ラジオシティ (Radiosity) とは、3次元 じげん コンピュータグラフィックス のレンダリングにおける、グローバル・イルミネーション の計算 けいさん 法 ほう のひとつである。物体 ぶったい に反射 はんしゃ した間接 かんせつ 光 こう の影響 えいきょう を計算 けいさん し表現 ひょうげん する方法 ほうほう のことである[1] 。
ラジオシティ法 ほう を用 もち いた大域 たいいき 照明 しょうめい の結果 けっか とラジオシティ法 ほう を用 もち いない大域 たいいき 照明 しょうめい の結果 けっか 。ラジオシティ法 ほう を用 もち いない場合 ばあい には光源 こうげん により直接 ちょくせつ 照 て らされる平面 へいめん を除 のぞ いては全体 ぜんたい 的 てき に暗 くら く細部 さいぶ を見 み ることはできない。またラジオシティ法 ほう による結果 けっか では色 いろ のついた左右 さゆう の壁 かべ により反射 はんしゃ された光 ひかり が後 うし ろの白色 はくしょく の壁 かべ にあたって色 いろ づいている。
RRVによるレンダリングの例 れい (RRVとはOpenGLによるラジオシティ法 ほう の単純 たんじゅん な実装 じっそう である)。79回 かい の繰 く り返 かえ し計算 けいさん を行 おこな っている。
一般 いっぱん に多用 たよう されているレイトレーシング のように、仮想 かそう のカメラから、そこに届 とど く光線 こうせん を求 もと めていくという方向 ほうこう ではなく、光源 こうげん の側 がわ から、光 ひかり として発 はっ せられたエネルギーの行方 ゆくえ を熱 ねつ 力学 りきがく 的 てき に処理 しょり することで(エネルギー保存 ほぞん 則 そく )、複数 ふくすう の物体 ぶったい が光 ひかり を乱反射 らんはんしゃ させて、お互 たが いを照 て らす効果 こうか などが計算 けいさん できる。たとえば壁紙 かべがみ が赤 あか いために部屋 へや にあるものが赤 あか く見 み えるといった効果 こうか がより現実 げんじつ 的 てき に再現 さいげん できる。
この方法 ほうほう を用 もち いると柔 やわ らかな陰影 いんえい が表現 ひょうげん でき、特 とく に室内 しつない などの風景 ふうけい で画像 がぞう の写実 しゃじつ 性 せい が高 たか くなる。現在 げんざい では、リアルタイム描画 びょうが 以外 いがい の3次元 じげん グラフィックスではラジオシティを何 なん らかの形 かたち で援用 えんよう することが多 おお い。ラジオシティ法 ほう はレイトレーシング法 ほう などのモンテカルロ法 ほう に基 もと づいた手法 しゅほう と異 こと なり、あらゆる種類 しゅるい の照明 しょうめい 現象 げんしょう を再現 さいげん することはできない。典型 てんけい 的 てき なラジオシティ法 ほう は場面 ばめん が拡散 かくさん 面 めん によってのみ構成 こうせい されていることを前提 ぜんてい としているため、光源 こうげん から放射 ほうしゃ された光 ひかり が何 なん 度 ど か拡散 かくさん 面 めん によって反射 はんしゃ されたあとで視点 してん にいたるという現象 げんしょう しか再現 さいげん できない。この現象 げんしょう を一般 いっぱん 的 てき な光 ひかり 経路 けいろ の表記 ひょうき 法 ほう であるHeckbertの表記 ひょうき 法 ほう により表 あらわ すと「LD*E」となる。ラジオシティ法 ほう の利点 りてん として、一度 いちど 計算 けいさん を行 おこな っておけば、オブジェクトや照明 しょうめい を変更 へんこう しない限 かぎ り、カメラ設定 せってい を変更 へんこう しても再 さい レンダリングを容易 ようい に行 おこな えるということが挙 あ げられ、近年 きんねん はリアルタイムレンダラーでも使用 しよう 例 れい がある。
ラジオシティの基本 きほん 的 てき な手法 しゅほう は熱 ねつ 移動 いどう の研究 けんきゅう 分野 ぶんや で1950年 ねん に初 はじ めて提案 ていあん されたものである。後 ご の1984年 ねん にコーネル大学 だいがく の研究 けんきゅう チームがコンピュータグラフィックスによるレンダリングにこれを応用 おうよう した。そのためラジオシティ法 ほう のような大域 たいいき 照明 しょうめい を行 おこな うための有名 ゆうめい なサンプル(ユタ・ティーポット など)にコーネルボックス がある。また日本 にっぽん のコンピュータグラフィックス研究 けんきゅう の第一人者 だいいちにんしゃ としても知 し られる西田 にしだ 友 とも 是 これ も、独立 どくりつ に全 まった く同 どう 時期 じき に先駆 せんく 的 てき な研究 けんきゅう をしていたことでも有名 ゆうめい である[2] 。
直接 ちょくせつ 照明 しょうめい 法 ほう とラジオシティ法 ほう との結果 けっか の比較 ひかく
ラジオシティ法 ほう では、実 じつ 世界 せかい の現象 げんしょう に近 ちか い光 ひかり の挙動 きょどう を模 も しているため最終 さいしゅう 的 てき なレンダリング結果 けっか がより現実 げんじつ に近 ちか いものとなる。単純 たんじゅん な部屋 へや のシーンを想定 そうてい してみる。
左 ひだり の画像 がぞう は直接 ちょくせつ 照明 しょうめい レンダリングによって得 え られたものである。この場面 ばめん では3種類 しゅるい の照明 しょうめい 現象 げんしょう を分 わ けて扱 あつか うことで、より現実 げんじつ に近 ちか い結果 けっか を得 え ている。これらの照明 しょうめい 現象 げんしょう はデザイナーなどにより調整 ちょうせい されなくてはならない。3種類 しゅるい の照明 しょうめい 現象 げんしょう とはスポット照明 しょうめい (窓 まど から差 さ し込 こ み柱 ばしら の影 かげ を作 つく る)、環境 かんきょう 照明 しょうめい (光 ひかり が直接 ちょくせつ 当 あ たっていないような暗 くら い場所 ばしょ を再現 さいげん )、無 む 指向 しこう 性 せい 照明 しょうめい (環境 かんきょう 光 こう の一様 いちよう さを低減 ていげん するような成分 せいぶん )である。
右 みぎ の画像 がぞう はラジオシティ法 ほう によりレンダリングされた場面 ばめん である。この場面 ばめん で用 もち いた光源 こうげん は窓 まど の外 そと から差 さ し込 こ む光 ひかり のみであるが、左 ひだり の画像 がぞう との違 ちが いが見 み て取 と れる。部屋 へや 全体 ぜんたい が柔 やわ らかく光 ひか っており、床 ゆか の影 かげ もより現実 げんじつ 的 てき で、間接 かんせつ 照明 しょうめい による効果 こうか がよく再現 さいげん されている。さらに左 ひだり 奥 おく の壁 かべ は床 ゆか に反射 はんしゃ した光 ひかり によってやや赤色 あかいろ になっており、より穏 おだ やかな印象 いんしょう を与 あた えている。これらの現象 げんしょう は全 すべ てラジオシティ法 ほう の計算 けいさん 結果 けっか によるものでありデザイナーなどによる照明 しょうめい 効果 こうか の調整 ちょうせい などは一切 いっさい 行 おこな う必要 ひつよう がない。
場面 ばめん を構成 こうせい する物体 ぶったい の表面 ひょうめん は多 おお くの小 ちい さな平面 へいめん に分割 ぶんかつ されている。角 かく 関係 かんけい (view factor ) は各々 おのおの の小 しょう 平面 へいめん に対 たい して計算 けいさん されなくてはならない。角 かく 関係 かんけい とは面 めん と面 めん とが互 たが いに見 み えているかどうかを表 あらわ す係数 けいすう である。角 かく 関係 かんけい は互 たが いの面 めん が離 はな れている場合 ばあい やお互 たが いに傾 かたむ いて存在 そんざい している場合 ばあい には小 ちい さな値 ね の係数 けいすう によってあらわされる。また2つの小 しょう 平面 へいめん の間 あいだ に他 た の平面 へいめん が存在 そんざい する場合 ばあい には、その平面 へいめん によって2平面 へいめん 間 あいだ が完全 かんぜん に遮 さえぎ られているか部分 ぶぶん 的 てき に遮 さえぎ られているかで、係数 けいすう を0にしたり小 ちい さくしたりする。
これらの角 かく 関係 かんけい は線形 せんけい のレンダリング方程式 ほうていしき (英語 えいご 版 ばん ) における係数 けいすう として扱 あつか われる。この方程式 ほうていしき を解 と くことがラジオシティ法 ほう の主 おも な処理 しょり であり、これにより小 しょう 平面 へいめん 間 あいだ の拡散 かくさん や相互 そうご 反射 はんしゃ 、柔 やわ らかな陰影 いんえい などを扱 あつか うことができる。
漸進 ぜんしん 的 てき なラジオシティ法 ほう ではこの方程式 ほうていしき を繰 く り返 かえ し計算 けいさん によって解 と き、その計算 けいさん の過程 かてい でそれぞれの小 しょう 平面 へいめん における放射 ほうしゃ 発散 はっさん 度 ど (ラジオシティ)の中 なか 間 あいだ 値 ち を得 え る。これらの中 なか 間 あいだ 値 ち は光子 こうし の反射 はんしゃ 回数 かいすう と関係 かんけい がある。つまり1回 かい の繰 く り返 かえ し計算 けいさん で得 え られる中 なか 間 あいだ 値 ち は光子 こうし が光源 こうげん を出発 しゅっぱつ してから1度 ど だけ反射 はんしゃ をした場合 ばあい の放射 ほうしゃ 発散 はっさん 度 ど を表 あらわ しており、繰 く り返 かえ しが2回 かい 、3回 かい と増 ふ えるごとに得 え られる中 なか 間 あいだ 値 ち が表 あらわ すものが2回 かい 、3回 かい 反射 はんしゃ した光子 こうし による効果 こうか へと変 か わっていく。さらにある繰 く り返 かえ し回数 かいすう で十分 じゅうぶん なレンダリング結果 けっか が得 え られると判断 はんだん される場合 ばあい には計算 けいさん の収束 しゅうそく を待 ま つことなく計算 けいさん を終了 しゅうりょう することもできる。
繰 く り返 かえ し計算 けいさん ごとに拡散 かくさん 面 めん により反射 はんしゃ される回数 かいすう が多 おお い光 ひかり の効果 こうか が反映 はんえい されていく。複 ふく 数 すう 回 かい 反射 はんしゃ した光 ひかり の効果 こうか を再現 さいげん するとより写実 しゃじつ 的 てき なレンダリング結果 けっか を得 え ることができている。
ラジオシティ法 ほう におけるレンダリング方程式 ほうていしき を解 と く手法 しゅほう として、この他 ほか にシューティングラジオシティという手法 しゅほう がある。この手法 しゅほう は繰 く り返 かえ し計算 けいさん を行 おこな うごとにエラーが最 もっと も多 おお い小 しょう 平面 へいめん から光子 こうし を放 はな つことによりレンダリング方程式 ほうていしき を解 と く方法 ほうほう である。1回 かい の繰 く り返 かえ し計算 けいさん では光 ひかり が直接 ちょくせつ あたるような小 しょう 平面 へいめん しか照 て らされないが2回 かい 目 め 以降 いこう の繰 く り返 かえ し計算 けいさん では場面 ばめん のあらゆる場所 ばしょ から光 ひかり が反射 はんしゃ してくるため、より多 おお くの小 しょう 平面 へいめん が照 て らされることとなる。この繰 く り返 かえ し計算 けいさん を行 おこな うことで、照明 しょうめい 状態 じょうたい が一定 いってい の安定 あんてい 状態 じょうたい に至 いた る。
幾何 きか 学的 がくてき 角 かく 関係 かんけい F ij (投影 とうえい 立体 りったい 角 かく とも)。F ij は投影 とうえい 面 めん A j を単位 たんい 半球 はんきゅう 上 じょう に投影 とうえい した面 めん によって与 あた えられ、面 めん A i 上 うえ にある注目 ちゅうもく 点 てん を中心 ちゅうしん とした単位 たんい 円 えん によって表 あらわ される。
ラジオシティ法 ほう の考 かんが え方 かた の根底 こんてい には熱 ねつ 輻射 ふくしゃ の考 かんが え方 かた があり、場面 ばめん を構成 こうせい する小 しょう 平面 へいめん 間 あいだ での光 ひかり エネルギーの遷移 せんい を計算 けいさん している。計算 けいさん を単純 たんじゅん にするため、ラジオシティ法 ほう では全 すべ ての光 ひかり の拡散 かくさん がランバート反射 はんしゃ に基 もと づくと考 かんが える。すなわちある光 ひかり が拡散 かくさん 面 めん に入射 にゅうしゃ した場合 ばあい 、拡散 かくさん 後 ご の光 ひかり は全 すべ ての方向 ほうこう に均等 きんとう な明 あか るさで反射 はんしゃ されると考 かんが える。また小 しょう 平面 へいめん は四角形 しかっけい あるいは三角形 さんかっけい のポリゴンであるとし、その平面 へいめん 群 ぐん に対 たい して多項式 たこうしき が定義 ていぎ される。
このようにして場面 ばめん を小 しょう 平面 へいめん 群 ぐん に分解 ぶんかい すると、光 ひかり エネルギーの遷移 せんい は反射 はんしゃ 面 めん の反射 はんしゃ 性質 せいしつ および2つの小 しょう 平面 へいめん 間 あいだ の角 かく 関係 かんけい によって計算 けいさん することができる。この無 む 次元 じげん 量 りょう は2つの面 めん の向 む きから計算 けいさん され、ある平面 へいめん から放出 ほうしゅつ された光 ひかり が他 た の平面 へいめん にどの程度 ていど 到達 とうたつ するかを表 あらわ すことができる。より詳 くわ しく言 い えば、放射 ほうしゃ 発散 はっさん 度 ど B は小 しょう 平面 へいめん 上 じょう の単位 たんい 平面 へいめん から単位 たんい 時間 じかん に放出 ほうしゅつ される光 ひかり エネルギーを表 あらわ しており、これは光 ひかり の放射 ほうしゃ エネルギーと反射 はんしゃ エネルギーによって次 つぎ のように表現 ひょうげん される。
B
(
x
)
d
A
=
E
(
x
)
d
A
+
ρ ろー
(
x
)
d
A
∫
S
B
(
x
′
)
1
π ぱい
r
2
cos
θ しーた
x
cos
θ しーた
x
′
⋅
V
i
s
(
x
,
x
′
)
d
A
′
{\displaystyle B(x)\,\mathrm {d} A=E(x)\,\mathrm {d} A+\rho (x)\,\mathrm {d} A\int _{S}B(x'){\frac {1}{\pi r^{2}}}\cos \theta _{x}\cos \theta _{x'}\cdot \mathrm {Vis} (x,x')\,\mathrm {d} A'}
B (x )dA i - x の近傍 きんぼう である小 しょう 領域 りょういき dA i から放出 ほうしゅつ される光 ひかり エネルギー
E (x )dA - 放射 ほうしゃ エネルギー。
ρ ろー (x ) - 点 てん x における反射 はんしゃ 度 ど であり、単位 たんい 平面 へいめん あたりの反射 はんしゃ 光 こう のエネルギーと入射 にゅうしゃ 光 こう のエネルギーの積 せき であらわされる。
S - x を平面 へいめん 全体 ぜんたい について積分 せきぶん したもの。
r - 点 てん x と点 てん x' との距離 きょり 。
θ しーた x , θ しーた x' - 点 てん x と点 てん x' とを結 むす んだ直線 ちょくせん と各々 おのおの の点 てん が存在 そんざい する平面 へいめん とが作 つく る角 かく 。
Vis(x , x' ) - 点 てん x と点 てん x' が互 たが いに見 み えている場合 ばあい には1を、見 み えていない場合 ばあい には0を取 と る関数 かんすう (可視 かし 関数 かんすう とも言 い う)。
平面 へいめん が有限 ゆうげん の小 しょう 平面 へいめん による集合 しゅうごう として与 あた えられる場合 ばあい には、連続 れんぞく 量 りょう としてあらわされていた方程式 ほうていしき が差分 さぶん 式 しき の形 かたち で書 か き直 なお せる。すなわち各々 おのおの の小 しょう 平面 へいめん が持 も つ放射 ほうしゃ 発散 はっさん 度 ど をB i 、反射 はんしゃ 度 ど をρ ろー i とあらわして次 つぎ のように書 か く。
B
i
=
E
i
+
ρ ろー
i
∑
j
=
1
n
F
i
j
B
j
{\displaystyle B_{i}=E_{i}+\rho _{i}\sum _{j=1}^{n}F_{ij}B_{j}}
F ij は面 めん i と面 めん j との間 あいだ の角 かく 関係 かんけい を表 あらわ す。この方程式 ほうていしき は各々 おのおの の小 しょう 平面 へいめん に対 たい し計算 けいさん 可能 かのう である。この方程式 ほうていしき はモノクロ画像 がぞう のためのものであるので、カラー画像 がぞう を扱 あつか う場合 ばあい には色 いろ を構成 こうせい するチャネルそれぞれについてこの方程式 ほうていしき を解 と く必要 ひつよう がある。
^ 『超 ちょう 図解 ずかい インテリア用語 ようご 辞典 じてん 』株式会社 かぶしきがいしゃ エクスナレッジ、2024年 ねん 、343頁 ぺーじ 。
^ M. Cohen, J. Wallaceの "Radiosity and Realistic Image Synthesis" §1.2.3に、In 1984, researchers at Fukuyama and Hiroshima Universities in Japan and at the Program of Computer Graphics at Cornell University in the United States began to apply radiosity methods from the field of radiative heat transfer to image synthesis. とある。「福山大 ふくやまだい の研究 けんきゅう 者 しゃ 」とは西田 にしだ 友 とも 是 これ らを指 さ している。