木更津きさらづ甚句じんく

木更津きさらづ甚句じんく（きさらづじんく）とは千葉ちば県けん木更津きさらづ市しに伝つたわる民謡みんよう（甚句じんく形式けいしき）で、別名べつめいを木更津きさらづ節ぶしとも言いう。

由来ゆらい

江戸えど期きに江戸えど・木更津きさらづ間あいだの海運かいうんを司つかさどる木更津きさらづ船せんの船頭せんどうが、往来おうらいの際さいに唄うたっていた船唄ふなうたに由来ゆらいすると言いわれている。幕末ばくまつ（安政あんせい年間ねんかん）にその船唄ふなうたを元もとに木更津きさらづ出身しゅっしんの噺家はなしか木更津きさらづ亭てい柳やなぎ勢ぜいが江戸えどの高座こうざで唄うたい、江戸えど界隈かいわいで流行りゅうこうしたと伝つたえられている。それからしばらく時じが経たつに連つれだんだん廃すたれていったが、大正たいしょう時代じだいに木更津きさらづから上京じょうきょうした芸妓げいぎ・小野おのきくが「若福わかふく」という芸名げいめいで新橋しんばしのお座敷ざしきに出でていた折おりに「木更津きさらづ甚句じんく」を披露ひろうし、東京とうきょう花柳かりゅう界かいで再ふたたび流行りゅうこうして全国ぜんこくに広ひろまった。

歌詞かし

歌詞かし

ハァー　木更津きさらづ照てるとも　東京とうきょうは曇くもれ　かわい男おとこが　ヤッサイモッサイ ヤレコリャドッコッコイ コリャコーリャ　日ひに焼やける

NHKには次つぎの歌詞かしが残のこる。

ハー　木更津きさらづ照てるとも東京とうきょうは曇くもれ　可愛かわいい男おとこがヤッサイモッサイ　ヤレコリャドッコイ　コリャコリャ日びに焼やける　隠岐おきの洲崎すざきに茶屋ちゃや町まちよ立たてて　上のぼり下くだりの船ふねを待まつ　狸たぬき可愛かわいや証城寺しょうじょうじの庭にわで　月つきに浮うかれて腹鼓はらつづみ

口くち訳やく

私わたしのいる木更津きさらづは日ひが照てったとしても、東京とうきょうの方ほうは曇くもっておくれ。でないと私わたしの恋こいしいあの方ほうが日ひに焼やけてしまう（色白いろじろのいい男おとこっぷりが台無だいなしになってしまう）。

用語ようご

• 東京とうきょう - 江戸えど期きには「お江戸えどは曇くもる」と唄うたわれていた
• かわい男おとこ - 女性じょせい側がわからみて、恋こいしい相手あいての男性だんせいの事こと
• ヤッサイモッサイ～ - 囃子はやし言葉ことば（掛かけ声ごえ）。語源ごげんは矢那やな川がわの上流じょうりゅうにある船着場ふなつきば「矢崎やさき」と「森崎もりさき」という地名ちめいが元もとで、「矢崎やざきへ、森崎もりさきへ」という掛かけ声ごえが訛なまったと言いわれている

名所めいしょ

1997年ねん12月、鳥居崎とりいさき海浜かいひん公園こうえんに木更津きさらづ甚句じんく記念きねん碑ひが建立こんりゅうされる。記念きねん碑ひは木更津きさらづ甚句じんくを伝つたえる2人ふたりの芸妓げいぎの様子ようすをモチーフにしたものであり、向むかって右側みぎがわが木更津きさらづ甚句じんくを指導しどうする若福わかふく姐ねえさん、左側ひだりがわはその教おしえを引ひき継つぐ女性じょせいを表あらわしている。

参考さんこう文献ぶんけん

• 木更津きさらづ市し史し編集へんしゅう委員いいん会かい『木更津きさらづ市し史し』木更津きさらづ市し 1972.11.3
• 仲井なかい幸二郎こうじろう著ちょ『口くち訳やく 日本にっぽん民謡みんよう集しゅう』蒼あおい洋ひろし社しゃ 1999

関連かんれん項目こうもく

• やっさいもっさい - 木更津きさらづ甚句じんくを元もとに作つくられた祭まつり囃子ばやし。歌うたっているのはデュークエイセスである。
• 白浜しらはま音頭おんど
• 銚子ちょうし大漁たいりょう節ぶし
  • 上記じょうき2つの民謡みんようと木更津きさらづ甚句じんくを合あわせて「千葉ちば県けんの三さん大だい民謡みんよう」と言いわれている。