(Translated by https://www.hiragana.jp/)
ローレンス・サマーズ - Wikipedia

ローレンス・ヘンリー・サマーズ英語えいご: Lawrence Henry Summers, 1954ねん11月30にち - )は、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく政治せいじ経済けいざい学者がくしゃ世界銀行せかいぎんこうチーフエコノミスト財務ざいむふく長官ちょうかん財務ざいむ長官ちょうかんなどを歴任れきにんした。16さいマサチュまさちゅセッツ工科大学せっつこうかだいがく入学にゅうがくし、28さいにしてハーバード大学だいがく教授きょうじゅ就任しゅうにんした俊秀しゅんしゅうとしてはやくから名望めいぼうたかく、当初とうしょ世界銀行せかいぎんこうチーフエコノミストとして活躍かつやくした[2]一方いっぽうかれ自由じゆう貿易ぼうえき主義しゅぎてき政策せいさくサブプライム住宅じゅうたくローン危機ききこしたとする批判ひはんがあるほか、倫理りんりかんにかける失言しつげん要職ようしょくわれている[3]

ローレンス・サマーズ
Lawrence Summers
2012ねん7がつ
生年月日せいねんがっぴ (1954-11-30) 1954ねん11月30にち(69さい
出生しゅっしょう アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく コネチカットしゅうニューヘイヴン
出身しゅっしんこう マサチュまさちゅセッツ工科大学せっつこうかだいがく
ハーバード大学だいがく
現職げんしょく 経済けいざい学者がくしゃ
所属しょぞく政党せいとう 民主党みんしゅとう
配偶はいぐうしゃ エリサ・ニュー
子女しじょ 3にん
サイン

在任ざいにん期間きかん 2009ねん1がつ20日はつか - 2010ねん12月31にち
大統領だいとうりょう
代理だいりかん
バラク・オバマ
ディアナ・ファレル
ジェイソン・ファーマン

アメリカ合衆国の旗 ハーバード大学だいがく
だい27だい学長がくちょう
在任ざいにん期間きかん 2001ねん7がつ1にち - 2006ねん6がつ20日はつか

在任ざいにん期間きかん 1999ねん7がつ2にち - 2001ねん1がつ20日はつか
大統領だいとうりょう ビル・クリントン

在任ざいにん期間きかん 1995ねん8がつ11にち - 1999ねん7がつ2にち
大統領だいとうりょう ビル・クリントン

在任ざいにん期間きかん 1991ねん1がつ14にち - 1993ねん1がつ14にち
大統領だいとうりょう ジョージ・H・W・ブッシュ
テンプレートを表示ひょうじ

経歴けいれき

編集へんしゅう

編集へんしゅう

1954ねん11月30にちコネチカットしゅうニューヘイブンにて、経済けいざい学者がくしゃペンシルベニア大学だいがく教授きょうじゅ両親りょうしんとして誕生たんじょうする。家系かけいひがしヨーロッパけいユダヤじん移民いみん[2]である。

ノーベル経済けいざいがくしょう受賞じゅしょうしゃポール・サミュエルソンちちのロバート・サマーズ(サミュエルソンからサマーズに改姓かいせい)の兄弟きょうだいで、ケネス・アローはは兄弟きょうだいたる。幼年ようねんおおくをペンシルベニアしゅうペン・バリーごす。 そのフィラデルフィア郊外こうがいハリトン高等こうとう学校がっこうまなんだ[1]

1970ねんに16さいマサチュまさちゅセッツ工科大学せっつこうかだいがく入学にゅうがくする。当初とうしょ物理ぶつりがく専攻せんこうするが、1975ねん経済学部けいざいがくぶうつる。またMITディベートチームの会員かいいんとして活動かつどうした。MIT卒業そつぎょうハーバード大学だいがく大学院だいがくいんすすみ、マーティン・フェルドシュタインのしたまなび、1982ねん博士はかせごう取得しゅとくする[2]。かくしてMITとハーバード双方そうほう教壇きょうだん資格しかくたサマーズは1983ねんに28さいでハーバード大学だいがく史上しじょう最年少さいねんしょう教授きょうじゅとなった。このころ悪性あくせいリンパ腫りんぱしゅ診断しんだんされたが、治療ちりょうかんなおしている[1]

経済けいざい学者がくしゃ

編集へんしゅう

研究けんきゅうしゃとしてのサマーズは財政ざいせいがく労働ろうどう経済けいざいがく金融きんゆう経済けいざいがくそしてマクロ経済けいざいがくなどおおくの分野ぶんやでめざましい業績ぎょうせきげた。これらの分野ぶんや比較ひかくすれば貢献こうけんひくいものの、国際こくさい経済けいざいがく経済けいざいにおける人口じんこう統計とうけいがく経済けいざい開発かいはつ経済けいざいがく分野ぶんやについてもおおくの論文ろんぶん発表はっぴょうしている。サマーズの研究けんきゅう手法しゅほう経験けいけんてき経済けいざいデータの分析ぶんせき重視じゅうししたもので、貯蓄ちょちくぜい控除こうじょ利率りりつ制御せいぎょするかといったテーマをあつかっている[1]

サマーズの業績ぎょうせきたいしては、1987ねん社会しゃかい科学かがくけい学者がくしゃとしてははじめてアメリカ国立こくりつ科学かがく財団ざいだんからアラン・T・ウォーターマンしょうを、1993ねんにはアメリカ経済けいざい学会がっかいからジョン・ベイツ・クラークしょうをそれぞれ授与じゅよされた。全米ぜんべい科学かがくアカデミー会員かいいんでもある[2]

公職こうしょく

編集へんしゅう

1982ねんから1983ねんにかけてロナルド・レーガン政権せいけん大統領だいとうりょう経済けいざい諮問しもん委員いいんかいスタッフをつとめた。また1988ねんアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく大統領だいとうりょう選挙せんきょでは民主党みんしゅとうマイケル・デュカキス候補こうほ経済けいざいアドバイザーとなった[2]

世界銀行せかいぎんこうチーフエコノミスト

編集へんしゅう

1991ねんにハーバード大学だいがく教授きょうじゅ辞任じにんし、世界銀行せかいぎんこう上級じょうきゅうふく総裁そうさい世界銀行せかいぎんこうチーフエコノミスト)に就任しゅうにん世界銀行せかいぎんこうでは、開発途上国かいはつとじょうこく支援しえん戦略せんりゃく立案りつあん銀行ぎんこう融資ゆうし委員いいんかい銀行ぎんこう調査ちょうさ統計とうけい業務ぎょうむ指導しどう外部がいぶ研修けんしゅうプログラムの指導しどうなどに注力ちゅうりょくした[4]一方いっぽう、1991ねん12月には後述こうじゅつする「サマーズ・メモ」が流出りゅうしゅつし、物議ぶつぎかもした[5]

クリントン政権せいけん公職こうしょく

編集へんしゅう

1993ねんにビル・クリントン政権せいけん成立せいりつすると財務省ざいむしょううつって財務ざいむ次官じかんつとめ、また1995ねん財務ざいむふく長官ちょうかんつとめた。日本にっぽんでも榊原さかきばら英資えいすけとのえんだか是正ぜせい協調きょうちょう介入かいにゅうられている[1]1999ねん7がつロバート・ルービン辞任じにんともない、後任こうにん財務ざいむ長官ちょうかん就任しゅうにんする。アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく財務ざいむ長官ちょうかんとして国内こくない経済けいざい財政ざいせい政策せいさく日本にっぽんなどの対外たいがい経済けいざい関係かんけい通貨つうか危機ききなどの国際こくさい経済けいざい担当たんとうした[6]。2009ねん公開こうかいされた内部ないぶ文書ぶんしょによれば、サマーズはクリントン政権せいけんないで、地球ちきゅう温暖おんだん対策たいさくにおいて米国べいこく主導しゅどうてき立場たちばることに反対はんたいし、京都きょうと議定ぎていしょへの参加さんか反対はんたいする中心ちゅうしんてき人物じんぶつであった[7]

ハーバード大学だいがく学長がくちょう

編集へんしゅう

2001ねん1がつ20日はつかジョージ・W・ブッシュ政権せいけん成立せいりつともない、ハーバード大学だいがく学長がくちょうとして復帰ふっきした。サマーズはユダヤじんはつのハーバード大学だいがく学長がくちょうとみなされ、ユダヤじんコミュニティから歓迎かんげいけた。

アメリカン・ブロードキャスティング・カンパニーによると、みずからの立場たちば中道ちゅうどう左派さはしょうしていることにくわえて手法しゅほう強引ごういんだとして、ハーバード大学だいがく学長がくちょう就任しゅうにん直後ちょくごから大学だいがく経営けいえいをめぐりとく人文じんぶん科学かがく社会しゃかい科学かがくけい教授きょうじゅ学生がくせいなどとの対立たいりつ直面ちょくめんした[8]2001ねんあきにはサマーズとハーバード大学だいがく芸術げいじゅつ科学かがくアフリカン・アメリカン講座こうざコーネル・ウェスト教授きょうじゅ対立たいりつ顕在けんざいした。サマーズは私的してき会合かいごうなかでウェストを批判ひはんした[9]。その結果けっかウェストは激怒げきどし、「わたし自由じゆう自尊心じそんしん黒人こくじんだ。あのような態度たいど我慢がまんならない」との言葉ことばのこしてハーバード大学だいがくめ、プリンストン大学ぷりんすとんだいがくうつった[9]。ウェストが2004ねんあらわした「民主みんしゅ主義しゅぎ本質ほんしつ」では、サマーズを「無節操むせっそうなパワープレーヤー」とんで批判ひはんしている。

2005ねん1がつ科学かがく工学こうがく労働ろうどうしゃにおける多様たようせいかんする会議かいぎなかで、「数学すうがく科学かがく分野ぶんや女性じょせい研究けんきゅうすくないのは、男性だんせい女性じょせいあいだ固有こゆう存在そんざいする遺伝子いでんしちがいによるものではないか」とのせい差別さべつとらえられる発言はつげんをして、問題もんだいとなった(くわしくは後述こうじゅつ参照さんしょう[10][11]。サマーズはかえ釈明しゃくめい謝罪しゃざいしたが、大学だいがく内外ないがいからはげしい批判ひはんび、同年どうねん6がつ30にち学長がくちょう辞任じにんした[3]

辞任じにん

編集へんしゅう

2008ねんはる学期がっきより教職きょうしょく復帰ふっきし、ハーバード・カレッジおよハーバード・ケネディ・スクール学生がくせい対象たいしょうにグローバリゼーションについての講座こうざった。2009ねんにバラク・オバマ政権せいけん1国家こっか経済けいざい会議かいぎ委員いいんちょう就任しゅうにんしたものの、賛否さんぴい、2010ねんまつ辞任じにんした[12]。2011ねんからはハーバード・ケネディ・スクール教鞭きょうべんり、教職きょうしょく生活せいかつもどっている。2013ねんにはベン・バーナンキ後任こうにんとなるFRB議長ぎちょう候補こうほ名前なまえがり有力ゆうりょくされたが、アメリカ民主党みんしゅとうないにも反対はんたい根強ねづよく9月15にちみずか選考せんこう辞退じたいをオバマにもうれた[13][14]。2020ねん米国べいこく大統領だいとうりょう選挙せんきょでは、バイデン陣営じんえい政策せいさく助言じょげんおこなっていることが発覚はっかくすると民主党みんしゅとう陣内じんないから反発はんぱつて、バイデンが勝利しょうりしても政権せいけんにはくわわらないことをべることになった[15]

人物じんぶつ言動げんどう評価ひょうか

編集へんしゅう

財務ざいむ長官ちょうかん時代じだいに「サマーズに謙遜けんそんもとめるのは、マドンナ貞操ていそう期待きたいするようなものである」とひょうされたように、しばしば言動げんどうこうあつてきだと批判ひはんされた[9]たとえば財務ざいむ次官じかんふく長官ちょうかん時代じだいには1994ねんメキシコ通貨つうか危機きき1997ねんタイからはじまった金融きんゆう危機ききさいして、国際こくさい通貨つうか基金ききん密接みっせつ連携れんけいって事態じたい収拾しゅうしゅうし、連邦れんぽう議会ぎかい事態じたい収拾しゅうしゅうけてすうおおくの答弁とうべんったが、おおくの議員ぎいんから「議会ぎかいたいする敬意けいいい」と不評ふひょうっている[8]

財政ざいせいかん

編集へんしゅう

自由じゆう貿易ぼうえきグローバリゼーション熱心ねっしん支持しじしている。クリントン政権せいけん財務ざいむ長官ちょうかん時代じだいには、政府せいふ高官こうかんとして市場いちば経済けいざい信奉しんぽうしゃ理想りそうをそのまま実現じつげんし、はげしい世界せかい経済けいざい恐慌きょうこう遠因えんいんとなった。①世界せかい経済けいざい資本しほん移動いどう完全かんぜん自由じゆう推進すいしん金融きんゆうのグローバル実現じつげんした。この副作用ふくさようとして投機とうきてき資本しほん移動いどうとそのげが1997ねんアジア通貨つうか危機ききこした。②サマーズはかねてよりグラム・リーチ・ブライリーほう称賛しょうさんしており、その発展はってんとして戦後せんご機能きのうした米国べいこく銀行ぎんこう証券しょうけん垣根かきねグラス・スティーガルほう廃止はいしし、ちょうきょだいシティバンクの違法いほうかねしょう合併がっぺい合法ごうほうした。さらには、ノンバンクをつうじたサブプライムローンの証券しょうけん商品しょうひんへの投機とうきたいする政府せいふ監督かんとく議会ぎかい攻撃こうげきし、後退こうたいさせることに成功せいこうした。これが、2007ねんからのサブプライム住宅じゅうたくローン危機きき原因げんいんになったとされる[16]。また、このあいだ、サマーズは兼務けんむとして米国べいこく大手おおて金融きんゆう機関きかん顧問こもんき、多額たがく顧問こもんりょうってきた。

2021ねん1がつ20日はつか発足ほっそくしたバイデン政権せいけんは、新型しんがたコロナウイルス感染かんせん拡大かくだい対応たいおうするために1ちょう9000おくドル規模きぼ経済けいざい対策たいさくした。これにたいしてサマーズは「経済けいざい危機ききまえ水準すいじゅんもどりつつあり過大かだいすぎる」と指摘してきしたが、ジャネット・イエレンしん財務ざいむ長官ちょうかんは「経済けいざいいまなお困難こんなん状況じょうきょう雇用こよう回復かいふく大型おおがた対策たいさく必要ひつよう」だと反論はんろんしんきゅう財務ざいむ長官ちょうかんあいだ意見いけんかれる結果けっかせた[17]

サマーズ・メモ

編集へんしゅう

1991ねん世界銀行せかいぎんこうチーフエコノミストだったとき、あくまで内部ないぶ文書ぶんしょという意識いしきで「グローバル経済けいざい展望てんぼう」というタイトルでサマーズ・メモ英語えいごばんばれる長文ちょうぶんのメモランダムをいた[1][18]。メモの大意たいいは「世界銀行せかいぎんこう公害こうがい産業さんぎょう開発かいはつ途上とじょうこくにもっと移転いてんすることを推奨すいしょうすべきである。」というものである[19]。サマーズ・メモは大別たいべつして以下いかの3つの論点ろんてんからなる[19]

  • 環境かんきょう汚染おせんによるコストは健康けんこう被害ひがいによる死亡しぼう傷害しょうがいによって発生はっせいする逸失いっしつ利益りえきがく依存いぞんする。したがって最貧さいひんこくであればていコストでむ。
  • 環境かんきょう汚染おせんによるコストは環境かんきょう汚染おせん増大ぞうだいすることによって当然とうぜん上昇じょうしょうする。したがって環境かんきょう汚染おせんすで汚染おせんされているくにからまだ汚染おせんされていないくにうつればコストは低下ていかする。
  • 所得しょとく水準すいじゅん上昇じょうしょうすると環境かんきょうたいする意識いしきたかまるので、汚染おせん物質ぶっしつ処分しょぶん一層いっそうのコストがかかる。したがって環境かんきょう汚染おせん経済けいざい先進せんしん地域ちいきから貧困ひんこん地域ちいきうつれば、コストは低下ていかする。

サマーズは経済けいざいがく論理ろんりからすれば、有毒ゆうどく廃棄はいきぶつ最低さいてい賃金ちんぎんこく投棄とうきすることは反論はんろん余地よち提案ていあんであって、我々われわれはこの真理しんり直面ちょくめんしなければならないとメモにしるした[19]。この意見いけんは、経済けいざいてき観点かんてんからするとただしいが、健康けんこうたいする人権じんけん環境かんきょう正義まさよしなどの金銭きんせんてき考慮こうりょ事項じこうまった無視むしされている[20]

メモの内容ないよう内外ないがいおおきな反響はんきょうまねいた。メモの流出りゅうしゅつ、メモをいたのはラント・プリチェットでありサマーズは署名しょめいしただけ、内容ないよう捏造ねつぞうされている、「皮肉ひにく」としていたなどと釈明しゃくめいした[18]

サマーズ・メモはまず環境かんきょう保護ほごろん立場たちばからはげしい批判ひはんまねいた。グリーンピースなどの環境かんきょう保護ほご団体だんたいはサマーズの辞任じにんもとめ、ブラジルホセ・ルッツェンベルガー環境かんきょうしょうは「経済けいざい学者がくしゃ横柄おうへい無知むち」であるとつよ批判ひはんしている。さらに、しん自由じゆう主義しゅぎ反対はんたいする立場たちばから批判ひはんおこなわれた。つまりサマーズのみならず世界銀行せかいぎんこうエコノミストしん自由じゆう主義しゅぎもとづく経済けいざい政策せいさく世界せかいレベルでしつけているとする批判ひはんで、みなみアメリカの一部いちぶメディアでは世界銀行せかいぎんこうふく総裁そうさいであるサマーズに発言はつげんをさらにつづけさせて、しん自由じゆう主義しゅぎ問題もんだいてんをあぶりすべきであるとまで主張しゅちょうされた[2]

男女だんじょあいだ能力のうりょくかんする発言はつげん

編集へんしゅう

2005ねん1がつ全米ぜんべい経済けいざい研究所けんきゅうじょ後援こうえんによってひらかれた会議かいぎ招待しょうたいされた。そこでサマーズは「科学かがく工学こうがく分野ぶんや高位こういレベルの研究けんきゅうしゃ(アメリカの上位じょうい25大学だいがく研究けんきゅうしゃのような国民こくみんの5000にんから1まんにんちゅう上位じょうい1にんというレベル)に男性だんせいおおい」と主張しゅちょうしたうえで、つぎの3つの仮説かせつ提示ていじした[21]

  1. 男性だんせいほう女性じょせいよりも困難こんなん仕事しごと要求ようきゅうする時間じかんてき拘束こうそく融通ゆうずうせいれる傾向けいこうがある。また高位こういにいる女性じょせい結婚けっこんしていないか子供こどもがいないかくりつあきらかにたかい。
  2. つぎ論争ろんそうてきではあるが、極端きょくたんなレベルにおける男性だんせい女性じょせい本質ほんしつてき能力のうりょくちがいである。科学かがく工学こうがくへの関心かんしん傾向けいこう能力のうりょくあるいはこのみは男性だんせいあいだのほうがひろ分布ぶんぷられる(つまり男性だんせいほう非常ひじょう得意とくい/非常ひじょう不得意ふとくいあいだのばらつきがおおきい)。
  3. おや養育よういく態度たいどのような社会しゃかい差別さべつ

サマーズによればこのじゅん相対そうたいてき重要じゅうようたかい。サマーズは「規範きはんべているのではなく、完全かんぜん説明せつめいてきはなして」おり、「挑発ちょうはつ目的もくてきとしていた」とべた。女性じょせい差別さべつであるという告発こくはつこしたのは、2つ仮説かせつであった。またサマーズは自閉症じへいしょうについての議論ぎろんれいって、おや養育よういくのような社会しゃかい責任せきにんわせることには慎重しんちょうになるべきだとべた。「化学かがく専攻せんこうする女子じょし生物せいぶつがく専攻せんこうする女子じょしがいなかったとき、おや養育よういく非難ひなんすることは簡単かんたんだった[21]」「わたし生得しょうとくてきちがいに言及げんきゅうしたことはたしかだ。......わたし社会しゃかい結果けっかだとかんがえるときに慎重しんちょうにならないといけないとった。我々われわれはそう社会しゃかい結果けっかであるとしんじることをこのむが、よく調査ちょうさされる必要ひつようがある[22]

MIT生物せいぶつ学者がくしゃナンシー・ホプキンスは会議かいぎちゅう退席たいせきし(のち発言はつげんいて気分きぶんわるくなったとべた)[22]、この発言はつげん公表こうひょうした。聴衆ちょうしゅう何人なんにんかはサマーズがいくつかの分野ぶんや女性じょせい男性だんせいおなじ"生得しょうとくてき能力のうりょく"あるいは"天賦てんぷざい"をたないとったとべている[22]発言はつげんつたわるとまず大学だいがくない・ついで地元じもとメディアでその意図いとをめぐっておおきな議論ぎろんき、学術がくじゅつでもげられるようになった[23]

学長がくちょう不信任ふしんにんあん可決かけつ

編集へんしゅう

2005ねん1がつ発言はつげんけ、J・ローランド・マトリー教授きょうじゅによりサマーズ学長がくちょうたいする不信任ふしんにん議案ぎあん提出ていしゅつされた。2005ねん3月15にちハーバード大学だいがく人文学部じんぶんがくぶ教授きょうじゅかいハーバード人文じんぶんがく大学院だいがくいんハーバード・カレッジはサマーズ学長がくちょうたいする不信任ふしんにん決議けつぎ賛成さんせい218・反対はんたい185・棄権きけん18で可決かけつした[23]。よりおだやかなかたちでサマーズを批判ひはんする投票とうひょうについても実施じっしされ、賛成さんせい253・反対はんたい137・棄権きけん18でこれも可決かけつした[24]やく370ねん歴史れきしつハーバード大学だいがく教授きょうじゅかい学長がくちょう不信任ふしんにんあん可決かけつしたのははじめてであった[23][24]

サマーズは職員しょくいんよりも学生がくせいから支持しじた。決議けつぎまえの2がつおこなわれたハーバード・クリムゾン調査ちょうさでは、サマーズの辞任じにんを19パーセントの学生がくせい支持しじしたのにたいし、57パーセントの学生がくせい辞任じにん反対はんたいした(回答かいとうしゃ424めいのうち男性だんせいが56パーセントで女性じょせいが44パーセントである)[25]

サマーズの後任こうにんにはハーバード大学だいがく371ねん歴史れきしうえはつ女性じょせい総長そうちょうとして、南北戦争なんぼくせんそう歴史れきし学者がくしゃドリュー・ギルピン・ファウスト選出せんしゅつされた[26]

批判ひはん擁護ようご

編集へんしゅう

2005ねん7がつ唯一ゆいいつのアフリカけいアメリカじん理事りじであったコンラッド・ハーパーが、女性じょせいたいする発言はつげんとサマーズが昇給しょうきゅうしたことの両方りょうほうおこってハーバード・コーポレーションの理事りじ辞任じにんした。「わたしはあなたの昇給しょうきゅう支持しじできなかったし、いま支持しじしていない。わたしはハーバードのためにあなたの辞任じにん必要ひつようだとかんがえている[27]。」カリフォルニア大学だいがくサンタクルズこうのデニス・デントンは「すで我々われわれ論破ろんぱされたことをはなつづけた」とって批判ひはんした。ナンシー・ホプキンスは、男性だんせい女性じょせいあいだまったいとは主張しゅちょうしないが、社会しゃかいてき要因よういん女性じょせいのパフォーマンスに影響えいきょうおよぼす膨大ぼうだい証拠しょうこがあると主張しゅちょうした[22]

ボストン・グローブによれば、サマーズが学長がくちょう就任しゅうにんしてから女性じょせい終身しゅうしん在職ざいしょくけんきの求人きゅうじんおおきく減少げんしょうした。サマーズはその問題もんだいむとべたが、何人なんにんかの教授きょうじゅはサマーズの姿勢しせいうたがった[22]一方いっぽう会議かいぎ主催しゅさいしゃであるハーバード大学だいがく経済けいざい学者がくしゃリチャード・フリーマンは、サマーズの批判ひはんしゃ知的ちてき議論ぎろん感情かんじょうたたかわせる活動かつどうんだ[22]

心理しんり学者がくしゃスティーブン・ピンカーはサマーズの発言はつげん擁護ようごした。サマーズの見解けんかいが「正統せいとう学問がくもん境界きょうかいないにふくまれるか」をたずねられたとき、ピンカーはつぎのようにこたえた。「いくらかの厳格げんかくさがたもたれているかぎり、すべてが学問がくもん範囲はんいないにあるべきではいだろうか。それが大学だいがくイスラム神学校しんがっこうちがいだ。.....仮説かせつ真剣しんけんめられるだけの十分じゅうぶん証拠しょうこがある」[28]つづいて、サマーズの発言はつげん誤解ごかいされているとして、つぎのようにべた。「まず数学すうがくてき空間くうかんてき能力のうりょく分布ぶんぷ男性だんせい女性じょせい同一どういつではい。男性だんせい平均へいきん女性じょせいよりすこたかい(ただしサマーズ自身じしん平均へいきんについてはべていない)。そして男性だんせい成績せいせき分布ぶんぷほう女性じょせいよりもひろい。これはすべての男性だんせいすべての女性じょせいよりも数学すうがく能力のうりょくすぐれていることを意味いみしない。統計とうけいてき生得しょうとくてきだったと証明しょうめいされたとしても、それを理由りゆう女性じょせい差別さべつすることは不道徳ふどうとく論理ろんりてきだ。だい2に仮説かせつ能力のうりょく様々さまざま職業しょくぎょうにおける男性だんせい女性じょせい割合わりあい説明せつめいするひとつの要因よういんであるかもれないとうことだ。それが唯一ゆいいつ要因よういんであることを意味いみしない。男女だんじょ統計とうけいてき存在そんざいするとべることという、それ自身じしん差別さべつ証明しょうめいだと反射はんしゃてき仮定かていすることはできない。」最後さいごにピンカーは、「サマーズの発言はつげん不愉快ふゆかいではかったか」とかれてこうこたえた。「おそらく仮説かせつ間違まちがっている。しかし我々われわれがそれを考慮こうりょすることさえ"不愉快ふゆかい"ならば、どうやってそれが真実しんじついとることができるのだろうか[29]

イアン・エアーズはサマーズの統計とうけいかんする議論ぎろん大意たいいつぎのようにまとめた。「(実際じっさい研究けんきゅう結果けっかによれば、)中学生ちゅうがくせい科学かがくおよ数学すうがく成績せいせき平均へいきんてんでは男女だんじょいが、成績せいせき上位じょうい5パーセントではおとこめる割合わりあいたかく、男女だんじょは2たい1にたっしている場合ばあいもある。そして成績せいせき正規せいき分布ぶんぷしているとすると、おとこほう標準ひょうじゅん偏差へんさが20パーセントほどおおきいと計算けいさんできる。トップクラスの科学かがくしゃ平均へいきんよりも標準ひょうじゅん偏差へんさの4ばい程度ていどすぐれた人々ひとびとだとかんがえると、その集団しゅうだん男女だんじょは5たい1程度ていどになる。」この計算けいさん方法ほうほうろんとしてはおかしくないが、考慮こうりょすべきことがおおくあり、結論けつろん確定かくていてきではない。ただしそのてんはサマーズ自身じしん承知しょうちしており、この発言はつげん前置まえおきとして「大雑把おおざっぱ乱暴らんぼう計算けいさん結果けっかであり、間違まちがっているだろうが」とことわっている。エアーズはマスメディアが「サマーズが分布ぶんぷちがいについてかたっていただけだと論点ろんてんをほぼ完全かんぜん無視むしした[30]」とべている。

脚注きゃくちゅう

編集へんしゅう
  1. ^ a b c d e f "Summers, Lawrence H." An Encyclopedia of Macroeconomics, edited by Brian Snowdon, and Howard R. Vane, Edward Elgar Publishing, 1st edition, 2002.
  2. ^ a b c d e f "Summers, Larry (Lawrence Henry Summers)." Marquis Who's Who in the World, edited by Marquis Who's Who, Marquis Who's Who LLC, 33rd edition, 2016. ; Chapman, Roger. "Summers, Lawrence (1954–)." Culture Wars in America: An Encyclopedia of Issues, Viewpoints, and Voices, edited by Roger Chapman, and James Ciment, Routledge, 2nd edition, 2013.
  3. ^ a b Summers' 'sexism' costs him top Treasury job”. The Independent (2008ねん11月24にち). 2023ねん12月9にち閲覧えつらん
  4. ^ Former Chief Economists”. The World Bank. 2023ねん12がつ10日とおか時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2023ねん12がつ10日とおか閲覧えつらん
  5. ^ Gorelick, Steven (2015ねん3がつ12にち). “The Global Economy’s “Impeccable Logic””. Local Futures. 2023ねん12がつ10日とおか閲覧えつらん
  6. ^ Sheryl Sandberg "Summers, Lawrence" (Encyclopaedia Judaica, 2007)
  7. ^ Kyoto Redux? Obama's Challenges at Copenhagen Echo Clinton's at Kyoto”. nsarchive2.gwu.edu. 2023ねん12月9にち閲覧えつらん
  8. ^ a b Chester E Finn, Jr "An open letter to Lawrence H. Summers" (Policy Review, 113, 2002); "The Comprehensive Case Against Larry Summers" (The Atlantic Journal, Sep. 13, 2013)
  9. ^ a b c "The Comprehensive Case Against Larry Summers" (The Atlantic Journal, Sep. 13, 2013); "'People say I am arrogant': Larry Summers admits unflattering portrayal in The Social Network is 'fairly accurate'" (Daily Mail, March 3, 2011)
  10. ^ “Why women are poor at science, by Harvard president”. The Guardian. (2005ねん1がつ18にち). ISSN 0261-3077. https://www.theguardian.com/science/2005/jan/18/educationsgendergap.genderissues 2023ねん12月9にち閲覧えつらん 
  11. ^ What Larry Summers Said”. Inside Higher Ed. 2023ねん12月9にち閲覧えつらん
  12. ^ “The Obama Memos”. The New Yorker. (2012ねん1がつ22にち). ISSN 0028-792X. https://www.newyorker.com/magazine/2012/01/30/the-obama-memos 2023ねん12月9にち閲覧えつらん 
  13. ^ “サマーズがFRB議長ぎちょう候補こうほ辞退じたい人事じんじ承認しょうにん難航なんこうによる悪影響あくえいきょう懸念けねん. ロイター (ロイター). (2013ねん9がつ16にち). https://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE98F00520130916 2013ねん9がつ16にち閲覧えつらん 
  14. ^ “サマーズ、FRB議長ぎちょう選考せんこうから辞退じたい 反対はんたいこえつよまり”. 朝日新聞あさひしんぶん. (2013ねん9がつ16にち). http://www.asahi.com/business/update/0916/TKY201309160011.html 2013ねん9がつ16にち閲覧えつらん 
  15. ^ “Larry Summers Rules Out Taking a Job in a Biden Administration”. Bloomberg.com. (2020ねん8がつ6にち). https://www.bloomberg.com/news/articles/2020-08-06/summers-adviser-to-biden-says-his-time-in-government-is-over 2023ねん12月9にち閲覧えつらん 
  16. ^ The Warning”. FRONTLINE. 2023ねん12月9にち閲覧えつらん
  17. ^ べい200ちょうえん対策たいさく過熱かねつまねくか イエレンVSサマーズ論争ろんそう 8にちから法案ほうあん作業さぎょう”. 日本経済新聞にほんけいざいしんぶん (2021ねん2がつ8にち). 2021ねん2がつ8にち閲覧えつらん
  18. ^ a b Toxic Memo”. HARVARD MAGAZINE. 2023ねん12がつ10日とおか閲覧えつらん
  19. ^ a b c Enwegbara, Basil (6 April 2001). "Toxic Colonialism". The Tech. MIT. 121 (16): 7 .; Toxic Memo". Harvard Magazine. 1 May 2001. Retrieved 13 July 2016.; Hausman,, Daniel M.; McPherson, Michael S. (2006). Economic Analysis, Moral Philosophy and Public Policy (2nd ed.). New York, NY: Cambridge University Press.
  20. ^ Lawrence Summers’ Principle”. ejolt. 2023ねん12がつ10日とおか閲覧えつらん
  21. ^ a b Remarks at NBER Conference on Diversifying the Science & Engineering Workforce サマーズの発言はつげんとその質疑しつぎ応答おうとう全文ぜんぶん
  22. ^ a b c d e f Summers' remarks on women draw fire Boston.som
  23. ^ a b c Andrew Lawler "Summers's Comments Draw Attention to Gender, Racial Gaps" (Science, 307:5709, 2005); "Unrest returns to confront Harvard president" (Nature, 493, 2006)
  24. ^ a b Helen Pearson, "Unrest returns to confront Harvard president" (Nature, 439: 7079,  Feb 23, 2006); "The Summers Affair: Has It Prompted an Effective Plan for Harvard?" (BIOSCIENCE, 55:7, 2005); Donald Kennedy, "Summers and Harvard" (Science, 311: 5766, 2005)
  25. ^ Poll: Students Say Summers Should Stay the Harvard Crimson
  26. ^ ド大どだいはつ女性じょせい総長そうちょう誕生たんじょう - 米国べいこく”. www.afpbb.com. 2021ねん1がつ5にち閲覧えつらん
  27. ^ Board Member's Letter of Resignation
  28. ^ "十分じゅうぶん証拠しょうこ"の有無うむについてエリザベス・スペルキとのあいだあらたな論争ろんそうきた。The Baby Lab
  29. ^ PSYCHOANALYSIS Q-and-A: Steven Pinker the Harvard Crimson
  30. ^ イアン・エアーズ(Ian Ayres) 『その数学すうがく戦略せんりゃくめる』(Super Crunchers Why Thinking-by-Numbers Is the New Way to Be Smart山形やまがたひろしせいわけ文藝春秋ぶんげいしゅんじゅう、2007ねん、pp277-281

著書ちょしょ

編集へんしゅう
  • Summers, Lawrence H. (1984) Estimating the long-run relationship between interest rates and inflation, Cambridge, Mass.: National Bureau of Economic Research.
  • Summers, Lawrence H. (1990) Understanding unemployment, Cambridge, Mass. : MIT Press.
  • Summers, Lawrence H. (1994) Investing in all the people : educating women in developing countries, Washington, D.C. : World Bank.
  • Summers, Lawrence H. (1998) The US-Japanese stake in a free and open Asian capital market, New York : Center on Japanese Economy and Business, Columbia Business School.

関連かんれん項目こうもく

編集へんしゅう

外部がいぶリンク

編集へんしゅう
公職こうしょく
先代せんだい
スタンレー・フィッシャー
  世界銀行せかいぎんこうチーフエコノミスト
1991ねん1がつ14にち - 1993ねん1がつ14にち
次代じだい
ジョセフ・E・スティグリッツ
先代せんだい
デイヴィッド・マルフォード
  アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく国際こくさい担当たんとう財務ざいむ次官じかん
1993ねん4がつ5にち- 1995ねん8がつ11にち
次代じだい
ジェフリー・シェーファー
先代せんだい
フランク・ニューマン
  アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく財務ざいむふく長官ちょうかん
だい7だい:1995ねん8がつ11にち - 1999ねん7がつ2にち
次代じだい
スチュアート・アイゼンスタット
先代せんだい
ロバート・ルービン
  アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく財務ざいむ長官ちょうかん
だい71だい:1999ねん7がつ2にち - 2001ねん1がつ20日はつか
次代じだい
ポール・オニール
先代せんだい
ニール・ルーデンスタイン
  ハーバード大学だいがく学長がくちょう
だい27だい:2001ねん7がつ1にち - 2006ねん6がつ20日はつか
次代じだい
デレク・ボク