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冪零元 - Wikipedia

べきれいげん

あるせい整数せいすう n が存在そんざいして x^n = 0 となるときのたまき R のもと x を
べきれいから転送てんそう

数学すうがくにおいて、たまき Rもと x はあるせい整数せいすう n存在そんざいして xn = 0 となるときにべきれいげん(べきれいげん、えい: nilpotent element)という。

べきれい (nilpotent) という言葉ことばは、ベンジャミン・パースによって、多元たげんたまきもとのあるべきが 0 になるという文脈ぶんみゃくで1870ねんごろ導入どうにゅうされた[1]

 
A3 = 0 なのでベキれいである。よりおおくの情報じょうほうべきれい行列ぎょうれつよ。
  • 剰余じょうよたまき Z/9Z において、3 の同値どうちるいべきれいである、なぜならば 32 は 9 をほうとして 0 と合同ごうどうだからである。
  • かわたまき Rげん abab = 0 をたすとする。このときもと c = bac2 = (ba)2 = b(ab)a = 0 なのでべきれいである。行列ぎょうれつでのれいは(abたいして)
 
このとき AB = 0, BA = B である。

性質せいしつ

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唯一ゆいいつもと 0 = 1 をもつれいたまき {0} をのぞいて)べきれいげんけっして単元たんげんではない。すべての 0 でないべきれいげんれい因子いんしである。

からだ係数けいすうn 正方せいほう行列ぎょうれつ Aべきれいであることとその固有こゆう多項式たこうしきtn であることは同値どうちである。

xべきれいであれば、1 − x単元たんげんである、なぜならば xn = 0 によって

 

であるからだ。より一般いっぱんに、単元たんげん u とベキれいげん x u + x はそれらが交換こうかんする(すなわち ux = xu である)ときにはべきれいである。

かわたまき

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かわたまき   のベキれいげん全体ぜんたいイデアル   をなす。これはこう定理ていり結果けっかである。このイデアルはたまきべきれい根基こんきである。かわたまきのすべてのべきれいげん   はそのたまきのすべてのイデアル  ふくまれる、なぜならば   だからだ。したがって   はすべてのイデアルの共通きょうつう部分ぶぶんふくまれる。

 べきれいでなければ、 べきによって局所きょくしょすることができる。つまり、  によって局所きょくしょしてれいでないたまき  る。この局所きょくしょたまきイデアルはちょうど   であるようなイデアル  対応たいおうする [2]。すべてのれいでないかわたまき極大きょくだいイデアルをもちそれはもとイデアルでもあるので、どのべきれいでない   もあるもとイデアルにふくまれない。したがって   はちょうどすべてのイデアルの共通きょうつう部分ぶぶんである[3]

ジャコブソン根基こんき単純たんじゅんぐんれい (annihilation) の特徴とくちょうづけに特徴とくちょうづけがべきれい根基こんきたいしてもできる。たまき Rべきれいげんはちょうどたまき R に internal なすべてのせいいき(すなわちイデアル Iたいして R/Iかたちのもの)をれいするもとである。このことはべきれい根基こんきはすべてのイデアルの共通きょうつう部分ぶぶんであるという事実じじつからしたがう。

リーたまきべきれいげん

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  をリーたまきとする。このとき  もと はいっていて  べきれい変換へんかんであるときにべきれいであるという。リーたまきにおけるジョルダン分解ぶんかい英語えいごばん参照さんしょうせよ。

物理ぶつりがくにおけるべきれいせい

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Q2 = 0 をたすオペランド Qべきれいである。フェルミオンの経路けいろ積分せきぶん表現ひょうげんゆるグラスマンすうは、その平方へいほうえるので、べきれいである。BRST 電荷でんか英語えいごばん物理ぶつりがくにおける重要じゅうようれいである。 線型せんけい演算えんざん結合けつごう多元たげんたまきしたがってたまきをなすので、これははじめの定義ていぎ特別とくべつ場合ばあいである[4][5]。より一般いっぱんに、上記じょうき定義ていぎ観点かんてんから、演算えんざん QnN存在そんざいして Qn = 0 (れい写像しゃぞう)であるときにべきれいである。したがって、線型せんけい写像しゃぞうべきれいであることとそれがある基底きていべきれい行列ぎょうれつをもつことは同値どうちである。これのべつれいそと微分びぶんである(ふたたn = 2 である)。エドワード・ウィッテンによって有名ゆうめい論文ろんぶんしめされているように[6]ちょう対称たいしょうせいモース理論りろんとおして[7]両者りょうしゃつながっている。

ソースのない平面へいめん電磁場でんじばは、物理ぶつりてき空間くうかん代数だいすうがく英語えいごばん言葉ことば表現ひょうげんされるとき、べきれいである[8]

代数だいすうてきべきれいげん

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2次元じげんじゅうすうべきれい空間くうかんふくむ。べきれい空間くうかんふく多元たげんたまきかずとしては分解ぶんかいがたよんげんすう英語えいごばん (coquaternions)、分解ぶんかいがたはちげんすうそうよんげんすう英語えいごばん  、そして複素ふくそはちげんすう   がある。

関連かんれん項目こうもく

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参考さんこう文献ぶんけん

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  1. ^ Polcino & Sehgal (2002). "§3.1 A Brief History". An Introduction to Group Rings. p. 127.
  2. ^ Matsumura, Hideyuki (1970). “Chapter 1: Elementary Results”. Commutative Algebra. W. A. Benjamin. pp. 6. ISBN 978-0-805-37025-6 
  3. ^ Atiyah, M. F.; MacDonald, I. G. (February 21, 1994). “Chapter 1: Rings and Ideals”. Introduction to Commutative Algebra. Westview Press. pp. 5. ISBN 978-0-201-40751-8 
  4. ^ Peirce, B. Linear Associative Algebra. 1870.
  5. ^ Milies, César Polcino; Sehgal, Sudarshan K. An introduction to group rings. Algebras and applications, Volume 1. Springer, 2002. ISBN 978-1-4020-0238-0
  6. ^ E. Witten, Supersymmetry and Morse theory. J.Diff.Geom.17:661–692,1982.
  7. ^ A. Rogers, The topological particle and Morse theory, Class. Quantum Grav. 17:3703–3714,2000 doi:10.1088/0264-9381/17/18/309.
  8. ^ Rowlands, P. Zero to Infinity: The Foundations of Physics, London, World Scientific 2007, ISBN 978-981-270-914-1