ちょうへん

編集へんしゅう
  • シェリンガムもの
    1. The Layton Court Mystery, 1925 『レイトン・コートのなぞ』。当初とうしょ「?」名義めいぎ
    2. The Wychford Poisoning Case : An Essay in Criminology, 1926 『ウィッチフォード毒殺どくさつ事件じけん
    3. Roger Sheringham and the Vane Mystery (The Mystery at Lovers' Cave, The Vane Mystery), 1927 『ロジャー・シェリンガムとヴェインのなぞ
    4. The Silk Stocking Murders, 1928 『きぬ靴下くつした殺人さつじん事件じけん
    5. The Second Shot, 1930 『だい銃声じゅうせい
    6. The Storey Murder (Top Story Murder), 1931 『最上階さいじょうかい殺人さつじん
    7. Murder in the Basement, 1932 『地下ちかしつ殺人さつじん
    8. Jumping Jenny (Dead Mrs. Stratton), 1933 『ジャンピング・ジェニィ』
    9. Panic Party (Mr. Pidgeon's Island), 1934 『パニック・パーティー』
  • チタウィックもの
    1. The Piccadilly Murder, 1929 『ピカデリーの殺人さつじん
    2. Trial and Error, 1937 『試行錯誤しこうさくご
  • シェリンガム、チタウィックりょう探偵たんてい登場とうじょうするもの
    1. The Poisoned Chocolate Case, 1929 『どくりチョコレート事件じけん
  • その
    1. Not to Be Taken, 1938 『服用ふくよう禁止きんし
    2. Death in the House, 1939

フランシス・アイルズ名義めいぎ長編ちょうへん犯罪はんざい心理しんり小説しょうせつ

編集へんしゅう
  1. Malice Aforethought : A Story of a Commonplace Crime, 1931 『殺意さつい
  2. Before the Fact : A Murder Story for Ladies, 1932 『レディにささげる殺人さつじん物語ものがたり』(『犯行はんこう以前いぜん[1])-『断崖だんがい』のタイトルで映画えいがされている。
  3. As for the Woman : A Love Story, 1939 『被告ひこく女性じょせいかんしては』

A・B・コックス名義めいぎ長編ちょうへん (ユーモア小説しょうせつ

編集へんしゅう
  1. The Family Witch, 1926
  2. The Professor on Paws, 1926
  3. Mr. Priestley's Problem (An Amateur Crime),1927 『プリーストリー問題もんだい

A・モンマス・プラッツ名義めいぎ長編ちょうへん

編集へんしゅう
  1. Cicely Disappears,1927 『シシリーはえた』

短編たんぺん

編集へんしゅう
  • バークリー名義めいぎ(*がついているのはシェリンガム登場とうじょう作品さくひん
    1. The Avenging Chance* 「偶然ぐうぜん審判しんぱん」(『どくりチョコレート事件じけん』の原型げんけい
    2. Mr. Simpson Goes to the Dogs 「帽子ぼうしおんな
    3. Right to Kill 「ころしの権利けんり
    4. The Sweets of Triumph 「成功せいこう菓子かし
    5. Perfect Alibi* 「完璧かんぺきなアリバイ」
    6. The Wrong Jar* 「びんちがい」
    7. Mr.Bearstowe Says...* 「ブルームズベリでったおんな
    8. The policeman Only Taps Once 「警官けいかんいちだけかたたたく」
    9. White Butterfly* 「しろちょう
    10. Razor Edge* 「のるかそるか」
    11. Publicity Heroine
    12. Unsound Mind
    13. Direct Evidence*
    14. Double Bluff*
  • ホームズものパロディ
    1. The Tale of "Little Bo-Peep" as Conan Doyle Would Have Written It,1923  「ボー・ピープのヒツジ失踪しっそう事件じけん
    2. Holmes and the Dasher,1925  「ホームズとんでるおんな
  • アイルズ名義めいぎ
    1. Outside the Law 「無法むほう地帯ちたい
    2. Dark Journey 「くら旅路たびじ
    3. It Takes Two to Make a Hero...(The Coward) 「臆病者おくびょうもの
    4. The Lost Diary of Th*m*s A. Ed*s*n
  • A・B・コックス名義めいぎ
    1. Brenda Entertains(たん編集へんしゅう

参考さんこう文献ぶんけん

編集へんしゅう

脚注きゃくちゅう

編集へんしゅう
  1. ^ ハヤカワ・ミステリ112(村上むらかみあきらおっとやく、1955)の邦題ほうだい

関連かんれん項目こうもく

編集へんしゅう