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ラジオシティ - Wikipedia

ラジオシティ (Radiosity) とは、3次元じげんコンピュータグラフィックスのレンダリングにおける、グローバル・イルミネーション計算けいさんほうのひとつである。物体ぶったい反射はんしゃした間接かんせつこう影響えいきょう計算けいさん表現ひょうげんする方法ほうほうのことである[1]

ラジオシティほうもちいた大域たいいき照明しょうめい結果けっかとラジオシティほうもちいない大域たいいき照明しょうめい結果けっか。ラジオシティほうもちいない場合ばあいには光源こうげんにより直接ちょくせつらされる平面へいめんのぞいては全体ぜんたいてきくら細部さいぶることはできない。またラジオシティほうによる結果けっかではいろのついた左右さゆうかべにより反射はんしゃされたひかりうしろの白色はくしょくかべにあたっていろづいている。
RRVによるレンダリングのれい(RRVとはOpenGLによるラジオシティほう単純たんじゅん実装じっそうである)。79かいかえ計算けいさんおこなっている。

概説がいせつ

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一般いっぱん多用たようされているレイトレーシングのように、仮想かそうのカメラから、そこにとど光線こうせんもとめていくという方向ほうこうではなく、光源こうげんがわから、ひかりとしてはっせられたエネルギーの行方ゆくえねつ力学りきがくてき処理しょりすることで(エネルギー保存ほぞんそく)、複数ふくすう物体ぶったいひかり乱反射らんはんしゃさせて、おたがいをらす効果こうかなどが計算けいさんできる。たとえば壁紙かべがみあかいために部屋へやにあるものがあかえるといった効果こうかがより現実げんじつてき再現さいげんできる。

この方法ほうほうもちいるとやわらかな陰影いんえい表現ひょうげんでき、とく室内しつないなどの風景ふうけい画像がぞう写実しゃじつせいたかくなる。現在げんざいでは、リアルタイム描画びょうが以外いがいの3次元じげんグラフィックスではラジオシティをなんらかのかたち援用えんようすることがおおい。ラジオシティほうはレイトレーシングほうなどのモンテカルロほうもとづいた手法しゅほうことなり、あらゆる種類しゅるい照明しょうめい現象げんしょう再現さいげんすることはできない。典型てんけいてきなラジオシティほう場面ばめん拡散かくさんめんによってのみ構成こうせいされていることを前提ぜんていとしているため、光源こうげんから放射ほうしゃされたひかりなん拡散かくさんめんによって反射はんしゃされたあとで視点してんにいたるという現象げんしょうしか再現さいげんできない。この現象げんしょう一般いっぱんてきひかり経路けいろ表記ひょうきほうであるHeckbertの表記ひょうきほうによりあらわすと「LD*E」となる。ラジオシティほう利点りてんとして、一度いちど計算けいさんおこなっておけば、オブジェクトや照明しょうめい変更へんこうしないかぎり、カメラ設定せってい変更へんこうしてもさいレンダリングを容易よういおこなえるということがげられ、近年きんねんはリアルタイムレンダラーでも使用しようれいがある。

ラジオシティの基本きほんてき手法しゅほうねつ移動いどう研究けんきゅう分野ぶんやで1950ねんはじめて提案ていあんされたものである。の1984ねんにコーネル大学だいがく研究けんきゅうチームがコンピュータグラフィックスによるレンダリングにこれを応用おうようした。そのためラジオシティほうのような大域たいいき照明しょうめいおこなうための有名ゆうめいなサンプル(ユタ・ティーポットなど)にコーネルボックスがある。また日本にっぽんのコンピュータグラフィックス研究けんきゅう第一人者だいいちにんしゃとしてもられる西田にしだともこれも、独立どくりつまったどう時期じき先駆せんくてき研究けんきゅうをしていたことでも有名ゆうめいである[2]

視覚しかくてき特徴とくちょう

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直接ちょくせつ照明しょうめいほうとラジオシティほうとの結果けっか比較ひかく

ラジオシティほうでは、じつ世界せかい現象げんしょうちかひかり挙動きょどうしているため最終さいしゅうてきなレンダリング結果けっかがより現実げんじつちかいものとなる。単純たんじゅん部屋へやのシーンを想定そうていしてみる。

ひだり画像がぞう直接ちょくせつ照明しょうめいレンダリングによってられたものである。この場面ばめんでは3種類しゅるい照明しょうめい現象げんしょうけてあつかうことで、より現実げんじつちか結果けっかている。これらの照明しょうめい現象げんしょうはデザイナーなどにより調整ちょうせいされなくてはならない。3種類しゅるい照明しょうめい現象げんしょうとはスポット照明しょうめいまどからばしらかげつくる)、環境かんきょう照明しょうめいひかり直接ちょくせつたっていないようなくら場所ばしょ再現さいげん)、指向しこうせい照明しょうめい環境かんきょうこう一様いちようさを低減ていげんするような成分せいぶん)である。

みぎ画像がぞうはラジオシティほうによりレンダリングされた場面ばめんである。この場面ばめんもちいた光源こうげんまどそとからひかりのみであるが、ひだり画像がぞうとのちがいがれる。部屋へや全体ぜんたいやわらかくひかっており、ゆかかげもより現実げんじつてきで、間接かんせつ照明しょうめいによる効果こうかがよく再現さいげんされている。さらにひだりおくかべゆか反射はんしゃしたひかりによってやや赤色あかいろになっており、よりおだやかな印象いんしょうあたえている。これらの現象げんしょうすべてラジオシティほう計算けいさん結果けっかによるものでありデザイナーなどによる照明しょうめい効果こうか調整ちょうせいなどは一切いっさいおこな必要ひつようがない。

アルゴリズムの概要がいよう

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場面ばめん構成こうせいする物体ぶったい表面ひょうめんおおくのちいさな平面へいめん分割ぶんかつされている。かく関係かんけい (view factor) は各々おのおのしょう平面へいめんたいして計算けいさんされなくてはならない。かく関係かんけいとはめんめんとがたがいにえているかどうかをあらわ係数けいすうである。かく関係かんけいたがいのめんはなれている場合ばあいやおたがいにかたむいて存在そんざいしている場合ばあいにはちいさな係数けいすうによってあらわされる。また2つのしょう平面へいめんあいだ平面へいめん存在そんざいする場合ばあいには、その平面へいめんによって2平面へいめんあいだ完全かんぜんさえぎられているか部分ぶぶんてきさえぎられているかで、係数けいすうを0にしたりちいさくしたりする。

これらのかく関係かんけい線形せんけいレンダリング方程式ほうていしき英語えいごばんにおける係数けいすうとしてあつかわれる。この方程式ほうていしきくことがラジオシティほうおも処理しょりであり、これによりしょう平面へいめんあいだ拡散かくさん相互そうご反射はんしゃやわらかな陰影いんえいなどをあつかうことができる。

漸進ぜんしんてきなラジオシティほうではこの方程式ほうていしきかえ計算けいさんによってき、その計算けいさん過程かていでそれぞれのしょう平面へいめんにおける放射ほうしゃ発散はっさん(ラジオシティ)のなかあいだる。これらのなかあいだ光子こうし反射はんしゃ回数かいすう関係かんけいがある。つまり1かいかえ計算けいさんられるなかあいだ光子こうし光源こうげん出発しゅっぱつしてから1だけ反射はんしゃをした場合ばあい放射ほうしゃ発散はっさんあらわしており、かえしが2かい、3かいえるごとにられるなかあいだあらわすものが2かい、3かい反射はんしゃした光子こうしによる効果こうかへとわっていく。さらにあるかえ回数かいすう十分じゅうぶんなレンダリング結果けっかられると判断はんだんされる場合ばあいには計算けいさん収束しゅうそくつことなく計算けいさん終了しゅうりょうすることもできる。

 
かえ計算けいさんごとに拡散かくさんめんにより反射はんしゃされる回数かいすうおおひかり効果こうか反映はんえいされていく。ふくすうかい反射はんしゃしたひかり効果こうか再現さいげんするとより写実しゃじつてきなレンダリング結果けっかることができている。

ラジオシティほうにおけるレンダリング方程式ほうていしき手法しゅほうとして、このほかにシューティングラジオシティという手法しゅほうがある。この手法しゅほうかえ計算けいさんおこなうごとにエラーがもっとおおしょう平面へいめんから光子こうしはなつことによりレンダリング方程式ほうていしき方法ほうほうである。1かいかえ計算けいさんではひかり直接ちょくせつあたるようなしょう平面へいめんしからされないが2かい以降いこうかえ計算けいさんでは場面ばめんのあらゆる場所ばしょからひかり反射はんしゃしてくるため、よりおおくのしょう平面へいめんらされることとなる。このかえ計算けいさんおこなうことで、照明しょうめい状態じょうたい一定いってい安定あんてい状態じょうたいいたる。

数学すうがくてき説明せつめい

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幾何きか学的がくてきかく関係かんけいFij投影とうえい立体りったいかくとも)。Fij投影とうえいめんAj単位たんい半球はんきゅうじょう投影とうえいしためんによってあたえられ、めんAiうえにある注目ちゅうもくてん中心ちゅうしんとした単位たんいえんによってあらわされる。

ラジオシティほうかんがかた根底こんていにはねつ輻射ふくしゃかんがかたがあり、場面ばめん構成こうせいするしょう平面へいめんあいだでのひかりエネルギーの遷移せんい計算けいさんしている。計算けいさん単純たんじゅんにするため、ラジオシティほうではすべてのひかり拡散かくさんがランバート反射はんしゃもとづくとかんがえる。すなわちあるひかり拡散かくさんめん入射にゅうしゃした場合ばあい拡散かくさんひかりすべての方向ほうこう均等きんとうあかるさで反射はんしゃされるとかんがえる。またしょう平面へいめん四角形しかっけいあるいは三角形さんかっけいのポリゴンであるとし、その平面へいめんぐんたいして多項式たこうしき定義ていぎされる。

このようにして場面ばめんしょう平面へいめんぐん分解ぶんかいすると、ひかりエネルギーの遷移せんい反射はんしゃめん反射はんしゃ性質せいしつおよび2つのしょう平面へいめんあいだかく関係かんけいによって計算けいさんすることができる。この次元じげんりょうは2つのめんきから計算けいさんされ、ある平面へいめんから放出ほうしゅつされたひかり平面へいめんにどの程度ていど到達とうたつするかをあらわすことができる。よりくわしくえば、放射ほうしゃ発散はっさんBしょう平面へいめんじょう単位たんい平面へいめんから単位たんい時間じかん放出ほうしゅつされるひかりエネルギーをあらわしており、これはひかり放射ほうしゃエネルギーと反射はんしゃエネルギーによってつぎのように表現ひょうげんされる。

 
  • B(x)dAi - x近傍きんぼうであるしょう領域りょういきdAiから放出ほうしゅつされるひかりエネルギー
  • E(x)dA - 放射ほうしゃエネルギー。
  • ρろー(x) - てんxにおける反射はんしゃであり、単位たんい平面へいめんあたりの反射はんしゃこうのエネルギーと入射にゅうしゃこうのエネルギーのせきであらわされる。
  • S - x平面へいめん全体ぜんたいについて積分せきぶんしたもの。
  • r - てんxてんx'との距離きょり
  • θしーたx, θしーたx' - てんxてんx'とをむすんだ直線ちょくせん各々おのおのてん存在そんざいする平面へいめんとがつくかく
  • Vis(x, x') - てんxてんx'たがいにえている場合ばあいには1を、えていない場合ばあいには0を関数かんすう可視かし関数かんすうともう)。

平面へいめん有限ゆうげんしょう平面へいめんによる集合しゅうごうとしてあたえられる場合ばあいには、連続れんぞくりょうとしてあらわされていた方程式ほうていしき差分さぶんしきかたちなおせる。すなわち各々おのおのしょう平面へいめん放射ほうしゃ発散はっさんBi反射はんしゃρろーiとあらわしてつぎのようにく。

 

Fijめんiめんjとのあいだかく関係かんけいあらわす。この方程式ほうていしき各々おのおのしょう平面へいめんたい計算けいさん可能かのうである。この方程式ほうていしきはモノクロ画像がぞうのためのものであるので、カラー画像がぞうあつか場合ばあいにはいろ構成こうせいするチャネルそれぞれについてこの方程式ほうていしき必要ひつようがある。

関連かんれん項目こうもく

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参照さんしょう

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  1. ^ ちょう図解ずかいインテリア用語ようご辞典じてん株式会社かぶしきがいしゃエクスナレッジ、2024ねん、343ぺーじ 
  2. ^ M. Cohen, J. Wallaceの "Radiosity and Realistic Image Synthesis" §1.2.3に、In 1984, researchers at Fukuyama and Hiroshima Universities in Japan and at the Program of Computer Graphics at Cornell University in the United States began to apply radiosity methods from the field of radiative heat transfer to image synthesis. とある。「福山大ふくやまだい研究けんきゅうしゃ」とは西田にしだともこれらをしている。