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薬物中毒 - Wikipedia

薬物やくぶつ中毒ちゅうどく

薬物やくぶつによる過剰かじょうどく作用さようしょうじている状態じょうたい

薬物やくぶつ中毒ちゅうどく(やくぶつちゅうどく)とは、薬物やくぶつによる過剰かじょうどく作用さようしょうじている状態じょうたいである。細菌さいきんによるものではない。世界せかい保健ほけん機関きかんの『ICD-10 だい5しょう:精神せいしん行動こうどう障害しょうがい』におけるものは中毒ちゅうどくintoxication)であり、おもこう精神せいしんやくによって精神せいしん機能きのう障害しょうがいしょうじた状態じょうたいである。「ICD-10 だい19しょう:損傷そんしょう中毒ちゅうどくおよびその外因がいいん影響えいきょう」における中毒ちゅうどくpoisoning)は、なんらかの薬物やくぶつ過剰かじょう摂取せっしゅしたことによって有害ゆうがい影響えいきょうしょうじている場合ばあいである。反対はんたいに、依存いぞん形成けいせいした薬物やくぶつ体内たいないからっていくことによってしょうじる状態じょうたい離脱りだつである[1]

薬物やくぶつ中毒ちゅうどく
概要がいよう
診療しんりょう 精神せいしん医学いがく, 麻薬まやくがく[*], 中毒ちゅうどく医学いがく[*]
分類ぶんるいおよび外部がいぶ参照さんしょう情報じょうほう
ICD-10 F10.0-F19.0
ICD-9-CM 305
MeSH D011041

日本にっぽん法律ほうりつじょう中毒ちゅうどく(addiction)は、医学いがく用語ようごことなるため[2]嗜癖薬物やくぶつ依存いぞんしょうにて説明せつめいする。また、中毒ちゅうどく学会がっかいあつか範囲はんい毒性どくせいがく(toxicology)である。

2しゅ急性きゅうせい中毒ちゅうどく、または嗜癖

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比較的ひかくてきてい用量ようりょうでもしょうじるおも精神せいしん症状しょうじょう急性きゅうせい中毒ちゅうどくと、おも過剰かじょう摂取せっしゅによってしょうじる急性きゅうせい中毒ちゅうどくおな訳語やくごてられており、さらには、依存いぞん関連かんれんした状態じょうたい日本にっぽん法律ほうりつじょう用語ようごとして中毒ちゅうどくとしている。

嗜癖や依存いぞん

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日本にっぽん麻薬まやくおよこう精神せいしんやく取締とりしまりほうにおいての中毒ちゅうどくaddiction)とは、法律ほうりつじょう用語ようごとして依存いぞん関連かんれんするような状態じょうたい[2]医学いがくてきには嗜癖とやくされるaddictionかたりは、しばしば依存いぞん混同こんどうされる[3]薬物やくぶつがやめられない状態じょうたいたいする『ICD-10 だい5しょう:精神せいしん行動こうどう障害しょうがい』における診断しんだんめいは、依存いぞんしょうや、(薬物やくぶつ乱用らんようわる用語ようごとしての[4]有害ゆうがい使用しようである。

薬物やくぶつたいする依存いぞん(Dependence)が形成けいせいされた状態じょうたいたいする学会がっかいは、日本にっぽんアルコール・薬物やくぶつ学会がっかい(Japanese Medical Society Of Alcohol & Drug Studies)や日本にっぽん依存いぞん神経しんけい精神せいしん薬理やくり学会がっかい(Japanese Society for Neuroscience of Dependence)である。

柳田やなぎだともは、1975ねんにも依存いぞんしょう意味いみでの中毒ちゅうどく用語ようご廃棄はいきして、依存いぞんしょうかたり使用しよう提案ていあんしている[5]

急性きゅうせい中毒ちゅうどく

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くわえて、しゅとして精神せいしん障害しょうがいこしている中毒ちゅうどくintoxication)と、そうではない過剰かじょう摂取せっしゅふく中毒ちゅうどくpoisoning)がおな訳語やくごである。

中毒ちゅうどくpoisoning)は、おもに『疾病しっぺいおよ関連かんれん保健ほけん問題もんだい国際こくさい統計とうけい分類ぶんるい』(ICD-10)におけるT36-T50の分類ぶんるいたいするものである。急性きゅうせいアルコール中毒ちゅうどくによる昏睡こんすいなどはこちらである。日本にっぽん中毒ちゅうどく情報じょうほうセンター(Japan Poison Information Center)は急性きゅうせいどく作用さようである中毒ちゅうどくたいする。

一方いっぽうで、急性きゅうせい中毒ちゅうどくacute intoxication)の診断しんだんめいは、『ICD-10 だい5しょう:精神せいしん行動こうどう障害しょうがい』におけるもので、意識いしき水準すいじゅん認知にんち知覚ちかく感情かんじょう行動こうどう変化へんかした機能きのうてき障害しょうがいともなった一過いっかせい状態じょうたいである[6]。これらは依存いぞん離脱りだつしょうじる薬物やくぶつ診断しんだんコードF10-19に分類ぶんるいされており、F55に分類ぶんるいされた依存いぞんしょうじない物質ぶっしつとはことなる分類ぶんるいである[7]。カフェインが原因げんいん不眠症ふみんしょうなどはこちらである。

診断しんだん

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以降いこうで、世界せかい保健ほけん機関きかんとアメリカ精神せいしん学会がっかいによるものを解説かいせつする。

世界せかい保健ほけん機関きかん

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中毒ちゅうどく

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ICD-10(『疾病しっぺいおよ関連かんれん保健ほけん問題もんだい国際こくさい統計とうけい分類ぶんるい』)におけるT36-T50が中毒ちゅうどく(poisoning)である[8]。これには、過剰かじょう摂取せっしゅあやま投薬とうやくふくまれるが、乱用らんよう副作用ふくさようべつ診断しんだんコードF55である[8]

急性きゅうせい中毒ちゅうどくこう精神せいしんやく

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ICD-10における、診断しんだんコードF1x.0がこう精神せいしんやくによる精神せいしん行動こうどう障害しょうがいの、急性きゅうせい中毒ちゅうどく(Acute intoxication)である[6]急性きゅうせい中毒ちゅうどくは、肝臓かんぞうなどに異常いじょうがなければ、密接みっせつ薬物やくぶつりょう関連かんれんしてしょうじ、物質ぶっしつによる主要しゅよう行動こうどうてき作用さよう反映はんえいしているということもない[6]。(奇異きい反応はんのうのような)抑制よくせいざい興奮こうふん活動かつどうこしたり、精神せいしん刺激しげきやく内向ないこうてき行動こうどうしょうじることもある[6]だつ抑制よくせいしょうじることもある[6]幻覚げんかくせいのある薬物やくぶつによる「バッド・トリップ」や、アルコール依存いぞんしょう急性きゅうせい酩酊めいていふくまれる[6]こう精神せいしんやく原因げんいんであってもたんなる過剰かじょう摂取せっしゅは、T36-T50の中毒ちゅうどく(poisoning)である[8]

F10.07生理学せいりがくてき中毒ちゅうどくは、アルコールにのみ適用てきようされ、おおくのひと中毒ちゅうどくしょうじないりょうのアルコールをんだすぐのちに、暴力ぼうりょくてきになる状態じょうたいである[6]

鑑別かんべつ診断しんだん
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こう精神せいしんやくによるものは、有害ゆうがい使用しよう(F1x.1)、依存いぞんしょう(F1x.2)、精神病せいしんびょうせい障害しょうがい(F1x.5)も考慮こうりょできる[6]。また頭部とうぶ外傷がいしょうてい血糖けっとう、ほかにはふくあいてき中毒ちゅうどく(intoxication)の可能かのうせい考慮こうりょできる[6]

アメリカ精神せいしん学会がっかい

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精神せいしん障害しょうがい診断しんだん統計とうけいマニュアルだい4はん』(DSM-IV)においては、中毒ちゅうどくである。アルコール、アンフェタミン、カフェイン、大麻たいま、コカイン、吸入きゅうにゅうざい、ニコチン、アヘンるい、フェンサイクリンジン、鎮静ちんせいざい催眠さいみんざい、またはこう不安ふあんやく物質ぶっしつ、その分類ぶんるい存在そんざいする[9]実際じっさいには、特定とくてい物質ぶっしつめいもちいる[10]。そのは、コルチゾールこうヒスタミンやくのように市販しはんの、あるいは処方しょほうされた医薬品いやくひん、またはラベルがないなど特定とくてい不能ふのうたいする分類ぶんるいである[11]

診断しんだん基準きじゅん

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全体ぜんたいてき診断しんだん基準きじゅんとして、基準きじゅんAの最近さいきん暴露ばくろされた薬物やくぶつ原因げんいん可逆かぎゃくてき症状しょうじょうであり、基準きじゅんBのいちじるしい苦痛くつう機能きのう障害しょうがいともなうなど重症じゅうしょうであり基準きじゅんCとして身体しんたい疾患しっかんによる精神せいしん障害しょうがいや、精神せいしん障害しょうがいではないということである[1]。カフェインによって脈拍みゃくはくはやくなっている状態じょうたいは、たんにカフェインの生理学せいりがくてき中毒ちゅうどく作用さようであるが、適応てきおう行動こうどうしょうじていない場合ばあいには、ここでいう中毒ちゅうどくではない[1]

物質ぶっしつ分類ぶんるいによる診断しんだん基準きじゅんが、べつ存在そんざいする。

解説かいせつ

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症状しょうじょうは、物質ぶっしつ摂取せっしゅ短期たんきてき出現しゅつげん回復かいふくする、認知にんち機能きのう障害しょうがい情緒じょうちょ反応はんのう睡眠すいみん障害しょうがいだつ抑制よくせいといったものである[12]原因げんいんとなってしょうじる障害しょうがい用意よういされ、特徴とくちょう沿って物質ぶっしつ誘発ゆうはつせいせんもう物質ぶっしつ誘発ゆうはつせい気分きぶん障害しょうがい物質ぶっしつ誘発ゆうはつせい睡眠すいみん障害しょうがい物質ぶっしつ誘発ゆうはつせいせい機能きのう不全ふぜん、といったものがカテゴリーとなっている。

中毒ちゅうどくちゅう物質ぶっしつ誘発ゆうはつせい睡眠すいみん障害しょうがいでは、カフェイン、アルコール、アンフェタミン、コカイン、アヘンなどが中毒ちゅうどくちゅう発症はっしょうしやすく、「カフェイン誘発ゆうはつせい睡眠すいみん障害しょうがい不眠症ふみんしょうがた中毒ちゅうどくちゅう発症はっしょう」のように記入きにゅうする[13]

鑑別かんべつ診断しんだん

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DSMには重症じゅうしょう概念がいねん存在そんざいするため[14]、ありふれた娯楽ごらくてき反応はんのうや、臨床りんしょうてきいちじるしい苦痛くつうあるいは障害しょうがいしょうじていないもの、また行動こうどうめん障害しょうがいのない認知にんち機能きのう障害しょうがい除外じょがいされる[12]薬物やくぶつからの離脱りだつのように、薬物やくぶつちゅう濃度のうど低下ていかともなってしょうじるものではない[1]

覚醒剤かくせいざい大麻たいま、アヘンの中毒ちゅうどくによる、現実げんじつ検討けんとうそこなわれていない、ひかりおと幻視げんし中毒ちゅうどくであり、精神病せいしんびょうせい障害しょうがいではない[15]

薬物やくぶつ中毒ちゅうどく以外いがい症状しょうじょう

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脚注きゃくちゅう

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  1. ^ a b c d アメリカ精神せいしん学会がっかい 2004, pp. 199–200.
  2. ^ a b (編集へんしゅう)日本にっぽん緩和かんわ医療いりょう学会がっかい緩和かんわ医療いりょうガイドライン作成さくせい委員いいんかい薬理やくりがくてき知識ちしき」『がん疼痛とうつう薬物やくぶつ療法りょうほうかんするガイドライン』(だい1はん;2010ねん金原出版かねはらしゅっぱん、2010ねん6がつ20日はつかISBN 978-4-307-10149-3http://www.jspm.ne.jp/guidelines/pain/2010/chapter02/02_04_01_13.php 
  3. ^ 世界せかい保健ほけん機関きかん (2003). WHO Expert Committee on Drug Dependence - Thirty-third Report / WHO Technical Report Series 915 (PDF) (Report). World Health Organization. p. 22.
  4. ^ 世界せかい保健ほけん機関きかん (1994) (pdf). Lexicon of alchol and drug term. World Health Organization. pp. 4. ISBN 92-4-154468-6. http://whqlibdoc.who.int/publications/9241544686.pdf  (HTMLばん introductionが省略しょうりゃくされている
  5. ^ 柳田やなぎだとも薬物やくぶつ依存いぞん関係かんけい用語ようご問題もんだいてん」(pdf)『臨床りんしょう薬理やくりだい6かんだい4ごう、1975ねん、347-350ぺーじdoi:10.3999/jscpt.6.347NAID 130002041760 
  6. ^ a b c d e f g h i 世界せかい保健ほけん機関きかん 2005, pp. 85–86.
  7. ^ 世界せかい保健ほけん機関きかん 2005, p. 205.
  8. ^ a b c Poisoning by drugs, medicaments and biological substances(T36-T50) (ICD-10, Version2010、世界せかい保健ほけん機関きかん) 英語えいご
  9. ^ アメリカ精神せいしん学会がっかい 2004, p. 193.
  10. ^ アメリカ精神せいしん学会がっかい 2004, p. 203.
  11. ^ アメリカ精神せいしん学会がっかい 2004, p. 287.
  12. ^ a b アレン・フランセス精神せいしん疾患しっかん診断しんだんのエッセンス―DSM-5の上手じょうず使つかかた金剛こんごう出版しゅっぱん、2014ねん3がつ、145-146ぺーじISBN 978-4772413527 Essentials of Psychiatric Diagnosis, Revised Edition: Responding to the Challenge of DSM-5®, The Guilford Press, 2013.
  13. ^ アメリカ精神せいしん学会がっかい 2004, pp. 625–626.
  14. ^ アメリカ精神せいしん学会がっかい 2004, p. 192.
  15. ^ アメリカ精神せいしん学会がっかい 2004, p. 331.

参考さんこう文献ぶんけん

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関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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