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線条体 - Wikipedia

線条せんじょうたい(せんじょうたい、striatum)は、おわりのう皮質ひしつ構造こうぞうであり、大脳だいのう基底きていかく主要しゅよう構成こうせい要素ようそのひとつである。線条せんじょうたい運動うんどう機能きのうへの関与かんよもっともよくられているが、意思いし決定けっていなどその神経しんけい過程かていにもかかわるとかんがえられている。線条せんじょうたいは、しん線条せんじょうたい(またはがわ線条せんじょうたい)とはらがわ線条せんじょうたい区分くぶんされるが、たんに「線条せんじょうたい」とった場合ばあいにはしん線条せんじょうたいのことを場合ばあいおおい。線条せんじょうたい striatum という名称めいしょうは、ヒトしん線条せんじょうたいじょうかくから内包ないほう大脳だいのうしん皮質ひしつ視床ししょうからのじくさく線維せんいたばでありはくただし)によって分断ぶんだんされる場所ばしょで、たがいに連絡れんらくしている部分ぶぶん線条せんじょう stria としてえることから命名めいめいされた[1]

のう: 線条せんじょうたい 、纹状たい
ヒトのうないでの線条せんじょうたい位置いち赤色あかいろしめ領域りょういき線条せんじょうたい
ひだり側面そくめんからみぎ正面しょうめんから
ヒト線条せんじょうたいしき。A: 外側そとがわからのながめ、B: 内側うちがわからのながめ。じょうかくからしめされている。
名称めいしょう
日本語にほんご 線条せんじょうたい 、纹状たい
英語えいご striatum
ラテン語らてんご corpus striatum
略号りゃくごう Str、CPu
関連かんれん構造こうぞう
上位じょうい構造こうぞう おわりのう大脳だいのう大脳だいのう基底きていかく
構成こうせい要素ようそ がわ線条せんじょうたいじょうかくから、ストリオソーム、マトリックス)、はらがわ線条せんじょうたいがわすわかく嗅結ぶし)
関連かんれん情報じょうほう
Brede Database 階層かいそう関係かんけい座標ざひょう情報じょうほう
NeuroNames 関連かんれん情報じょうほう一覧いちらん
NIF 総合そうごう検索けんさく
MeSH Corpus+Striatum
グレイ解剖かいぼうがく 書籍しょせきちゅう説明せつめい英語えいご
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しん線条せんじょうたい

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しん線条せんじょうたい(しんせんじょうたい neostriatum)は、がわ線条せんじょうたいともばれ、から(ひかく putamen)とじょうかく(びじょうかく caudate nucleus)から構成こうせいされている(このため両者りょうしゃ総称そうしょうとしてしん線条せんじょうたいのことを Caudate-Putamen, CPu ともしょうする)。たん線条せんじょうたいった場合ばあいに、このしん線条せんじょうたいのことを場合ばあいおおい。これとはべつしん線条せんじょうたいからじょうかく)は、ストリオソーム(striosome、またはパッチ patch ともばれる)とマトリックス(matrix)の領域りょういきけられ、マトリックスのなかにモザイクじょうのストリオソームがまれるという特殊とくしゅ細胞さいぼう構築こうちくしめす。両者りょうしゃは、あたりえん皮質ひしつと、大脳だいのうしん皮質ひしつからそれぞれ興奮こうふんせい入力にゅうりょくけることがられている。

神経しんけい細胞さいぼう

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線条せんじょうたい構成こうせいするニューロンだい部分ぶぶんは、投射とうしゃ細胞さいぼうであるGABA作動さどうせい中型ちゅうがたゆうとげ細胞さいぼうであるが、その抑制よくせいせい神経しんけい細胞さいぼう存在そんざいする。しん線条せんじょうたい構成こうせいする神経しんけい細胞さいぼうについては、おもにげっるいもちいた研究けんきゅうもとづきのように分類ぶんるいされている。

投射とうしゃ神経しんけい細胞さいぼう

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しん線条せんじょうたい投射とうしゃ神経しんけい細胞さいぼう中型ちゅうがたゆうとげ神経しんけい細胞さいぼう中型ちゅうがたゆうとげニューロン、medium-sized spiny neuron, または medium spiny neuron, MSN)とばれる。GABA作動さどうせいで、じょう突起とっきみつとげ突起とっきをもち、細胞さいぼうたいおおきさがちゅう程度ていど(20μみゅーmほど)。ラットのしん線条せんじょうたい神経しんけい細胞さいぼうの95%をめるとわれる。GABAのほかに、エンケファリンダイノルフィンなどのオピオイドや、P物質ぶっしつなどのペプチドをさんせいする。生体せいたいないでの発火はっか頻度ひんどひくいのが特徴とくちょうとされる。ウレタン麻酔ますいではまく電位でんいがDOWN状態じょうたいとUP状態じょうたいのふたつの状態じょうたいを1Hzへるつ前後ぜんこう遷移せんいすることがられる。DOWN状態じょうたいでは、うち整流せいりゅうせいカリウムチャネルKIR2のはたらきによって、分極ぶんきょくがわでカリウムイオンの流入りゅうにゅうしょうじるうち整流せいりゅうせい顕著けんちょしめし、カリウムイオンのまく電位でんい反転はんてん電位でんい付近ふきんをとる[2]

いくつかの矛盾むじゅんする報告ほうこくもあるものの、現在げんざいでは線条せんじょうたい投射とうしゃニューロン(中型ちゅうがたゆうとげニューロン)は、直接ちょくせつ間接かんせつのふたつの経路けいろ構成こうせいする2ぐん分類ぶんるいできるという見方みかた有力ゆうりょくである。下記かき出力しゅつりょくこう参照さんしょう

抑制よくせいせい神経しんけい細胞さいぼう

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  • アセチルコリン作動さどうせい抑制よくせいせい細胞さいぼう(cholinergic interneuron)
    アセチルコリン作動さどうせい形態けいたい学的がくてきには大型おおがたとげ細胞さいぼう(large aspiny neuron)とばれ、電気でんき生理学せいりがくてきにはTAN(tonically active neuron)とばれているものがこれに相当そうとうするとかんがえられている。行動こうどう選択せんたくにおいて重要じゅうよう状況じょうきょう、もしくは報酬ほうしゅうかかわる事象じしょう発生はっせいしたときに、この神経しんけい細胞さいぼう一時いちじてき発火はっか停止ていしする。
  • GABA作動さどうせい抑制よくせいせい神経しんけい細胞さいぼう(GABAergic interneuron)
    • パルブアルブミン陽性ようせい抑制よくせいせい神経しんけい細胞さいぼう(parvalbumin-positive interneuron)
      電気でんき生理学せいりがくてきには fast-spiking (FS) 細胞さいぼうばれる。カルシウム結合けつごう蛋白質たんぱくしつ一種いっしゅであるパルブアルブミン陽性ようせいである。また線条せんじょうたい細胞さいぼうなかで、もっともGABAのさんせいりょうおお細胞さいぼうかんがえられている。
    • ソマトスタチン作動さどうせい抑制よくせいせい神経しんけい細胞さいぼう(somatostatinergic interneuron)
    • カルレチニン陽性ようせい抑制よくせいせい神経しんけい細胞さいぼう(calretinin-positive interneuron)
      電気でんき生理学せいりがくてきには low-thredhold spiking (LTS) 細胞さいぼうばれる。カルシウム結合けつごう蛋白質たんぱくしつ一種いっしゅであるカルレチニン陽性ようせいである。

入力にゅうりょく

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  • 皮質ひしつ線条せんじょうたい入力にゅうりょく(corticostriatal input)はグルタミン酸ぐるたみんさん作動さどうせいであり、運動うんどうかかわるしん皮質ひしつ領野りょうやなどからの入力にゅうりょくおおいとされるが、あたりえん皮質ひしつほか、ほとんどすべての大脳皮質だいのうひしつ領野りょうやからの入力にゅうりょく存在そんざいしており、大脳だいのう基底きていかく運動うんどうだけにかかわっているわけではないというかんがえの根拠こんきょとなっている。それぞれの皮質ひしつ領野りょうやからの入力にゅうりょく線条せんじょうたい内部ないぶ特定とくてい領域りょういきじくさく展開てんかいするため、線条せんじょう体内たいないには領域りょういきによってゆるやかな機能きのう分化ぶんかがあるとされる。大脳だいのう基底きていかくにおける機能きのうてき平行へいこうループ概念がいねん[3]もこれにもとづいている。おも大脳皮質だいのうひしつ出力しゅつりょくそうである5そうきりたい細胞さいぼうが、皮質ひしつ線条せんじょうたい入力にゅうりょく供給きょうきゅうしている。
  • 視床ししょう線条せんじょうたい入力にゅうりょく(thalamostriatal input)もグルタミン酸ぐるたみんさん作動さどうせいであるが、視床ししょうかくなかでも特殊とくしゅかくばれるかくからの入力にゅうりょく中心ちゅうしんめる。さらにそのなかでもCM-PFふく合体がったい(centromedian parafascicular nuclear complex)からの入力にゅうりょくおもである。
  • くろしつ線条せんじょうたい入力にゅうりょく(nigrostriatal input)はくろしつ緻密ちみつのA9細胞さいぼう集団しゅうだんからのドーパミン作動さどうせい繊維せんいである。
  • そのほかにあわあおだまそとぶしからのGABA作動さどうせい入力にゅうりょく[4][5]視床ししょうかくからの入力にゅうりょく[6]存在そんざい報告ほうこくされている。

出力しゅつりょく

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線条せんじょうたい投射とうしゃ神経しんけい細胞さいぼう中型ちゅうがたゆうとげ神経しんけい細胞さいぼう(medium-sized spiny neuron, または medium spiny neuron)である。いくつかの矛盾むじゅんする報告ほうこくもあるものの、現在げんざいでは線条せんじょうたい投射とうしゃニューロン(中型ちゅうがたゆうとげニューロン)は、直接ちょくせつ間接かんせつのふたつの経路けいろ構成こうせいする、重複じゅうふくちいさい2ぐん分類ぶんるいできるという見方みかた有力ゆうりょくである。ラットをもちいた研究けんきゅうでは中型ちゅうがたゆうとげニューロンは線条せんじょうたい神経しんけい細胞さいぼうの95%をめ、そのうち直接ちょくせつと、間接かんせつ構成こうせいするニューロンのはほぼ同数どうすうであるという。

直接ちょくせつ構成こうせいする中型ちゅうがたゆうとげニューロン

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  • 大脳だいのう基底きていかく出力しゅつりょくかくである、あわあおだまうちふしくろしつあみさま投射とうしゃ
  • ドーパミンD1受容じゅようたい(Drd1)陽性ようせいであり、ちゅうのうからのドーパミン入力にゅうりょくによって、興奮こうふんせいたかまる。
  • P物質ぶっしつ前駆ぜんくたい(Tac1)陽性ようせいダイノルフィン前駆ぜんくたい(Pdyn)陽性ようせいアデノシンA1受容じゅようたい陽性ようせいである。
  • 従来じゅうらいは、途中とちゅうあわあおいたまがいぶしへは出力しゅつりょくしないとかんがえられてきたが、近年きんねん単一たんいつ神経しんけい細胞さいぼうじくさく追跡ついせき研究けんきゅう結果けっかあわあおいたまがいぶしへもじくさくがわえだすものがおおいという報告ほうこく[7]もある。

間接かんせつ構成こうせいする中型ちゅうがたゆうとげニューロン

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  • あわあおいたまがいぶし投射とうしゃする(あわあおいたまないぶしくろしつへは投射とうしゃしない)。
  • ドーパミンD2受容じゅようたい(Drd2)陽性ようせいであり、ちゅうのうからのドーパミン入力にゅうりょくによって、興奮こうふんせい低下ていかする。
  • エンケファリン前駆ぜんくたい(Penk1)陽性ようせい、アデノシンA2A受容じゅようたい陽性ようせいである。

発生はっせい

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しん線条せんじょうたい中型ちゅうがたゆうとげ神経しんけい細胞さいぼうは、外側そとがわ基底きていかくはらはじめ(lateral ganglionic eminence, LGE)に由来ゆらいする。またアセチルコリン作動さどうせい抑制よくせいせい神経しんけい細胞さいぼうは、あわあおだまはらはじめである内側うちがわ基底きていかくはらはじめ(medial ganglionic eminence, MGE)からの細胞さいぼう移動いどうによって供給きょうきゅうされる。

ストリオソーム領域りょういき中型ちゅうがたゆうとげ神経しんけい細胞さいぼうは、マトリックスの中型ちゅうがたゆうとげ神経しんけい細胞さいぼうよりも最終さいしゅう分裂ぶんれつはやいことがげっるいもちいた研究けんきゅう[8]あきらかになっている。ちゅうのう由来ゆらいのドーパミン含有がんゆう線維せんいくろしつ線条せんじょうたい入力にゅうりょく)は、発達はったつにはストリオソーム領域りょういきなか高密度こうみつど分布ぶんぷしてしまじょうえることから、その構造こうぞうしてドーパミン・アイランドとばれる。歴史れきしてきには発達はったつのみにられるドーパミン・アイランドの概念がいねんさきにあって、のち成体せいたいのうにおけるストリオソーム構造こうぞうつかり、ドーパミン・アイランドと一致いっちすることがかった[9][10]

はらがわ線条せんじょうたい

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はらがわ線条せんじょうたい(ふくそくせんじょうたい ventral striatum)は、がわすわかく(そくざかく accumbens nucleusまたはnucleus accumbens(ラテン語らてんご))、嗅結ぶし(きゅうけっせつ olfactory tubercle、または tuberculum olfactorium(ラテン語らてんご))などをふくむ。種々しゅじゅ薬物やくぶつ中毒ちゅうどくかかわっているとされる。

おもはらがわぶたA10細胞さいぼう集団しゅうだんからのドーパミン入力にゅうりょくける。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ 標準ひょうじゅん生理学せいりがくだいはん 医学書院いがくしょいん
  2. ^ Nisenbaum ES, Wilson CJ (1995). “Potassium currents responsible for inward and outward rectification in rat neostriatal spiny projection neurons.”. J Neurosci 15 (6): 4449-63. PMID 7790919. 
  3. ^ Alexander GE, Crutcher MD, & DeLong MR (1990). “Basal ganglia-thalamocortical circuits: parallel substrates for motor, oculomotor, "prefrontal" and "limbic" functions.”. Prog Brain Res 85: 119-146. PMID 2094891. 
  4. ^ Beckstead RM (1983). “A pallidostriatal projection in the cat and monkey.”. Brain Res Bull 11 (6): 629-632.. PMID 6661668. 
  5. ^ Staines WA, Atmadja S, & Fibiger HC (1981). “Demonstration of a pallidostriatal pathway by retrograde transport of HRP-labeled lectin.”. Brain Res 206 (2): 446-450.. PMID 7214143. 
  6. ^ Kita H & Kitai ST (1987). “Efferent projections of the subthalamic nucleus in the rat: light and electron microscopic analysis with the PHA-L method.”. J Comp Neurol 260 (3): 435-452.. PMID 2439552. 
  7. ^ Lévesque M, Parent A. (2005). “The striatofugal fiber system in primates: a reevaluation of its organization based on single-axon tracing studies.”. Proc Natl Acad Sci U S A 102 (33): 11888-93. PMID 16087877. 
  8. ^ van der Kooy D, Fishell G (1986). “Neuronal birthdate underlies the development of striatal compartments.”. Brain Res 401 (1): 155-61. doi:10.1016/0006-8993(87)91176-0. PMID 3028569. 
  9. ^ Graybiel AM, Pickel VM, Joh TH, Reis DJ, Ragsdale CW Jr. (1981). “Direct demonstration of a correspondence between the dopamine islands and acetylcholinesterase patches in the developing striatum.”. Proc Natl Acad Sci U S A. 78 (9): 5871-5.. PMID 6117860. 
  10. ^ Herkenham M, Pert CB. (1981). “Mosaic distribution of opiate receptors, parafascicular projections and acetylcholinesterase in rat striatum.”. Nature 291 (5814): 415-8.. PMID 6165892. 

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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