山陽特殊製鋼さんようとくしゅせいこう倒産とうさん事件じけん

山陽特殊製鋼さんようとくしゅせいこう倒産とうさん事件じけん（さんようとくしゅせいこうとうさんじけん）とは、1965年ねんに山陽特殊製鋼さんようとくしゅせいこうが倒産とうさんした際さい、同社どうしゃ経営けいえい陣じんが粉飾ふんしょく決算けっさんしていたことが明あきらかになった経済けいざい事犯じはん。

事件じけんの概要がいよう

山陽特殊製鋼さんようとくしゅせいこう株式会社かぶしきがいしゃは資本しほん金きん73.3億おく円えんで上場じょうじょうしていた大手おおて特殊とくしゅ鋼こうメーカーであったが、1965年ねん3月6日にちに自主じしゅ再建さいけんを断念だんねん、神戸こうべ地方裁判所ちほうさいばんしょ姫路ひめじ支部しぶに会社かいしゃ更生こうせい法ほうの適用てきようを申請しんせいし倒産とうさんした。負債ふさい額がくは当時とうじとしては最悪さいあくの約やく500億おく円えんであった。倒産とうさんの直接ちょくせつの原因げんいんは、過剰かじょうな設備せつび投資とうしにあった。当時とうじ、大手おおての普通ふつう鋼こうメーカーが特殊とくしゅ鋼こう業界ぎょうかいへの進出しんしゅつを計画けいかくしており、同社どうしゃはこれに対抗たいこうするべく多大ただいな設備せつび投資とうしを行おこなった。しかしオリンピック景気けいき後ごの一時いちじ的てきな景気けいき後退こうたいによって鉄鋼てっこう需要じゅようが低迷ていめいしたため、投資とうしを回収かいしゅうすることができず、最終さいしゅう的てきに銀行ぎんこうからの融資ゆうしを返済へんさいできなくなり、倒産とうさんへと至いたったのである。

倒産とうさんをきっかけに、当時とうじの経営けいえい陣じんが約やく70億おく円えんの粉飾ふんしょく決算けっさんを行おこなっていたことが発覚はっかく。社長しゃちょう・荻野おぎの一はじめら役員やくいん7人にんが違法いほう配当はいとう、ヤミ賞与しょうよを出だしたとして商法しょうほう・証券しょうけん取引とりひき法ほう違反いはん、詐欺さぎ罪ざい、業務ぎょうむ上じょう横領おうりょう罪ざいで大阪おおさか地方ちほう検察庁けんさつちょう特別とくべつ捜査そうさ部ぶ（大阪おおさか地検ちけん特捜とくそう部ぶ）によって起訴きそされた。さらに同社どうしゃの役員やくいん14名めいに対たいし16億おく円えんを会社かいしゃに賠償ばいしょうするよう裁判所さいばんしょから命令めいれいが出だされた。

倒産とうさん当時とうじ、常務じょうむであった上杉うえすぎ年一としかずは、ほとんどの役員やくいんが解任かいにんされる中なか、技術ぎじゅつ者しゃであったため管財かんざい人じんより会社かいしゃに残のこるよう指示しじされ会社かいしゃ再建さいけんに尽力じんりょく、後のちに社長しゃちょうになった。『華麗かれいなる一族いちぞく』の万まん俵ひょう鉄平てっぺいや一之瀬いちのせ工場こうじょう長ちょうのモデルの一人ひとりである。

事件じけんの影響えいきょう

多おおくの関連かんれん企業きぎょうや下請したうけ企業きぎょうも連鎖れんさ倒産とうさんした。中小ちゅうしょう下請したうけ会社かいしゃの保護ほごが政治せいじ問題もんだいになり、国会こっかいでも取とり上あげられた。そしてこの事件じけんを契機けいきに、会社かいしゃ更生こうせい法ほうなどが改正かいせいされ、下請したうけの中小ちゅうしょう企業きぎょうがもつ債権さいけんについては優先ゆうせん的てきに弁済べんさいが受うけられるようになった。さらに、監査かんさ制度せいどの充実じゅうじつを図はかるため、証券しょうけん取引とりひき法ほうや公認こうにん会計士かいけいし法ほう等ひとしが改正かいせいされ、連結れんけつ決算けっさん制度せいどが導入どうにゅうされる遠因えんいんとなった。また、清水しみず一行いっこうの小説しょうせつ『殺人さつじん念書ねんしょ』は本ほん事件じけんを題材だいざいとしている。更さらに山崎やまざき豊子とよこの小説しょうせつ『華麗かれいなる一族いちぞく』でも本ほん事件じけんを重要じゅうようなエピソードとして取とり上あげている。

なお、山陽特殊製鋼さんようとくしゅせいこうは1974年ねんには会社かいしゃ更生こうせいに成功せいこうし（ドラマ版ばん「華麗かれいなる一族いちぞく」第だい一いち作さくが同年どうねんに放送ほうそうされている）、1980年ねんには大証だいしょう2部ぶ（1982年ねんに1部ぶ銘柄めいがらに指定してい）に、1985年ねんには東証とうしょう1部ぶに再さい上場じょうじょうを果はたした。

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