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地域主義 - Wikipedia

地域ちいき主義しゅぎ

地域ちいき住民じゅうみん自発じはつてき努力どりょくによって、政治せいじ文化ぶんかにおいてかく地方ちほう独自どくじせい自立じりつせいたかめようとするかんがかた

地域ちいき主義しゅぎ(ちいきしゅぎ)とは、地域ちいき住民じゅうみん自発じはつてき努力どりょくによって、政治せいじ文化ぶんかにおいてかく地方ちほう独自どくじせい自立じりつせいたかめようとするかんがかたをいう[1]

国家こっかない地域ちいき主義しゅぎ

編集へんしゅう

政治せいじめんでは、中央ちゅうおうから地方ちほうへの税源ぜいげん移譲いじょう地方ちほう議会ぎかい権限けんげん強化きょうか地域ちいき政党せいとう結成けっせい政界せいかい進出しんしゅつなど、地方ちほう自治じち強化きょうかへとむすびつく。文化ぶんかめんでは地域ちいき言語げんご方言ほうげん)の保護ほご伝統でんとう文化ぶんか保存ほぞんなどが積極せっきょくてきにおこなわれる。

国威こくい発揚はつよう対外たいがい拡張かくちょうといった国家こっか主義しゅぎささえるナショナリズムたいし、伝統でんとう保存ほぞん地方ちほう自治じち尊重そんちょうする地域ちいき主義しゅぎささえる立場たちばとしては愛郷あいきょう主義しゅぎ(localism)[2]一般いっぱんてきである。

経済けいざいめんでは、地域ちいきうちはつてき発展はってん重視じゅうしし、ぜん世界せかいてき展開てんかいする中央ちゅうおう資本しほん国籍こくせき企業きぎょうたいして、地域ちいき地盤じばんとする地場じば資本しほん調和ちょうわ保護ほご要求ようきゅうする。国家こっかてき国際こくさいてき経済けいざい開発かいはつ計画けいかくけての地域ちいき開発かいはつにおいての地方ちほう利害りがい独自どくじせい強調きょうちょうする。

日本にっぽんにおける地域ちいき主義しゅぎ

編集へんしゅう

日本にっぽんにおいては、「地域ちいき主義しゅぎ」の主張しゅちょうは1970年代ねんだいがりをせた。「地域ちいき主義しゅぎ」を言葉ことばとして提唱ていしょうしたのは、玉野井たまのい芳郎よしおで 『地域ちいき分権ぶんけん思想しそう』(1977ねん)において「一定いってい地域ちいき住人じゅうにんが、その地域ちいき風土ふうどてき個性こせい背景はいけいに、その地域ちいき共同きょうどうたいたいして一体いったいかんち、地域ちいき行政ぎょうせいてき経済けいざいてき自立じりつせい文化ぶんかてき独立どくりつせいとを追求ついきゅうすること」と定義ていぎした。背景はいけいには、戦後せんご日本にっぽんすすめられてきた重化学じゅうかがく工業こうぎょう中心ちゅうしん高度こうど経済けいざいなり路線ろせん、それにともなう首都しゅとけん京阪神けいはんしん名古屋なごやけんへの人口じんこう集中しゅうちゅうが、1973ねん石油せきゆ危機ききによってきゅう停止ていしさせられたことがある。日本にっぽん経済けいざい安定あんてい成長せいちょう転換てんかんし、さん大都市だいとしけんへ の人口じんこう流入りゅうにゅうおさまったため、各地かくちでそれぞれの地域ちいき見直みなおそうとするうごきがみられた。玉野たまのつづいて杉岡すぎおかせきおっと清成きよなり忠男ただお増田ますだ四郎しろう樺山かばやま紘一こういち三輪みわこうただしらも地域ちいき主義しゅぎかんする書籍しょせき出版しゅっぱんした。1974ねんには地域ちいき主義しゅぎ研究けんきゅうかいが、1976ねんには地域ちいき主義しゅぎ研究けんきゅうしゅうだんかい発足ほっそくされた。地域ちいき主義しゅぎさかんに提唱ていしょうされた背景はいけいには、高度こうど経済けいざい成長せいちょう弊害へいがい農村のうそん崩壊ほうかい公害こうがい地域ちいき独自どくじせい喪失そうしつなど)にたいする反発はんぱつや、それまで「万能ばんのう処方箋しょほうせん」として「神通力じんずうりき」をっていた社会しゃかい主義しゅぎへの幻滅げんめつなどもあるとされる[3]。1970年代ねんだい地域ちいき主義しゅぎ提唱ていしょう以降いこうもっぱ理論りろん研究けんきゅう中心ちゅうしんであったが、近年きんねんでは玉野井たまのい晩年ばんねん展開てんかいした産直さんちょくろん共同きょうどうてん研究けんきゅうさい評価ひょうかして1990年代ねんだい国内こくないきゅう成長せいちょうした農産物のうさんぶつ直接ちょくせつ販売はんばいをその実践じっせんモデルとする実証じっしょう研究けんきゅうがある[4]

地域ちいき主義しゅぎへの批判ひはんしゃとしては、思想家しそうか松本まつもと健一けんいち農本主義のうほんしゅぎ研究けんきゅうしゃつなさわみつるあきら農村のうそん社会しゃかいがく蓮見はすみ音彦おとひこげられる。かれらは地域ちいき主義しゅぎが「日本にっぽん現実げんじつから、その現実げんじつ否定ひていとしてみだされた理論りろん」ではなく(松本まつもと)「外国がいこく仕込しこみの理論りろん」(つなさわ)であることや、高度こうど経済けいざい成長せいちょうゆがみをこした「巨大きょだい資本しほん官僚かんりょう政治せいじ」を免罪めんざいしてしまうこと(蓮見はすみ)に問題もんだいがあるとみなしていた。戸田とだとおるは、地域ちいき主義しゅぎ両義りょうぎてきなものであったとらえ、地域ちいき振興しんこうによって資本しほん主義しゅぎ体制たいせいささえためんとエコロジー重視じゅうしめんがあり、その両方りょうほう確信かくしんあたえるイデオローグの役割やくわりたしていたとみている[3]

戸田とだ指摘してきどおり、地域ちいき主義しゅぎは2つの潮流ちょうりゅうかれていった。ひとつはせい成忠しげただおとこ地域ちいき経済けいざい地場じば産業さんぎょう振興しんこうくグループで、「情念じょうねんてき」ではなかったため(玉城たまきあきら)、地方ちほう都市とし中心ちゅうしんれられ、行政ぎょうせい政策せいさくにもれられた。もうひとつは、中村なかむら尚司しょうじ地域ちいき自立じりつとエコロジズトてき実践じっせん重視じゅうしするグループで、発展はってん途上とじょうこくにおける「もうひとつの発展はってん」を探究たんきゅうするうちはつてき発展はってんろんむすびついた[3]

地域ちいき主義しゅぎ政治せいじ分野ぶんやにおける地方ちほう分権ぶんけんにつながり、発想はっそうとしての地域ちいき資源しげん見直みなおし・活用かつよう経済けいざいてきゆたかさにたいする生活せいかつ文化ぶんかゆたかさ重視じゅうし全国ぜんこく画一かくいつから地域ちいき個性こせい発揮はっきなどをふくんでいる。1970年代ねんだい前半ぜんはんは、政治せいじ地方ちほう自治じち世界せかいでは「地方ちほう時代じだい」がとなえられた時期じきであった。ただ、その市場いちば地球ちきゅう規模きぼながれのなか、「ふるさとそうせい」など一時いちじもどしはあったが、日本にっぽんにおける地域ちいき主義しゅぎ格別かくべつ進展しんてんをみせなかった。

ただし、2000年代ねんだいから、既成きせい政党せいとう反発はんぱつした首長しゅちょう地方ちほう議員ぎいんらが、相次あいついで地域ちいき政党せいとう擁立ようりつ地域ちいき分権ぶんけん有権者ゆうけんしゃびかける「地域ちいき政党せいとうブーム」なるものが発生はっせいしており、その情勢じょうせい変化へんかする可能かのうせい指摘してきされている。ただし、日本にっぽんにおける地域ちいき政党せいとうには、とく大阪おおさか維新いしんかい特徴とくちょうてきだが、むしろグローバリズム国家こっか主義しゅぎ強調きょうちょうし、「地域ちいきから日本にっぽんえる」という標語ひょうごとなえて国政こくせい政党せいとう指向しこうするという現象げんしょうがしばしばみとめられる。日本にっぽんにおけるどうしゅうせい論議ろんぎについては、かつては地域ちいき復権ふっけんをめぐる地域ちいき主義しゅぎ文脈ぶんみゃくげられたこともあったが、そのはむしろしん自由じゆう主義しゅぎグローバル資本しほん主義しゅぎ接続せつぞくするながれが強調きょうちょうされ、むしろ本来ほんらいてき地域ちいき主義しゅぎとは対立たいりつする要素ようそつよまっている。大阪おおさか大阪おおさか提案ていあんする大阪おおさか構想こうそう新潟にいがたけん新潟にいがた提案ていあんする新潟にいがたしゅう構想こうそうなどである。

市民しみん運動うんどう消費しょうひしゃ運動うんどう地域ちいき政党せいとう結成けっせいむすびついた事例じれいもある。代表だいひょうてきれい生活せいかつクラブ生活協同組合せいかつきょうどうくみあいからこった代理人だいりにん運動うんどうである。おも都市とし中心ちゅうしんいま地方ちほう議員ぎいん多数たすうようしている。市民しみんオンブズマン運動うんどうから地方ちほう議員ぎいん輩出はいしゅつしたれいもある。

国際こくさいあいだ地域ちいき主義しゅぎ

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脚注きゃくちゅう

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  1. ^ 高木たかぎかねさく地域ちいき主義しゅぎ日本にっぽん)」 - 日本にっぽんだい百科全書ひゃっかぜんしょ(ニッポニカ)小学しょうがくかん
  2. ^ 「ローカリズム」 - デジタル大辞泉だいじせん小学しょうがくかん
  3. ^ a b c 市川いちかわ虎彦とらひこ, 「まちづくりろん陥穽かんせい : 地域ちいき自立じりつ論理ろんりから自治体じちたいあいだ競争きょうそう論理ろんり」『松山大学まつやまだいがく論集ろんしゅう』 13かん 1ごう p.157-175, 2001ねん, ISSN 09163298
  4. ^ Kōchi, Yoshiaki; 河内かわうち, 良彰よしあき (2022.4). Chiiki shugi no jissen : nōsanbutsu no chokusetsu hanbai no yukue. Kyōto. ISBN 978-4-7795-1647-4. OCLC 1325633758. https://www.worldcat.org/oclc/1325633758 

関連かんれん項目こうもく

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