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二段燃焼サイクル - Wikipedia

だん燃焼ねんしょうサイクル

2えき推進すいしんけいロケットエンジンの動作どうさサイクルの1つ

だん燃焼ねんしょうサイクル(にだんねんしょうサイクル)とは2えき推進すいしんけいロケットエンジン動作どうさサイクルの1つである。推進すいしんざい一部いちぶをプレバーナー(燃焼ねんしょうしつ)であらかじめ燃焼ねんしょうさせ、その燃焼ねんしょうガスでターボポンプ駆動くどうさせる。そのとき燃焼ねんしょうガスはターボポンプで加圧かあつされた推進すいしんざいとともにしゅ燃焼ねんしょうしつおくられ燃焼ねんしょうする[1]

だん燃焼ねんしょうサイクルのしき一部いちぶ燃料ねんりょう酸化さんかざい燃焼ねんしょうさせ、ポンプを駆動くどうする。

酸化さんかざい酸化さんかされる燃料ねんりょうという構成こうせい場合ばあいもえにおける混合こんごうについて燃料ねんりょうリッチと酸化さんかざいリッチの2つの場合ばあいがある。スペースシャトルのエンジンSSMEなどは燃料ねんりょう比率ひりつたか燃料ねんりょうリッチ(SSMEの場合ばあい水素すいそリッチ)であり、エネルギアのブースターにもちいられたエンジンRD-170などは酸化さんかざい比率ひりつたか酸化さんかざいリッチ(この場合ばあい酸素さんそリッチ)である。酸素さんそリッチのほうこう出力しゅつりょくられるが、高温こうおん酸化さんかせいガスにエンジン内面ないめんさらされるというむずかしさがあり、きゅうソビエト連邦れんぽうロシアおよび中国ちゅうごく以外いがいでは実用じつようされたれいがない。

だん燃焼ねんしょうサイクルの優位ゆういてんは、すべての推進すいしんざいしゅ燃焼ねんしょうしつでの燃焼ねんしょう利用りようされエンジン全体ぜんたいとしての推力すいりょくたかいこと、またこうあつ燃焼ねんしょうできるため大気たいきあつにおいても効率こうりつこう膨張ぼうちょうノズルもちいることが出来できることである。一方いっぽう部品ぶひん点数てんすうおおくなり開発かいはつ製造せいぞうはより困難こんなんになる。プレバーナーで発生はっせいさせるガスはターボポンプを駆動くどうしたのちにおいてもなおしゅ燃焼ねんしょうしつよりもたか圧力あつりょくたもっていなくてはならないから、プレバーナーはきわめてこうあつ動作どうさしなくてはならない。したがってプレバーナーに供給きょうきゅうされる推進すいしんざい加圧かあつするターボポンプはさらなる高圧こうあつ動作どうさする必要ひつようしょうじる。このようにシステム全体ぜんたいできわめてたか圧力あつりょくでの動作どうさ要求ようきゅうすることがだん燃焼ねんしょうサイクルエンジンの開発かいはつ困難こんなんおおきな理由りゆうである。

世界せかいはつだん燃焼ねんしょうサイクルのエンジンは、1949ねんソ連それんヴァレンティン・グルシュコしたはたらいていた技術ぎじゅつしゃアレクセイ・イサエフ英語えいごばんによって開発かいはつされた。最初さいしょだん燃焼ねんしょうサイクルエンジンであるS1.5400 (11D33) はイサエフの助手じょしゅであったメルニコフが設計せっけいしたソ連それん惑星わくせい探査たんさげロケットに使用しようされた[2]どう時期じき(1959ねん)、ニコライ・クズネツォフはコロリョフの軌道きどう周回しゅうかいICBMであるGR-1ように閉サイクルのNK-9開発かいはつはじめた。クズネツォフはのち失敗しっぱいしたN-1ロケットようNK-15NK-33エンジンに設計せっけいれた。ケロシン/液体えきたい酸素さんそ推進すいしんざいとして使用しようし、酸素さんそリッチの燃焼ねんしょうガスでターボポンプを駆動くどうする設計せっけい採用さいようした。失敗しっぱいしたN1ロケットの1だんには30のNK-15が搭載とうさいされていた。N-1計画けいかく頓挫とんざ中止ちゅうしされると、クズネツォフは改良かいりょうがたであるN-1Fロケットに搭載とうさいするつもりで開発かいはつし、大量たいりょう製造せいぞうされていたNK-33を破壊はかいするようめいじられたが、そのもクズネツォフはひそかにエンジンを保管ほかんつづけていた。1990年代ねんだいエアロジェットしゃがクズネツォフの工場こうじょうおとずれたが、エアロジェットしゃはNK-33のたか推力すいりょくなどの仕様しよう懐疑かいぎてきだったため、クズネツォフはエンジンをアメリカへはこんで試験しけんおこなった。酸素さんそリッチ燃焼ねんしょう技術ぎじゅつはアメリカの技術ぎじゅつしゃ検討けんとうしていたが、実現じつげんいたってはいなかった[3]

推進すいしんざいよん酸化さんか窒素ちっそ/非対称ひたいしょうジメチルヒドラジン (UDMH) を使用しようしたRD-253は1963ねんごろにヴァレンティン・グルシュコによって開発かいはつされ、1965ねんプロトン搭載とうさいされた。エネルギアのブースターに採用さいようされたRD-170世界せかい最強さいきょうだん燃焼ねんしょうサイクルエンジンで、のちしょう改良かいりょうくわえられてRD-171となりゼニットもちいられている。また、RD-170/171で4あった燃焼ねんしょうしつを2とし推力すいりょくもおよそ半分はんぶんとしたRD-180エンジンはロッキード・マーティン開発かいはつしたアトラスIIIアトラスV搭載とうさいされた。さらに燃焼ねんしょうしつ1個いっことして推力すいりょくRD-170やく1/4としたRD-191は、ロシアのしんロケットファミリーであるアンガラけに開発かいはつつづけられている。

西側にしがわでは西にしドイツのベルコウしゃで1963ねんはじめてだん燃焼ねんしょうサイクルエンジンの試験しけんおこなわれた。スペースシャトルに搭載とうさいされたSSMEH-II/H-IIA/H-IIBLE-7/LE-7Aだん燃焼ねんしょうエンジンの典型てんけいである[3]

1950年代ねんだいのイギリスのガンマエンジンのようなケロシン/過酸化水素かさんかすいそ推進すいしんざいとするエンジンにも閉サイクル燃焼ねんしょう採用さいようされた。 これはだん燃焼ねんしょうサイクルではないが、触媒しょくばいによって過酸化水素かさんかすいそ分解ぶんかいされてタービンを駆動くどうするまえ燃焼ねんしょうしつないでケロシンと反応はんのうして燃焼ねんしょうさせることにより、技術ぎじゅつてき課題かだい回避かいひしつつだん燃焼ねんしょうサイクルの効率こうりつ優位ゆういせいている。

スペースシャトルのしゅエンジン (SSME) はだん燃焼ねんしょうサイクルのエンジンではじめて液体えきたい酸素さんそ液体えきたい水素すいそ使用しようした。たいするソビエト連邦れんぽうブラン往還おうかんRD-0120はSSMEに仕様しようちかいが、技術ぎじゅつてき複数ふくすう差違さいがある。

フル・フロー・だん燃焼ねんしょうサイクル

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フル・フロー・だん燃焼ねんしょうサイクルのしきあかはん透明とうめい四角形しかっけい(2つのタービンの内側うちがわ)がプレバーナーで、通常つうじょうだん燃焼ねんしょうサイクルが1なのにたいし、FFSCCでは2あることがわかる。

フル・フロー・だん燃焼ねんしょうサイクル (Full Flow Staged Combustion Cycle: FFSCC) はだん燃焼ねんしょうサイクルの一種いっしゅである。たとえば上記じょうきのようなだん燃焼ねんしょうサイクルでは、プレバーナーで燃料ねんりょうリッチのガスが生成せいせいされ、酸化さんかざい大半たいはんはターボポンプの駆動くどう使つかわれることくメインバーナーへ供給きょうきゅうされる。FFSCCでは供給きょうきゅうされる燃料ねんりょう酸化さんかざいのすべてが、ターボポンプの駆動くどうもちいられる。つまり、燃料ねんりょうリッチ、酸化さんかざいリッチの両方りょうほうのガスが生成せいせいされ、それぞれが独立どくりつしたターボポンプの駆動くどう使つかわれる。駆動くどう使つかわれたガスはメインバーナーへ供給きょうきゅうされ、適切てきせつ燃焼ねんしょう比率ひりつ混合こんごうされる。

FFSCCではタービンがよりひく温度おんどで、よりおおくの推進すいしんざい供給きょうきゅうすることが可能かのうであり、エンジンの長寿ちょうじゅいのち高信頼こうしんらいせい達成たっせいすることが出来できる。また燃焼ねんしょうしつ圧力あつりょくたかめることが出来できるので効率こうりつ向上こうじょうにも寄与きよする。くわえて、上記じょうきのような連結れんけつがたのターボポンプで問題もんだいとなる燃料ねんりょう酸化さんかざいのシーリングを考慮こうりょする必要ひつようい。燃料ねんりょう酸化さんかざいのいずれもが不完全ふかんぜん燃焼ねんしょう状態じょうたいにあるということは、メインバーナーないにおける燃焼ねんしょう反応はんのう促進そくしんするという意味いみ重要じゅうようである。このことから、従来じゅうらいだん燃焼ねんしょうサイクルにくらべて推力すいりょくを10-20びょう程度ていど改善かいぜんすることが可能かのうである(れい RD-270 & RD-0244)。

1960年代ねんだいきゅうソ連それんRD-270エンジンで試験しけんされたほか2010年代ねんだいにはこめスペースXしゃラプターエンジンで実用じつようしている。

だん燃焼ねんしょうサイクルのエンジン

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RD-8
ゼニット上段じょうだん使用しようされるエンジン
RD-253
プロトンロケットの1だんのエンジンに使用しようされる。推進すいしんざい非対称ひたいしょうジメチルヒドラジン (UDMH) /よん酸化さんか窒素ちっそ
RD-270
UR-700、UR-900ロケットの1だんのエンジンに使用しようされる。推進すいしんざい非対称ひたいしょうジメチルヒドラジン (UDMH) /よん酸化さんか窒素ちっそ
NK-33
N-1ロケットの1だんのエンジン 推進すいしんざいはケロシン/液体えきたい酸素さんそ
RD-120
ゼニットの2だんのエンジン 推進すいしんざいはケロシン/液体えきたい酸素さんそ
RD-170
エネルギアロケットのブースターエンジン 推進すいしんざいはケロシン/液体えきたい酸素さんそ
RD-180
アトラス Vロケットの1だんのエンジン 推進すいしんざいはケロシン/液体えきたい酸素さんそ
RD-191
アンガラ・ロケットKSLV-1の1だんのエンジン 推進すいしんざいはケロシン/液体えきたい酸素さんそ
RD-0120
エネルギアロケットのコアエンジン 推進すいしんざい液体えきたい水素すいそ/液体えきたい酸素さんそ
RD-0124
アンガラ・ロケットのエンジン 推進すいしんざいはケロシン/液体えきたい酸素さんそ
RS-84
ケロシン/液体えきたい酸素さんそ推進すいしんざいとするさい使用しようがたロケットエンジンだが開発かいはつ中止ちゅうしされた。
SSME
スペースシャトルのエンジン 推進すいしんざい液体えきたい水素すいそ/液体えきたい酸素さんそ
LE-7
H-IIロケットの1だんのエンジン 推進すいしんざい液体えきたい水素すいそ/液体えきたい酸素さんそ
LE-7A
H-IIAロケットH-IIBロケットの1だんのエンジン 推進すいしんざい液体えきたい水素すいそ/液体えきたい酸素さんそ
ラプター
スターシップ/スーパー・ヘビー使用しようされるエンジン。推進すいしんざい液体えきたいメタン/液体えきたい酸素さんそ

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ きゅうソビエト諸国しょこくではプレバーナー(燃焼ねんしょうしつ)をガス発生はっせいしょうし、だん燃焼ねんしょうサイクルをガス発生はっせいサイクルとぶので混同こんどうしないように注意ちゅうい必要ひつようである。
  2. ^ George Sutton, "History of Liquid Propellant Rocket Engines", 2006
  3. ^ a b Cosmodrome History Channel, interviews with Aerojet and Kuznetsov engineers about the history of staged combustion

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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