古書こしょ店てん

古書こしょ店てん（こしょてん、アメリカ英語えいご:used bookstores, イギリス英語えいご:second-hand bookshops）は、古書こしょや古本ふるもとを取とり扱あつかう書店しょてん^[1]。古本屋ふるほんや（ふるほんや）とも。

20世紀せいき末まつに成立せいりつした業態ぎょうたいである新古しんこ書店しょてんも古書こしょ店てんの一いち形態けいたいだが、この項目こうもくでは伝統でんとう的てきな古書こしょ店てんを中心ちゅうしんに扱あつかう。

概説がいせつ

世界せかいの古書こしょ店てん

フランスのパリのセーヌ川がわ沿そいにはブキニスト（Bouquinistes）と呼よばれる露店ろてんの古書こしょ店てんが立たち並ならんでいる（ユネスコ無形むけい文化ぶんか遺産いさんの登録とうろくも目指めざしている）^[2]。

フランス・パリのブキニスト（露店ろてんの古書こしょ店てん）
パリの古書こしょ店てん（しっかりした店舗てんぽをかまえている例れい）
スペイン、マドリッドの古書こしょ店てん
ボリビアの古本屋ふるほんや

日本にっぽんの古書こしょ店てん

一般いっぱんに、主おもに通俗つうぞく的てきな古本ふるほんを売買ばいばいする店みせ（古本屋ふるほんや）と、主おもに高価こうかな古書こしょを売買ばいばいする店みせに分わかれる^[1]。

とはいえ「古本屋ふるほんや」と「古書こしょ店てん」の厳密げんみつな区分くぶんは存在そんざいしない。2300以上いじょうの事業じぎょう者しゃが加盟かめいする全国ぜんこく古書こしょ籍せき商しょう組合くみあい連合れんごう会かい（全ぜん古書こしょ連れん）が、インターネットで在庫ざいこ販売はんばいや加盟かめい店てん、古書こしょ即売そくばい会かいの案内あんないなどを行おこなうサイトの名称めいしょうは「日本にっぽんの古本屋ふるほんや」である^[3]。

また、2000年代ねんだいに入はいってからはアマゾン、ヤフオク、メルカリなどで、誰だれもが古書こしょ販売はんばいが可能かのうな状態じょうたいになっており、実じつ店舗てんぽの古書こしょ店てんでネットでの販売はんばいを並行へいこう的てきに行おこなう店みせも増ふえている（実じつ店舗てんぽに陳列ちんれつしてある本ほんに「ネットで出品しゅっぴん中ちゅう」などといった札さつがつけられることも増ふえている）。

日本にっぽんでは法的ほうてきに古物商こぶつしょうの一種いっしゅとされており、日本にっぽんで買かい取とりにより仕入しいれをする古書こしょ店てんを営業えいぎょうするためには古物ふるもの営業えいぎょう法ほうに基もとづく許可きょかが必要ひつようである。

日本にっぽんの古書こしょ店てんの例れい（宇仁菅かん書店しょてん。兵庫ひょうご県けん神戸こうべ市し灘なだ区く）
古書こしょ店てんの店内てんない（松まつ雲くも堂どう書店しょてん。東京とうきょう都と千代田ちよだ区く神田かんだ神保じんぼう町まち）

歴史れきし

欧州おうしゅう

古書こしょ店てんが登場とうじょうする前まえの段階だんかい

本ほんが羊皮紙ようひしに手書てがきされ、それの複製ふくせいをつくる場合ばあいは手作業てさぎょうで一文字ひともじ一いち文字もじ書かきうつすことで写本しゃほんが作つくられていた時代じだい、1冊さつの写本しゃほんを作つくるのも数カ月すうかげつや数すう年ねんという年月としつきがかかるわけで、本ほんは非常ひじょうに貴重きちょうで（お金かねに換算かんさんする場合ばあい）高価こうかなものであった。中世ちゅうせいヨーロッパで知識ちしきの集積しゅうせき場所ばしょとして機能きのうした場所ばしょは（西にしヨーロッパで支配しはい的てきであったカトリック教会きょうかいの）修道院しゅうどういんや、あるいは大学だいがく（ヨーロッパ最古さいこの大学だいがくはイタリアのボローニャの国立こくりつ大学だいがくであり、1158年ねん神かみ聖きよしロろーマ帝国まていこく皇帝こうていから法学ほうがく研究けんきゅうをする大学だいがくとして公認こうにんされ、後のちに総合大学そうごうだいがくに発展はってんしていった。このボローニャ大学だいがくがヨーロッパ中世ちゅうせいの諸国しょこくの大学だいがくの原型げんけいとなった。）であったが、写本しゃほん時代じだいの本ほんというのは（修道院しゅうどういんでも、大学だいがくなどでも）盗難とうなん防止ぼうしのために鍵かぎをかけた部屋へやに保管ほかんしたり、もし修道院しゅうどういんのメンバーや大学だいがくの学生がくせいが比較的ひかくてき気軽きがるに読よめるようにする場合ばあいは、わざわざ一いち冊さつ一いち冊さつ、鎖くさりで「書見しょけん台だい」につないでおくというようなこともされた（なにしろ当時とうじは、写本しゃほん一いち冊さつが普通ふつうの人ひとの1年ねん分ぶんや数すう年ねん分ぶんもの収入しゅうにゅうに相当そうとうするような高価こうかなものなので^{[注ちゅう 1]}、鎖くさりにでもつないでおかないと眼めを離はなしたすきに盗ぬすまれ大だい事件じけんになってしまうからである）。中世ちゅうせいでは、写本しゃほんを作成さくせいさせて（修道院しゅうどういんや大学だいがく、あるいは富裕ふゆうな王族おうぞくなどが趣味しゅみで）入手にゅうしゅしたら、それを半永久はんえいきゅう的てきに一種いっしゅの「宝たから」として保管ほかんしつづけた。仮かりに売買ばいばいするとしても、あくまできわめて例外れいがい的てきであった。（「本ほんは読よみ終おわったら売うってしまえばいい」というような現代げんだい人じんの感覚かんかくとは全まったく異ことなっていた。）このようなわけで、中世ちゅうせいヨーロッパでは本ほんというのは基本きほん的てきに売買ばいばいするようなものではなかったわけであり、古本屋ふるほんやというのもまだ成立せいりつしていなかった。

古書こしょ店てんが成立せいりつするにはいくつもの壁かべがあり、まず本ほんというものが大量たいりょうに安価あんかに作つくられるようになる段階だんかいを経へなければならなかった。グーテンベルクが活版かっぱん印刷いんさつを開始かいししたのは1450年ねん頃ころと云いわれているが、グーテンベルクによって印刷いんさつされたのは聖書せいしょであり、きわめて限定げんてい的てきであり、まだ古書こしょ店てんの登場とうじょうにはつながらなかった。（古書こしょ店てんが登場とうじょうしたのは、その数すう百ひゃく年ねんも後ごの話はなしになる。）つまり「一いち度ど手放てばなしたら、二度にどと手てに入いれられない可能かのう性せいが高たかい」と思おもえるほど貴重きちょうな段階だんかいでは、人ひとは（本ほんに限かぎらず、何なにであれ）そのモノを滅多めったなことで手放てばなそうとしない。古書こしょ店てんが成立せいりつするためには「手放てばなしても、必要ひつようなら多分たぶんまた入手にゅうしゅできる」と思おもえるほどに本ほんが世よの中なかに大量たいりょうに出回でまわる必要ひつようがあった。

古書こしょ店てんの登場とうじょう

世界せかい最古さいこの古書こしょ店てんはイギリスのロンドンにある1761年ねん創業そうぎょうのヘンリー・サザラン（Henry Sotheran）といわれている^[4]。

日本にっぽん

日本にっぽんでは（でも）中世ちゅうせいまで書物しょもつは主おもに寺院じいんや朝廷ちょうていが所蔵しょぞうする貴重きちょうなもので、個人こじんが所蔵しょぞうする本ほんなどを売うらざるを得えなくなることを「沽却」といい、不名誉ふめいよなこととされていた^[5]。保ほ延のべ6年ねん（1140年ねん）10月がつに書家しょかの藤原ふじわら定信さだのぶの家いえに本ほんを製造せいぞうする経けい師しの妻つまが古書こしょを販売はんばいしており、製本せいほんを行おこなっていた経けい師しが古書こしょも扱あつかっていたと考かんがえられる^[6]。

江戸えど時代じだいの大だい坂さかや江戸えどで古本ふるほんの販売はんばいが先さきに始はじまり、17世紀せいき後半こうはんになって出版しゅっぱんも行おこなうようになった^[5]。江戸えど時代じだいの書店しょてんは出版しゅっぱん、自じ店みせの出版しゅっぱん物ぶつの卸売おろしうり・販売はんばい、他た店てんの出版しゅっぱん物ぶつの販売はんばい、古本ふるほんの販売はんばいを広ひろく行いっていた^[5]。

新刊しんかん書店しょてんと古書こしょ店てんが分離ぶんりされるようになったのは明治めいじ以降いこうである^[7]。現代げんだいでは、大手おおて新刊しんかん書店しょてんが古書こしょの買取かいとり・販売はんばいを行おこなう例れいがある（三省堂さんせいどう^[8]や有隣堂ゆうりんどう^[9]）。