フロイド・ランディス

フロイド・ランディス（Floyd Landis、1975年ねん 10月14日にち- ）は、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくペンシルベニア州しゅう出身しゅっしんの自転車じてんしゃロードレース選手せんしゅ。

経歴けいれき編集へんしゅう

厳格げんかくなメノナイトの家庭かていに生うまれる。1999年ねんにマーキュリー・サイクリングチームとプロ契約けいやく。2002年ねんからUSポスタル・サービス・チームに移籍いせきしランス・アームストロングのアシストとして活躍かつやくした。その後ご2005年ねんにフォナック・ヒアリングシステムに移籍いせき。ツール・ド・フランス2006で総合そうごう優勝ゆうしょうしたが、その後ご発覚はっかくしたドーピング疑惑ぎわくによりタイトルを剥奪はくだつされた。

ツール・ド・フランス2006第だい17ステージ編集へんしゅう

この山岳さんがくステージでランディスは、トップのオスカル・ペレイロとのタイム差さを縮ちぢめる為ため、序盤じょばんから乾坤一擲けんこんいってきの大だい逃にげに出でた。メイン集団しゅうだんはいずれランディスが失速しっそくすると読よみ、Tモバイルチームが先行せんこうして逃にげていたパトリック・シンケヴィッツをランディスの背後はいごに付つかせたのみでレース終盤しゅうばんまで積極せっきょく的てきな追つい走はしを行おこなわなかった。ところがランディスはレースの大半たいはんを空気くうき抵抗ていこうの多おおい先頭せんとうで走行そうこうしていたにもかかわらず、最後さいごの最もっとも険けわしい上のぼりでさらにシンケヴィッツや集団しゅうだんを引ひき離はなすという通常つうじょうでは考かんがえられない走はしりを見みせ、一気いっきにペレイロとのタイム差さを挽回ばんかいしたのである。このあり得えないレース展開てんかいは当初とうしょ、徹底的てっていてきに頭あたまから水みずを被こうむり続つづけたランディスの作戦さくせん勝がちであるとか、いつまでも先頭せんとうを引ひこうとしなかったTモバイルチームの怠慢たいまんが招まねいたサプライズであると言いわれたと同時どうじに、少すくなからぬ人ひとが禁止きんし薬物やくぶつの使用しようを疑うたがうことにもなった。

タイトル剥奪はくだつ編集へんしゅう

2007年ねん9月がつ20日はつか、アメリカ仲裁ちゅうさい委員いいん会かいはランディスの訴うったえを却下きゃっか、これによりアメリカ反はんドーピング機関きかんが下くだしていたランディスへの2006ツール・ド・フランス勝者しょうしゃのタイトルの剥奪はくだつと2年間ねんかんの出場しゅつじょう停止ていし処分しょぶんが決定けってい^[1]。これを受うけ、UCI（国際こくさい自転車じてんしゃ競技きょうぎ連盟れんめい）も翌よく21日にち、公式こうしきにランディスの失格しっかくと総合そうごう2位いだったペレイロの総合そうごう優勝ゆうしょうを認定にんていし、ランディスの総合そうごう順位じゅんい剥奪はくだつが確定かくていした。また、ツール・ド・フランスの主催しゅさい者しゃASOは同年どうねん10月がつ15日にちにペレイロにマイヨジョーヌを授与じゅよした。一方いっぽう、ランディスはこの裁定さいていを不服ふふくとして同年どうねん10月がつ9日にち、スポーツ仲裁ちゅうさい裁判所さいばんしょ（CAS）に提訴ていそしていたが、2008年ねん6月30日にち、CASがランディスの提訴ていそを却下きゃっか。同日どうじつ、正式せいしきにランディスの2年間ねんかんの競技きょうぎ停止ていし処分しょぶんが確定かくていした。なお、競技きょうぎ停止ていし処分しょぶんについては2007年ねん1月がつ30日にちよりさかのぼるため、期間きかんとしては2009年ねん1月がつ29日にちまでとされた^[2]。

ドーピング問題もんだい編集へんしゅう

当人とうにんの問題もんだい編集へんしゅう

圧倒的あっとうてきな強つよさで勝利しょうりした2006年ねんツール・ド・フランス第だい17ステージの後のちのドーピング検査けんさで陽性ようせい反応はんのうとなる。複数ふくすうの検体けんたいが陽性ようせいとなった結果けっか、ランディスの優勝ゆうしょうは保留ほりゅうとされ、後のちに剥奪はくだつされた。ランディス本人ほんにんは自身じしんを陥おとしいれようとする陰謀いんぼうであると主張しゅちょうしていたが、現在げんざいでは、当時とうじドーピングを行おこなっていたことを認みとめている。

ランディスの検体けんたいが示しめしたのは、テストステロンの値ねが異常いじょうであるという結果けっかであった。ランディス側がわは当初とうしょこれを「体質たいしつと股関節こかんせつ治療ちりょうの薬物やくぶつによるもの」と主張しゅちょうしていた。ツール・ド・フランス2006におけるランディスの4回かいのドーピング検査けんさのうち、テストステロンの値ねが異常いじょうだったのは第だい17ステージの1回かいのみであったが、検体けんたいから検出けんしゅつされたテストステロンは同位どうい体たいの比率ひりつから体外たいがいで人工じんこう的てきに合成ごうせいされたものであることが判明はんめいしている。テストステロンは継続けいぞく的てきに使用しようし続つづけることで筋力きんりょくが増強ぞうきょうする薬物やくぶつであるが、一時いちじ的てきな使用しようであってもこれらステロイドホルモン類るいには生体せいたいのエネルギー利用りようを促進そくしんする作用さようがあり、気分きぶんの高揚こうよう、疲労ひろうの回復かいふく、水分すいぶんの保持ほじ、炎症えんしょうの抑制よくせいによる痛いたみの軽減けいげん、といった効果こうかがある。ランディスは自身じしんのドーピングを認みとめた後のちのインタビューで「前年ぜんねん（05年ねん）はレースの期間きかん中ちゅうずっとテストステロンをやっていたが、陽性ようせいにはならなかった」「（06年ねんは）ツールの準備じゅんびにテストステロンを使つかったが、レース期間きかん中ちゅうに行いっていたドーピングは自己じこ血ち輸血ゆけつと成長せいちょうホルモンだった」「当時とうじはテストステロンは使用しようしていなかったため、検査けんさ結果けっかはおかしい」と主張しゅちょうしている^[3]^[4]。

2010年ねん2月がつ15日にち、2006年ねんにフランスの反はんドーピング研究所けんきゅうじょのコンピュータにハッキング行為こういを行おこなった容疑ようぎで国際こくさい指名しめい手配てはいされていることが明あきらかになった^[5]。2011年ねん11月がつ10日とおか、ランディスはフランスの裁判所さいばんしょから執行しっこう猶予ゆうよ付つき禁錮きんこ刑けい1年ねんをい渡いわたされた。これはランディスの元もとマネージャーら、不正ふせい侵入しんにゅうに関与かんよした全員ぜんいんに対たいするものであり、総額そうがく7万まん5,000ユーロ（約やく790万まん円えん）の損害そんがい賠償ばいしょう支払しはらいも命めいじられた。

ランス・アームストロングのドーピング疑惑ぎわくを告発こくはつ編集へんしゅう

2010年ねん5月がつ20日はつか、ウォールストリート・ジャーナルは、電子でんしメールでランディスが自みずからのドーピングを認みとめ、同時どうじにランス・アームストロングやリーヴァイ・ライプハイマーのドーピングを告発こくはつした、と報道ほうどう。またランディスは、2002年ねんのUSポスタル在籍ざいせき時代じだいに、当時とうじ同どうチーム監督かんとくのヨハン・ブリュイネールとアームストロングの手てほどきを受うけてドーピングを行おこなったことがきっかけとなり、その後ご常習じょうしゅうするようになったという。さらに、2003年ねんにスペイン・ジローナにあるアームストロングのアパートで血液けつえきドーピングに使用しようするための採血さいけつ法ほうをアームストロングに指導しどうされ、そのクローゼットにある冷蔵庫れいぞうこにはアームストロングとジョージ・ヒンカピーの血液けつえきが保管ほかんされていたと主張しゅちょうしている^[4]。

スポーツ・イラストレイテッドの2011年ねん1月がつ24日にち号ごう^[6] において、ランディスとステファン・スチュアートの証言しょうげんに基もとづき、アームストロングがヤロスラフ・ポポヴィッチと共謀きょうぼうして、イタリアで長年ながねんに亘わたってドーピング行為こういを行おこなっていたとされる5700文字もじ以上いじょうからなる文書ぶんしょを入手にゅうしゅしたことや、アンチドーピングの権威けんいである、ドン・キャトリン博士はかせの調しらべによると、当人とうにんの尿にょうから、テストステロン及およびエピテストステロンの異常いじょう値ちが出でていたとする詳細しょうさいなレポートを入手にゅうしゅし公表こうひょう^[7]。この記事きじに対たいし、アームストロングは事実無根じじつむこんであると否定ひてい^[8]。ポポヴィッチも同様どうように否定ひていした^[9]。一方いっぽう、キャトリンは、同どう記事きじについてのコメントを差さし控ひかえた^[10]。

ランス・アームストロングはその後ご、ドーピングを実際じっさいに行いっていたものと認定にんていされ、2012年ねんに獲得かくとく主要しゅようタイトルの剥奪はくだつと自転車じてんしゃ競技きょうぎからの永久えいきゅう追放ついほうという処分しょぶんを受うけた。2013年ねんにはアームストロング本人ほんにんがドーピングを事実じじつだと告白こくはくしている。
詳細しょうさいは「ランス・アームストロングのドーピング問題もんだい」を参照さんしょう

現役げんえき復帰ふっきから引退いんたいまで編集へんしゅう

出場しゅつじょう停止ていし期間きかんの明あけた2009年ねんシーズン、Healthnet-Maxxisの後継こうけいチームであるアウチ・プロサイクリングチーム（en:OUCH Pro Cycling Team）で現役げんえき復帰ふっきし、ツアー・オブ・カリフォルニアに出場しゅつじょうした。その後ごは本場ほんばであるヨーロッパのメジャーレースの世界せかいに戻もどることなく、2011年ねんに引退いんたいした。