債権さいけん総論そうろん

債権さいけん総論そうろん（さいけんそうろん）とは、債権さいけん総則そうそく（民法みんぽう第だい399条じょうから第だい520条じょうまでの第だい三さん編へん第だい一いち章しょう）に関かんする解釈かいしゃく論ろんである。債権さいけん総則そうそくは、債権さいけんがその発生はっせい原因げんいんにかかわらず共通きょうつうに有ゆうする性質せいしつおよび効力こうりょくについての規定きていを集あつめたものであり、したがって抽象ちゅうしょう的てきな規定きていが多おおい。

民法みんぽう典てんにおいて債権さいけん総則そうそくの構成こうせいは、債権さいけんの目的もくてき、債権さいけんの効力こうりょく、多数たすう当事とうじ者しゃの債権さいけんおよび債務さいむ、債権さいけんの譲渡じょうと、債権さいけんの消滅しょうめつという順序じゅんじょで編集へんしゅうされている。

概要がいよう

従来じゅうらい、債権さいけん総論そうろんと債権さいけん各論かくろんをまとめて債権さいけんという教科書きょうかしょ・基本きほん書しょを編あみ、物権ぶっけんと対比たいひする例れいが多おおかった。しかし、近時きんじは、債権さいけん者しゃ代位だいい権けん、詐いつわり害がい行為こうい取消とりけし権けん、弁済べんさいによる代位だいい、債権さいけん譲渡じょうと、相殺そうさい、保証ほしょうなどが債権さいけん保全ほぜん、債権さいけん回収かいしゅうの手段しゅだんとして用もちいられ、または銀行ぎんこう等ひとしの金融きんゆう機関きかんが活用かつようする金融きんゆう法ほうの分野ぶんやにおいて共通きょうつうする性格せいかくを有ゆうする結果けっか、大学だいがくの講義こうぎにおいて担保たんぽ物権ぶっけんと併あわせた科目かもくとすることがあり、これに合あわせた教科書きょうかしょが増ふえている（なお、債権さいけんと物権ぶっけんとを必かならずしも峻別しゅんべつすべきではないと主張しゅちょうするものとして鈴木すずき禄ろく彌わたる『物権ぶっけん法ほう講義こうぎ[4訂てい版ばん]』（創そう文ぶん社しゃ、1994年ねん）。後者こうしゃの例れいとして、内田うちだ貴たか『民法みんぽうIII債権さいけん総論そうろん・担保たんぽ物権ぶっけん』（東京大学とうきょうだいがく出版しゅっぱん会かい、初版しょはん1996年ねん）がある。

構成こうせい

第だい1章しょう　総則そうそく （第だい399条じょう～第だい520条じょう）

• 第だい1節せつ　債権さいけんの目的もくてき （第だい399条じょう～第だい411条じょう）
• 第だい2節せつ　債権さいけんの効力こうりょく（第だい412条じょう～第だい426条じょう）
  • 第だい1款　債務さいむ不履行ふりこうの責任せきにん等とう（第だい412条じょう～第だい422条じょう）
  • 第だい2款　債権さいけん者しゃ代位だいい権けん及および詐いつわり害がい行為こうい取消とりけし権けん（第だい423条じょう～第だい426条じょう）
• 第だい3節せつ　多数たすう当事とうじ者しゃの債権さいけん及および債務さいむ（第だい427条じょう～第だい520条じょう）
  • 第だい1款　総則そうそく（第だい427条じょう）
  • 第だい2款　不可分ふかぶん債権さいけん及および不可分ふかぶん債務さいむ（第だい428条じょう～第だい431条じょう）
  • 第だい3款　連帯れんたい債務さいむ（第だい432条じょう～第だい445条じょう）
  • 第だい4款　保証ほしょう債務さいむ
    • 第だい1目もく　総則そうそく（第だい446条じょう～第だい465条じょう）
    • 第だい2目もく　貸金かしきん等とう根ね保証ほしょう契約けいやく（第だい465条じょうの2～第だい465条じょうの5）
• 第だい4節せつ　債権さいけんの譲渡じょうと（第だい466条じょう～第だい473条じょう）
• 第だい5節せつ　債権さいけんの消滅しょうめつ（第だい474条じょう～第だい520条じょう）
  • 第だい1款　弁済べんさい
    • 第だい1目もく　総則そうそく（第だい474条じょう～第だい493条じょう）
    • 第だい2目もく　弁済べんさいの目的もくてき物ぶつの供託きょうたく（第だい494条じょう～第だい498条じょう）
    • 第だい3目もく　弁済べんさいによる代位だいい（第だい499条じょう～第だい504条じょう）
  • 第だい2款　相殺そうさい（第だい505条じょう～第だい512条じょう）
  • 第だい3款　更改こうかい（第だい513条じょう～第だい518条じょう）
  • 第だい4款　免除めんじょ（第だい519条じょう）
  • 第だい5款　混同こんどう（第だい520条じょう）

参考さんこう文献ぶんけん

• 梅うめ謙次郎けんじろう『民法みんぽう要よう議ぎ巻まき之の三さん債権さいけん編へん』（復刻ふっこく版ばん、有斐閣ゆうひかく、1984年ねん）
• 我妻あづま栄さかえ『新しん訂てい債権さいけん総論そうろん』（岩波書店いわなみしょてん、1964年ねん）
• 於保不二雄ふじお』『債権さいけん総論そうろん[新版しんぱん]』（有斐閣ゆうひかく法律ほうりつ学がく全集ぜんしゅう、1972年ねん）
• 星野ほしの英一ひでかず『民法みんぽう概論がいろんIII債権さいけん総論そうろん』（良書りょうしょ普及ふきゅう会かい、1978年ねん）
• 奥田おくだ昌あきら道どう『債権さいけん総論そうろん[増補ぞうほ編へん]』（悠々ゆうゆう社しゃ、1992年ねん）
• 平井ひらい宜むべ雄ゆう『債権さいけん総論そうろん[第だい2版はん]』（弘文こうぶん堂どう、1994年ねん）
• 内田うちだ貴たか『民法みんぽうIII債権さいけん総論そうろん・担保たんぽ物権ぶっけん』（東京大学とうきょうだいがく出版しゅっぱん会かい、初版しょはん1996年ねん）