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成層圏 - Wikipedia

成層圏せいそうけん

大気たいき垂直すいちょく構造こうぞうにおいて対流圏たいりゅうけんうえ中間なかまけんした位置いちするそう
地球ちきゅう大気たいき鉛直えんちょく構造こうぞう
宇宙うちゅう空間くうかん
やく10,000 km
外気がいきけん
800 km
ねつけん
電離層でんりそう
 (カーマン・ライン) (100 km)
80 km
ちゅうあいだけん
50 km
成層圏せいそうけん
オゾンそう
11 km
対流圏たいりゅうけん 自由じゆう大気たいき
1 km
境界きょうかいそう
0 km
高度こうどちゅう緯度いど平均へいきん / ひょう

成層圏せいそうけん(せいそうけん、えい: stratosphere) は、地球ちきゅう大気たいきそうひとつ。

概要がいよう

編集へんしゅう
 
成層圏せいそうけん高度こうどやく36km)での写真しゃしんれい上空じょうくうくらく、地平線ちへいせんじょうには青白あおじろ大気たいきそうえる。

対流圏たいりゅうけんちゅうあいだけんあいだ位置いちするそうである[1]

対流圏たいりゅうけん成層圏せいそうけんとの境目さかいめ対流圏たいりゅうけん界面かいめん高度こうど極地きょくちやく8km、緯度いどひくくなるにしたがってたかくなり赤道せきどう付近ふきんやく17km)、成層圏せいそうけん中間なかまけんとの境目さかいめ成層圏せいそうけん界面かいめん高度こうどやく50km)とばれる[1]

成層圏せいそうけん特徴とくちょう

編集へんしゅう

対流圏たいりゅうけんちゅうあいだけんでは高度こうどとともに温度おんどひくくなるのにたいして、成層圏せいそうけんではぎゃくに、高度こうどとともに温度おんど上昇じょうしょうする[1]成層圏せいそうけん下部かぶ対流圏たいりゅうけん界面かいめん付近ふきんでは気温きおんやく-56℃前後ぜんこうであるのにたいして、中間なかまけんとのさかい成層圏せいそうけん界面かいめん付近ふきんでは-15℃から0℃になることがある。ただし、上空じょうくうくほど高温こうおんといっても成層圏せいそうけん温度おんど上昇じょうしょうりつ一定いっていではない。まず、対流圏たいりゅうけん界面かいめんたかさを10kmとすると、ここからうえに20kmくらいまでの温度おんど対流圏たいりゅうけん界面かいめんとほぼ等温とうおん状態じょうたいたもたれる。そこからやく15kmくらいまでは温度おんどがわずかに上昇じょうしょうするそうがあり、さらにそこから成層圏せいそうけん界面かいめんまでは温度おんど急激きゅうげき上昇じょうしょうする。

成層圏せいそうけん高度こうどとともに温度おんど上昇じょうしょうするのは、成層圏せいそうけんなか存在そんざいするオゾンそう太陽たいようからの紫外線しがいせん吸収きゅうしゅうするからである。オゾン濃度のうど一番いちばんたかいのは高度こうどやく20 - 25km付近ふきんだが、実際じっさい成層圏せいそうけんない温度おんど一番いちばんたかいのは高度こうどやく50km付近ふきんである。この理由りゆうは、オゾン濃度のうどがどうであれ上部じょうぶのオゾンそうほど濃度のうどたか紫外線しがいせん吸収きゅうしゅうすることもでき、また、上層じょうそうほど空気くうき密度みつどひくいことから温度おんど上昇じょうしょうりつおおきいためである。この理由りゆうから成層圏せいそうけんでは実際じっさいのオゾン濃度のうど一番いちばんたか付近ふきんよりもうえ温度おんど最大さいだい場所ばしょがある。

成層圏せいそうけんという名称めいしょうからは、このそう対流圏たいりゅうけんのような擾乱じょうらんのあるそうではなく安定あんていした成層せいそうであるかのような印象いんしょうける。たしかに対流圏たいりゅうけんほど気象きしょう活発かっぱつではないが、完全かんぜん成層せいそうでもない。成層圏せいそうけん発見はっけんはおよそ100ねん以上いじょうまえにもさかのぼる。1902ねんフランス気象きしょう学者がくしゃティスラン・ド・ボール(1855ねん - 1913ねん)が気球ききゅう観測かんそくによって対流圏たいりゅうけんとは構造こうぞうがややことなったそうがあることを発見はっけんし、翌年よくねん発表はっぴょうした。その発表はっぴょう内容ないようは、成層圏せいそうけん対流圏たいりゅうけんとはことなり成層圏せいそうけん下部かぶ温度おんどひくく、上部じょうぶ温度おんどたかいというものであった。したがって、下部かぶおも気体きたいが、上部じょうぶかる気体きたいがあるため、上下じょうげ混合こんごうこらないと推定すいていしたことから、当時とうじはこのそう成層せいそうであるとかんがえられてきた。これが現在げんざいのstratosphere 成層圏せいそうけんという名前なまえ由来ゆらいである。語源ごげんとなったラテン語らてんごの stratusは、英語えいごで 'a spreading out'(ひろがり)のである。その高層こうそう気象きしょう観測かんそく技術ぎじゅつ発達はったつ成層圏せいそうけん本格ほんかくてき研究けんきゅうにより、実際じっさい成層圏せいそうけんでも上下じょうげ混合こんごうこっており、成層圏せいそうけんないでもふういていることがかった。

成層圏せいそうけんないでのふう分布ぶんぷには興味深きょうみぶか特徴とくちょうがあり、まず成層圏せいそうけん下部かぶでは対流圏たいりゅうけん上部じょうぶ偏西風へんせいふう影響えいきょうけ、おおむね西風せいふういている。成層圏せいそうけんじょう中部ちゅうぶではつぎのような現象げんしょうられる。ごく付近ふきんなつ白夜はくやという現象げんしょうきる。したがって、ぶしなつ半球はんきゅうでは太陽たいようがあたる時間じかんていちゅう緯度いどよりも高緯度こういどほうながくなる。そのためごく付近ふきんではオゾンそうによって大気たいきがどんどんあたためられ、結果けっかとしてこうあつ状態じょうたいになる。ぎゃくてい緯度いどでは相対そうたいてき低圧ていあつである。このため、高緯度こういどがわこうあつからてい緯度いどがわ低圧ていあつけて気圧きあつかたぶけりょくしょうじる。気圧きあつかたぶけりょくてい緯度いどから高緯度こういどかうコリオリのちからりあい、これをたすようになつ半球はんきゅう東風こちになる。したがって、成層圏せいそうけんじょう中部ちゅうぶでは特別とくべつ場合ばあいのぞいて、夏季かきつね東風こち、すなわちへん東風こちいている。これを成層圏せいそうけんへん東風こちぶ。またふゆにはぎゃく現象げんしょうき、ごく付近ふきんではなつとはぎゃくいちにちちゅう太陽たいようがあたらない状態じょうたいなのでてい緯度いど付近ふきんくらべて低温ていおん、すなわち低圧ていあつとなる。よって、てい緯度いどから高緯度こういどけて気流きりゅうしょうじ、コリオリのちからけて偏西風へんせいふうとなる。これを成層圏せいそうけん偏西風へんせいふうという。この現象げんしょうぶしによって変化へんかするふう、すなわち季節風きせつふうとらえることができる。この現象げんしょうはいわば「成層圏せいそうけんのモンスーン」である。この循環じゅんかんくわえて、なつ極上ごくじょうそらではねつけんかう上昇じょうしょう気流きりゅうふゆ極上ごくじょうそらではねつけんからの下降かこう気流きりゅうこっており、これらをまとめてブリューワー・ドブソン循環じゅんかんんでいる。成層圏せいそうけん偏西風へんせいふう成層圏せいそうけんへん東風こちどちらも最大さいだい風速ふうそくやく50m/sである。

このように成層圏せいそうけん名前なまえのように成層せいそうではなく大気たいき擾乱じょうらんがある。ただし、うえべたことは通常つうじょうぶし変化へんかしめしたものであり、冬季とうき成層圏せいそうけん突然とつぜんのぼりあつしという現象げんしょうこったさいには、成層圏せいそうけん偏西風へんせいふう東風こちになることがある。

成層圏せいそうけん発見はっけん

編集へんしゅう

19世紀せいきまつからフランスのテスラン・ド・ボールはパリ郊外こうがいのトラペスで無人むじん気球ききゅうもちいて高層こうそう気象きしょう観測かんそくおこなっていたが、1898ねん4がつ夜間やかん観測かんそくはじめて高度こうど10 kmでのぼりあつしするそう観測かんそくした。同年どうねん6がつ8にち早朝そうちょう観測かんそくでも高度こうど11.8 km以上いじょうで-59℃の等温とうおんそう観測かんそくした。しかしかれ太陽たいよう放射ほうしゃけて温度おんどがったのではないかと測定そくてい結果けっかうたがったため、科学かがくアカデミーへの報告ほうこくでは高度こうど13 kmで-71℃に気温きおんげる補正ほせいおこなった[2]

かれは1899ねん1がつ8にち夜間やかん観測かんそくでも上層じょうそう等温とうおんそう観測かんそくした。かれ測定そくていカバーからの放射ほうしゃうたがい、温度おんどけいをカバーのそとうつした。それでも結果けっかわらずやはり等温とうおんそう観測かんそくした[3]かれ同時どうじ複数個ふくすうこ気球ききゅうげて、確認かくにんのための比較ひかく観測かんそくおこなったりもした[4]

テスラン・ド・ボールのかみせい気球ききゅう安価あんか観測かんそく頻度ひんどかせぐことができた。それにまだゴムせい気球ききゅうがない時代じだいに、かれかるかみせい気球ききゅう比較的ひかくてきたか高度こうどまで容易よういたっすることができた。かれが1902ねんまでにパリでおこなった観測かんそくでは、236高度こうど11 km以上いじょうたっし、そのうち74高度こうど14 km以上いじょうたっした。かれすうおおくの観測かんそく注意深ちゅういぶか確認かくにんにより、等温とうおんそう観測かんそくあやまりや一時いちじてき現象げんしょうではなく、実在じつざいする定常ていじょうてき現象げんしょうであるとかんがえた[5]かれは1902ねん4がつ28にちのパリの科学かがくアカデミーの会合かいごうで、この等温とうおんそう発見はっけんを2ページの文書ぶんしょ報告ほうこくした(フランス中央ちゅうおう気象台きしょうだい長官ちょうかんマスカールが代読だいどくしたことになっている)[6]

一方いっぽう、ドイツの気象きしょう学者がくしゃリヒャルト・アスマンは1900ねんころにはドイツのゴム会社かいしゃ共同きょうどううすくてかるくよくびるゴムせい気球ききゅう開発かいはつした。しかし、ゴムの性能せいのうのためか当初とうしょ高度こうど15~16 kmで破裂はれつして、それ以上いじょう高度こうどにはなかなかがれなかった。それでもていせき気球ききゅうよりは高度こうど10 km以上いじょうまで安定あんていして観測かんそくできた。後年こうねんには改良かいりょうされて高度こうど30 km程度ていどまで上昇じょうしょうできるようになった。

アスマンは1901ねんの4がつから11がつまで、ベルリンでゴムせい探測たんそく気球ききゅうもちいて6かい高層こうそう気象きしょう観測かんそくおこない、それらは高度こうど12~17 kmまでたっした。そして1902ねん5がつ1にちのベルリンの科学かがくアカデミーの会合かいごうにおいて、高度こうど10 km以上いじょう気温きおんげんりつ急速きゅうそくにゆっくりとなって等温とうおんそうたっするかむしろのぼりあつしこっており、高度こうど10 kmから12 kmよりたか高度こうどあたたかい大気たいきながれがあることはうたがいようがないことをしめした[7]。また、そのさいにはかれはテスラン・ド・ボールがパリで200かい以上いじょう観測かんそくおこなっていることをしめし、アスマンはテスラン・ド・ボールの観測かんそくおなじような結果けっかしめしていることをくわえた[7]

テスラン・ド・ボールとアスマンの発表はっぴょうによって、上空じょうくう気温きおん下降かこうまることが研究けんきゅうしゃたちに明確めいかく意識いしきされはじめた。テスラン・ド・ボールとそれを支持しじするアスマンの結果けっかは、各国かっこく科学かがくしゃあつまった1902ねん5がつ20日はつかのベルリンでのだい3かい科学かがく航空こうくう国際こくさい委員いいんかい(the International Committee for Scientific Aeronautics)」の会合かいごう発表はっぴょうされた[8]。その、このせつ各国かっこくひろまった。

テスラン・ド・ボールの報告ほうこくがアスマンの発表はっぴょうよりわずかにはやかったことと、アスマンがテスラン・ド・ボールの結果けっか自分じぶん結果けっか支持しじ使つかったことから、成層圏せいそうけん発見はっけんをテスラン・ド・ボールの功績こうせきかえしている著作ちょさくぶつおおいようである。しかし、テスラン・ド・ボールのわずか2ページの文書ぶんしょによる報告ほうこくより、実際じっさい観測かんそくデータをしめしたアスマンの論文ろんぶん[7]ほう説得せっとくりょくがあるようにおもえる[だれ?]。ただ、テスラン・ド・ボールとアスマンの二人ふたり功績こうせきしるしているものすくなくなく[3]くに威信いしんをかけた思惑おもわくもあってか成層圏せいそうけん発見はっけんしゃかんする記述きじゅつ統一とういつされていない[9]。なお、6月8にちを「成層圏せいそうけん発見はっけん」としているウェブサイトがあるが、その根拠こんきょ不明ふめいである。

成層圏せいそうけん発見はっけんは、地球ちきゅう球状きゅうじょう層状そうじょう構造こうぞうっているというかんがかた発端ほったんになった。それによって大気たいきだけでなく、海洋かいようのエクマンそうりくいきのモホロビチッチの不連続ふれんぞくめん発見はっけんなど地球ちきゅう科学かがく発展はってんにも影響えいきょうおよぼしたとかんがえられている[10]

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ a b c ちょう高層こうそう大気たいき 理科りか年表ねんぴょうオフィシャルサイト
  2. ^ Ohring, George (1964-01-01). “a most surprising discovery”. Bulletin of the American Meteorological Society 45 (1): 12-14. doi:10.1175/1520-0477-45.1.12. ISSN 0003-0007. https://doi.org/10.1175/1520-0477-45.1.12. 
  3. ^ a b Klaus, Hoinka (1997). “The tropopause: discovery, definition and demarcation”. Meteorologische Zeitschrift 8: 43-46. 
  4. ^ Teisserenc De Bort, Léon Philippe | Encyclopedia.com”. www.encyclopedia.com. 2020ねん9がつ20日はつか閲覧えつらん
  5. ^ 気象きしょうがく気象きしょう予報よほう発達はったつ: 高層こうそう気象きしょう観測かんそくはじまりと成層圏せいそうけん発見はっけん(8) テスラン・ド・ボールによる発見はっけん”. 気象きしょうがく気象きしょう予報よほう発達はったつ (2019ねん3がつ2にち). 2020ねん9がつ20日はつか閲覧えつらん
  6. ^ 気象きしょうがく気象きしょう予報よほう発達はったつ: 高層こうそう気象きしょう観測かんそくはじまりと成層圏せいそうけん発見はっけん(8) テスラン・ド・ボールによる発見はっけん”. 気象きしょうがく気象きしょう予報よほう発達はったつ (2019ねん3がつ2にち). 2020ねん9がつ20日はつか閲覧えつらん
  7. ^ a b c Assmann, Richart (1902-06-30). “Uber die Existenz eines warmeren Luftstromes in der Hohe von 10 bis 15 km”. Sitzber. Konigl. Preuss. Akad. Wiss, Berlin 24 (29). 
  8. ^ ROTCH, A. L. (1902-08-22). “THE INTERNATIONAL AERONAUTICAL CONGRESS”. Science 16 (399): 296-301. doi:10.1126/science.16.399.296. ISSN 0036-8075. https://doi.org/10.1126/science.16.399.296. 
  9. ^ 気象きしょうがく気象きしょう予報よほう発達はったつ: 高層こうそう気象きしょう観測かんそくはじまりと成層圏せいそうけん発見はっけん(10) 成層圏せいそうけん存在そんざい認知にんち”. 気象きしょうがく気象きしょう予報よほう発達はったつ (2019ねん3がつ6にち). 2020ねん9がつ20日はつか閲覧えつらん
  10. ^ 気象きしょうがく気象きしょう予報よほう発達はったつ: 高層こうそう気象きしょう観測かんそくはじまりと成層圏せいそうけん発見はっけん(12)成層圏せいそうけん発見はっけん意義いぎ”. 気象きしょうがく気象きしょう予報よほう発達はったつ (2019ねん3がつ11にち). 2020ねん10がつ18にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく

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