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対抗要件 - Wikipedia

対抗たいこう要件ようけん(たいこうようけん)とは、すでに当事とうじしゃあいだ成立せいりつした法律ほうりつ関係かんけい権利けんり関係かんけいとく権利けんり変動へんどう)を当事とうじしゃ以外いがいの(一定いっていの)第三者だいさんしゃたいして対抗たいこう主張しゅちょう)するための法律ほうりつ要件ようけん

法律ほうりつ関係かんけい権利けんり関係かんけい成立せいりつするための法律ほうりつ要件ようけん成立せいりつ要件ようけんという。しかし、この法律ほうりつ関係かんけい権利けんり関係かんけいは、五感ごかん作用さようにより直接ちょくせつ感知かんちできるものではない。そこで、第三者だいさんしゃが、法律ほうりつ関係かんけい権利けんり関係かんけい存在そんざい感知かんちできるようななんらかの外部がいぶてきちょうひょう(めじるし)が必要ひつようとなる。この外部がいぶてきちょうひょうとなるものが対抗たいこう要件ようけんである。

物権ぶっけん変動へんどう対抗たいこう要件ようけん

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日本にっぽん民法みんぽうは、不動産ふどうさん物権ぶっけん変動へんどう物権ぶっけん得喪とくそうおよび変更へんこう)については不動産ふどうさん登記とうきほうによる登記とうき民法みんぽう177じょう)、動産どうさん物権ぶっけん変動へんどうについては引渡ひきわた対抗たいこう要件ようけんとしている(民法みんぽう178じょう)。なお、債権さいけんしつ対抗たいこう要件ようけんについては#債権さいけん譲渡じょうと対抗たいこう要件ようけん参照さんしょう

不動産ふどうさん物権ぶっけん変動へんどう

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不動産ふどうさん物権ぶっけん変動へんどうにおける登記とうき位置いちづけについては成立せいりつ要件ようけん主義しゅぎ対抗たいこう要件ようけん主義しゅぎかれる[1]

  • ドイツほう成立せいりつ要件ようけん主義しゅぎ
    公示こうじ手段しゅだんである登記とうきたんたい第三者だいさんしゃ関係かんけいでのみ意味いみをもつものではなく、同時どうじ当事とうじしゃあいだでは物権ぶっけん変動へんどう成立せいりつさせる要件ようけんであるとする立法りっぽうれい[1]
  • フランスほう対抗たいこう要件ようけん主義しゅぎ
    公示こうじ手段しゅだんである登記とうき当事とうじしゃあいだでの物権ぶっけん変動へんどうとは直接ちょくせつ関係かんけいはなく、たんたい第三者だいさんしゃ関係かんけい物権ぶっけん変動へんどう対抗たいこうするための要件ようけんであるとする立法りっぽうれい[1]

日本にっぽん民法みんぽう対抗たいこう要件ようけん主義しゅぎをとっており、不動産ふどうさんかんする物権ぶっけん変動へんどう第三者だいさんしゃ対抗たいこうするためには原則げんそくとして不動産ふどうさん登記とうきほうによる登記とうき必要ひつようであるとする(民法みんぽう177じょう)。そのため、たとえば、土地とち所有しょゆうしゃであったAが同一どういつ土地とちをBとC双方そうほう売却ばいきゃくした場合ばあい、BとCはその土地とちについてさき所有しょゆうけん移転いてん登記とうきをしなければ相手方あいてがた土地とち所有しょゆうけん対抗たいこうできないことになる。

動産どうさん物権ぶっけん変動へんどう

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動産どうさんかんする物権ぶっけん譲渡じょうとについては、第三者だいさんしゃ対抗たいこうするためには、原則げんそくとして引渡ひきわた必要ひつようである(民法みんぽう178じょう)。ここでいう引渡ひきわたしは、現実げんじつ引渡ひきわた簡易かんい引渡ひきわた指図さしずによる占有せんゆう移転いてん占有せんゆう改定かいていをいう。

なお、自動車じどうしゃのように動産どうさんにも登録とうろく制度せいどがある場合ばあいがある。

法人ほうじん場合ばあいは、動産どうさん譲渡じょうと登記とうきにより、第三者だいさんしゃ対抗たいこうすることもできる。くわしくは、動産どうさんおよ債権さいけん譲渡じょうと対抗たいこう要件ようけんかんする民法みんぽう特例とくれいとうかんする法律ほうりつ参照さんしょうのこと。

あかりみとめ方法ほうほう

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立木たちきだけを譲渡じょうと、もしくは、立木たちき所有しょゆうけん留保りゅうほしたまま土地とち売買ばいばいする場合ばあい立木たちきほう登記とうきまたはあかりみとめ方法ほうほうが、対抗たいこう要件ようけんとなる。あかりみとめ方法ほうほうとは、立木たちきかわけず名前なまえひとし土地とちとは独立どくりつしたものであることを外部がいぶから認識にんしきできる状態じょうたいにするものである。いね立毛たちげなどについてももちいられる。

債権さいけん譲渡じょうと対抗たいこう要件ようけん

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債権さいけん譲渡じょうとにおいては、債務さいむしゃ対抗たいこう要件ようけん債務さいむしゃたいして債権さいけん行使こうしするための要件ようけん正確せいかくには対抗たいこう要件ようけんではないとされる。)と第三者だいさんしゃ対抗たいこう要件ようけん譲受人ゆずりうけにんなどの第三者だいさんしゃへの対抗たいこう要件ようけん通常つうじょう意味いみにおける対抗たいこう要件ようけんである。)が区別くべつされる。債権さいけんしつ設定せってい譲渡じょうとについても、同様どうように、だいさん債務さいむしゃ対抗たいこう要件ようけん第三者だいさんしゃ対抗たいこう要件ようけん区別くべつされる。

指名しめい債権さいけん

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指名しめい債権さいけん譲渡じょうとについては、譲渡じょうとじんから債務さいむしゃへの通知つうちか、債務さいむしゃから譲渡じょうとじんまた譲受人ゆずりうけにんへの承諾しょうだく債務さいむしゃ対抗たいこう要件ようけんである(民法みんぽう467じょう1こう)。そして、確定かくてい日付ひづけのある証書しょうしょ内容ないよう証明しょうめい郵便ゆうびん公正こうせい証書しょうしょなど)による通知つうちまた承諾しょうだく第三者だいさんしゃ対抗たいこう要件ようけんとなる(どうじょう2こう)が、この場合ばあい同時どうじ債務さいむしゃ対抗たいこう要件ようけんそなえたことになる。しつけん設定せっていにも準用じゅんようされる(民法みんぽう364じょう)。

法人ほうじん金銭きんせん債権さいけん譲渡じょうとする場合ばあいは、債権さいけん譲渡じょうと登記とうきにより、第三者だいさんしゃ対抗たいこう要件ようけんのみをそなえることもできる。債務さいむしゃ対抗たいこう要件ようけんについては、登記とうき通知つうちまた承諾しょうだく必要ひつようである。くわしくは、債権さいけん譲渡じょうとおよ動産どうさんおよ債権さいけん譲渡じょうと対抗たいこう要件ようけんかんする民法みんぽう特例とくれいとうかんする法律ほうりつ参照さんしょうのこと。

有価ゆうか証券しょうけん

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指図さしず債権さいけん記名きめいしき所持しょじじんはらい債権さいけんおよ記名きめい債権さいけん証券しょうけんてき債権さいけんばれ、民法みんぽう譲渡じょうと対抗たいこう要件ようけんとう規定きていがあった[2]証券しょうけんてき債権さいけん譲渡じょうと規定きてい指名しめい債権さいけん譲渡じょうと規定きていのちかれていた)。

2017ねん成立せいりつした改正かいせい民法みんぽう民法みんぽうだい3へんだい7せつ有価ゆうか証券しょうけん」を新設しんせつ有価ゆうか証券しょうけん一般いっぱんてき規律きりつとして整備せいびした[2]指図さしず証券しょうけん記名きめいしき所持しょじじんはらい証券しょうけん、その記名きめい証券しょうけん記名きめい証券しょうけん類型るいけいされた)。これにともな改正かいせいぜん民法みんぽう365じょう・469じょう・470じょう・472じょう記名きめいしき所持しょじじんはらい債権さいけんかんする改正かいせいぜん民法みんぽう471じょう記名きめい債権さいけんかんする改正かいせいぜん民法みんぽう86じょう3こう・473じょう削除さくじょまたは変更へんこうされた[2]

法人ほうじんかんする特例とくれい

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法人ほうじんがする債権さいけん譲渡じょうと対抗たいこう要件ようけんかんしては動産どうさんおよ債権さいけん譲渡じょうと対抗たいこう要件ようけんかんする民法みんぽう特例とくれいとうかんする法律ほうりつとくそくがある。

不動産ふどうさん賃借ちんしゃくけん対抗たいこう要件ようけん

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民法みんぽう

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不動産ふどうさん賃借ちんしゃくけんは、地上ちじょうけんちが債権さいけんにすぎないので、あらたに不動産ふどうさん所有しょゆうけんしゃになったものには対抗たいこうできないとするのが原則げんそくであるが、登記とうきしたときは対抗たいこう可能かのうになる(民法みんぽう605じょう)。ただし、不動産ふどうさん賃借ちんしゃくけん登記とうきされるには、賃貸ちんたいじん協力きょうりょく必要ひつようであり、協力きょうりょくられることはまずないので、不動産ふどうさん賃借ちんしゃくけん登記とうきされることはまれである。

借地しゃくち借家しゃくやほう

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借地しゃくち借家しゃくやほうでは、借地しゃくちけん建物たてもの所有しょゆう目的もくてき土地とち賃借ちんしゃくけん地上ちじょうけん)と建物たてもの賃貸借ちんたいしゃくについて、とくそくさだめている。借地しゃくちけんについては、登記とうきがなくても土地とちうえ土地とち賃借ちんしゃくじん所有しょゆうするすんで登記とうき建物たてものがあれば、対抗たいこうできる(どうほう10じょう)。建物たてもの賃貸借ちんたいしゃくについては、登記とうきがなくても建物たてもの引渡ひきわたしがあれば対抗たいこうできる(どうほう31じょう)。きゅう借家しゃくやほうおよびきゅう建物たてもの保護ほごほう規定きていいだものである。

株式かぶしき譲渡じょうと対抗たいこう要件ようけん

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株券かぶけん発行はっこう会社かいしゃ
株券かぶけん発行はっこう会社かいしゃでは、株式かぶしき取得しゅとくしゃ氏名しめい名称めいしょう住所じゅうしょ株主かぶぬし名簿めいぼへの記載きさいが、株式会社かぶしきがいしゃ第三者だいさんしゃたいする対抗たいこう要件ようけんとなる(会社かいしゃほう130じょう1こう)。
株券かぶけん発行はっこう会社かいしゃ
株券かぶけん発行はっこう会社かいしゃでは、株式かぶしき取得しゅとくしゃ氏名しめい名称めいしょう住所じゅうしょ株主かぶぬし名簿めいぼへの記載きさいが、株式会社かぶしきがいしゃたいする対抗たいこう要件ようけんとなる(会社かいしゃほう130じょう2こう)。なお、株券かぶけん交付こうふが、効力こうりょく発生はっせい要件ようけんである(会社かいしゃほう128じょう1こう)。

法人ほうじん設立せつりつ対抗たいこう要件ようけん

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民法みんぽうきゅう法人ほうじん規定きていは、公益こうえき法人ほうじん設立せつりつ登記とうきは、成立せいりつ要件ようけんではなく第三者だいさんしゃたいする対抗たいこう要件ようけんであるとしていた。現在げんざいは、一般いっぱん社団しゃだん財団ざいだん法人ほうじんほう施行しこうにより、一般いっぱん社団しゃだん法人ほうじん一般いっぱん財団ざいだん法人ほうじん設立せつりつ登記とうきは、成立せいりつ要件ようけんとなった(一般いっぱん社団しゃだん財団ざいだん法人ほうじんほう22じょう、163じょう

脚注きゃくちゅう

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出典しゅってん

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  1. ^ a b c 鈴木すずきろくわたる物権ぶっけんほう講義こうぎ 5ていばんそうぶんしゃ、2007ねん、115ぺーじ 
  2. ^ a b c 田邊たなべひろしかん改正かいせい民法みんぽうにおける有価ゆうか証券しょうけんについて」『専修せんしゅう法学ほうがく論集ろんしゅうだい130かん専修大学せんしゅうだいがくほう学会がっかい、2017ねん7がつ、145-174ぺーじdoi:10.34360/00006134ISSN 0386-5800NAID 1200067852492022ねん12がつ10日とおか閲覧えつらん 

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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