神田かんだ伯はく山やま

神田かんだ 伯はく山やま（かんだ はくざん）は、講釈こうしゃく師しの名跡みょうせき。当代とうだいは六ろく代目だいめ。三さん代目だいめが特とくに有名ゆうめい。初代しょだいは神田かんだ派はの祖そである。

• 四よん代目だいめ神田かんだ伯はく山やま - その後ご二に代目だいめ神田かんだ松まつ鯉こいに追贈ついぞうされた。
• 六ろく代目だいめ神田かんだ伯はく山やま - 当代とうだい

初代しょだい

生年せいねん不ふ詳しょう - 1873年ねん10月4日にち。本名ほんみょう：斎藤さいとう 定吉さだきち（さいとう さだきち）。神田かんだ派はの祖そ。

武たけ州しゅう川崎かわさきの生うまれ、神田かんだ伯はく龍りゅうの門下もんか。大岡おおおか政談せいだんが有名ゆうめい、そのためか「天てん一いち坊ぼう伯はく山さん」と呼よばれる。他ほかにも「宮本みやもと武蔵むさし」「大坂おおさか軍記ぐんき」などを読よんだ。普段ふだんは常つねに帯刀たいとうし高座こうざの刀かたな架かけに脇差わきざしをのせてから話はなし始はじめたといわれる。その刀かたなは靖国神社やすくにじんじゃ遊ゆう就館に献納けんのうされている。明治めいじに入はいり引退いんたいした。盗賊とうぞくに暗殺あんさつされ不慮ふりょの死しを遂とげる。享年きょうねん不明ふめい。

墓所はかしょは神奈川かながわ県けん川崎かわさき市し大徳寺だいとくじ。

2代目だいめ

2代目だいめ 神田かんだ（かんだ） 伯はく山やま（はくざん） 初代しょだい 神田かんだ（かんだ） 松まつ鯉こい（しょうり）
本名ほんみょう	玉川たまがわ（たまがわ） 金次郎きんじろう（きんじろう）
生年月日せいねんがっぴ	1843年ねん9月
没ぼつ年月日ねんがっぴ	1921年ねん4月がつ27日にち
出身しゅっしん地ち	日本にっぽん・東京とうきょう府ふ
師匠ししょう	初代しょだい神田かんだ伯はく山やま
弟子でし	3代目だいめ神田かんだ伯はく山やま
名跡みょうせき	1.神田かんだ伯はく勇いさむ（1858年ねん - ？） 2.神田かんだ小しょう伯はく山やま（？ - 1870年ねん） 3.2代目だいめ神田かんだ伯はく山やま（1870年ねん - 1904年ねん） 4.初代しょだい神田かんだ松まつ鯉こい（1904年ねん - 1921年ねん）
活動かつどう期間きかん	1858年ねん - 1921年ねん
家族かぞく	2代目だいめ神田かんだ松まつ鯉こい（実子じっし）

1843年ねん9月 - 1921年ねん4月がつ27日にち。本名ほんみょう：玉川たまがわ 金次郎きんじろう（たまがわ きんじろう）。

飯田いいだ町まち九段くだん中坂なかさか下かの生うまれ。15歳さいで初代しょだい神田かんだ伯はく山やまに入門にゅうもんし伯はく勇いさむ、小しょう伯はく山やまを経へて、28歳さいの1870年ねんに2代目だいめ伯はく山やまを襲名しゅうめい。「水みず滸伝」などを得意とくいとした。

1904年ねん、名跡みょうせきを譲ゆずり隠居いんきょ名めい「初代しょだい神田かんだ松まつ鯉こい」に改名かいめいした。松まつ鯉こいというのは「神田かんだ祭さい」に掛かけた洒落しゃれ。1913年ねん浅草あさくさ金きん車しゃ亭ていで講釈こうしゃく師し、落語らくご家かを集あつめ高座こうざ生活せいかつ57周年しゅうねん記念きねんの祝賀しゅくが演芸えんげい会かいを開催かいさい。

幕末ばくまつから明治めいじを描えがいた大河たいがドラマ『青天せいてんを衝つけ』（2021年ねん）においては、六ろく代目だいめが二に代目だいめの役やくとして出演しゅつえんしている。

3代目だいめ

三さん代目だいめ 神田かんだ（かんだ） 伯はく山やま（はくざん）
本名ほんみょう	岸田きしだ（きしだ） 福松ふくまつ（ふくまつ）
別名べつめい	次郎じろう長伯ちょうはく山さん 八丁はっちょう荒あらし
生年月日せいねんがっぴ	1872年ねん8月がつ23日にち
没ぼつ年月日ねんがっぴ	(1932-01-30) 1932年ねん1月がつ30日にち（59歳さい没ぼつ）
出身しゅっしん地ち	東京とうきょう府ふ京橋きょうばし
師匠ししょう	二に代目だいめ神田かんだ伯はく山やま
弟子でし	初代しょだい神田かんだ山陽さんよう 初代しょだい神田かんだろ山やま 三さん代目だいめ神田かんだ伯治はくじ 五ご代目だいめ神田かんだ伯はく龍りゅうほか
名跡みょうせき	1.神田かんだ松山まつやま （1883年ねん - 1895年ねん） 2.神田かんだ小しょう伯はく山やま （1895年ねん - 1904年ねん） 3.三さん代目だいめ神田かんだ伯はく山やま （1904年ねん - 1932年ねん）
活動かつどう期間きかん	1883年ねん - 1932年ねん
活動かつどう内容ないよう	講談こうだん師し

三さん代目だいめ 神田かんだ 伯はく山やま（1872年ねん8月がつ23日にち（明治めいじ5年ねん7月がつ20日はつか） - 1932年ねん1月がつ30日にち）は、講談こうだん師し。本名ほんみょう：岸田きしだ 福松ふくまつ。東京とうきょう生うまれ。紋もんは「三さんツ鐶」。

三さん尺しゃくもの（侠客きょうかくもの）を得意とくいとし、特とく中ちゅうでも「清水次郎長しみずのじろちょう伝つて」を最大さいだいの売うり物ものとした。そのため三さん代目だいめは「次郎じろう長伯ちょうはく山さん」との異名いみょうがある。彼かれが出演しゅつえんする寄席よせでは大入おおいりの満員まんいんとなった。反面はんめん、その周辺しゅうへん（八丁はっちょう）の寄席よせは皆みな、客きゃくを取とられてしまうので「八丁はっちょう荒あらし」の異名いみょうを取とるほどの人気にんきを誇ほこった。

清水次郎長しみずのじろちょう物ものの講談こうだんは、元々もともと血ち生臭なまぐさい話はなしであった。三さん代目だいめ自身じしんは、講釈こうしゃく師し松まつ廼家京伝きょうでん（伊東いとう潮うしお魚ぎょ）から伝つたえられている。しかし3代目だいめは、ストーリーそのものを変かえた。天田あまだ愚庵ぐあんの「東海とうかい遊侠ゆうきょう伝でん」を参照さんしょうする等ひとして、義理ぎり人情にんじょうを盛もり込こみ、愛あいされるキャラクターの次郎じろう長ちょう像ぞうを創作そうさくして独自どくじの型かたとして完成かんせいさせたのである。「名なも高たかき富士ふじの山本やまもと」という演題えんだいとした。

浪曲ろうきょく師し二に代目だいめ広沢ひろさわ虎造とらぞうフシ付づけの「清水次郎長しみずのじろちょう伝つて」は、この伯はく山やまが演えんじた型かたをベースにしている。

3代目だいめ神田かんだ伯はく山やまの寄進きしんによる玉垣たまがき。宗吾そうご霊れい堂どう（宗吾そうご親子おやこの墓はか）にて。

• 1872年ねん7月がつ、東京とうきょう京橋きょうばしの花屋はなやに生うまれる。幼少ようしょう期きに初代しょだい松林しょうりん伯圓はくえんの高座こうざ「中山なかやま大納言だいなごん」「鼠ねずみ小僧こぞう」を聴きき講釈こうしゃく師しに憧あこがれる。
• 1883年ねん、2代目だいめ神田かんだ伯はく山やまに入門にゅうもんし神田かんだ松山まつやま。
• 1895年ねん、神田かんだ小しょう伯はく山やまと改名かいめいし、真打しんうち昇進しょうしん。
• 1904年ねん、師しから名なを生前せいぜん贈与ぞうよされ神田かんだ伯はく山やまを襲名しゅうめい（3代目だいめ）。
• 1907年ねん5月、東京とうきょう本所ほんじょ東ひがし両国りょうこくの福本ふくもとにて「名なも高たかき富士ふじの山本やまもと」初演しょえん。
• 1911年ねん、5か月げつ連続れんぞくで中央ちゅうおう新聞しんぶんに速記そっきを掲載けいさいし好評こうひょうを得える。
• 1922年ねん（大正たいしょう11年ねん）4月がつ25日にち、市村いちむら座ざで独演どくえん会かい、演目えんもくは清水次郎長しみずのじろちょう (講談こうだん)（～26日にち）。講談こうだん師しの劇場げきじょう初はつ出演しゅつえん。
• 1922年ねん（大正たいしょう11年ねん）9月がつ22日にち、本郷ほんごう座ざで「清水次郎長しみずのじろちょう」（～9月がつ24日にち）
• 1932年ねん1月がつ30日にち、胃潰瘍いかいようのため死去しきょ。墓所はかしょは港みなと区く済海寺さいかいじ。

芸歴げいれき

• 1883年ねん - 二に代目だいめ神田かんだ伯はく山やまに入門にゅうもん、「松山まつやま」を名乗なのる。
• 1895年ねん - 真打しんうち昇進しょうしん、「小しょう伯はく山やま」と改名かいめい。
• 1904年ねん - 「三さん代目だいめ神田かんだ伯はく山やま」を襲名しゅうめい。

弟子でし

• 初代しょだい神田かんだ山陽さんよう
• 初代しょだい神田かんだろ山やま
• 三さん代目だいめ神田かんだ伯治はくじ
• 五ご代目だいめ神田かんだ伯はく龍りゅう

5代目だいめ

五ご代目だいめ 神田かんだ（かんだ） 伯はく山やま（はくざん）
五ご代目だいめ伯はく山さん（当時とうじ三さん代目だいめ桃川ももかわ如燕、1955年ねん）
本名ほんみょう	岡田おかだ（おかだ） 秀章ひであき（ひであき）
生年月日せいねんがっぴ	1898年ねん4月がつ28日にち
没ぼつ年月日ねんがっぴ	(1976-11-04) 1976年ねん11月4日にち（78歳さい没ぼつ）
出身しゅっしん地ち	日本にっぽん東京とうきょう府ふ本郷ほんごう
師匠ししょう	二に代目だいめ桃川ももかわ若わか燕つばめ 三さん代目だいめ小金井こがねい芦あし州しゅう 三さん代目だいめ神田かんだ伯はく山やま 五ご代目だいめ神田かんだ伯はく龍りゅう
名跡みょうせき	1.桃川ももかわ若わか秀しゅう （1918年ねん - ？） 2.小金井こがねい桜さくら州しゅう （不ふ詳しょう） 3.神田かんだ五山ごさん （？ - 1949年ねん） 4.三さん代目だいめ桃川ももかわ如燕 （1949年ねん - ？） 5.神田かんだ五山ごさん （？ - 1957年ねん） 6.五ご代目だいめ神田かんだ伯はく山やま （1957年ねん - ？） 7.四よん代目だいめ神田かんだ伯はく山やま （？ - 1976年ねん）
活動かつどう期間きかん	1918年ねん - 1976年ねん
活動かつどう内容ないよう	講談こうだん師し

五ご代目だいめ 神田かんだ 伯はく山やま（1898年ねん4月がつ28日にち - 1976年ねん11月4日にち）。本名ほんみょう：岡田おかだ 秀章ひであき。

経歴けいれき

1898年ねん4月がつ、東京とうきょう本郷ほんごうに生うまれる。

1918年ねん、二に代目だいめ桃川ももかわ若わか燕つばめに入門にゅうもんし、「桃川ももかわ若わか秀しゅう」を名乗なのる。三さん代目だいめ小金井こがねい芦あし州しゅう門下もんかへ移うつり、「小金井こがねい桜さくら洲しゅう」と改名かいめい。後のちに三さん代目だいめ神田かんだ伯はく山やま門下もんかへ移うつり、「神田かんだ五山ごさん」を名乗なのる。　　

1932年ねん、三さん代目だいめ伯はく山やまと死別しべつし、五ご代目だいめ神田かんだ伯はく龍りゅう門下もんかに移うつる。 1949年ねん、五ご代目だいめ伯はく龍りゅうと死別しべつ。通夜つやに丹前たんぜん姿すがたで現あらわれ、驚おどろいた山田やまだ春雄はるおから「他たの人ひとでさえ通夜つやには紋付もんつき（の正装せいそう）で来くるのに、弟子でしのお前まえがどてら姿すがたで通夜つやに参列さんれつとは何事なにごとか！」と怒おこられる。神田かんだ派はから離脱りだつ。

1949年ねん、「三さん代目だいめ桃川ももかわ如燕」を襲名しゅうめいするも、後のちにかつての弟弟子おとうとでし三さん代目だいめ桃川ももかわ若わか燕つばめと絶縁ぜつえんし、「神田かんだ五山ごさん」をもう一度いちど名乗なのる。

1957年ねん、「神田かんだ伯はく山さん」を襲名しゅうめい。「五ご代目だいめ」を自称じしょう。四よん代目だいめは神田かんだ派は宗家そうけ二に代目だいめ神田かんだ松まつ鯉こいに敬意けいいを表あらわし、わざと空位くういにしたはずだったが、二に代目だいめ松まつ鯉こいから契約けいやく不履行ふりこうを主張しゅちょうされ、仲違なかたがいした。この名跡みょうせきの四よん代目だいめを空あけた事実じじつを取とり消けし、自みずからを四よん代目だいめとして名乗なのる。1974年ねん、勲くん四よん等とう叙勲じょくんの受賞じゅしょうを辞退じたい。

1976年ねん11月4日にち、死去しきょ。五ご代目だいめの逝去せいきょ後ご、「神田かんだ伯はく山さん」の名跡みょうせきは前座ぜんざまで在籍ざいせきした元もと直弟子じきでしであった神田かんだ昇龍しょうりゅうが預あずかっていたが、後のちに六ろく代目だいめを襲名しゅうめいする神田かんだ松まつ之の丞すすむが師匠ししょうの伝手つてでその元もと直弟子じきでしとの接触せっしょくに成功せいこうし、名跡みょうせきを授さずかることができた。