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梁 (建築) - Wikipedia

りょう (建築けんちく)

建物たてもの水平すいへいたんみち方向ほうこうけられ、ゆか屋根やねなどの荷重かじゅうはしらつたえるざい

りょう(はり、りょう)とは建物たてもの水平すいへいたんみち方向ほうこうけられ、ゆか屋根やねなどの荷重かじゅうはしらつたえるざいのことであり、おも応力おうりょくになう。 はりはおもに鉛直えんちょく荷重かじゅうつたえるが、地震じしんなどにさいしては水平すいへい方向ほうこう荷重かじゅうささえることにもなる。

彦根城ひこねじょうはり
江戸えど時代じだい民家みんかはり
明治めいじ時代じだい町屋まちや吉島よしま」(岐阜ぎふけん高山市たかやまし)のはり
現代げんだい住宅じゅうたくはり米松よねまつ):ドリフトピン工法こうほう

はりにかけられた荷重かじゅうは、はしらかべだいはりつたえられる。はりはしはしらがあるものをだいはりはしら直接ちょくせつつながっていないものをしょうはりとよぶ。Wみやつこ・Sみやつこ・SRCづくり算定さんてい方法ほうほうことなる。

はり特性とくせいは、断面だんめん形状けいじょうながさ・材料ざいりょうによって決定けっていされる。現代げんだい建築けんちくにおいては、はりはおもに鉄骨てっこつ鉄筋てっきんコンクリート木材もくざいつくられる。鉄骨てっこつせいはり部材ぶざいひろ使つかわれるのは、はばひろいフランジをったHかたちこうであり、橋梁きょうりょうにももちいられる。そのにも、みぞがたこうやまがたこう、パイプなどのかたこうはりもちいられている。

構造こうぞう特性とくせい 編集へんしゅう

 
均等きんとう鉛直えんちょく荷重かじゅうのかかるはり変形へんけい点線てんせん中立ちゅうりつじくである。

はり荷重かじゅうがかかると、内部ないぶには、圧縮あっしゅく引張ひっぱげ・剪断応力おうりょくがはたらく。 鉛直えんちょく荷重かじゅうがはたらいた場合ばあい、たいていはりしたとつとなるようなかたちにたわみをしょうじ、上部じょうぶはわずかにちぢみ、ぎゃく下部かぶびるように変形へんけいする。また、断面だんめんのおよそ上下じょうげ半分はんぶん近辺きんぺんにはびもちぢみもせず、圧縮あっしゅく応力おうりょく引張ひっぱ応力おうりょくしょうじないめんがあり、そこは「中立ちゅうりつじく」と定義ていぎされる。

コンクリートは圧縮あっしゅくつよ一方いっぽう引張ひっぱよわいという欠点けってんがある。このため鉄筋てっきんコンクリート構造こうぞうでは引張ひっぱがわ通常つうじょうしたがわかたはり上側うわがわ)に鉄筋てっきんれることで補強ほきょうしている。(現実げんじつには、地震じしんなどを考慮こうりょし、上下じょうげ両側りょうがわ鉄筋てっきんれることがほとんど。)さらに、引張ひっぱによるひびれをふせぐため、あらかじ圧縮あっしゅくりょくのかかったプレストレスト・コンクリート(PC)はりつくられている。これはこう強度きょうどこうせん圧縮あっしゅくりょくをかけながらかたわくない硬化こうかさせて製造せいぞうする。PCはりおも高速こうそく道路どうろはしなどのだい規模きぼ構造こうぞうぶつもちいられる。

はり構造こうぞう解析かいせき使つかわれるモデルとして、きょくげをけた断面だんめんないでの剪断変形へんけいしょうじないと仮定かていしたオイラー・ベルヌーイはりもちいられる。また、はり変形へんけい数学すうがくてき解法かいほうとして「仮想かそう仕事しごとほう」および「たわみかくほう」がある。 はり変形へんけい計算けいさん綿密めんみつおこなわれるのは、りょう自体じたい破壊はかい問題もんだいというよりもむしろ、変形へんけい追随ついずいしきれないガラスなどの破壊はかいけるためである。意匠いしょうてき観点かんてんからも、はりのたわみはなるべくしょうじないように設計せっけいすることがのぞまれる。たとえ構造こうぞうてき安全あんぜんではあっても、にわかるようなたわみがあれば、美観びかんそこなったり心理しんりてき不安ふあんしょうじたりするからである。

つよはり弾性だんせい係数けいすうたかく、断面だんめんモーメントおおきいもの)ほど、たわみをしょうじにくい。はり内部ないぶ応力おうりょく数学すうがくてきもとめる方法ほうほうは、モーメント分配ぶんぱいほうおよび弾性だんせいマトリックスほうがある。

一般いっぱんてき断面だんめん形状けいじょう 編集へんしゅう

 
Iがた断面だんめんはり有利ゆうりとなるきょくげのしき
 
Iがた断面だんめんはり利点りてん発揮はっきできない方向ほうこうきょくげのしき

鉄筋てっきんコンクリートせいはりは、おも長方形ちょうほうけい断面だんめん形状けいじょうつが、もっと効率こうりつ(ここでいう「効率こうりつ」とは、おなだん面積めんせきでどれだけおおきな荷重におもえ、たわみがしょうじにくいはりられるかを意味いみする)のよい断面だんめん形状けいじょうはよくある鉄骨てっこつのような I がたである。 中立ちゅうりつじくからはなれた位置いち、すなわちフランジ部分ぶぶんおおくのだん面積めんせきてることにより、おなだん面積めんせきでよりおおきな断面だんめんモーメントをかせぐことができるからである。

Iがた断面だんめんはりは、フランジ上下じょうげいている場合ばあい鉛直えんちょく方向ほうこうおうりょくたいしてのみ有利ゆうりであり、水平すいへい方向ほうこう荷重かじゅうにはよわい。 鉛直えんちょく水平すいへい両方向りょうほうこう荷重におもたいして有利ゆうり断面だんめん形状けいじょうは、ちょうど “くち”のがたはこじょう構造こうぞうである。この形状けいじょうでは、できるだけ中立ちゅうりつじくからはなれた位置いち断面だんめん集中しゅうちゅうさせつつ、縦横じゅうおう両方りょうほう同等どうとう断面だんめんモーメントをたせることができるからである。この断面だんめん鋼材こうざいとして、角形かくがた鋼管こうかんひろもちいられている。

ほかにも、Lがた(アングル)、Cがた(チャネル)などの断面だんめん形状けいじょうったかたこう適材適所てきざいてきしょもちいられている。

はり材質ざいしつ 編集へんしゅう

はり材料ざいりょうとしてひろもちいられるのは、木材もくざい鉄筋てっきんコンクリート、鉄骨てっこつなどである。とく鋼材こうざいはりとしてもちいられることを前提ぜんていとしたかたこう製造せいぞうされている。

ふるくは石造せきぞう建築けんちくにもはりもちいられていたが、石材せきざいげによわく、ちょうスパンがとりにくいという欠点けってんがあった。 石造せきぞうはしらは、あらかじめ分割ぶんかつして採取さいしゅ加工かこう運搬うんぱんし、げれば鉛直えんちょく方向ほうこう圧縮あっしゅくりょく構造こうぞう成立せいりつする。しかし、直線ちょくせんじょうよこはりではスパンの中間ちゅうかんれることは困難こんなんとなるため、寸法すんぽうじょう制約せいやく発生はっせいするのである。

圧縮あっしゅくのみで成立せいりつし、ちいさな部材ぶざいでもちょうスパンをばすことのできるアーチ構造こうぞう普及ふきゅうすると、石造せきぞうはりインドなど一部いちぶ地域ちいきのぞいてしだいにすたれていった。

ながあいだ木材もくざいからはその原木げんぼく上回うわまわるサイズのざいがとれない、繊維せんい方向ほうこうのばらつきがあるといった制約せいやくじょうおおきなはりつくられなかった。しかし近年きんねん様々さまざま種類しゅるい集成しゅうせいざい開発かいはつされ、強度きょうどのばらつきがすくなく、なおかつおおきなはりつくられるようになっている。

はり意匠いしょう 編集へんしゅう

露出ろしゅつするはりには意匠いしょうてき工夫くふうがなされ、ときにこまかい装飾そうしょくほどこされる。

寺社じしゃ建築けんちくでは、にじはり(こうりょう)とばれる装飾そうしょくてきはりもちいられる。「にじ」のは、ゆるやかに湾曲わんきょくした形状けいじょう由来ゆらいする。にじはりには彫刻ちょうこく彩色さいしきなどのった装飾そうしょくがなされることがおおい。Sがた湾曲わんきょくした海老えびにじはり(えびこうりょう)は禅宗ぜんしゅうさま特徴とくちょうのひとつでもある。

ギリシア建築けんちくオーダーいち要素ようそであるエンタブラチュア石造せきぞうはり) には、しばしば帯状おびじょう彫刻ちょうこくほどこされた。

ログハウスなどでは、木材もくざい質感しつかん強調きょうちょうしたデザインの一環いっかんとして、あえて樹皮じゅひいだだけの丸太まるたはりとしてもちいることがおおい。

関連かんれん項目こうもく 編集へんしゅう