熊くま代だい熊ぐま斐

熊くま代だい 熊ぐま斐（くましろ ゆうひ、正徳まさのり2年ねん（1712年ねん） - 安永やすなが元年がんねん12月28日にち（1773年ねん1月がつ20日はつか））は、江戸えど時代じだい中期ちゅうきの長崎ながさきで活躍かつやくした画家がか。江戸えど時代じだいの南みなみ宋そう画がの先駆せんく者しゃ。沈南蘋の彩色さいしき花鳥かちょう画がの技法ぎほうを多おおくの門人もんじんに伝つたえ国内こくないに広ひろめた。この一派いっぱは南みなみ蘋派として知しられ、当時とうじの画壇がだんに大おおきな影響えいきょうをもたらした。

仙せん鶴づる遐齢図ず（絹本けんぽん着色ちゃくしょく、江戸えど時代じだい中期ちゅうき）

本姓ほんせいは神代かみよ（くましろ）氏し。名なは斐（あやる）、字じを淇瞻（きせん）、号ごうを繡江（しゅうこう）。通称つうしょうは彦之進しんのちに甚左衛門えもん。唐風とうふうに熊くま斐と名乗なのった。

生涯しょうがい

虎とら図ず, 1762

代々だいだい唐から通事つうじであった神代かみよ家かの養子ようしとなり、21歳さいで内通ないつう事ごと小頭こがしら見習みならいとなり、小頭こがしらを経へて稽古けいこ通事つうじまで昇進しょうしんするも役人やくにんとしては生涯しょうがい低ひくい地位ちいだった。

画が技わざは、はじめ唐から絵え目め利り御用ごよう絵師えしである渡辺わたなべ秀しげる石せきの門もんで学まなんだ。その後ご、享とおる保ほ17年ねん（1732年ねん）から1年ねんあまり長崎ながさきに滞在たいざい中ちゅうの沈南蘋に直接ちょくせつ師事しじした。入門にゅうもんの口利くちききをしたのは上司じょうしである大だい通事つうじ官かんの梅うめ三十郎さんじゅうろうだったという。続つづいて来日らいにちした沈南蘋の弟子でしである高こう乾いぬいにも教おしえを受うけた。日本人にっぽんじんとして沈南蘋の唯一ゆいいつの直弟子じきでしとなり、その後ご南みなみ蘋流の彩色さいしき花鳥かちょう画がの第一人者だいいちにんしゃとして多おおくの弟子でしを育そだてその画風がふうを全国ぜんこくに広ひろめた。

当時とうじ、沈南蘋の作品さくひんは得難えがたくその代用だいようとはいえ、熊くま斐の画がは高たかく評価ひょうかされ好事こうじ家かなどに多おおく求もとめられた。徳川とくがわ宗勝むねかつなどはわざわざ清きよしから絹きぬを輸入ゆにゅうさせて熊くま斐に描えがかせている。

熊くま斐は世俗せぞくには無欲むよくで、師しとなった沈南蘋を生涯しょうがいにわたり敬愛けいあいした。娘むすめ婿むこの森もり蘭らん斎ときは『蘭らん斎とき画が譜ふ』で熊くま斐の小伝しょうでんを伝つたえている。

門弟もんてい

詳細しょうさいは「沈南蘋#南みなみ蘋派」を参照さんしょう

門弟もんていに宋そう紫むらさき石せき・鶴づる亭てい・森もり蘭らん斎とき等ひとしがいる。次男じなんの熊くま斐文と三男さんなんの熊くま斐明も父ちちを継ついで絵師えしとなった。

代表だいひょう作さく

王おう母はは献けんじ寿ことぶき図ず

鸕鶿捉魚図ず（絹本けんぽん着色ちゃくしょく 宝たから暦れき5年ねん（1755年ねん）徳川とくがわ美術館びじゅつかん蔵ぞう

作品さくひん名めい	技法ぎほう	形状けいじょう・員数いんずう	寸法すんぽう（縦たてx横よこcm）	所有しょゆう者しゃ	年代ねんだい	落款らっかん・印章いんしょう	備考びこう
花鳥かちょう図ず屏風びょうぶ	絹本けんぽん著ちょ色しょく	六ろく曲きょく一双いっそう押絵おしえ貼は	各かく162.1x50.3	徳川とくがわ美術館びじゅつかん	1753年ねん-1754年ねん（宝たから暦れき3年ねん-4年ねん）頃ごろ		尾張おわり藩はん主あるじ徳川とくがわ宗勝むねかつが長崎ながさき奉行ぶぎょう菅沼すがぬま定じょう秀しゅう、町年寄まちどしより薬師寺やくしじ右みぎ衛門えもんを通つうじて注文ちゅうもん、下記かきの「鸕鶿捉魚図ず」「猛虎もうこ震ふるえ威い図ず」「一路いちろ功名こうみょう図ず」も同様どうようの経緯けいいで注文ちゅうもんされた。
鸕鶿捉魚図ず		1幅ぶく		徳川とくがわ美術館びじゅつかん
猛虎もうこ震ふるえ威い図ず		1幅ぶく		徳川とくがわ美術館びじゅつかん
一路いちろ功名こうみょう図ず	絹本けんぽん淡彩たんさい	1幅ぶく	117.3x46.2	神戸こうべ市立しりつ博物館はくぶつかん
双そう鶴づる図ず	絹本けんぽん著ちょ色しょく	1幅ぶく	102.8x40.7	神戸こうべ市立しりつ博物館はくぶつかん
月下げっか芦あし蟹かに図ず	絹本けんぽん著ちょ色しょく	1幅ぶく	95.0x32.5	神戸こうべ市立しりつ博物館はくぶつかん
五位鷺ごいさぎ図ず	絹本けんぽん著ちょ色しょく	1幅ぶく	104.1x35.0	神戸こうべ市立しりつ博物館はくぶつかん
仙せん鶴づる遐齢図ず		1幅ぶく		神戸こうべ市立しりつ博物館はくぶつかん
波なみに鵜う図ず	絹本けんぽん墨画ぼくが淡彩たんさい	1幅ぶく	52.5x81.8	東京とうきょう国立こくりつ博物館はくぶつかん	宝たから暦年れきねん間あいだ	款記「崎さき陽ひ繡江熊ぐま斐筆」/「熊くま斐」白文はくぶん方かた印しるし・「繡江」朱しゅ文ぶん方かた印しるし・「興きょう到いた筆ふで随ずい」白文はくぶん方かた印しるし
鯉こい魚ぎょ跳とべ龍りゅう門もん図ず（登龍門とうりゅうもん図ず）	絹本けんぽん著ちょ色しょく	1幅ぶく	129.6x53.1	長崎ながさき歴史れきし文化ぶんか博物館はくぶつかん	宝たから暦年れきねん間あいだ	款記「繡江熊ぐま斐寫」/「熊くま斐」白文はくぶん方かた印しるし・「繡江」朱しゅ文ぶん方かた印しるし・「遊ゆう於芸」朱しゅ文ぶん方かた印しるし	重要じゅうよう文化財ぶんかざい（2019年ねん指定してい）
柳下やぎした鵜う図ず		1幅ぶく		長崎ながさき市立しりつ博物館はくぶつかん
柳下やぎした鵜う図ず	紙かみ本ほん墨画ぼくが淡彩たんさい	1幅ぶく	116.0x42.3	長崎ながさき歴史れきし文化ぶんか博物館はくぶつかん
虎とら図ず	紙かみ本ほん著ちょ色しょく	1幅ぶく	133.0x47.6	個人こじん	1762年ねん（宝たから暦れき12年ねん）	款記「時とき壬みずのえ午うま仲秋ちゅうしゅう瓊浦淇瞻熊ぐま斐寫」/「熊くま斐印」白文はくぶん方かた印しるし・「淇瞻氏し」朱しゅ文ぶん方かた印しるし・「繡江画が記き」白文はくぶん方かた印しるし
松まつ鷲わし梅うめ孔雀くじゃく図ず屏風びょうぶ	紙かみ本ほん金地きんじ墨画ぼくが	六ろく曲きょく一双いっそう	各かく154.0x357.0	山形やまがた美術館びじゅつかん長谷川はせがわコレクション			山形やまがた県けん指定してい文化財ぶんかざい

出典しゅってん

• 阿野あの露ろ団だん 『長崎ながさきの肖像しょうぞう 長崎ながさき派はの美術家びじゅつか列伝れつでん』 形かたち文ぶん社しゃ、1995年ねん
• 成澤なりさわ勝まさる嗣 「日本にっぽんの南みなみ蘋系ノート」（『季刊きかん古こ美術びじゅつ』 第だい93号ごう） 三彩さんさい社しゃ、1990年ねん
• 千葉ちば市し美術館びじゅつかん編集へんしゅう・発行はっこう 『新しん世紀せいき・市制しせい施行しこう80周年しゅうねん記念きねん 江戸えどの異国いこく趣味しゅみ―南みなみ蘋風大だい流行りゅうこう―』 2001年ねん

関連かんれん項目こうもく

• 長崎ながさき派は
• 文人ぶんじん画が