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ポリテトラフルオロエチレン - Wikipedia

ポリテトラフルオロエチレン (polytetrafluoroethylene, PTFE) はテトラフルオロエチレンじゅう合体がったいで、フッ素ふっそ原子げんし炭素たんそ原子げんしのみからなるフッ素ふっそ樹脂じゅし(フッ炭素たんそ樹脂じゅし)である。テフロン (Teflon) の商品しょうひんめいられる。化学かがくてき安定あんていたい熱性ねっせいたい薬品やくひんせいすぐれる。

PTFEの構造こうぞうしき
PFA構造こうぞうしき
PTFEは疎水そすいせいたかたい熱性ねっせいつため、PFAとともにフライパンの表面ひょうめんコートによくもちいられる。
テフロンでコートされたフライパンは比較的ひかくてきげつきにくい。
実験じっけんようテフロン製品せいひん
粘着ねんちゃくざいきPTFEテープ。

歴史れきし 編集へんしゅう

1938ねん米国べいこくデュポンしゃ研究けんきゅういんであったロイ・プランケットによって発見はっけんされた。クロロフルオロカーボンるい研究けんきゅうちゅうに、テトラフルオロエチレンのボンベない固着こちゃくした樹脂じゅしから見出みいだされた。

デュポンは1941ねんに、このPTFE:ポリテトラフルオロエチレンの特許とっきょ取得しゅとくする。戦車せんしゃへのばちすいコーティングざいとしてはじめて採用さいようされ、溶融ようゆう成形せいけい困難こんなん粘着ねんちゃくせいたか塗膜とまく困難こんなん、さらには値段ねだん非常ひじょう高価こうか当初とうしょのPTFEであったが、最初さいしょにPTFEが注目ちゅうもくされたのはマンハッタン計画けいかくなかである。かく燃料ねんりょう製造せいぞう過程かてい使用しようされるろくフッウランから発生はっせいするつよ腐食ふしょくせいのガスはあつかいに大変たいへん危険きけんともなっていたが、設備せつびパッキンライニング材料ざいりょうにPTFEを使用しようすることで安全あんぜんあつかこと可能かのうとなり、原子げんしばくだん開発かいはつおおきな役割やくわりたすこととなった。デュポンは1945ねんにPTFEを「テフロン™」 (Teflon)の商標しょうひょう登録とうろく出願しゅつがんし(商標しょうひょうは2015ねんにケマーズしゃ移管いかん)、だい世界せかい大戦たいせんのちにはテフロンが徐々じょじょ民間みんかん利用りようされるようになっていった。1947ねんにはテフロン塗料とりょう販売はんばい開始かいし、1960ねんにはテフロン加工かこうのフライパン誕生たんじょうと、テフロンFEPが販売はんばい開始かいしされた[1]

現在げんざいではテフロンの名称めいしょうは、ポリテトラフルオロエチレンだけではなく、デュポンしゃフッ素ふっそ樹脂じゅし一般いっぱん呼称こしょうとなっており、同社どうしゃ販売はんばいするテトラフルオロエチレンとそののモノマーのきょう重合じゅうごうたいなどもテフロンのばれる。しかし、一般いっぱんにテフロンと場合ばあいには、ポリテトラフルオロエチレンのことをすことがおおい。

用途ようと 編集へんしゅう

おも調理ちょうりよう器具きぐとくフライパンなべなどの金属きんぞくせい調理ちょうり器具きぐ表面ひょうめんにコート塗装とそうされている。水分すいぶん油分ゆぶんによる侵食しんしょくつよく、また摩擦まさつちいさいことから加熱かねつされた食品しょくひんきをふせ役割やくわりになっている。ただし過度かど強火つよびや、長時間ちょうじかん調理ちょうりによって劣化れっか剥離はくりこることもある。

電気でんき機器きき関係かんけいや、高温こうおん腐食ふしょくせい流体りゅうたいあつか化学かがく機械きかいてき用途ようとにおいてひろ加工かこうよう素材そざいとして利用りようされる。チューブホーステフロンシート、さまざまなパッキン剥離はくりざい絶縁ぜつえんざい断熱だんねつざい粘着ねんちゃくテープすりどうざい製造せいぞう食品しょくひん、プラスチックフィルム、ゴム、セラミックス)、たいねつコンベアベルト、テフロンコーティング、電解でんかいニッケル-りん-PTFEふくあいめっき、すべりざいベアリング、スリーブ、フランジワッシャーなどの素材そざいとしてもちいられる。潤滑じゅんかつばちすい機能きのう向上こうじょう目的もくてきとしてほか合成ごうせい樹脂じゅし油脂ゆしなどへの添加てんかざいとしても使つかわれる。さらに、硫化りゅうかモリブデンなどと同様どうようエンジンオイルへの添加てんかざいにも使用しようされるが、デュポンしゃはこの用途ようとへのテフロンの使用しようみとめていない[注釈ちゅうしゃく 1]

半導体はんどうたい製造せいぞうよう各種かくしゅ薬液やくえき製造せいぞう搬送はんそう貯蔵ちょぞうとうのプラントにも使つかわれており、現代げんだい最先端さいせんたん技術ぎじゅつかげささえる重要じゅうよう物質ぶっしつである。フッ水素すいそさんにもけないことから、フッ水素すいそさん運搬うんぱん貯蔵ちょぞうにはテフロンせい容器ようき使用しようされる。

性質せいしつ 編集へんしゅう

ポリテトラフルオロエチレンはたい熱性ねっせいたい薬品やくひんせいすぐれ、つよ腐食ふしょくせいをもつフッ水素すいそさんにもけない。また、現在げんざいまでに発見はっけんされている物質ぶっしつなかもっと摩擦まさつ係数けいすうちいさい物質ぶっしつ[2]であることも特長とくちょうひとつである。

加熱かねつによってもねつ流動りゅうどうこさないため、通常つうじょう樹脂じゅしのように溶解ようかい成型せいけいおこなうことができない。そのため、成型せいけい粉末ふんまつ圧縮あっしゅくゆたかによっておこなわれる。これは製品せいひん製造せいぞう効率こうりつじょうこのましくないことである。そのため、溶解ようかい成型せいけい可能かのうフッ素ふっそけい樹脂じゅしとして、類縁るいえん有機ゆうきフッ素ふっそ化合かごうぶつきょう重合じゅうごうたい有機ゆうきフッ素ふっそ塩素えんそ化合かごうぶつじゅう合体がったい開発かいはつされ、各種かくしゅのブランドめいをつけられて販売はんばいされている。

ポリテトラフルオロエチレンは放射線ほうしゃせん作用さようによって容易ようい重合じゅうごう低下ていかし、脆性ぜいせいすることがられている(ただし、化学かがくてき安定あんていせい維持いじされる)。これは放射ほうしゃせい物質ぶっしつあつかうえでの問題もんだいとなるが、あらたな加工かこうほうとして有用ゆうようともなりうる[3]

ポリテトラフルオロエチレンフッ素ふっそ樹脂じゅし化学かがくてき非常ひじょう安定あんていであるが、高温こうおん溶融ようゆうアルカリ金属きんぞくフッ素ふっそけいハロゲンあいだ化合かごうぶつには徐々じょじょおかされる場合ばあいがある。

安全あんぜんせい 編集へんしゅう

ポリテトラフルオロエチレン自体じたい化学かがくてき活性かっせいであり毒性どくせいはない。しかし、やく260°Cたっすると劣化れっかはじめ、やく350°C以上いじょうになると分解ぶんかいし、500℃以上いじょう加熱かねつすると有毒ゆうどくなポリマーガスが発生はっせいする可能かのうせい報告ほうこくされているので注意ちゅうい必要ひつようである[4][5]。このポリマーガスは、人間にんげんたいしてはインフルエンザのような症状しょうじょうポリマーガスねつ)をこす可能かのうせい報告ほうこくされている[6]

これをコーティングした調理ちょうり器具きぐかんがえた場合ばあい調理ちょうりよう油脂ゆしあぶらバターやく200°Cはじめ、けむりしょうじる。また、肉類にくるい通常つうじょう200 – 230°Cげるため、通常つうじょうそのような高温こうおんにしてしまうことはない。しかし、もしそらのままで加熱かねつしているのにづかなかった場合ばあい、ポリテトラフルオロエチレンが劣化れっかはじめる温度おんど以上いじょう調理ちょうり器具きぐ加熱かねつされる可能かのうせいしょうじる。いずれにせよ高温こうおん調理ちょうりする場合ばあいは、てつもしくはステンレスの器具きぐもちいるのがい。

1959ねん当時とうじ研究けんきゅうでは、コーティングされたフライパンのそらきによって発生はっせいするけむり毒性どくせいは、通常つうじょう調理ちょうりようからしょうじるけむりくらべてひくいことがしめされた[7]

しょう動物どうぶつ小鳥ことりへの影響えいきょう 編集へんしゅう

小鳥ことりなどを飼育しいくしている環境かんきょうでは、けむりしょう動物どうぶつ致死ちしてき影響えいきょうあたえるため使用しようしてはならないと、どう加工かこうされた調理ちょうり器具きぐなどに注意ちゅういきがなされている。

PFOAの使用しようについて 編集へんしゅう

2005ねんアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく環境かんきょう保護ほごちょう科学かがく諮問しもん委員いいんかいは、テフロンを製造せいぞうする過程かてい使用しようするペルフルオロオクタンさんが「発癌はつがんせい物質ぶっしつ可能かのうせいたかい」とした[8]。かつて調理ちょうり器具きぐなどにPFTEをコーティングするさいに、ペルフルオロオクタンさん(PFOA)が使用しようされており、社会しゃかい問題もんだいになった。PFOAを製造せいぞうしているデュポンしゃは、様々さまざま訴訟そしょうけ、2015ねん以降いこうこの化合かごうぶつを99.9%製造せいぞうプラントから放出ほうしゅつしないことに合意ごういした[9]。この合意ごういは、調理ちょうり器具きぐにPFTEをコーティングするさい使用しようされるPFOAだけではなく、食品しょくひんパッケージ、衣類いるい、カーペットなどの製品せいひんにも適用てきようされた。なお研究けんきゅうでは、調理ちょうり器具きぐじょう残存ざんそんPFOAは検出けんしゅつ限界げんかい以下いかであることがわかっている[10]。また、2015ねん以降いこうにはぜん世界せかいてきにPFOAの使用しよう禁止きんしされたため、現在げんざい調理ちょうり器具きぐには使用しようされていない[11]

生産せいさんしゃ 編集へんしゅう

日本にっぽんでは、AGCダイキンなどが生産せいさんしている。世界せかいでは、3M製造せいぞう中止ちゅうし)、Dongyue Group、Gujrat Fluorochemical Limited、HaloPolymer、The Chemours Companyなどが生産せいさんしている。

Halopolymer(ハロポリマー)しゃは1940年代ねんだい創立そうりつしたロシア最大手さいおおてフッ素ふっそ化学かがくメーカーで、主原あるじはらりょうであるぼたるせき工業こうぎょうしお原料げんりょうとして、無水むすいフッさん(AHF)、R-22、HFP(C3F6)、PTFE樹脂じゅしなどを自社じしゃ一貫いっかん生産せいさんしている。ロシア最大さいだいきゅう化学かがく肥料ひりょうメーカーであるUralchemの100%子会社こがいしゃである。

脚注きゃくちゅう 編集へんしゅう

注釈ちゅうしゃく 編集へんしゅう

  1. ^ そのため、この分野ぶんや商品しょうひん説明せつめいでは「テフロン」の名称めいしょう一切いっさい使用しようされず、もっぱら物質ぶっしつ略称りゃくしょうである「PTFE」などと表記ひょうきされる。

出典しゅってん 編集へんしゅう

  1. ^ 「テフロン™発見はっけん技術ぎじゅつ革新かくしん 三井みつい・ケマーズ フロロプロダクツ株式会社かぶしきがいしゃ
  2. ^ フッ素ふっそ樹脂じゅしランド 『フッ素ふっそ樹脂じゅし(テフロン)のてい摩擦まさつせい
  3. ^ 原子力げんしりょく百科ひゃっか事典じてんATOMICA 高分子こうぶんし材料ざいりょう放射線ほうしゃせん劣化れっかあらためしつII (08-04-02-13)
  4. ^ Higgins, Robert P. (1965). Robert P. Higgins Papers : field data, Tobago, USSR, South Pacific Ocean, 1965, 1968, 1986, 1989, 1991. [s.n.]. https://doi.org/10.5962/bhl.title.141553 
  5. ^ デュポン, Key Questions About TeflonR[1], 2007ねん12月3にち閲覧えつらん
  6. ^ デュポン, Key Questions About TeflonR[2], 2007ねん12月3にち閲覧えつらん
  7. ^ Dale Blumenthal. “Is That Newfangled Cookware Safe?”. アメリカ食品しょくひん医薬品いやくひんきょく. 2006ねん5がつ20日はつか閲覧えつらん
  8. ^ Perfluorooctanoic acid human health risk assessment review panel”. アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく環境かんきょう保護ほごちょう. 2005ねん5がつ20日はつか閲覧えつらん
  9. ^ Juliet Eilperin (2006ねん1がつ26にち). “Harmful PTFE chemical to be eliminated by 2015”. ワシントン・ポスト. http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2006/01/25/AR2006012502041.html 2006ねん9がつ10日とおか閲覧えつらん 
  10. ^ Washburn, Stephen T.; Bingman, Timothy S.; Braithwaite, Scott K.; Buck, Robert C.; Buxton, L. William; Clewell, Harvey J.; Haroun, Lynne A.; Kester, Janet E. et al. (2005-06-01). “Exposure Assessment and Risk Characterization for Perfluorooctanoate in Selected Consumer Articles” (英語えいご). Environmental Science & Technology 39 (11): 3904–3910. doi:10.1021/es048353b. ISSN 0013-936X. https://pubs.acs.org/doi/10.1021/es048353b. 
  11. ^ テフロン加工かこうフライパンの有害ゆうがいせい危険きけんせい誤解ごかいただしい使つかかた解説かいせつ”. さきまる (2022ねん5がつ23にち). 2023ねん7がつ21にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく 編集へんしゅう

外部がいぶリンク 編集へんしゅう