モモ (児童 文学 )
『モモ』(
モモ MOMO | ||
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ミヒャエル・エンデ | ||
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1973 | ||
Thienemann Verlag Gmbh | ||
ジャンル |
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ドイツ | ||
ドイツ | ||
ウィキポータル | ||
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1986
あらすじ
このあらすじは、
- モモとその
友 だち 大 きな都会 の町 はずれに、松林 に隠 れるように忘 れ去 られた円形 劇場 の廃墟 がある。この廃墟 の舞台 下 の小 部屋 に、モモという女 の子 が住 み着 く。彼女 はつぎはぎだらけのスカートと男物 のだぶだぶの上着 を着 ている。近 くの人 たちがたずねると、モモは施設 から逃 げ出 してきて、ここが自分 の家 だと話 す。みんなは部屋 に手 を加 え、モモが暮 らしていけるようにする。子 どもたちは食 べ物 のおすそ分 けをもってきてくれる。その晩 はモモの引 っ越 し祝 いパーティのようになる。こうして小 さなモモと近所 の人 たちの友情 が始 まる。
- モモにはみんなの
話 を本当 に聞 いてあげることのできる才能 がある。モモに話 を聞 いてもらうと、勇気 が出 たり、希望 や自己 肯定 感 が生 まれたりする。左官 屋 のニコラと居酒屋 のニノの大 げんかも、モモの前 でい合 っているうちに仲直 りする。モモがいることにより、子 どもたちの頭 の中 にすてきな遊 びが浮 かんでくるようになり、今 までになく楽 しく遊 べるようになる。航海 ごっこはオバケクラゲと闘 い、さまよえる台風 の目 に突入 し、モモザン民族 の古 い歌 により鎮 めるという大 冒険 となる。航海 ごっこをしているときに夕立 となったが、小 さな子 どもたちも雷 や稲妻 も忘 れて遊 んでいる。
道路 掃除 夫 のベッポと観光 ガイドのジジはモモの特別 の友 だちである。ベッポはじっくり考 える人 で、答 えるまで長 い時間 がかかるため、自分 の考 えをモモだけに伝 えることができる。ベッポは長 い道路 を受 け持 つときは、次 の一 歩 、次 の一掃 きのことだけを考 えると、楽 しくなってきて、気 が付 くとぜんぶが終 わっていると話 す。一方 、ジジは口達者 であり、いつか有名 になり、お金持 ちになる夢 がある。ジジは観光 客 に口 から出 まかせの物語 を話 して、帽子 にお金 を入 れてもらう。彼 の物語 は、モモと知 り合 いになってから、とても素晴 らしいものになる。灰色 の男 たち灰色 の男 たちはある計画 を企 てる。彼 らは都会 の人 たちに「時間 貯蓄 銀行 」の口座 を開 き、人間 関係 にとられる時間 や一人 のお客 にかける時間 を節約 し、貯蓄 に回 すと高額 の利子 が付 くと勧 める。だまされた人々 は、灰色 の男 たちのことを忘 れ、自分 の時間 がどんどん短 くなっていくことに疑問 をもたなくなる。人々 は「時間 節約 」に励 み、その標語 が町中 にあふれる。「時間 貯蓄 家 」はお金 を稼 ぐが、ふきげんで、くたびれて、怒 りっぽくなり、町 の北側 には無機質 で、同 じ形 の高層 住宅 が立 ち並 ぶようになる。
- モモは
古 い友 だちがだんだん来 なくなったような気 がするとジジとベッポに話 す。ベッポは町 がすっかり変 わってしまい、円形 劇場 に来 る子 どもたちが増 えているのは、かくれ場所 が欲 しいだけなんだと話 す。子 どもたちも高価 なおもちゃを持 ってくることが多 く、そのようなおもちゃでは、空想 を働 かせる余地 がない。子 どもたちは、だれもが親 から見放 されたと感 じているようだ。一人 の男 の子 は、両親 から時間 を節約 しない人 たちのところへは遊 びに行 ってはいけないと言 われたと話 し、他 の子 も同 じようだ。
- モモは
左官 屋 のニコラを訪 ねる。夜 遅 くに戻 って来 たニコラは、時代 はどんどん変 わり、まるで悪魔 のようなスピードで良心 に反 する仕事 をしていると話 す。居酒屋 のニノはおかみさんに、昔 からの大事 なお客 を追 い出 そうとしていると責 められている。おかみさんは、思 いやりのないやり方 でしかやれないなら、そのうち出 て行 くと口 にする。ニノはモモにおれだっていやだったんだ、いったいどうしたらいいんだと問 いかける。翌々日 、ニノとおかみさんがモモを訪 ねる。ニノは年寄 りのところを回 り、あやまって来 たと話 す。モモは他 の古 い友 だちを訪 ね、みんなモモのところに行 くと約束 してくれる。
- こうしてモモは
知 らずに灰色 の男 たちの邪魔 をするようになる。円形 劇場 に灰色 の男 が現 れ、大 きな話 す人形 やたくさんの服 やすてきな品物 を取 り出 しモモに与 えようとする。灰色 の男 は人生 の成功 や時間 貯蓄 銀行 について話 すが、モモは相手 の心 が理解 できない。男 はモモの説得 に失敗 し、自分 の話 したことは忘 れてくれとい残 す。モモはジジとベッポに灰色 の男 のことを話 す。ジジの提案 で、子 どもたちはデモ行進 して、灰色 の男 たちの正体 をあばき、町中 の人 たちに円形 劇場 で説明 集会 をすると呼 びかける。しかし、町 の人 はデモ行進 に気付 かず、一人 も円形 劇場 に来 ない。
- ベッポはゴミの
山 の近 くで灰色 の男 たちの裁判 を目撃 する。有罪 となった被告 の葉巻 が奪 い取 られると、男 は消 えてなくなる。同 じ頃 、モモはカメと出会 い、甲羅 に浮 かび上 がる文字 に導 かれ、町 に向 かう。円形 劇場 は灰色 の車 に取 り囲 まれ、本部 からすべての職員 にモモを見 つけ出 すよう指示 が出 る。モモたちは時間 の境界 線 の白 い地区 に入 る。追 っ手 は全速力 で追 いかけるが、急 に前 に進 まなくなる。モモたちはゆっくり歩 いているのに、とても早 く動 いている。曲 がり角 の先 は「さかさま小路 」となる。モモはカメに教 えられて後 ろ向 きに歩 き、「どこにもない家 」に到着 する。カメはマイスター・ホラの部屋 に案内 する。
時間 貯蓄 銀行 では幹部 が招集 される。テーブルに着 いた灰色 の男 たちは、一様 に鉛 色 の書類 カバンをもち、灰色 の葉巻 を吸 っている。彼 らはモモの対応 を議論 し、モモの友 だちのベッポとジジをモモから引 き離 し、友 だちを取 り戻 すことを条件 にあの道 のことをき出 す悪 だくみを進 める。
大広間 には何 千 種類 もの時計 があり、それぞれ時 を刻 んでいる。銀髪 の老人 が現 れ、マイスター・ホラと名乗 り、カメをカシオペイアと呼 ぶ。モモはホラの用意 したおいしい朝食 をいただき、すっかり元気 を取 り戻 す。ホラは、灰色 の男 たちは人間 の時間 を盗 んで生 きていること、自分 は一人 一 人 に時間 を配分 していること、人間 は自分 の時間 をどうするか自分 で決 めなければならないことを話 す。ホラは時間 の生 まれるところに案内 する。黒 い水 の上 でゆっくりと振 り子 が動 いており、振 り子 が池 の縁 に近 づくと、水面 から光 り輝 く美 しい「時間 の花 」が浮 かんでくる。振 り子 が池 の中央 に戻 ると花 は散 り、水中 に消 えていく。時間 の花 目 が覚 めるとモモは円形 劇場 に戻 り、足元 にはカシオペイアがいる。すでに、こちらでは1年 の時間 が経過 している。その間 に、灰色 の男 たちはジジを物語 の語 り手 として、有名人 に仕立 て上 げ、忙 しい大金持 ちにしてしまう。ベッポは頭 がおかしいとされ精神 病院 に隔離 される。灰色 の男 たちはモモを返 す条件 として、総額 10万 時 間 を貯蓄 することを約束 させる。ベッポは時間 を節約 するため、ただひたすら働 くようになる。モモの友 だちの子 どもたちは、それぞれの地区 ごとに作 られた「子 どもの家 」に入 れられ、次第 に小 さな時間 貯蓄 家 になっていく。こうして、モモの友 だちは誰 もモモのところに来 なくなる。
- モモはカメと
一緒 にニノの酒場 に行 く。しかし、そこは「ファストフード・レストラン ニノ」となっている。店 の中 は不機嫌 な人 でいっぱいである。モモがニノに話 しかけると、行列 の人々 が早 くしろと叫 び出 す。モモはなんとかジジとベッポと「子 どもの家 」ついてき出 す。モモは高級 住宅 街 にあるジジの家 を訪 ねる。ジジの心 は病 んでおり、それには灰色 の男 たちが関与 していることがよく分 かるが、どうしてよいかが分 からない。数 か月 たってもモモは一人 ぼっちのままであり、深 い孤独 を感 じる。そんなとき、灰色 の男 が現 れる。
- モモは
灰色 の男 を避 け、あてもなく町 の中 を歩 き、疲 れて三 輪 トラックの荷台 で寝込 んでしまう。夢 の中 でベッポやジジが苦 しんでおり、子 どもたちも泣 いている。モモは危険 にさらされている友 だちを助 けようと勇気 が湧 いてくる。モモが「あたしはここよ!」と叫 ぶと、たくさんの灰色 の車 が集 まって来 る。男 たちは友 だちを救 うため、マイスター・ホラのところに案内 させようとする。モモがホラに会 ってどうするのとたずねると、人間 の時間 をそっくりまとめて渡 してもらうのだと口 にする。モモは知 っているのはカシオペイアだけだと言 うと、灰色 の男 たちはカメ探 しに奔走 する。
- モモが
何 時 間 もその場 に立 ち尽 くしていると、カシオペイアが現 れ、ホラのところに案内 する。しかし、彼 らの会話 は灰色 の男 たちに聞 かれ、灰色 の男 たちの集団 が音 もなく後 を付 ける。白 い地区 に入 ると、カメの歩 みは一層 遅 くなる。今回 は灰色 の男 たちもカメの後 をゆっくり付 けている。「さかさま小路 」に入 り、モモが後 ろ向 きになると、見渡 す限 り灰色 の男 たちが集 まっている。しかし、追 っ手 は時間 が逆流 する「さかさま小路 」に入 ると消滅 してしまう。灰色 の男 たちは白 い地区 を隙間 なく取 り囲 み、葉巻 を吸 い続 ける。
- ホラは、
彼 らは「時間 の花 」を冷凍 して貯蔵庫 に保管 し、葉巻 に加工 して吸 うことにより存在 できることを説明 する。ホラは人間 の時間 を取 り戻 すため、モモに危険 な仕事 を依頼 し、モモに1時 間 分 の「時間 の花 」を渡 す。モモは大 扉 を開 ける。時間 がゆれ、部屋 の中 の無数 の時計 が停止 する。時間 が停止 したため灰色 の男 たちは「どこにもない家 」になだれ込 んでくる。彼 らは時計 が止 まっていることに気付 き、あわてて時間 補給 庫 に駆 け付 けようとする。モモたちが外 に出 ると、あらゆるものが止 まっている。灰色 の男 たちは葉巻 を奪 い合 いながら消 えていく。
- モモたちは
町 の北 の外 れに建設 現場 を見 つける。モモたちは左官 屋 のニコラが指 さす土管 の中 に中 を滑 り落 ち、薄 明 るい地下道 に出 る。会議 用 テーブルのある広間 では、貯蔵 された時間 の節約 のため、議長 がコイントスで半数 づつ灰色 の男 たちを消 していき、最後 には6人 が残 る。モモが「時間 の花 」で貯蔵庫 の扉 に触 れると、扉 は閉 まり施錠 される。モモとカシオペイアは灰色 の男 たちから逃 げ回 り、全員 が消滅 する。
- モモが
貯蔵庫 の扉 を「時間 の花 」で触 れると、扉 は開 く。凍 り付 いた無数 の「時間 の花 」が棚 に並 んでおり、暖 かくなるとモモの周 りで渦巻 いて飛 び去 って行 く。カシオペイアの指示 でモモはこの春 の嵐 とともに地上 に出 る。「時間 の花 」はそれぞれ人間 の心 の中 に戻 り、時間 は再 び動 き出 す。人間 はだれしも自分 の時間 がたっぷりあると感 じるようになる。モモはベッポに再会 し、泣 き笑 いの状態 である。子 どもたちは道路 の真 ん中 で遊 び、人々 は足 を止 めて親 し気 に言葉 を交 わす。円形 劇場 にモモとすべての友 だちが集 まり、おいとなる。
登場 人物
- モモ
本 作品 の主人公 。施設 から逃 げ出 し、廃墟 となった円形 劇場 の舞台 下 の小 部屋 に住 み着 いた10歳 くらいの女 の子 。みんなの話 を本当 に聞 いてあげることのできる才能 がある。道路 掃除 夫 のベッポ- モモの
特別 な友 だち。じっくり考 える人 で、答 えるまで長 い時間 がかかる。仕事 はとてもていねい。 観光 案内 のジジ- モモの
特別 な友 だち。口達者 であり、夢 は有名 になり、金持 ちになること。観光 客 に口 から出 まかせの物語 を話 して、帽子 にお金 を入 れてもらう。 左官 屋 のニコラ- モモの
古 い友 だち。モモが円形 競技 場 に住 み着 いたとき、石 のかまどを作 り、煙突 を取 り付 けてあげる。 居酒屋 のニノ- モモの
古 い友 だち。町 はずれに小 さな店 を借 りて居酒屋 を営 んでいる。 - マイスター・ゼクンドゥス・ミヌティウス・ホラ(
通称 マイスター・ホラ) - 「どこにもない
家 」に住 み、一人 一 人 に定 められた時間 を配分 している。灰色 の男 たちに追 われるモモを保護 する。 - カシオペイア
- カメであるが
時間 の流 れの外 におり、30分 後 までを予見 できる。甲羅 に文字 を浮 かび上 がらせ、モモを「どこにもない家 」に案内 する。 灰色 の男 たち時間 どろぼう。人間 から盗 んだ「時間 の花 」を冷凍 して貯蔵庫 に保管 し、葉巻 に加工 して吸 うことにより存在 できる。葉巻 が無 くなると抵抗 する間 もなく消 えてしまう。
題辞
解釈
ストーリーには、
「
評価
日本語 版
- 『モモ』(
通常 版 ) ISBN 4-00-110687-6 C8097 - 『モモ』(
愛蔵 版 ) ISBN 4-00-115567-2 C8097 - 『モモ』(
岩波 少年 文庫 127)ISBN 4-00-1141272 - 『ミヒャエル・エンデ
全集 3』ISBN 4-00-092043-X C0397
映像 化
舞台 化
1975
- モモと
時間 泥棒 劇団四季 のファミリーミュージカル。1978年 上演 。- モモ
- オペラ。
一柳 慧 作曲 。日本語 。1995年 初演 [10]。 - Momo og tidstyvene
- オペラ。スビトラーナ・アザロワ
作曲 。デンマーク語 。2017年 初演 。
造形 作品
脚注
- ^ 「
異才 面談 小泉 今日子 『モモ』の心 のように」『朝日新聞 』1987年 3月 26日 付 夕刊 、15頁 。 - ^ 「
童心 が問 う『現代 』映画 『モモ』全国 公開 」『朝日新聞 』1988年 7月 4日 付 夕刊 、12頁 。 - ^
日本テレビ放送網 株式会社 . “「35歳 の少女 」作中 で名作 『モモ』が鳴 らす警鐘 とは?台詞 から読 み解 く”.日本 テレビ. 2021年 1月 28日 閲覧 。 - ^ Jane Taylor, The Star. 『モモ』
原著 ではドイツ語 訳 が引用 されている。 - ^
英訳 ではテイラー作 とし、原詩 ("Twinkle Twinkle Little Star...")を載 せている。なお英訳 は二 種類 あり、旧訳 は書名 が異 なる(The Grey Gentlemen, Burke, 1975, ISBN 0222003677 )。 - ^ a b 1377
夜 『モモ』ミヒャエル・エンデ|松岡 正 剛 の千 夜 千 冊 - ^
河 邑厚徳 ・グループ現代 『エンデの遺言 :根源 からお金 を問 うこと』NHK出版 、2000年 、ISBN 4-14-080496-3 、45、46頁 。 - ^ Momo, Dogen. and the Commodification of Time By Linda Goodhew and David Loy
- ^
荻原 規子 著 、徳間 文庫 編集 部 編集 『〈勾玉 〉の世界 荻原 規子 読本 』徳間書店 、2010年 「荻原 規子 ×上橋 菜穂子 『もう一 つの世界 』のにおいを求 めて」(初出 :『ユリイカ』2007年 6月 号 ) - ^ “
一柳 慧 作品 情報 〈上演 作品 〉”. ショット・ミュージック株式会社 . 2022年 4月 29日 閲覧 。 - ^
京急 三浦海岸 駅 下車 、徒歩 7分 - ^ 1942
年 - 2006年 、童話 の動物 を題材 に物語 性 のある作品 が多 い。