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ラーオ語 - Wikipedia

ラーオ

タイ・カダイ語族ごぞくぞくする言語げんご

ラーオ(ラーオご、ພາສາລາວ ラオラオスとも)は、タイ・カダイ語族ごぞくぞくする言語げんごラオス公用こうようである。

ラーオ
ພາສາລາວ (phaasaa laao)
発音はつおん IPA: [pʰáːsǎː láːw]
はなされるくに ラオスの旗 ラオス
タイ王国の旗 タイ
カンボジアの旗 カンボジア
 ベトナム
地域ちいき 東南とうなんアジア
話者わしゃすう やく330まんにん[1]
言語げんご系統けいとう
表記ひょうき体系たいけい ラーオ文字もじ
公的こうてき地位ちい
公用こうよう ラオスの旗 ラオス
言語げんごコード
ISO 639-1 lo
ISO 639-2 lao
ISO 639-3 lao
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概要がいよう

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ラーオは、純粋じゅんすい言語げんご学的がくてきにはタイどういち言語げんご地域ちいき変種へんしゅ関係かんけいにある。また、ラオスじんおおくはテレビなどのメディアをつうじてタイ習得しゅうとくし、ラーオ一部いちぶにタイぜて使用しようしている。そのため、ラーオ話者わしゃとタイ話者わしゃはある程度ていど意思いし疎通そつう可能かのうである。しかし、タイじんなかでもとく中部ちゅうぶから南部なんぶ地方ちほうのタイじんにとって、ラーオ即座そくざ理解りかいするのは困難こんなんである。ラオスは、独立どくりつ国家こっかであり、ラーオ(タイぐんからみるラーオ変種へんしゅ)はタイ(タイ変種へんしゅ)と政治せいじてきにはどうレベルの「国家こっか公用こうよう地位ちい」にある。そのため、ラーオはタイとの差異さい一層いっそうおおきくしている[3]

ラーオ表記ひょうきには、タイ文字もじ起源きげん共有きょうゆうするが字形じけいことなるラーオ文字もじもちいられる。ラーオ表記ひょうき表音ひょうおんてき表記ひょうきほうもちい、語源ごげんてき表記ひょうきもちいるタイとの差異さいをできるだけ際立きわだたせるようになっている。これは元来がんらいラーオ言語げんご変種へんしゅ表記ひょうきが、タイ言語げんご変種へんしゅ表記ひょうきよりも表音ひょうおんてきで、字母じぼすうすくなかったことに由来ゆらいする[4]

言語げんご学者がくしゃのターオ・ボンが現代げんだいのラーオ正書法せいしょほう基礎きそきずいた。それ以前いぜんは、フランス植民しょくみん政府せいふ(1893–1953)時代じだい言語げんご学者がくしゃは、タイ同様どうよう語源ごげんてき表記ひょうきをしていないことをもって「サンスクリットパーリ語彙ごい保全ほぜんしていない」と評価ひょうかし、「劣等れっとう言語げんご」であるあかしとしていた[5]。ターオ・ボンは、「タイ同様どうよう語源ごげんてき表記ひょうきおこなうため、字母じぼ追加ついかおこなうべき」とする意見いけんを「盲目的もうもくてきにシャム(タイ王国おうこく)の正書法せいしょほう事大じだいする必要ひつようなどない」、「純粋じゅんすいおとしたがった表記ひょうきこそ最適さいてき」と批判ひはんした。さらに、「字母じぼすうすくない表音ひょうおんてき表記ひょうきっていることこそラーオ表記ひょうきがタイのそれにたいして優越ゆうえつしているあかし」となした[6]

タイとラーオ純粋じゅんすい言語げんごがくまとにはどういち言語げんご地域ちいき変種へんしゅである。社会しゃかい言語げんごがくてき政治せいじてきには、両者りょうしゃとも独立どくりつした正書法せいしょほうをもち、その正書法せいしょほう強制きょうせいできるちからをもつ領域りょういき国家こっかによりささえられているために、ことなる言語げんごとしてあつかわれる。とくに、ラオスではタイからの政治せいじてき文化ぶんかてき影響えいきょうりょく遮断しゃだんし、国家こっか自立じりつまもるという意図いとから、政治せいじてきなプロパガンダにより、「ラーオはタイからは分離ぶんりしている」として、積極せっきょくてき分離ぶんり歴史れきしつくげてきた[7]

「ラーオ」とはラーオラーオぞくという意味いみである。日本にっぽんでは、国名こくめいから、ラオス、またはラオがよく使つかわれる。

ラオスでは、現在げんざい20 - 30さいだいわか世代せだい[いつ?]でも就学しゅうがくのためにラオスきができないひとたちもおおい。社会しゃかい急激きゅうげき変化へんかともない、日常にちじょう生活せいかつ様々さまざま場面ばめんでラオス教育きょういく必要ひつようとするようになっている[8]

方言ほうげん

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ラーオは、おも以下いかのような方言ほうげんつ。

このうちとく西にしラーオタイ国内こくないイーサーン東北とうほくタイ)ではなされており、ラオス国内こくないはなされるラーオ酷似こくじしている。ラオス国内こくないではヴィエンチャン方言ほうげん標準ひょうじゅんであるとなされているが、ラオス国内こくない義務ぎむ教育きょういく完全かんぜん一律いちりつとはえず、地方ちほうではこのヴィエンチャン方言ほうげんはなすことができない場合ばあいもある。

また、ラーオ比較的ひかくてき言語げんごきたタイなどがある。

ラーオ標準ひょうじゅんタイ

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先述せんじゅつしたように、ラーオ標準ひょうじゅんタイ以下いかタイとしたところは標準ひょうじゅんタイす)は類似るいじしているが、生活せいかつそくした語彙ごいでのちがいがられる。たとえば、「たがやす」という表現ひょうげんをラーオでは「ヘット (het)(おこなう)・ナー()」と表現ひょうげんするのにたいし、タイでは「タム (tʰam)(つくる)・ナー」と表現ひょうげんする。このような場合ばあいでも、ラオスではとくにヴィエンチャン付近ふきん中心ちゅうしんにタイのテレビをることができ、またタイでもイーサーンによる演歌えんかモーラム全国ぜんこく各地かくちながれているため、このような単語たんごちがいは実際じっさい会話かいわでは些細ささいちがいとしてにされずにむことがおおい。

また、ある語彙ごいまったべつのものをすという現象げんしょうもたまにられる。たとえば「パーアナーマイ」という言葉ことばはそのままやくせば「衛生えいせいぬの」となり、ラオスでは「トイレット・ペーパー」を意味いみするが、タイでは「生理せいりようおむつ」を意味いみする。これは、日本語にほんごにおける「手紙てがみ」の言葉ことば中国ちゅうごくでは「トイレット・ペーパー」を意味いみするのとよくている。ちなみにイーサーンにおいては、この「パーアナーマイ」という言葉ことばはタイ影響えいきょうけて「生理せいりようナプキン」の意味いみほう一般いっぱんてきである。

さらに、外来がいらい受容じゅようにもちがいがられる。タイでは義務ぎむ教育きょういく英語えいご導入どうにゅうしていたが、ラオスがフランスりょうインドシナふくまれていた関係かんけいからラーオ外来がいらいには、タイよりおおくのフランス語ふらんすご単語たんごふくまれる。たとえば「アイスクリーム」は、タイでは英語えいご外来がいらいもちいて「ไอศกรีม アイサクリーㇺ /ʔaj˧.sa˨˩.kriːm˧/口語こうごではアイティム /ʔaj˧.tim˧/)」とわれるが、ラーオではフランス語ふらんすごの「クレーム」を借用しゃくようして「ກະແລມ カレーㇺ [ka(ʔ˧˥).lɛːm˧˥]」といういいかたがされる。

ぎゃくに、ラーオとタイサンスクリットパーリからの借用しゃくよう古典こてんてき単語たんごは、双方そうほうていることがおおい。

ラーオとタイ対立たいりつ

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先述せんじゅつしたように都市としなどではタイのテレビをることができるため、とりわけメコンがわ流域りゅういきラオスじんはタイ理解りかいできる場合ばあいおおい。しかしながら、ラオスでタイはなすことは一般いっぱんてき歓迎かんげいされていない。一般いっぱん家庭かていでも、子供こどもがタイはなすとしかられることがおおいという。これはラオスの歴史れきしなかで、ながあいだラオスがタイによって属国ぞっこくされてきたこと、ラオスが山岳さんがく地帯ちたいであり農業のうぎょう生産せいさんがタイにくらべてわるく、貧困ひんこんまね結果けっかてきしょうタイぞくバンコク付近ふきんんだタイ・ラーオけい民族みんぞくでタイ話者わしゃ)に差別さべつされてきたことが原因げんいんであると指摘してきされている。しかし、同時どうじ元々もともと近似きんじせい近年きんねん[いつ?]経済けいざいてき政治せいじてき関係かんけい増大ぞうだいもあいまって、ラーオ(ラオス変種へんしゅ)のなかには、タイ(タイ変種へんしゅ)の影響えいきょう一層いっそうつよまっており、くちではタイへの対抗心たいこうしんくちにしながら、タイ影響えいきょうされた語法ごほうもちいるラオスじんすくなくない[9]

ぎゃくにタイでもラーオは、「貧困ひんこん教養きょうよう田舎いなかしゃ」とうイメージが相当そうとうつよく、これをはなすとまともに対応たいおうしてもらえないこともおおい。ラオス国内こくないむラーオ母語ぼごとする集団しゅうだん日常にちじょうてき差別さべつされる可能かのうせいひくいが、とくにタイ国内こくないイーサーンじんはラーオ方言ほうげんイーサーン)を母語ぼごとしていて、イーサーンの土地とち農業のうぎょう生産せいさんせいひくくそのおおくが貧困ひんこんかかえていたが、貧困ひんこんかかえるがために教育きょういくけられず(標準ひょうじゅんタイはなせない)、バンコクに出稼でかせぎにてくることもおおくあったが、過去かこにはイーサーンはなしているだけで有形ゆうけい無形むけい差別さべつをされるという事例じれいもしばしられた。これは現在げんざいではタイ政府せいふ義務ぎむ教育きょういく無料むりょう実施じっしによって改善かいぜんされたが、現在げんざいでも[いつ?]この差別さべつ感情かんじょうぬぐられたとはいがたい。

また、外国がいこくじん両方りょうほう言語げんご習得しゅうとくするさいにはふたつの言語げんご類似るいじせい有益ゆうえきであるが、つぎのような注意ちゅうい必要ひつようである。さきにタイ習得しゅうとくした外国がいこくじんがラオス国内こくない、または在外ざいがいのラオスじんたいしてタイはなしかけると、ほとんどの場合ばあいはそのままつうじることがおおいため、タイとラーオ酷似こくじしているという錯覚さっかくおちいりがちである。これも当然とうぜん先述せんじゅつのような理由りゆう(ラオスじん既習きしゅうしている)からであって、この場合ばあいのタイはラオスじんにとって「方言ほうげん理解りかいする」というよりは「理解りかい可能かのう外国がいこく」のレベルである。その証拠しょうこに、理解りかいはできてもタイ返答へんとうできないというケースがしばしば発生はっせいする。ラオスじんが(公式こうしきには)タイじんとの関係かんけいをなるべくはなそうとする傾向けいこうがあるのにたいし、タイじんはラーオじん・ラーオたいして密接みっせつ関係かんけいどうみなもと主張しゅちょうする(だいタイ主義しゅぎ)ことがおおいが、実際じっさいにはタイじんのラーオ理解りかいは、ラーオじんのタイ理解りかいよりかなりひくい。

音韻おんいん

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りょう唇音しんおん くちびる歯音しおん 歯茎はぐきおん 歯茎はぐきかた口蓋こうがいおん かた口蓋こうがいおん 軟口蓋なんこうがいおん 声門せいもんおん
鼻音びおん [m]

[n]

[ɲ]

ニョ
[ŋ]

コ゚
破裂はれつおん 有声音ゆうせいおん [b]

[d]

[ʔ]

無声音むせいおん [p]

ボ~ポ
[t]

ド~ト
[k]

ゴ~コ
ゆう無声音むせいおん [pʰ]
ຜ, ພ
[tʰ]
ຖ,ທ
[kʰ]
ຂ, ຄ
摩擦音まさつおん 無声音むせいおん [f]
ຝ, ຟ
フォ
[s]
ສ, ຊ
[h]
ຫ, ຮ
やぶおと 無声音むせいおん [tɕ]

ゾ~ジョ
接近せっきんおん [ʋ]
*
ヴォ
[j]

[w]
*
ウォ
側面そくめんおん [l]
ຣ, ລ

*:方言ほうげんによってことなる。

ぜんした ちゅうした こうした
せま [i] [ɨ ~ ɯ] [u]
はんせま [e] [ə ~ ɤ] [o]
はんひろ [ɛ]   [ɔ]
ひろ   [a]  

声調せいちょう

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文法ぶんぽう

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日本にっぽんにおけるラーオ研究けんきゅう

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日本にっぽんでは、ラーオ研究けんきゅうはタイほどひろおこなわれていない。国内こくないでは、唯一ゆいいつ東京外国語大学とうきょうがいこくごだいがく専攻せんこうすることができる。

脚注きゃくちゅう

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参考さんこう文献ぶんけん

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  • 矢野やの順子じゅんこ国民こくみんが「つくられる」とき: ラオスの言語げんごナショナリズムとタイふうひびきしゃ〈ブックレット《アジアをまなぼう》11〉、2008ねんISBN 9784894897380 
  • 安井やすい清子きよこ文字もじたない人々ひとびと口承こうしょう文化ぶんかとラオス教育きょういく」『ラオスをるための60しょう』(菊池きくち陽子ようこ鈴木すずき玲子れいこ阿部あべ健一けんいち編著へんちょ)、明石書店あかししょてん、2010ねんISBN 9784750333090 

英語えいご:

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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