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構成要件 - Wikipedia

構成こうせい要件ようけん(こうせいようけん、どく:Tatbestand、えい: Elements)とは、刑罰けいばつ法規ほうきによって定義ていぎされた犯罪はんざい行為こうい類型るいけいとされているものである。

解説かいせつ

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構成こうせい要件ようけんとは、法律ほうりつ効果こうか発生はっせいさせる前提ぜんていかんがえられるものであり、民法みんぽうでいうところの「法律ほうりつ要件ようけん」のことをすものである。これに対応たいおうする意味いみもちいれば、刑罰けいばつ法規ほうき類型るいけいした犯罪はんざい行為こういかたのことをいう。

もっとも、刑法けいほうがくうえ構成こうせい要件ようけんという概念がいねん重要じゅうよう意味いみつのは、刑法けいほう各論かくろん議論ぎろんされるそれぞれの刑罰けいばつ法規ほうき類型るいけいした各種かくしゅ犯罪はんざい行為こうい解釈かいしゃくしてみちびされた、刑法けいほう総論そうろん議論ぎろんされる犯罪はんざい一般いっぱんてき成立せいりつ要件ようけんとなるからである。

したがって、構成こうせい要件ようけん定義ていぎは、その学説がくせつがよって解釈かいしゃくによりことなる。

構成こうせい要件ようけんろんとは、構成こうせい要件ようけん該当がいとうすることを犯罪はんざい一般いっぱんてき成立せいりつ要件ようけんひとつとしたうえで、これを犯罪はんざいろん中心ちゅうしんてき概念がいねんとすることで、犯罪はんざいろん体系たいけい構成こうせい強固きょうこにするとともに、刑法けいほう総論そうろん刑法けいほう各論かくろんむすびつきを密接みっせつなものにしようとする理論りろんである。

構成こうせい要件ようけんろんは、1906ねんに、ドイツ刑法けいほうがくものエルンスト・ベーリング提唱ていしょうし、M・E・マイヤーメツガーによって発展はってんした理論りろんである[1]

日本にっぽんでは、構成こうせい要件ようけんろんは、昭和しょうわ初期しょき小野おの清一郎せいいちろう瀧川たきがわ幸辰ゆきとしによってほぼどう時期じき紹介しょうかいされたが、日本にっぽん刑法けいほう条文じょうぶんじょう構成こうせい要件ようけんという用語ようごはなく、理論りろんじょう概念がいねんである。

罪刑法定ざいけいほうてい主義しゅぎ観点かんてんから、構成こうせい要件ようけんは、条文じょうぶん一般人いっぱんじん認識にんしき可能かのうかたちさだめられていなくてはならないとされる。ただし、刑法けいほう謙抑けんよくせい立場たちばから、ほう適用てきよう限定げんていするものについては法令ほうれい規定きていされず判例はんれいみとめられるものがあり、これを記述きじゅつされざる構成こうせい要件ようけん要素ようそという。

構成こうせい要件ようけん機能きのう

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  • 罪刑法定ざいけいほうてい主義しゅぎてき機能きのう - 処罰しょばつされる行為こうい明示めいじする機能きのう
  • 犯罪はんざい個別こべつ機能きのう - 成立せいりつ犯罪はんざい罪名ざいめいあきらかにする機能きのう
  • 違法いほう推定すいてい機能きのう構成こうせい要件ようけん該当がいとうする行為こうい原則げんそくとして違法いほうであり、違法いほう阻却事由じゆうがあれば例外れいがいてき違法いほうせいが阻却されるという機能きのう
  • 責任せきにん推定すいてい機能きのう構成こうせい要件ようけん該当がいとうする行為こうい原則げんそくとしてゆうせめであり、責任せきにん阻却事由じゆうがあれば例外れいがいてき責任せきにんが阻却されるという機能きのう
  • 故意こい規制きせい機能きのう故意こいがあるというために認識にんしき対象たいしょうとして必要ひつようとする客観きゃっかんてき事実じじつしめ機能きのう

構成こうせい要件ようけん定義ていぎは、それが提唱ていしょうされたものからみっつに分類ぶんるいされている。構成こうせい要件ようけんは、たとえば、違法いほう責任せきにんのよう直感ちょっかんによってある程度ていど理解りかいられるものとはことなり、法典ほうてんほうおよび条文じょうぶんとの関係かんけいから理論りろんてき定義ていぎされるものである。

行為こうい類型るいけいせつ

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たんなる行為こうい類型るいけいとするせつである。構成こうせい要件ようけん罪刑法定ざいけいほうてい主義しゅぎ機能きのう重視じゅうしし、構成こうせい要件ようけん没却ぼっきゃくてき記述きじゅつてきなものであるとする。構成こうせい要件ようけん違法いほう推定すいてい機能きのう責任せきにん推定すいてい機能きのうゆうさず、構成こうせい要件ようけん該当がいとうせいとはべつ違法いほうせいゆうせめせい確定かくていする必要ひつようがある。この定義ていぎはベーリングにより提唱ていしょうされたものであり、その実体じったいてき意義いぎは、ほう規定きていせいへの着目ちゃくもくである。たとえば、他人たにん権利けんりがあるものを無断むだん所持しょじまたは処分しょぶんする行為こういは、民法みんぽうじょう所有しょゆうけんかんして不法ふほう行為こういが、憲法けんぽうじょうはプライバシーにかんして基本きほんてき人権じんけん侵害しんがいが、そして、刑法けいほうじょう窃盗せっとうとして規定きていされるが、この理論りろんにおける構成こうせい要件ようけんは、ある行為こういかくほう領域りょういきのいずれかに規定きていされたという規定きていせいしめすものであり、行為こうい性質せいしつあきらかにするものである。この理論りろん行為こういろんのち説明せつめいされるのはこのためである。

違法いほう行為こうい類型るいけいせつ

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故意こい過失かしつ責任せきにん要素ようそであるとの立場たちばから、構成こうせい要件ようけん故意こい過失かしつふくまない「違法いほう行為こうい類型るいけい」と定義ていぎする見解けんかい結果けっか価値かちろん立場たちばから主張しゅちょうされる。この見解けんかいにおいては、構成こうせい要件ようけん故意こい規制きせい機能きのう重視じゅうしされており、故意こい対象たいしょうとして構成こうせい要件ようけん想定そうていするため、構成こうせい要件ようけん概念がいねんから故意こい過失かしつといった責任せきにん要素ようそ除外じょがいするのである。この有力ゆうりょくせつからは、故意こいまたは過失かしつにより構成こうせい要件ようけん該当がいとう事実じじつ実現じつげんすることが(違法いほうせい阻却事由じゆう責任せきにん阻却事由じゆうおよび処罰しょばつ阻却事由じゆう存在そんざいしないかぎり)ばってき犯罪はんざい事実じじつであることになる。故意こいはん過失かしつはん構成こうせい要件ようけんのレベルでは区別くべつされないから、その限度げんどでは構成こうせい要件ようけん犯罪はんざい個別こべつ機能きのうゆうしない。通説つうせつ構成こうせい要件ようけんんでいるものを犯罪はんざい類型るいけいび、これが犯罪はんざい個別こべつ機能きのうゆうすることとなる。構成こうせい要件ようけんは、違法いほう推定すいてい機能きのうゆうするが、責任せきにん推定すいてい機能きのうゆうしないとするのが一般いっぱんである。 なお、行為こうい価値かちろん立場たちばから、違法いほう行為こうい類型るいけいであるが、違法いほう要素ようそとしての故意こい過失かしつふくむとするせつもある。この定義ていぎはメツガーとうにより提唱ていしょうされたものであり、その実体じったいてき意義いぎは、ほう領域りょういき性質せいしつへの着目ちゃくもくである。たとえば、他人たにん権利けんりがあるものを無断むだん所持しょじまたは処分しょぶんする行為こういは、禁止きんし規範きはん体系たいけい刑罰けいばつ法規ほうき規定きていされることで違法いほうせいち、ここにおいて、この行為こうい民法みんぽうでもなく、憲法けんぽうでもなく、刑罰けいばつ法規ほうきによってあつかわれるということである。構成こうせい要件ようけんはこの違法いほうせいというほう領域りょういき性質せいしつにより、ほう領域りょういきにおける法律ほうりつ要件ようけん区別くべつされる。この理論りろん行為こういろんのち説明せつめいされることがあるのは、ほう領域りょういき性質せいしつにより行為こうい分別ふんべつされるからである。

違法いほうゆうせめ行為こうい類型るいけいせつ

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構成こうせい要件ようけんを「違法いほうかつゆうせめとされる行為こうい類型るいけい」であると定義ていぎする見解けんかいで、責任せきにん要素ようそとしての故意こい過失かしつ構成こうせい要件ようけん要素ようそふくまれることとなる。この場合ばあい構成こうせい要件ようけん犯罪はんざいごとにことなることとなるから、構成こうせい要件ようけん犯罪はんざい個別こべつ機能きのうゆうすることとなる。また、一般いっぱんてきには、構成こうせい要件ようけんには違法いほう推定すいてい機能きのう責任せきにん推定すいてい機能きのう双方そうほうみとめられることになる。この定義ていぎ小野おの清一郎せいいちろうにより提唱ていしょうされたものであり、その実体じったいてき意義いぎは、条文じょうぶん構造こうぞうへの着目ちゃくもくである。たとえば、他人たにん権利けんりがあるものを無断むだん所持しょじまたは処分しょぶんする行為こういが、どのように規律きりつされるかは条文じょうぶん構造こうぞうによるのであり、この構造こうぞう解釈かいしゃくによって、ほう適用てきようおこなわれる。行為こういにおける故意こいまたは過失かしつ問題もんだいとされるのも体系たいけいじょう条文じょうぶん構造こうぞう前提ぜんていとされるのであり、解釈かいしゃくおこなわれるまえわく意味いみとして条文じょうぶん全体ぜんたい構成こうせい要件ようけんとよばれる。

構成こうせい要件ようけん具体ぐたいてき内容ないよう

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構成こうせい要件ようけん要素ようそは、客観きゃっかんてき構成こうせい要件ようけん要素ようそ ( objektives Tatbestandsmerkmal ) と主観しゅかんてき構成こうせい要件ようけん要素ようそ ( subjektives Tatbestandsmerkmal ) にけることができる。違法いほう構成こうせい要件ようけん責任せきにん構成こうせい要件ようけんける見解けんかいもある。

客観きゃっかんてき構成こうせい要件ようけん要素ようそ

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  • 行為こういせい行為こういせい構成こうせい要件ようけんがい要件ようけんとする少数しょうすうせつもある。
  • 実行じっこう行為こうい:「実行じっこう行為こうい概念がいねんについては未遂みすいろん共犯きょうはんろんとの関係かんけいについて議論ぎろんがある。
  • 結果けっか結果けっか不要ふようとする構成こうせい要件ようけんもある。
  • 行為こうい結果けっか因果いんが関係かんけい結果けっか不要ふようとする構成こうせい要件ようけんにおいては因果いんが関係かんけい不要ふようである。また、詐欺さぎざいなど、構成こうせい要件ようけんによっては特定とくてい因果いんが経過けいか限定げんていされているものもある。

主観しゅかんてき構成こうせい要件ようけん要素ようそ

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犯罪はんざい種類しゅるい構成こうせい要件ようけん要素ようそ

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上記じょうきのうち、実行じっこう行為こうい構成こうせい要件ようけんてき故意こいまたは構成こうせい要件ようけんてき過失かしつはすべての犯罪はんざいについて必要ひつようであるが、要素ようそよう犯罪はんざい種類しゅるいによってことなる。

  • 故意こいはんでは、主観しゅかんてき要素ようそとしては、構成こうせい要件ようけんてき故意こい必要ひつようである。
  • 過失かしつはんでは、主観しゅかんてき要素ようそとしては、構成こうせい要件ようけんてき過失かしつ必要ひつようである。
    • (すべての犯罪はんざい故意こいはん過失かしつはんかのいずれかにあたる。)
  • 結果けっかはんでは、客観きゃっかんてき要素ようそとしては、実行じっこう行為こういくわえて結果けっか因果いんが関係かんけい必要ひつようである。
    • 殺人さつじんざい殺人さつじん既遂きすいざい)(b:刑法けいほうだい199じょう)は、故意こいはんであり結果けっかはんであり、客観きゃっかんてき構成こうせい要件ようけん要素ようそとしては、実行じっこう行為こういれい:ナイフをってひとおそいかかる)、結果けっか発生はっせいひと死亡しぼう)、因果いんが関係かんけい行為こうい結果けっかあいだ因果いんが関係かんけい)が必要ひつようであり、主観しゅかんてき構成こうせい要件ようけん要素ようそとしては、構成こうせい要件ようけんてき故意こい殺人さつじん故意こい)が必要ひつようである。
    • 過失かしつ致傷ちしょうざいは、過失かしつはんであり結果けっかはんであり、客観きゃっかんてき構成こうせい要件ようけん要素ようそとしては、実行じっこう行為こういれい:ナイフがひとさる)、結果けっか発生はっせいひときずう)、因果いんが関係かんけい行為こうい結果けっかあいだ因果いんが関係かんけい)が必要ひつようであり、主観しゅかんてき構成こうせい要件ようけん要素ようそとしては、構成こうせい要件ようけんてき過失かしつ不注意ふちゅうい注意ちゅうい義務ぎむ違反いはん)が必要ひつようである。
  • 挙動きょどうはんでは、客観きゃっかんてき要素ようそとしては、結果けっか因果いんが関係かんけい不要ふようである。
    • たとえば、住居じゅうきょ侵入しんにゅうざい結果けっか因果いんが関係かんけい概念がいねんがなく、挙動きょどうはんである。ただし、侵入しんにゅうくわだてる実行じっこう行為こうい開始かいしされれば未遂みすいざい成立せいりつし、侵入しんにゅうという実行じっこう行為こうい完了かんりょうすれば既遂きすいざいとなる。
    • 窃盗せっとうざい挙動きょどうはんであり、物色ぶっしょく行為こういとう実行じっこう行為こうい着手ちゃくしゅがあり未遂みすいざいとなり、他人たにん財物ざいぶつ占有せんゆう取得しゅとくすることで実行じっこう行為こうい完了かんりょう既遂きすいざいとなる。
    • 暴行ぼうこうざいは、故意こいはんであり挙動きょどうはんであり、客観きゃっかんてき構成こうせい要件ようけん要素ようそとしては、実行じっこう行為こうい暴行ぼうこう行為こうい)が必要ひつようであり、主観しゅかんてき構成こうせい要件ようけん要素ようそとしては、構成こうせい要件ようけんてき故意こい暴行ぼうこう故意こい)が必要ひつようである。
    • 殺人さつじん未遂みすいざいは、結果けっか因果いんが関係かんけい不要ふようであり、挙動きょどうはんるいするともいえる。殺人さつじん未遂みすいざいは、客観きゃっかんてき構成こうせい要件ようけん要素ようそとしては、実行じっこう行為こういれい:ナイフをってひとおそいかかる)が必要ひつようであり、主観しゅかんてき構成こうせい要件ようけん要素ようそとしては、構成こうせい要件ようけんてき故意こい殺人さつじん故意こい)が必要ひつようである。(ひとぬあるいはひときずつくという結果けっか発生はっせい不要ふよう
  • 身分みぶんはんでは、客観きゃっかんてき要素ようそとして身分みぶん必要ひつようである。
    • 業務ぎょうむじょう過失かしつ致傷ちしょうざいは、過失かしつはんであり結果けっかはんであり身分みぶんはんであり、客観きゃっかんてき構成こうせい要件ようけん要素ようそとして身分みぶん業務ぎょうむせい)が必要ひつようである。
  • 目的もくてきはんでは、主観しゅかんてき要素ようそとして目的もくてき必要ひつようである。
    • 文書ぶんしょ偽造ぎぞうざいは、故意こいはんであり挙動きょどうはんであり目的もくてきはんであり、主観しゅかんてき構成こうせい要件ようけん要素ようそとして構成こうせい要件ようけんてき故意こいのほか目的もくてき文書ぶんしょ行使こうし目的もくてき)が必要ひつようである。
結果けっかてき加重かじゅうはん構成こうせい要件ようけん要素ようそ
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結果けっかてき加重かじゅうはんは、基本きほんはん実現じつげんされたのちにさらに一定いってい結果けっか発生はっせいした場合ばあい加重かじゅう処罰しょばつされるものであり、基本きほんはん要件ようけんほかに、一定いっていおも結果けっか因果いんが関係かんけい結果けっかてき加重かじゅうはんとしてのおも結果けっかとの因果いんが関係かんけい)が必要ひつようである。ここでいう因果いんが関係かんけいは、前述ぜんじゅつ客観きゃっかんてき構成こうせい要件ようけん要素ようそ一般いっぱんろんべた因果いんが関係かんけいとはややことなる概念がいねん因果いんが関係かんけいであることに注意ちゅういようする。

  • 傷害しょうがいざいは、暴行ぼうこうざい結果けっかてき加重かじゅうはんであり、暴行ぼうこうざい要件ようけんと、さらに客観きゃっかんてき構成こうせい要件ようけん要素ようそとして、おも結果けっか傷害しょうがい)と、(結果けっかてき加重かじゅうはんとしての)因果いんが関係かんけい必要ひつようである。(ただし、傷害しょうがいざい暴行ぼうこうざい結果けっかてき加重かじゅうはんであることについては、刑法けいほう各論かくろん詳細しょうさい議論ぎろんがなされる)

日本にっぽんほうにおける修正しゅうせいされた構成こうせい要件ようけん

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原則げんそく形態けいたいとして刑罰けいばつ法規ほうき規定きていされる犯罪はんざい類型るいけい基本きほんてき構成こうせい要件ようけんに、規定きていにより修正しゅうせいくわえたかたち規定きていされる犯罪はんざい類型るいけい構成こうせい要件ようけんを、修正しゅうせいされた構成こうせい要件ようけんという。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ 板倉いたくらひろししんてい 刑法けいほう総論そうろん ていばん』勁草書房しょぼう、2001ねん、64ぺーじ

関連かんれん項目こうもく

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