布施ふせ

布施ふせ（ふせ）は、梵語ぼんごでは「檀那だんな（旦那だんな）（ダーナ、दान、dāna）」と呼よび他人たにんに財物ざいぶつなどを施ほどこしたり、相手あいての利益りえきになるよう教おしえを説とくことなど、贈与ぞうよ、与あたえることを指さす^[1]。英語えいごの Donation （ドネーション、寄贈きぞう者しゃ）やDonor（ドナー）とダーナは、同おなじインド・ヨーロッパ語族ごぞくの語源ごげんをもつ^[1]。

仏教ぶっきょうにおいては、全すべての宗派しゅうはにおいて主要しゅような実践じっせん項目こうもくのひとつである。六波羅蜜ろくはらみつのひとつでもある。布施ふせには「財ざい施ほどこせ」「法ほう施ほどこせ」「無む畏かしこ施ほどこせ」の三種さんしゅがある（大智たいち度ど論ろん）。布施ふせをする人ひとをダーナパティ（dānapati）といい、施主せしゅ（せしゅ）、檀越だんおち（だんおつ、だんえつ、だんのつ）、檀徒だんと（だんと）などと訳やくされる。なお、菩提寺ぼだいじにお布施ふせをする家いえを檀家だんか（だんか）という言葉ことばも、檀那だんな、檀越だんおちから来きたものである。また、古ふるくは皇族こうぞくなどが自みずからの領地りょうち（荘園しょうえん）などを寺院じいんに寄よせる（寄付きふする）ことを施ほどこせ入いれ（せにゅう）（する）ということがある。

檀那だんな

檀那だんな（だんな）は、本来ほんらい仏教ぶっきょうの用語ようごで、「布施ふせ」を意味いみするサンスクリット(梵語ぼんご)「ダーナ（दान、dāna）」の訳語やくごである。旦那だんなとも書かく。

概要がいよう

インド・ヨーロッパ祖語そごの"donum（贈おくる）"を起源きげんとしてから派生はせいしたのは、サンスクリットではこの項目こうもくの「ダーナ（旦那だんな）」であるが、一方いっぽうで西洋せいように伝つたわり英語えいごに取とり込こまれたり、日本語にほんご化かした単語たんご"donation（ドネーション）"、"donor（ドナー）"も同おなじような起源きげんと意味いみを持もつ単語たんごである。^[2]^[3]

日本にっぽんにおける用法ようほう

日本にっぽんでは、後のちに特定とくていの寺院じいんに属ぞくしてその経営けいえいを助たすける「布施ふせをする人ひと（梵語ぼんご: dānapati、ダーナパティ、漢かん訳やく: 陀那鉢はち底そこ）」をも意味いみするようになって「檀越だんおち（だんおつ、だんえつ）」とも称しょうされた。中世ちゅうせい以降いこうに有力ゆうりょく神社じんじゃに御ご師し職しょくが置おかれて祈祷きとうなどを通とおした布教ふきょう活動かつどうが盛さかんになると、寺院じいんに限かぎらず神社じんじゃにおいても祈祷きとうなどの依頼いらい者しゃを「檀那だんな」と称しょうするようになった。

また、奉公人ほうこうにんがその主人しゅじんを呼よぶ場合ばあいなどの敬称けいしょうにも使つかわれ、現在げんざいでも女性じょせいがその配偶はいぐう者しゃを呼よぶ場合ばあいに使つかわれている。

布施ふせの種類しゅるい

大智たいち度ど論ろんなど、伝統でんとう的てきには、次つぎのような種類しゅるいが挙あげられている。

財ざい施ほどこせとは、金銭きんせんや衣服いふく食料しょくりょうなどの財ざいを施ほどこすこと。
法ほう施ほどこせとは、仏ふつの教おしえを説とくこと。
無む畏かしこ施ほどこせとは、災難さいなんなどに遭あっている者ものを慰なぐさめてその恐怖きょうふ心しんを除のぞくこと。

その他たに、雑ざつ宝蔵ほうぞう経けいに説とかれる財物ざいぶつを損そこなわない七ななつの布施ふせとして、次つぎの行おこないが説とかれる。布施ふせ波羅蜜はらみつでは「無む財ざいの七なな施ほどこせ」という^[4]。

眼め施ほどこせ：好このましい眼差まなざしで見みる。
和わ顔がお施ほどこせ（和わ顔がお悦えつ色しょく施ほどこせ）：笑顔えがおを見みせること。
言辞げんじ施ほどこせ：粗暴そぼうでない、柔やわらかい言葉ことば遣づかいをすること。
身み施ほどこせ：立たって迎むかえて礼拝れいはいする。身体しんたい奉仕ほうし。
心こころ施ほどこせ：和わと善ぜんの心しんで、深ふかい供養くようを行おこなうこと。相手あいてに共振きょうしんできる柔やわらかな心しん。
床ゆか座ざ施ほどこせ：座すわる場所ばしょを譲ゆずること
房ぼう舍しゃ施ほどこせ：家屋かおくの中なかで自由じゆうに、行こう・来き・座ざ・臥がを得えさせること。宿やどを提供ていきょうすること。

脚注きゃくちゅう

[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]

^ ^a ^b 馬場ばば紀きの寿ひさし『初期しょき仏教ぶっきょう――ブッダの思想しそうをたどる』岩波書店いわなみしょてん〈岩波いわなみ新書しんしょ〉、113頁ぺーじ。ISBN 978-4004317357。
^ 馬場ばば紀きの寿ひさし『初期しょき仏教ぶっきょう――ブッダの思想しそうをたどる』岩波書店いわなみしょてん〈岩波いわなみ新書しんしょ〉、113頁ぺーじ。ISBN 978-4004317357。
^ Online Etymology Dictionary
^ 玄げん侑宗久ひさし『お坊ぼうさんだって悩なやんでる』2006年ねん、文春ぶんしゅん新書しんしょ、78ページ。

外部がいぶリンク

[baba-1] 馬場ばば紀きの寿ひさし『初期しょき仏教ぶっきょう――ブッダの思想しそうをたどる』岩波書店いわなみしょてん〈岩波いわなみ新書しんしょ〉、113頁ぺーじ。ISBN 978-4004317357。

[baba2-2] 馬場ばば紀きの寿ひさし『初期しょき仏教ぶっきょう――ブッダの思想しそうをたどる』岩波書店いわなみしょてん〈岩波いわなみ新書しんしょ〉、113頁ぺーじ。ISBN 978-4004317357。

[3] Online Etymology Dictionary

[4] 玄げん侑宗久ひさし『お坊ぼうさんだって悩なやんでる』2006年ねん、文春ぶんしゅん新書しんしょ、78ページ。

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